プロジェクトレポート
2023年06月24日 Sat
明日は第17回の「木の建築賞」の授賞式が行われます。大賞は第18回募集チラシの表紙を飾った「星野神社覆殿+本殿」です。審査の折に松井の一押しした作品です。同じ作者の「不惑の一棟」も入賞しました。
作者は古くからの友人で大工棟梁の望月昭さんの息子の望月茂高さんです。親父さんとは国土交通省の「伝統構法の検証実大実験」(2008年~2011年)でご一緒しました。二代目も伝統構法に精通した息子さんで大工棟梁ですが設計も得意で、2つ作品は彼の実力をいかんなく発揮した労作です。「覆殿」は古い神社の本殿を守るために伝統構法の「石場建て」を使い「柱」と「貫」だけ屋根を包みました。すでに8つの賞に輝いています。
神社は「神様の住まい」で人間の生活とはかけ離れた上屋ですから、つくる側の心構えがそのまま表われるという怖さがあります。いわば「つくり手」の純粋な技能や技術の表出の場で、神と向き合う神聖な気持ちをどう表すのかが試されます。もちろん手抜きは許されません、神様が見ていますから。
大工職人は「技術者」というより「技能者」です。体で覚えた技術を時と場合に応じて使い分け、存分に駆使できる人たちです。絵や写真や図面で表現する者とは一線を画しています。身につけた「技能」で木の性質を知り尽くし木と木を組み自然の猛威に備えなければなりません。それには多くの経験を積み、製材された後の木材でもどのように曲がり暴れるのかという木の癖を読み切ることが大切です。
この建物に採用された「石場置き」は大地を傷つけることなく活かし地震や台風に逆らうことのない挙動を示すことが予見されています。また、木材の特性である「めり込み」強さを発揮する「貫」は部材の「継手・仕口」と相まって「摩擦力」で力を減衰することが出来るように「限界耐力設計法」で計算され計画されています。
まさに「日本古来」の「伝統構法」と「新しい技術」を活かした革新的なシエルター「覆殿」の完成です。
「伝統は常に革新によって進化する」という実例を示し「大賞」にふさわしい仕事を見せてくれました。受賞おめでとうございます!
5月よりNPO木の建築フォラムと日本建築士会連合会主催の「第18回木の建築賞」の応募が始まりました。チラシを掲載しておきますので、みなさん奮ってご応募ください。

2023年06月15日 Thu
いつか古民家になる丈夫で暖かい家をつくりたいと考えている松井郁夫です。
今回は最近の「古民家」ブームに対して少し思うところを書きました。
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今や「古民家再生」は空前のブームと言える状況です。
松井事務所にも多くの問い合わせがあります。
「古民家に住みたい!」「古民家を買ったけどどう直せばいいのか?」「古民家を買いたいので見てほしい。」等など。
みなさん憧れの古民家に対して切実なお悩みをお持ちです。
ではどうすれば「古民家」に住めるのか?
そのためには何が必要か?
お答えするのはそれぞれの事情によりますが、そもそも「古民家」とはどういうものを言うのでしょう。
寄せられた相談の建物の建設年代から言うと、とても「古民家」とは呼べない建物もあります。
それは第二次大戦後に建てられた家で伝統的な工法ではない建物です。いわゆる「在来工法」の家です。
「在来」は戦後に入ってきたアメリカなどの「外来」(外国)の建物に対して昭和25年の建築基準法制定の折に使われた工法の分類からその名が来ています。
もともと日本では古来伝統的な建物は木と木を組み上げることで建てられていました。それを「伝統構法」といいます。
しかし第二次大戦の焼け跡時代からの復興のために手の込んだ木組よりも簡便な家を多く提供する必要に迫られて底上げのためにつくられた「在来工法」は「復興住宅」です。むかしから日本にあったので「在来」と名付けられましたが伝統構法を簡略化した工法で丈夫な建物ではありません。
当時内務省では「庶民の建物は金物で縛ればよい、本格的な伝統の木組は文化財で実践すればよい」という機運だったそうです。つまり「質より量」が求められた時代の産物です。
なので問い合わせがあれば建物を見に行く前に「戦前か戦後か」をお聞きしています。それは大きな指針になります。
厳密には明治24年の濃尾地震で西欧の構法が入ってくるまでと戦前までの昔ながらの仕事を伝統的な「古民家」と考えています。松井事務所では以上のような「古民家の定義」に沿って改修・再生を実践しております。
大きな違いは構造に対する考え方です。「古民家」には強度で構造を成り立たせるようなことはしません。自然の力学に馴染まないからです。むしろ力をいなす「減衰設計」が有効です。
減衰の考え方は「めり込み」と「摩擦」で地震や風のエネルギーを吸収することです。「貫」や「継手・仕口」という「木組」の加工が必要です。さらに、時代を超えて生きていくには「暗い」「寒い」を取り除く耐震計画と温熱計画が必要です。
「レトロ」な雰囲気と懐かしさだけの古民家再生は、かえって建物の寿命を縮めてしまうと考えられます。
正当な「古民家再生」は木組の原点に還って伝統的な架構から取り掛かるべきでしょう!



2023年06月12日 Mon
長く使えて丈夫であたたかい住まいをつくりたいと努力している松井郁夫です。
今回は家づくりと芸術について考えました。
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「これから建築を志す若い諸君へ!」
私が建築の設計を志して大工棟梁であり建築家の小川行夫師匠の門を叩いた時に渡された青焼きの紙に書いてあった書き出しです。
曰く「建築は総合芸術である」しかるに「設計は心してかかるべし!」という「覚悟」のような檄文が並んでいたことを覚えています。残念ながら事務所に来る多くのスタッフに見せているうちに何処かへ行ってしまいました。
そんなものでうる覚えですが、確か建築は総合芸術であるので「科学の分野」でありながら詩をつくる「文学の世界」が重要であると書かれていた気がします。
建築に携わる者ならばまさに「レオナルト・ダ・ビンチ」のように「あらゆる現象」を総合的に知らなければならないとも書かれていたような…兎に角とても厳しい文章であったことは覚えていますが、詳細が出てきません…。
少なくとも、建築設計はうわついた気持ちでは入れない世界だと気付かされ、身が引き締まった覚えがあります。
オーナーの要望を聞きながら芸術の世界を目指すなんて才能はそう簡単には身につきませんが、その檄文にはそうならねばいけないと書かれていました。「若者は高みを目指して歩み始めよ!」と、「すべてを自然と科学と芸術のために身を削れ!」と。
今思い出すと日々の長い生活の中で「建築設計」に邁進できたのはその檄文を見せられたおかげだったかもしれません。
その文章を探して中村順平の「建築という芸術」や前川國男の「一建築家の信条」を見返してみましたが出てきませんでした。
どなたか檄文に心当たりの方はいませんでしょうか?いまこそ建築を志す人に読んでいただきたいと思うのですが…

2023年06月10日 Sat
「いつか古民家になる」丈夫な暖かな家をつくりたいと考えている松井郁夫です。
今日は「真壁」という建物の作り方について日頃から思うところを書きました。
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「真壁」というのは建物の壁をつくるときにに柱や梁などの「骨組」を見せるつくり方をいいます。建物が建ったあとも骨組みがすべて見えます。室内からも見えるので、力の流れがわかって安心です。
日本の家はむかしから「真壁」でしたが、明治時代に西欧の建築術が導入されて「大壁」という柱や梁などの「骨組」を見せない作り方になり、いまでは主流になってしまいました。
「大壁」は壁の中に木材をくるんでしまう作り方なので、湿度の高い日本では壁内で木材が蒸れたり結露して腐りやすいと言われていたのですが、透湿(湿気を通す)するシートが普及して最近ではあまり事故も起きないようです。しかし施工の手順を間違えると壁の中がカビだらけになります。さらに内装も「大壁」の場合はビニールクロスを貼ることが多いので室内の湿気を逃さず中にいると不快さを感じることがあります。
一方「真壁」は柱も梁も見えて空気に触れているので木材が蒸れたり結露したりしません。柱と柱の間の壁を土や漆喰でつくると素材の持つ吸放湿作用で湿気をコントロールしてくれます。なので室内にいる人は快適に過ごすことが出来ます。
本来「豊かな暮らし」とは利便性の高い設備に頼るよりも、天然の自然素材に包まれて快適に暮らすことだといいます。木や土は自然素材に備わった「吸放湿作用」があり、木綿の肌着を身に着けたような、心地よさを味わえます。自然素材の力で常に体感を心地よく保ちます。人工的な機械や素材はヒトの肌が受け付けないのでしょう。
わたしたちのつくる家はすべてを自然の素材でつくり、住む人の生活に癒やしと心地よさを提供します。

2023年06月10日 Sat
「木組のデザイン」ゼミナールは、今年で20年を迎えます。
3つの講座のうち、「古民家再生講座」は残すところ最終回のみとなりましたが、8月からスタートする「木組講座」「理念・温熱講座」の2講座については、まだお申込みを受付けています。
「木組講座」では、木組の家の作り方について、基本設計から伏図の書き方や模型づくりまでを学ぶことができます。リモート講座ですが、木組の架構を理解しながら軸組模型をつくることで、受講後は実際の家づくりに役立つ、実践力を身につけることができます。
「理論講座」では、第一線で活躍されている建築家の方々に、家づくりの極意を講義していただきます。今年度は、第20期の記念講座として超豪華な建築家のメンバーをお招きしました。
また、「温熱講座」では、パッシブな家づくりについて学び、木組の家でも温熱性能・省エネ性能の向上を目指します。
伝統的な民家をつくってきた大工技術と国土保全につながる木材の循環の仕組みから、省エネルギーにつながる木の家づくりを実践し、みなさんと共に未来へつなげていきたいと思います。
全国の実務者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
お申込みはこちらをクリック ↓


2023年06月09日 Fri

東京都小平市に建つ元は茅葺きの古民家です。小平一帯を開墾したときの開祖の家が残っていました。広い敷地に建つ古民家ですが、現在は住宅地に囲まれています。
昭和年代には、茅葺き屋根を瓦屋根に変えたと言います。古い架構を改修したので小屋裏が混乱していましたが、床下には大きな丸太の足固めが残っていて丈夫な骨組みであることがわかりました。
小屋裏は二重にして断熱材を入れ、ルーバーで隠しました。屋根裏一面のルーバーが美しいインテリアをつくっています。
建物は出桁造りの関東らしい軒廻り形式です。箕甲付きの入り母屋の屋根は、日本の伝統的な架構で昭和の時代を代表する造りです。天井を外して表した梁も立派で美しい架構です。内部の座敷は床の間のある部屋のみを残しあとは板の間にして北側に大きな開口部を開けて明るくしました。玄関を入ると北側まで抜ける窓が気持ちの良い室内を造ります。
さらに石の上においたままの架構で耐震性能を確保し断熱と気密で温熱性能の向上を目指しました。
耐震補強と断熱材を入れるために柱だけを残す骨組みだけの状態にしました。建主さんは間取りの大きな変更を望まなかったので、架構はそのままとして限界耐力設計法により、足固め貫の耐力要素を加えました。スケルトン改修と言います。
温熱性能の向上は床下を密閉して、約38坪の平屋を第三種換気により床置きエアコン一台で空気の流れをコントロールし温めることにしました。
南側に大きなガラス戸を断熱と気密の良い木製窓に交換して、屋根瓦は既存のまま300ミリの断熱材を挿入し、外壁に外断熱を施し焼き杉板で包み込みました。台所は時代が下がっての増築でしたが、システムキッチンとトイレ周りを新しく現代的にしました。
大きな屋根の下の小屋裏はすべて見えるようにルーバーが並び、丸太の梁組が力強い空間を創りました。
古民家の再生でありながら、大きな木製窓の外観がモダンです。耐震補強でワンルームの室内を実現し外断熱と気密で温熱向上と省エネを実現した事例です。
| 所在 | 東京都小平市 |
|---|---|
| 構造規模 | 木造平屋建 |
| 敷地面積 | – |
| 建築面積 | – |
| 延床面積 | 128.07㎡(387.74坪) |
| 建築費 | 約7000万円 |
| 設計監理 | 松井郁夫建築設計事務所 |
| 施工 | キューブワン・ハウジング |
| 竣工 | 2023年3月 |
| 構造材 | 古材 |
| 床板 | 桧 厚15mm |
| 外部仕上 | 屋根:瓦 外壁:焼杉板 |
| 断熱材 |
壁:フェノバボード 25mm 屋根:高性能GW 300mm 床・基礎:スタイロフォーム 50mm |
| 内壁仕上 | 漆喰塗・土壁藁入り |
| 開口部 |
木製オリジナル建具(ペアガラス) 樹脂サッシ(ペアガラス) |
2023年05月26日 Fri
いつか古民家になる、暖かくて快適な家づくりを目指している松井郁夫です。
今回は出版社をつくったいきさつをお話します。
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事務所開設以来、丈夫で快適な木組の家づくりを続けていますが、28年前の「阪神淡路大震災」の衝撃は大きく私の設計の方向を変えました。
日本の伝統的な木組の家を標榜して多くの家を作り続けいていた頃にドカンと大地震が来たのです。それまで比較的自由な間取りの木の家をつくっていた気軽な気持ちがいっぺんに吹き飛びました。40歳のときです。
日本の家は地震に強いと聞いていたにもかかわらず、多くの建物が倒壊し6434人の人が建物の下敷き人ってなくなりました。丈夫な建物をつくらなければいけないと勉強会に出たりして耐震技術を身に着けようと努力しました。
「これからの木造住宅を考える会」を立ち上げて耐震や防災の専門家の話を聞きました。その時に仲間とまとめた本が「木造住宅【私家版】仕様書」です。おかげさまで28年間ロングセラーを続けていますが、版を重ねるごとにページが増えてかなり重厚な本になってしまいました。
そこでエッセンスだけを取り出してつくったのが「初めての人にもできる!木組の家づくり絵本」です。国土交通省の実大実験にも参加しました。2007年のつくばの実験を皮切りに2008年から2011年の5年間です。
伝統構法の家を試験台の上で揺すってそのデータを元に建築基準法に位置づけるということでした。しかしながら、そこでの知見は法規に記載されたものの満足のいく流れではありませんでした。
6年間に得られた知見を元に「古民家への道」を書いて一般の方や建築関係者に知ってもらおうとしましたが、出版社が軒並み出版不況で出せないというのです。
そこで自費出版を考えましたが、それよりも自分で出版社を持つことを選びました。これからも多くの本が出したいからです。それが「ウエルパイン書店」です。
ご存知のようにウエルは井戸パインは松ですから井松書店です。(笑)
おかげさまで4年経ちましたが6冊の本が出版できました。うち2冊は写真集です。全国大工職人を取材したキンドル版もあります。「日本列島・伝統構法の旅」です。
関連の講演会も増えて今のところ売れゆきを伸ばしています。アマゾンでも買えますからどうぞポチしてください。


2023年05月06日 Sat
美しくあたたかい住まいをつくりたいと願っている松井郁夫です。
前回のコラムの続きをお送りします。「設計者と職人の協働」についてです。
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古くてあたらしい問題ですが「設計者」と「職人」はなかなか仲良く協働できない悩みがあります。
古くから日本独自の伝統技術を引き継いできた「職人」の流れと明治時代に入ってきた「西洋建築」の流れにある「設計者」は水と油かもしれません。
「地震」や「台風」などの自然災害に対して日本の伝統的な建築技術は力で抑え込むのではなく自然に逆らわず受け流す考えかたです。一方西洋の考え方は自然を征服するという指向で力で抑え込む考え方です。
自然災害の常襲地域である日本列島で生まれた思想と硬い岩盤を持つヨーロッパ大陸のとの違いでしょうか?
日本の「木組」の技術はヨーロッパの「石組」のような「剛構造」ではなく、力をいなす「柳に風」の指向です。長い歴史の中で未曾有の災害には受け流すほうが良いと判断したのでしょう。
なので日本な大工と西洋の教育を受けた設計者は建物の構造の考え方のところでまずぶつかります。
木組を指向する大工の考え方は木の「めり込み」や「靭性」を生かした「減衰設計」ですが、構造設計者は木を均一な材料として捉え「強度設計」で建物を考えています。これでは意見が合わずに仲良く仕事はできません。
昨日も能登半島で震度6強の地震がありましたが、「強度設計」を指向する構造設計者は、これでまた建物の「強度」を上げる傾向をつよくすると思います。
わたしたち「木の特性」を知る設計者は、予断なく今後の動向に注目したいと思います。

2023年05月03日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 鶴見の古民家再生
「鶴見の古民家再生」3年の歳月をかけて竣工いたしました。
設計契約はコロナ禍の最中でメールでのやりとりで受注しました。
建物は「関東大震災」で被災した後に修復してちょうど100年経過しました。
今回これから100年の命をつなぐために再生工事を行いました。
平屋の建物が古民家と呼べる石場建ての架構で建てられていましたので、再生計画は石場建てのまま「限界耐力計算法」という「超高層ビル」に採用されている「減衰設計」で力をいなす計算方法を採用しました。
「耐震補強」をするためと「温熱性能向上」のために建物を「骨組」にまで裸にして断熱材を充填したり外張りに付加断熱したりして「スケルトン改修」を行いました。
昭和に増築した二階部分は「大壁」のままですが、平屋は柱梁の見える「真壁」の和風です。
最新の設備を装着して「むかしといまをみらいにつなぐ」再生となりました。
わたしたちは「古民家のみらい」を創る仕事を得意にしています。
まずは竣工写真をご覧ください。

2023年04月25日 Tue
美しくて暖かい家をつくりたいと考えている松井郁夫です。
今回は「設計者」と「職人」との協働について考えてみました。
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古くて新しい問題ですが、設計者と職人の協働はなかなかうまくいきません。
「口は出すけれどお金は出さない」という「設計者」は「職人」に嫌われています。
現場で何度も変更して平気な「設計者」はもっと嫌われます。
だいたい「職人仕事」に理解がないように思われています。
それもそのはず「職人言葉」の分からない「設計者」が多いのです。
なぜなら学校では建築設計を習っていても大工職人の仕事は習いません。
明治以来、西洋の建築学の教育を受けてきているので、日本の家づくりに縁が浅いのです。本来は日本建築の源流である「民家」から学んでいなければならないのですが。
文明開化当時の日本は「西欧化」を急ぐあまり海外の技術を取り込む教育に舵を切りました。あまりにも身近で普通であったために、それまでの大工職人の技術を積極的に評価しようとしてこなかったのです。
日本の大学の建築教育では大工に教えを乞うことはしないで外国から建築家をまねいて市庁舎や学校を建てました。
それでも大工職人は古くからの技術を「徒弟」の社会で口伝により最近まで手仕事の技術として生きてきました。いまではその「徒弟制度」もなくなり「プレカット」という機械が木材を刻む時代になりました。
ますます「設計者と職人の協働」の機会は減りました。いずれは「設計者」も「職人」もいなくなるかもしれません。
すでに「2001年宇宙への旅」に描かれたコンピュータの「ハル」が生活を支配する時代が来ているのでしょう。AIが人の質問に答える「チャットGTP」の時代ですから…。
「設計者と職人の協働」によって「豊かな住まいをつくろう!」という話をしようとしていましたが何やらあらぬ方に矛先が向かいました……(汗) 続きは後ほど…

2023年04月22日 Sat
ブログ | プロジェクトレポート | 鶴見の古民家再生
「鶴見の古民家再生」が竣工しました。この度オーナーさんのご厚意で内覧会の運びとなりました。
大正12年の「関東大震災」で倒壊を免れた古民家です。その時に少し壊れた家を直して100年が経ちました。
今回、その古民家にさらに100年の命をつなぐために「限界耐力計算法」による「耐震補強」と「床下エアコン」による「温熱改修」を行いました。
「むかしといまをつなぐ」
「懐かしくてあたたかい」
古民家再生をご覧ください。
2023年4月30日(日)12:00~16:00
お申し込みの方に地図をお送りします。
お申込み先:松井郁夫建築設計事務所
もしくはワークショップ「き」組
MAIL:ok@matsui-ikuo.jp
MAIL:info@kigumi.jp
FAX:03-5996-1370

2023年04月18日 Tue
いま、古民家はブームになっています。
「古民家」は日本の家づくりの原点ですが、私たちはあまりにも身近にあるので、長い間その良さに気づくことなく過ごしてきました。
最近、「民泊法」ができて海外からも日本の古民家に宿泊する人が大勢訪れるようになりました。
むかしからの日本の家の「本来」の自然素材やつくり方がが見直されて「本物」の時代が来たのはいいことですが、古民家をブームで終わらせてはいけません。
そこで、私たちの祖先が住んだ家の優れた点を探り解き明かした「理念書」を描きました。
拙著「古民家への道」(ウエルパイン書店発行)です。
この本は「古民家」と呼ばれる建物の真実を解明するために、その歴史から「定義」を定め、再生事例を掲げて「古民家」の行方を示しています。
5月の連休にお出かけの方は、この本を持って日本のすまいのルーツを訪ねてはいかがでしょう。ぜひ一度手にとってご覧ください。
事例の写真集「古民家のみらい」(ウエルパイン書店発行)と絵本も用意しております。
ご一緒にどうぞ!

2023年04月17日 Mon
「古民家再生」と「木組の家」で美しくあたたかい家づくりを目指している松井郁夫です。
今回は「誰のためにデザインするのか」について考えてみたいと思います。
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4月から「木組のデザインゼミナール」の「古民家講座」が始まりました。
初日の講座で「民衆のためのデザイン」という意味で「コミュニテイデザイン」の話をしたところ、その意義についての質問を受けました。
前々回のコラムの「民藝と民家」の話の中では「用の美」という概念があることをお話ししました。つまり「使うこと=用」が「美しく」あることが大切であり、また「美しい」は「用」の中にあること、だという話です。民藝では美しさのみを追求するのではなく「用の美」は、「民家」も「民具」も「民器」も民衆が使うためにあるものには「用」があり「美」があるというのです。
「コミュニティデザイン」もまさに民衆のためのデザインです。民家やその集積である都市デザインは「特定の人」のためのものではなく「不特定多数」のためのデザインだと思います。
オンリーワンのデザインを否定することはしませんが、住まいの場合、事情によっては住む人が代わったり時代がかわって生活のスタイルが変わることもあります。
それゆえに、多くの人々の要望を聴いたり、意見の相違を乗り越える「合意形成」を図ったり、将来の生活の変化に対応できるように計画すべきで、特殊解ではなく一般解としての「スタンダード」な答えが求められるのだと思います。その意味で「民家」はまさに、長い時間を生きた地域の人達のための「コミュニティデザイン」だと思います。
写真は、塩尻平の古民家「馬場邸」です。雨の少ないこの地域では一般的な大屋根の「本棟づくり」の家です。

2023年04月15日 Sat
城下町彦根の市街地には江戸時代の「足軽屋敷」が残っています。
幕末の大老、井伊直弼の父直中は足軽を大切にした名君で、城下に庭付きの一軒家を足軽屋敷としてたくさん建てました。今も残っている屋敷を見ると最下層の侍の家としては破格の扱いです。
歴史的佇まいを残す芹橋地区には「足軽屋敷」と見張りのための「辻番所」が残っています。
ご実家が足軽屋敷内に残っている友人笠原啓史さん(木組ゼミ受講生)に招かれて「住民参加のまちづくり」の講演をしたのが7年前です。当時「景観からのまちづくり」として課題にしたことが実践されたので、今年はその続きとして実現可能な仕組みを考えるための二度目の講演となりました。
前回のまとめは、①地元の再発見と発掘②近隣関係の復権③地域の価値を共有しビジョンを描く④快適空間の創出⑤空き家利用でした。その後地元ではワークショップを繰り返し実践を重ねてこられました。
今回は「町並みづくりのアイディアや実現の仕組み」についてさらなる実践を目指します。
2023年4月23日(日曜日)15時から 芹橋2丁目「辻番所・旧磯島家」にてみなさんのお越しをお待ちしています。急なお誘いですが、お近くでお時間のある方はどうぞお運びください。
古民家の利活用や歴史的町並み保存に興味のある方は必見です。



2023年04月04日 Tue
今年で20期を迎える「木組ゼミ」は記念講座として、豪華講師陣と「古民家再生講座」を充実させて4月16日より12月17日まで開催します。
木の建築の基礎である「木組講座」や「温熱講座」はもちろん、20年間の蓄積を余すところなく公開いたします!スキルアップを目指している実務者の参加をお待ちしております。


2023年03月23日 Thu
「古民家再生」と「木組の家」づくりで、美しくあたたかい丈夫な住まいづくりを目指している松井郁夫です。
先日、益子の濱田庄司記念参考館で「民家」と「民藝」のつながりについて話をさせていただきました。
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民家が「民藝運動」の中に位置付けられていることは柳宗悦の「民藝宣言」(大正15年)をみれば明らかです。陶芸家の人間国宝・濱田庄司も柳宗悦の考えに賛同して民藝運動に参加しました。
柳は民藝の中に「民家、民具、民器」があると述べています。つまり「民衆の住まい、民衆の道具、民衆の器」のことです。
むかしの職人たちは運送手段のない頃から現場周辺の木や土を使い丈夫な民家をつくりました。幹の曲がった木をたくみに組み上げ「木組の家」を建てたのです。
このような伝統的な素材と技術でつくる「木組の民家」は、まさに日本建築の原点です。
竪穴式住居から現代住居まで続く無名の職人たちの仕事は「真の日本の住まい」と呼ぶにふさわしいと思います。
質実剛健で高価にならないようにつくり、出来るだけ多くの人に美しい民家を提供することは、まさに民藝の理念です。
民藝はファインアート(純粋美術)ではなく民衆のフォークロアでありクラフト(民族工芸)の世界です。そこが「用の美」と言われる所以です。
講演では「古民家再生の理念と事例」についてスライドトークを行い。次の日は、クラウドファンディングで茅屋根を葺き替えた「長屋門」の実測を行いました。古民家の仕組みを観察する「みかた」各間取りや部材の寸法を測る「しらべかた」古民家を再現するつもりで作図する「つくりかた」の実践です。
今回のイベントで古民家再生を実践する人が増えて、日本建築の伝承に新たな展開が生まれれば幸いです。
わたしたちは新築住宅の設計でも「いつか古民家になる」民の家づくりを目指しています。

2023年03月19日 Sun
いつか古民家になる木組の家をつくりたいと望んでいる松井郁夫です。
昨日、濱田庄司益子参考館で古民家再生についてお話しさせていただきました。
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「民家」は「民藝」の中に位置付けられています。
民家、民具、民器のひとつで、民衆の家を言います。名もない職人が建てた骨組みが丈夫で長寿命の住まいです。
「用の美」と言われる民藝の思想は柳宗悦が中心になり、陶芸品家・濱田庄司も参加しました。
民藝では常に美しさを追求するのですが、使える用があることも大切だと言う工芸の考え方です。まさに民家はその代表です。
また工芸は美しさを求めることはもちろん、用がたたねばなりません。工業デザインにつながる理念があります。多くの人に美しく使えるものを提供する考えかたが同じです。
当日は、民家の実測ワークショップを行い参加者の皆さんに、「みかた」と「しらべかた」を体験していただき観察することと作図することが、古民家再生の「つくりかた」につながることを実感していただきました。参加者のみなさんは大変熱心で実測が初めてにも関わらず、時間を超えて作図していました。次回のイベントで実測図を展示しようということになりました。力作ぞろいで展示会が楽しみです。

2023年03月11日 Sat
2011年14時46分。
東日本を襲った地震による大津波は、22000人の命を奪いました。また、津波による原発事故は、深刻な土壌汚染を引き起こし、未だに生まれた土地に帰還出来ない31000人の方たちが避難生活を余儀なくされています。
この地震と津波は、自然が計り知れない猛威を振るうことがわかりました。
わたしたちは、地震に対する備えと原発に頼らない生活をおくり、自然エネルギーを使うことにシフトするべきだと思います。
わたしたちは、建物の耐震化と省エネルギー化に努めることを誓います。
合掌…。
2023年03月10日 Fri
日頃から日本の古い建物の大切さを次世代に伝え「古民家のみらい」を創りたいと思っている
松井郁夫です。
今回は少し苦言になりますが、最近、古民家再生の仕事で感じていることを書きました。
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先日「小平の古民家再生」の内覧会にお越しの方から設計のご相談を受けました。
古民家に住みたいとお考えで、すでにS社に古民家再生設計を依頼されたそうです。
内覧会場でひととおりの説明を終えると、S社で設計された事柄についての「苦情」を並べ立てられ、多くの質問を受けました。
「要望は全て聞いてくれるのか?」「要望通り設計してくれるのか?」「設計されたら変更はできないのか?」などなど…。
松井事務所では「要望は」全てお聞きするということと「たたき台」を提案して案をご一緒に共有し検討しながら進めることをお答えしましたが、S社では要望もしていない設計ができてきて、変更も聞いてもらえないようでした。
「もう古民家再生を諦めようと思います。」と悩まれていました。かなり酷い目にあわれたようで、設計者不信に陥っているようでした。
実は、S社の設計で悩んで、松井事務所に来られる方は一件や二件ではありません。
2021年に「ウッドデザイン賞」を受賞した「八王子の古民家再生」では明らかに古民家の良さを知らない設計で、一般的な建て売り住宅のような平屋を提示していました。施主さんはがっかりして、すっかりS社に不信を持っていました。その後、当社の設計で再生されて、今では大変喜んでおられますが、初対面の時は上目遣いでした。
また、鴨川では最初松井事務所にご相談がありましたが、大手の方がいいというご家族の意見でS社で進めたところ工事が進んで屋根の高さが整合しない事に気づいて、再度ご相談に見えた方もいらっしゃいます。こちらで訂正の提案をして感謝されましたが…大手が安心というのは危険です。「わたしたちの事務所では大手の会社が知らないノウハウとスキルの体得が必要で、古民家が造られた技術である伝統構法を勉強してます」とお話したところ納得していただけました。
普段は同業者のことを悪く言わない松井ですが、さすがに貴重な価値ある古民家が改悪されるのは日本の文化の損失につながるので忍びないと思いコラムに書きました。
本来「古民家」は日本の伝統技術が集約された文化財にも匹敵する重要な建物です。設計者は、明治時代に外来技術が入る前の日本古来の「伝統構法」による大工技術を知る必要があり、戦後の簡便化された「在来工法」との違いを知る必要があります。
また、古民家が壊される原因となっているのは「暗い」「寒い」ですから「暗い」を克服するために開口部を広げて補強する「限界耐力計算」が必要ですし「寒い」を克服するためには「温熱計算」をして断熱を強化する必要があります。
古民家の持つ伝統的な民家の価値を大切に次の世代につなげ「古民家のみらい」と創りたいと思います。

2023年03月08日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 小平の古民家再生
小平の新田開発に尽力された祖先をお持ちの古民家を再生させていただきました。
昭和になって屋根を瓦に変えたのですが、それまで江戸時代の茅葺の外観が残っていました。
100年以上も前の建物をスケルトンにして耐震補強と温熱改修を行い、室内を茶室と、生花のアトリエとギャラリーに改装してさらに100年超の命をつなぎました。
お引渡しの前に写真を撮らせていただきました。プロのカメラマンの写真の前に松井が取った竣工写真を公開します。
丈夫で暖かい「古民家のみらい」を御覧ください。






