Q&A

これまでに寄せられたお問い合わせをまとめました。掲載のない内容のご質問は、お気軽にお問い合わせください。


木組の家について

Q1. そもそも木組とは何ですか?

木組とは、地震や台風で壊れにくい木と木を組んでつくる家づくりのことです。木材を加工して「継手・仕口」という粘り強い接合部をつくります。加工面の摩擦によって力を逃がす工法です。金物は使いません。硬い金属は柔らかい木材を壊してしまうからです。むかしから「豆腐を針金で吊ってはいけない」といわれ大工は金属の使用をいましめていました。木組は同じ硬さの木を同等に組む技術です。例えば、柱と屋根を支える梁と桁が一体となるような「折置組」という組手を使うことで丈夫な建物になります。柱と柱には「貫」という横材を貫通させて倒壊しにくい粘り強い耐震壁をつくります。床下には「足固め」という太い材が建物が揺れても足元が壊れないように柱同士を強固につなぎます。木組みは日本の気候風土から生まれた強くて自然に逆らわない技術です。

折置き組
折置き組とは

「折置き組」は、屋根の下で柱と梁と桁を一体に組む「仕口」と言われる接合方法です。その場合、柱と梁がつくる「門型のフレーム」が丈夫な架構をつくります。むかしから民家に使われてきた、建物内部をガランドウにつくるための工夫です。柱と梁が一体になるため、窓の位置が拘束されるため使う場所が限られますが、地震に強い大切な構造材です。わたしたちがつくる木組の家では「折置き組」を使い生活の変化にも対応出来る丈夫な家をつくります。

足固め
足固めとは

「足固め」は、石の上に直接柱を建て、柱の足元が開かないようにするために必要な部材です。むかしから足元を丈夫につくるための工夫です。柱を起立させることができる大切な構造材ですが、明治以来忘れられていました。2008年に国土交通省の実施した実大実験によってその重要性が認められましたので、わたしたちがつくる木組の家では「足固め」を採用し地震に強い丈夫な家をつくっています。

貫
貫とは

柱と柱を貫(つらぬ)く構造材です。「貫」の壁は大きな地震で大変形しても粘りづよく建物を維持します。建物が大きく傾いても元に戻ることができる「復元力」が特徴です。わたしたちのつくる「木組の家」は、倒壊しにくく生存空間を確保できるように「貫」を採用します。「貫」は大事な構造部材ですが、明治時代に西洋建築の考え方が導入されて後退しました。しかしながら、当事務所では「貫はやめてはいけない」と考え、すべての家に「貫」を入れています。

Q2. 建築家の建てる建物は、高いイメージがあるのですが?

工事費は価格の見える「コストバランス表」を作成し各種の費用を比較しながら進めます。当事務所でこれまで手掛けた工事費で最も多かった価格の坪単価は100〜1

50万円です。総工事費は一戸建て30坪で4000万円前後です。住宅金融支援機構の統計によれば、東京の一般の戸建ての坪単価は90.3万円だそうです。ただし、最近の物価上昇で実勢は高い家づくりになっていると思います。それでも家づくりのコストは、長い時間使うことを考え総額を使用年数で割って考えることが大切です。松井事務所の木組の家は、何世代も住み継げる寿命の長い家です。「組んでは、外す」という木組の工夫で、将来の移築も可能です。また、コストコントロールもわたしたちの仕事です。住まい手のご要望にお応えすることを第一義に考え、手の届く価格で、質の高い家をつくりたいと考えています。木材を吟味するために、一緒に山に木を買いに出かけることもあります。設計は、間取りや構造をつくるとともに、価格面でも住まい手のみなさんに満足していただけるよう、バランスをとることだと考えております。

Q3. 設計料や工事費は、どのくらいかかりますか?

設計料は、設計の内容や工事金額によって変わります。工事費の料率により2000万円台は工事費で15%が目安で3000万円台は14%で4000万円台は13%というふうにスライドして下がります。工事総額は、ご要望に応じて一概には言えませんが、新築住宅で坪単価100万円前後からと考えてください。ただし、狭小住宅の場合は、小さくなるほど割高で、総額2500万円以上はかかります。工事費には本体工事と設備工事がすべて含まれています。カーテンは含まれませんが、造付家具、厨房機器、衛生設備、電気設備を含んでいます。工事費と設計料の他に、確認申請と中間・完了検査の費用が必要です。構造設計が必要な場合は、別途実費を申し受けます。また省エネ等級など、住宅性能評価書をご希望の場合も申請費が別途となります。

Q4. 木組の家は、地震に強いのでしょうか?

地震国である日本では、昔から地震に強い工夫がされてきました。それが「木組」です。 木の特性である「めり込み」や「摩擦」を活かし、力をいなして、変形しても倒壊せず、繰り返しの揺れにも耐える「復元力」のある「粘り強い」家をつくります。「木組の家」は、2008年の実大実験により、そのねばり強さが実証されています。松井事務所のつくる家は、ご家族の命を守るための「木組の家づくり」を目指しています。

2008年、実大実験によって「木組の家」のねばり強さが実証されました。

Q5. 相談をしたいのですが、どうすればいいのでしょうか?

メールもしくはお電話をいただき、気軽に事務所においでいただくのですが、リモートでのご相談も受け付けております。来ていただければ、 事務所内には木組の実例写真がたくさんあります。お話しは事務所内の ショールームのような展示空間で行います。 相談は無料ですので、まずはメールでお気軽にご連絡ください。また、土地の資料(敷地図)をご準備いただき、設計要望シートに実現したい想いやご家族の生活、ご予算などをかきこんでください。  設計要望シートは、こちらからどうぞダウンロードしてください。敷地が決まっていなくてもどれくらいの建物が建つのか、予算のバランスなども総合的にご提案いたします。 検討中の敷地を見て、どれくらいの建物が可能かをアドバイスすることもお手伝いできます。一案30万円ですが、設計契約していただければ設計料に含まれます。設計要望シートは、こちらからどうぞ。

Q6. マンションリフォームなどの改修も、相談にのっていただけますか?

当事務所はマンションリフォームにも実績があります。コンクリートの建物も無垢の木をふんだんに使い快適な空間をつくることができます。まず建物を実測調査して、温熱環境の向上や省エネルギー対策についてもご提案いたします。実測調査費用は、部屋の大きさにより変わりますのでご相談ください。

マンションリフォームの木質化の事例です。

Q7. 予算も、相談にのっていただけますか?

もちろんです。ご希望の予算を考慮したうえで最大限の提案をさせていただきます。空間のイメージをそのままに、工法や仕上げ素材でコストダウンを図ることも可能です。下記のような工事区分ごとの価格比較表「コストバランス表」を使って納得のゆくまで査定します。

Q8. 正式に依頼する前に、検討のために図面を書いていただくことはできますか?

「設計要望シート」でご要望をお聞きした後に、敷地を見せていただければ、簡単なアイディアスケッチですが一案お書きすることができます。2~3週間ほどお時間をいただき、簡単な図面でプレゼンテーションさせていただきます。費用は有料ですが、そのまま設計契約進めれば設計料に含まれます。ぜひ一案お試しください。ご満足のいただける提案をいたします。

Q9. 自然素材の家に興味があります。自然素材の良さって何ですか?

「無垢の木」や「土」などの自然素材には、温度と湿度を調整する作用があります。木も土も多孔性の素材でできていて熱や湿気を蓄えたり、温湿度を調整する吸放湿作用を持っているのです。そのおかげで自然素材に囲まれた室内は暑さ寒さを感じさせない体感温度の快適さを保つことが出来ます。さらに、断熱性能を上げることで、吹き抜けがあっても温度差のない、解放的な室内をつくることが出来ます。

また自然素材は「本来のもの」ですから「本物」といえます。「豊かさ」とは、本物の自然素材に囲まれた空間で暮らすことで生まれるのではないでしょうか。

Q10. 遠方でも大丈夫ですか。

松井事務所では全国に知り合いの職人がいます。ワークショップ「き」組のメンバーも各地で木組の家をつくり、古民家の再生を行っています。優れた技術を持ち、誠実にその土地の気候・風土・町並に沿った「木組の家」や「古民家再生」などをご提案させて頂きます。

Q11. 木組の家に魅力を感じています。伝統構法で家を建てたいのですが、とても高価な気がするし、いまどき伝統の木組が出来る職人さんはいるのでしょうか?

木の家や伝統的な家は高いという風評は根強く、最初からあきらめている方がほとんどですが、そんなことはありません。山から直接木を買い、設備や間取りをシンプルにし資材も直接買うことで、手の届く価格で、無垢の木組の家を建てることができます。

伝統構法は、どんな職人さんでも出来るとはいえませんが、まだまだ若い人にも木組の仕事のできる職人さんはいます。松井事務所がつくる家の現場では、腕のいい大工職人さんが40代50代を中心に仕事をしています。なかには30代の棟梁もいます。松井が15年間講師を努めた国土交通省の「大工育成塾」で育った職人さんたちです。 大工ばかりでなく建具や左官も伝統的技術をもった職人とも協働しています。

Q12. 最近の家は金物を使うことが主流と聞いています。木組の家の場合も、筋違を止めるにも、柱を止めるにも金物を使うのですか?

金物は木材より固く大きな力が入ると柱や梁を壊してしまうので使いません。建築法規では、金物の替わりに「木の栓」を使ったり、「貫」という横材で筋違の替りをしたりすることも許可されています。金物よりも「貫」などの木と木の組み手のほうが、繰り返しの揺れに粘り強く抵抗することが実験で分かっています。金物は木よりも硬く強いので、木を折ってしまうことがあります。むかしから、大工の口伝では「豆腐を針金で釣ってはいけない」と言われていました。長く使えて再生が可能なのは、金物をできるだけ使わない「木組の家」です。 一般に筋違を使うのは、簡便に強い壁ができるからですが、筋違が建物を突き上げて壊してしまうことが、これまでの地震のたびに見かけられました。筋違のない伝統的な石の上に置いただけの古民家でも「限界耐力計算」という超高層ビルの計算に使う計算方法で安全性を確かめることができます。どうぞお気軽にご相談ください。

Q13. 木の家といっても外部には木を見せられないと聞いています。特に都市部に建てる場合は、やはり木の家らしくない外観になってしまうのでしょうか?

都市部では建築規制によって、木の使用が限られていますが、2000年の建築基準法の改正によって、一定の性能をクリアしていれば外部の板張りも可能となりました。例えば、外壁の性能を防火構造にすることによって、都市部の準防火地域内でも木の外装ができます。また実験によって、木は1分に1ミリ燃えることがわかっています。消防車がくる45分耐えるには、45ミリ木を太くする「燃えしろ設計」を採用すれば木造でも「準耐火建築」とすることができます。作品集の「高円寺の家」は、新防火地区での「燃えしろ設計」で外壁には木を貼っています。まだまだ、木には可能性があると考えています。

Q14. 国産材を使いたいのですが、どこの木を使ったらいいでしょう。

松井事務所では木材の履歴を証明する「トレーサビリティ」を行っています。木を切り倒したときに付けたバーコードが、製材になってもついて回るので一本一本の木のデータが読み取れます。木材の「出荷証明書」には木の植えられた場所と伐採時期と出荷時期が明記されており、「生まれも育ちもわかる木」を使っていることがわかります。木の履歴がわかることで、どの山に植林費用が還るのかがわかり、山の保全に繋がります。

Q15. 松井事務所の考え方をもっと詳しく知りたいのですが、どの書籍がおすすめですか。

松井郁夫執筆の本は、こちらからご覧ください。

 

古民家再生について

Q1. 古民家が長く生きてきた理由はなんですか?

古民家と呼ばれる建物には、今では手にはいらないような太くて丈夫な木が使われています。太い柱やはりを伝統的な構法で組んだ「架構」は、長寿命です。しっかりと大地に根ざしているので、簡単に動かすことが出来ません。特に座敷などの居住部分は変わることのない架構として長く生きてきました。民家の用語では「上屋」と呼びます。また腐りやすい水廻りは、「下屋」として何度か取り替えた痕跡があり、更新されることで長く生きてきました。

八王子の古民家再生「架構」3D

Q2. 古民家とは具体的にどんな民家のことですか?

一般的に、伝統構法によって江戸時代から明治・大正を経て、第二次世界大戦前までにつくられた木の家のことを「古民家」と呼びますが、正確には、明治24年の濃尾地震前の日本の大工による木組の技術で建てられた建物を呼びます。木と木を組むことによって、しなやかで粘り強い接合部を持つ架構技術です。貫、土壁などが用いられ、素材の柔軟性を活かした復元力を持った構造です。組んでは外す移築・再生の仕組みも持っていますので長寿命です。学術的には、明治24年に起きた濃尾地震の折に外国人建築家たちによって洋式の耐震部材が挿入される前の日本の「民家」を言います。古民家には時代や地域、使用目的(農家、町家など)によってさまざまな建築様式があり、岐阜県白川郷の合掌(がっしょう)造りや岩手県などで見られる曲屋(まがりや)など全国に古民家は生き残っています。

Q3. 木組の特長を教えてください。

「木組」とは、「継手」や「仕口」と呼ばれる接合によって木と木を組み合わせる技術のこと。がっしりと木と木を組み上げることで地震や自然災害にしなやかでねばり強い家になるだけでなく、金物で接合部を固定しないため、木の特性である、「めり込み」の強さと「ねばり」強さを発揮して、変形しても元に戻る「復元力」のある建物をつくることができます。何度でも組んだり外したりできるので、「移築・再生」することも可能です。一方、柱や梁を金属ボルトで固定したり、壁に「筋違い」を入れたりと、西洋化された現代の工法を「在来工法」といいます。戦後に簡便化された大工技術で現在ではプレカットでつくることが出来ますが、金物に依存しすぎて木組のしなやかさがないので、強いのですが脆く破損する欠点があります。

Q4. なぜ100年以上前から使われている木材を使うのでしょうか?

200年生きた樹木は、200年間の命があるといい、強度も落ちないといいます。樹木の寿命は建物の寿命なのです。古民家の柱や梁に使われているのは、まさに長く生きた木材です。年輪を重ねた木材は、乾燥や加工にじっくり時間をかけることで寿命の長い強い木材となります。傷んだ部分があっても、木材は容易にメンテナンスすることができます。しかも、古民家で使われている木は、ホルムアルデヒドなどの人体に害をおよぼす化学物質を出すこともありません。古いから不安なのではなく、むしろ古いから安心できるのです。

Q5. 古民家再生に興味があるのですが、まずどうしたらいいですか?

まずは当事務所にお気軽にご相談ください。お目当ての古民家がいくつかある場合は、これまで数多くの古民家調査・耐震エコ改修・再生に関わった設計士が現地調査にご同行し、再生可能かどうかをしっかり判断します(※1)。ご要望があればさらに実測調査を行い、詳細な報告書をお出しすることも可能です(※2)。断熱エコ改修のご提案などもできるのでおすすめです。詳しくは古民家の流れをご覧ください。

※1…調査費用3万円、簡易報告書作成2万円(税抜)と交通費をいただきます
※2…本格的な実測調査は 30万円~(税抜)になります

Q6. 対応エリアを教えてください。

松井郁夫建築設計事務所では、全国の古民家を対象に調査・修復・再生を行っております。施工者も全国に仲間がいます。また、古民家のご紹介も可能ですので、ご相談ください。

Q7. 設計監理料金は一律ですか?

設計監理料は工事金額にスライドします。目安は工事費に応じて12%から15%です。たとえば工事費が2,000万円の場合は15%になります。3,000万円では14%に、4,000万円では13%と工事費に応じてスライドします。

Q8. 設計契約の前に図面をいただくことは可能ですか?

実施の図面は設計契約後の作業となりますが、敷地を見せていただければ「アイディアスケッチ」を一案ご提出することは可能です。その場合は2~3週間ほどお時間をいただき、アイディアスケッチとパースを作成してプレゼンテーションいたします。その後、設計契約に至った場合は費用の発生はありませんが、契約に至らなかった場合のみプレゼンテーション費用がかかります。

Q9. 自然素材として人気の漆喰について、メリットを教えてください。

漆喰は石灰を主成分とした自然素材(天然素材)で、土壁の上に塗ることで高い調温湿効果と吸放湿効果が得られるのが特長です。蓄熱蓄冷性能もあり室内の空気を清浄に保つ効果もあります。また、白い壁は光を拡散し室内を明るくします。

Q10. 「パッシブデザイン」とはどんなデザインを指すのですか?

建物の周りにある自然が持つエネルギー(太陽光、太陽熱、風、水)を活用し、できるだけ電気や灯油などを用いる設備にたよらず、省エネで快適な暮らしを実現するための設計やその工夫です。具体的には、越し屋根には排気と排熱効果があります。さらに無垢木や土壁による、湿度の高いときには湿気を吸収し、低くなれば放出するという調温調湿作用があります。伝統構法による開放的な間取りは、蓄熱、温度差換気による風の通り道をつくりだすことがあり、夏を涼しく過ごすことが出来ます。また、漏気を防止し、断熱性能を上げれば、冬に温かい住まいが出来ます。

Q11. 古民家を再生した家の、デザイン性はどうなのでしょうか?

古民家を再生したからデザインに難がある、ということは決してありません。むしろ現代のライフスタイルに適したスタイリッシュな家につくり変えることができます。古民家再生では、今では採れなくなった良質な木材を活かし、現代生活に合うように再生することです。自然素材に囲まれた豊かな生活を送ることが出来ます。古民家のスタイルは、洋風、和風、モダン、レトロなど、コンセプトによっていろいろなデザインでつくることができます。 詳しくは、作品「古民家再生」をご覧ください。「懐かしい未来」の生活が待っています。

Q12. 古民家は「暗くて寒い」イメージがあります。解決できるのでしょうか?

古民家が壊される理由の多くは「暗い」と「寒い」です。当事務所では、古民家と言えど断熱材を充填して、冬暖かく夏涼しい住まいを実現しています。床下に温風を吹き込み、明かり採りの窓を増やして「明るい」「あたたかい」古民家を実現します。イラストは、拙著「初めての人にもできる!古民家再生絵本」からの出典ですが、「八王子の古民家再生」の仕組みを解説したイラストです。