古民家再生のこだわり
わたしたちは古民家再生のときに大切にしている「こだわり」があります。
1. 専門的な調査
古民家再生は、まず古民家の状態を把握し架構を理解することがスタートとなります。当事務所では、簡易調査と詳細調査両方を行います。簡易調査では、再生可能な古民家かどうか、住まい手の想いに沿った改修ができるかどうかなどを判断します。詳細調査では、架構のチェック、木材に腐朽や蟻害(シロアリ被害)がないかどうかなど。古材の打音診断を行い、末長く使えるかどうかを判断します。その上でアイディアスケッチを提案します。その他、良質な柱、梁、美しい建具や家具などについても調査します。
2. 古民家を読む「野帳」の作成
「野帳」とは簡易診断や実測調査の内容を記録するための図面(平面図・展開図、断面図など)のことで、「フィールドノート」と呼びます。
わたしたちは、現地踏査・調査の時点で見やすく、丁寧に描くように努めています。野帳はイメージをふくらませたり、パースや模型を制作したりするうえで非常に重要だからです。 野帳を描くためには、天井裏に上がったり床下に潜ったりしながら古民家の構造を詳細に把握します。そして、それを誰が見ても理解できるように図面に落とし込みます。この事前の準備作業を丁寧に行い、建物を正確に把握します。正確さを欠くとスケール(縮尺)感などに誤差が生じ、不都合が出ることもあるのです。
野帳を採ることで古民家の空間構成(光の採り方や風の流れ方など)が見えてきます。空間構成を知ることは、古民家再生における大切な要素です。増改築を繰り返したことで本来の機能が損なわれた事例は少なくありません。野帳によって古民家が本来備えている「快適に暮らすための機能」を知ることができるのです。
3. 架構を活かす自由な設計
古民家の特徴は、架構(骨組み)にあります。古民家を読み解くには、架構をしっかりと読み解かなければなりません。設計は、まず、読み解いた架構を最大限に活かし、住まい手のご要望にあわせた間取りを決めていきます。その上で、検討を繰り返して図面をつくりこんでいきます。
4. 快適な暮らしの美しいデザイン
古民家を再生する場合、住まい手の望む快適な暮らしを実現するためにも、新たなデザインが必要となってきます。当事務所のデザインに対する考え方は、次のとおりです。
- 控えめながらその古民家の持つ架構の美しさを引き出せるデザイン
- 細部まで美しく洗煉されたデザイン
- 飽きがこなく古くならないデザイン
- 住まい手の暮らしを快適にするデザイン
わたしたちは、時代が変わっても美しく住み続けられるデザインを大切にしています。
5. 夏涼しく冬あたたかい家
古民家と言うと、夏はいいけれども冬がとにかく寒い、というイメージがありますが、当事務所が行う古民家再生は、断熱改修と温熱向上にしっかりと力を入れていますので、夏涼しく、冬あたたかい暮らしが可能です。
断熱改修には、天然素材の木や土を用い、吸放湿と蓄熱性能を確保し結露のリスクをさける無垢材を使うことを基本としています。
また、床下にエアコンを沈めて温風を吹くことにより、大空間を温めることが出来ます。さらに、自然の持つエネルギー(太陽光、太陽熱、風、水)なども活かしたパッシブ設計を大切にしています。滋賀県の古民家再生「漢方の本陣」では「2019日本エコハウス大賞」「2020ウッドデザイン賞」を受賞し2020年には「登録有形文化財」にも選定されました。事例はこちら