プロジェクトレポート
2008年12月27日 Sat
「真っ白はマッサラにつながる」とは元NHKプロディュサー水谷慶一氏の言葉です。白は太陽の光の色ともいいます。
白という色は不思議な魅力を持っています。漆喰の魅力もそんな白色にあるのかもしれません。建物の内部の壁は漆喰塗りと決めていますが、実に堅牢な素材で、古くはエジプトの昔から壁画の下地に使われていました。高松塚古墳の壁も漆喰塗りです。五千年という悠久の時間を超えて現代につながる素材「漆喰」。
実は漆喰の原料である石灰石は、生物の死骸からできた石であって、漆喰は生石灰から消石灰に加工され、塗られた後も空気中の二酸化炭素を吸収して、再び石に戻ることをご存知ですか?
「マッサラ」とは再び蘇るという意味を持っていることも、あながち偶然ではないのかも知れません。スケッチは田川産業の工場の中です。漆喰の粉で真っ白で幻想的です。
一年の終わりに、更なる「はじまり」の気持ちを込めて。良いお年をお迎えください。
2008年 師走
2008年12月13日 Sat
1:50の模型が出来ました。基礎部分は地下収納にもなっている、とても大きな懸造りの平屋です。
スロープをわたして車椅子でも訪れることができるようにしました。
丸太を継いで居間とデッキの梁にしました。水周りを境に、公共に開いた空間と住居空間が分かれています。
書斎には大量の蔵書のための書庫を広くとりました。
懸造りは建物を格調高くします。デッキは講演のできるスペースにもなります。
白山信仰の地である、白鳥町。ここに歴史の研究、文化活動の拠点となる研究所をつくります。
横に長い懸造りの平屋建て。
デッキは大陸文化の流れを意識し、韓国の民家につかわれる「大庁」(テーチョン)をモデルにしています。
江戸時代に繭(まゆ)問屋だった白鳥町「岩尾屋」。この古民家の保存と展示を中心に財団の設立を目指しています。
内部も昔の様子をよく残しています。
生糸生産とそれに従事した当時の人々の暮らしを感じることのできる形で保存、利活用していきます
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2008年12月07日 Sun
玄関からまっすぐに通った縁側を、子供たちが走れるのびのびとした間取りになりました。
居間からも台所からも望める広い庭を囲むように建つ空間は、
家族の生活を、緑豊かな信州の風土とつなぎます。
施工は「田舎暮らしを楽しむ家」「蛍舞う丸子の家」でお世話になった矢島工務店です。
材木は「木組みゼミ」の一期生でもある田中製材さんです。
地元上田市や青木村の材を使い、地産地消を実現しました。
竣工おめでとうございます!
設計 松井郁夫建築設計事務所
施工 矢島工務店
材木 田中製材工業
撮影 奈良岡 忠、松井郁夫建築設計事務所
「上田の家」が完成しました。
できるだけ広々した居住空間にするための十字型の架構がこの家の特徴です。
玄関に入ってまっすぐ走る子供たちの姿が目に浮かびます。居室にはさんさんと太陽の光が差し込みます。
南の庭にはデッキから降りることができます。ロフトは子供たちに大好評でした。
お昼には建主さんが美味しいお弁当を用意してくださいました。矢島工務店と田中製材もいっしょに頂きました。
竣工おめでとうございます!
ブログ | プロジェクトレポート | 上田の家
2008年12月06日 Sat
「これからの伝統構法の家は、どうつくればよいのか?」
Eディフェンス検証された振動台で見た事実は、家づくりに関るものにとって、多くの課題を突きつけられました。
3日から行なわれた、A棟の実験では二度の加震で破損した建物に、神戸波が加えられても倒壊にはいたりませんでした。しかし、損傷の激しいその建物に、最後に加えられたJR鷹取波は厳しい現実でした。
ここまで耐え抜いてきた建物も大黒柱もろとも一階の柱はすべてが折られて、倒壊しました。見ていた関係者は、一同大きなショックを受けたと思います。
私自身は、伝統構法の建物にもっと、がんばってほしかった気持ちと、自然界の厳しさを思い知らされた気持ちが交差しています。
この現実を人知が及ばないと思うのか?さらなる智恵を絞るのか?
伝統構法の家づくりの新しい「はじまり」を感じました。まさに多くの英知の結集のときです。
※木の家ネットのHPに実験した2棟の揺れ方を比較した動画がUPされています。
http://kino-ie.net/kinoienews/?p=22
2008年12月06日 Sat
このたび「上田の家」が竣工し、建主さんのご厚意で
2008年12月7日(日)13:00~16:00に完成内覧会を開催することとなりました。
自然豊かな長野県上田市の広々とした敷地に、木組みの家が建ちました。
少ない材料で広い空間をつくるために、十字型の梁組みに挑戦しました。
子供たちが思い切り走り回ることができる、大らかで、のびのびした平屋建てです。
材木は地元田中製材工業。上田市の木を使い地産地消を実現しました。
施工は矢島工務店、設計は松井事務所です。
ブログ | プロジェクトレポート | 上田の家
2008年12月02日 Tue
さる11月28日に行なわれたEディフェンスの実大公開実験で、伝統構法のB棟 (都市型タイプ)が神戸の地震波を受けても倒れませんでした。
実験では大きな地震波に対して、建物がねじれながら大きく揺れましたが、またもとの姿に戻りました。損傷は、土壁が数箇所落脱し、差し鴨居付近の柱が折れました。足元も浮き上がりましたが、最終的な残留変形は少なかったと思います。
地震時の大きな変形後も、建物が復元したのは、おそらく貫の効果ではないかと思います。通し柱ごとに貫を打ち抜いたことも見逃せません。
このことでいくつかの課題は発見できましたが、伝統構法が「粘り強く」地震に耐えることと「生存空間を確保」できることの証明にはなったと思います。
明日、3日からA棟の実験です。
※木の家ネットのHPに動画がUPされています。
http://kino-ie.net/kinoienews/?p=18
2008年11月27日 Thu
いよいよ伝統構法の建て物が実験されます。
明日は神戸の波が入ります。はたして・・
くわしくは日本住宅・木材技術センターのHPをご参照ください。
http://www.howtec.or.jp/gijyutsu/dento/dento.html
2008年11月26日 Wed
日本の伝統的な木組みの家づくりを詳細に解説した実務書、木造住宅「私家版」仕様書が架構編に仕上げ編と現場編を加えて帰ってきました。
日本の気候風土に根差した伝統構法でつくる長寿命の家づくりを丁寧に解説しています。
これから木組みの家を造りたいと考えている実務者の方にはもちろん、無垢の国産材で、長寿命の家がほしいと考える「住まい手」の方にもお勧めです。
初版発売より13年の時を経て、国土交通省も見直し始めた伝統の木組みをさらにスキルアップした内容でお届けします。
この仕様書に則って造られた【ワークショップ「き」組の家】は、第二回「超長期住宅先導的モデル」として選定を受けたばかりです。「200年住宅ビジョン」に合致する内容を盛り込んだ、究極の木組の家づくり図鑑をどうぞお手元に。
2008年11月21日 Fri
これからの日本の住宅のあり方を先導する【超長期住宅先導的モデル】としてWS「き」組が国土交通省から選定されました。
ワークショップ「き」組の家は、
超長寿命の仕組みをもつ日本の伝統的な木組みの家として
さらに進化します。
■【超長期住宅先導的モデル事業】とは…
日本は今、地球温暖化問題や、ゆとりある社会への転換を求めて、住宅政策の大規模な見直しが図られています。
そこで、高度経済成長期に広まった、つくっては壊すフロー消費型の考え方を一新し、定期的にリフォームをしながら、世代を超えて200年住める家を建てるストック型社会を目指すために【超長期住宅先導的モデル事業】が立ち上げられました。
【200年住宅】と呼ばれるこの事業は、「いいものをつくってきちんと手入れして長く大切に使う」 というストック社会のあり方について広く国民に提示し、技術の進展に資するモデル事業を、国が公募し、建設工事費等の一部を補助するものです。
■ワークショップ「き」組は…
「多様な取組みを行うことと合わせ、伝統的な木組みの技術の継承や山の育成に寄与する取組みも評価した」という講評を得ました。
これまでワークショップ「き」組が取り組んできたことが、高く評価されたと思います。
これからも山と職人と住まい手を結ぶワークショップ「き」組の家を、
よろしくお願いします。
※詳細は後日、特設ページを開設いたしますので、そちらをご覧下さい。
2008年11月14日 Fri
今年も「木組みゼミ」で八郷に行ってきました。八郷は何時行っても日本の「ふるさと」のような懐かしさがあります。いつもよりも深い里山を訪ねると、そこには茅葺民家がいくつも残っていました。写真を撮ったりスケッチを描いたりしていると、民家の中からおばあさんが出てきて「どこから来たの?」「何がいいの?」とたずねられました。しばし地元の話を聞きながら、秋の紅葉が始まった八郷を楽しみました。(画・松井奈穂、郁夫)
2008年11月13日 Thu
もう一度デザインを一から推敲し、磨きをかけました。
屋根を低く抑え、和風建築本来の落ち着きを大切にしたプロポーションになりました。
下屋の屋根を片流れにしました。屋根はその建物の印象を決めます。美しい外観は住み心地もよくします。
天井を張った、家族団欒の居間です。網代(あじろ)張りの駆込み天井になった和室。数寄屋の趣向を凝らしました。
ブログ | プロジェクトレポート | 下連雀の家
2008年11月13日 Thu
朝夕の寒気が身にしみるころとなりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
このたび「善福寺の家・Ⅱ」が竣工し、
2008年12月13日(土)に建主さんのご厚意で完成内覧会を開催することとなりました。
善福寺公園に近い住宅地に空中回廊とパティオのある木組みの家が建ちました。
建主さんはWS「き」組の環境への取り組みに賛同してくださる方で、
天竜の植林ツアーにも参加しました。
構造材は天竜TSドライです。施工はベテランの渡辺棟梁、設計は松井事務所。
小さくてもお洒落で楽しい家になりました。
どうぞ皆さんお誘い合わせの上ご高覧下さい。
大勢の皆様のお越しをお待ちしております。
※見学をご希望の方は事前に事務局までご連絡下さい。詳しい地図をお送りします。
2008年11月11日 Tue
木造住宅の伝統構法による「私家版」仕様書が完全版になって帰ってきました。既刊の発売から10年。日本の伝統構法が国土交通省の見直しを受けている最中の発行です。
今後の伝統構法の仕様書として、
誰もが使える教科書を目指しました。
「架構編」に「仕上げ編」と構造の根拠を「現場監理編」として加えて、「木組みの家」を、さらに多くの全国の皆さんに建てていただける仕様書になりました。乞うご期待!
2008年11月07日 Fri
この度「下連雀の家」が上棟の運びとなり、
建主さんのご厚意で構造見学会を開催することとなりました。
緑豊かな三鷹市の住宅地に木組みの家が建ちます。
下屋の屋根をゆったりと伸ばした、
日本建築の落ち着いた佇まいを大切にした家です。
材木は徳島のTSウッド、施工は横田木材工事部。
ベテラン渡辺棟梁。設計は松井事務所です。
素晴しい檜の大黒柱が下小屋で上棟を待っています。
骨組みの見える構造見学会は、
伝統構法による木組みの醍醐味を味わえるまたとない機会です。
どうぞ皆さんお誘い合わせの上ご高覧下さい。
大勢の皆様のお越しをお待ちしております。
※見学をご希望の方は事前に
松井事務所までご連絡下さい。
詳しい地図をお送りします。
2008年10月21日 Tue
卯之町の目抜き通りには、平入りに町家と妻入りの町家が交互に並んで建っています。狭い通りの屋根が切り取るスカイラインの家並みが変化に富んでリズミカルに見えます。
妻入りの町家は比較的新しい年代の建物で、概ね袖壁が付いています。防火のための袖壁ですが、卯立つになっている壁もあります。重厚な瓦の黒々とした屋根と塗りこめた外壁と相まって、美しい白壁の町並みを造っています。秋空のうろこ雲が似合う町です。(画・文 郁夫)
「卯之町」中ノ町・妻入りの町家
2008年10月16日 Thu
四国の宇和島で行われた全国町並みゼミ「卯之町」大会が終了しました。スケッチは会場となった中ノ町の目抜き通りです。
3日間で全国から約600人の方が集まり、各地の歴史的な町並みの保存について、現状と問題点を熱く語り合いました。
第7分科会では「住まいの再生と町並み」のコーディネーターの役割を無事果たしました。「民家再生の意義は、伝統技術の継承。そのためには職人をサポートすることや、地元の林業の活性化を促す仕組みをつくること。再生・利活用のマネジメントを確立すること。」として、林業から民家再生まで、一体的な流れの中に保存活動を位置づける必要があると思います。
「卯之町」町並みゼミ
2008年10月13日 Mon
建具の詳細を検討するため、原寸図を描きました。居間・食堂の雰囲気を決める大事なポイントです。
ブログ | プロジェクトレポート | 下連雀の家
2008年10月13日 Mon
東京都清瀬市の静かで緑の多い住宅地に、せがい造りの二世帯住宅が建ちます。
せがい部分にはガラスが入り、夜は灯りがもれます。居間・食堂のカウンターには飾棚をつけました。
和室の天井と梁の間は透けています。壁を垂らさずに軽妙にみせる工夫です。
玄関からまっすぐに行くと、植物を置くことのできるサンルームもあります。
玄関から東西に分かれる、親子二世帯の家です。2階は子供たちの部屋があります。
ブログ | プロジェクトレポート | 清瀬の家
2008年10月04日 Sat
秋晴れの季節になりました。いかがお過ごしでしょうか。
このたび「越美文化研究所」が竣工となり、建主さんのご厚意で
10月26日(日)に完成内覧会を開催することになりました。
「越美文化研究所」は元NHKプロデューサーの水谷慶一さんによる財団設立の拠点として岐阜県郡上市白鳥町に建ちました。
日本海側からの大陸文化流入の接点であった奥美濃地方の歴史と文化を掘り起こし、広く地域の人たちと地元の知的財産を共有するための公共施設兼住居です。
建物は16間の長さを持つ、清水の舞台のような懸造りの上に建っています。丸窓のあるデッキは韓国の大庁(テーチョン)がモデルです。
材木は地元白鳥の木を使いました。施工は地元の澤崎建設。迅速な対応と高い施工精度で見事に木組みの家を完成させてくれました。
どうぞ皆さんお誘い合わせの上ご高覧下さい。大勢の皆様のお越しをお待ちしております。
「越美文化研究所」完成内覧会のご案内
2008年09月30日 Tue
セルフビルドを目指している猛者たちが大勢集まりました。講義会場は旧町役場の会議室。朝早くから受講者の行列ができて受付がおおわらわでした。集まった方達の目は真剣!最初は睨みつけられながらの講演も、最後は笑いのうちに終わり、午後はいよいよ刻みの現場作業です。
千倉で伝統構法を実践する高木棟梁の出番です。墨付けまでは既にできていましたが、参加者が持参した工具はさまざま。切れないのこぎり持参で一生懸命の人もいましたが・・。
一日目でありながら、夕方にはそれぞれの持ち場を心得てどんどん進みます。しかしそこは素人の悲しさ、継手や仕口のかみ合わせは、微妙にあわなくて調整が必要。二日目の課題となりました。それでもあまりの熱心さに主催の川名さん(今回の企画の張本人)は大喜び。懇親会では千倉のわるだくみ仲間は、みんな同級生だということもわかりました。
二日目は朝から一気に刻みを終えて、地回りを仮組み。これまた微調整をして、建設地の「おんだら山」へ!海の見える山頂の敷地は、今回荷揚げの都合で変更。基礎担当の川原さんはがっかりでしたが、山の下の広場で気を取り直して建て方開始。みなさん熱心に小屋の組みあがる様子を見学。「木組み」の醍醐味はまさに継手・仕口の加工にあります。かけやで次々と組みあがっていく様子に全員うっとり。参加者の自らが刻んだ材料が組みあがる瞬間は、感激もひとしお。上棟は五色の布と紅白のお餅で祝いました。参加者のみなさんお疲れ様でした。千倉の仲間達も、また来年も続けよう!
千倉・「大工塾」盛況のうち終了