2021年03月10日 Wed
わたしたちが建てる建築工事には、設計図書が必要ですが、その一部として「仕様書」があります。
「仕様書」は建物の質を決めるスペックが書かれていますから、大変大切な図書です。しかし、今日のような「仕様書」は、建築が直営工事で行われていた江戸時代には概念がなかったようです。「仕様書」が必要になった要因は、明治時代になって「契約」の概念がでてきたことと、設計と施工の分離が上げられます。
「請負契約」は、請けたほうが負けるから請負(うけまけ)だなどと冗談交じりに言われますが、契約内容がはっきりしていないとトラブルになったことが明治5年の竹中工務店の「名古屋鎮台訴訟事件」に詳しく書かれているようです。この事件では、立場の弱い地位の低い竹中工務店が悲哀をみました。竹中はこれ以降、最近まで官公庁相手の工事を受けなくなったといいます。「言った言わない」の揉め事は建築業界に限らず騒動のもとになるのは、どの世界にもあることです。
明治以前の仕様書は、「大福帳」記載されている、工事に関わる材料やお金の出入りが書かれた見積もりが、約束事になっていたようです。この約束事が曖昧で、トラブルのもとになったので、契約書によって両者の立場を「対等」にすることと、「仕様書」が管理体制や技術水準を上げることになったようです。このことは、「普請研究」NO11.1985.3の「特集・建築の仕様書」に詳しい記述があります。この「普請帳研究会」のメンバーでもあった故・田中文男棟梁は、常々「お前らみたいな仕事のわからない設計者がでてきたから、仕様書が必要になったんだ!」と言っていました。さすが、江戸時代から続く大工棟梁の言葉です。
おそらく江戸までは、施主も建築に造詣が深く、大工棟梁とのやり取りでスペックが決まっていったと考えられます。そのころの「大福帳」には、材料の出入りばかりでなく、家の大きさと部屋の広さが示してあり、壁や天井の仕上げによって支払い金額がわかるようになっていました。例えば「和室六畳、畳敷き、竿縁天井杉板貼り、床の間一間、床柱磨丸太、土壁。」と書けば確実に六畳の和室が造られたのでしょう。施主とのやり取りは、お互いに共通の理解があれば、「ようがす、ガッテン!」ですんだことでしょう。少ない会話でスペックが決まったよき時代です。
ところが西洋建築の導入後は、大工にも経験がない新しい部材や仕上げがでてきて、細かな「仕様書」が必要となったと考えられます。その頃は、新しい職能としての建築設計者登場し、豊富な西洋建築の知識を持っていて、職人を指導したようです。このあたりの記述は、工作社の室内選書「職人」竹田米吉著(昭和50年)に詳しく書かれています。明治なって入ってきた新職種ペンキ仕事についてのくだりが面白いです。
ところで、私達が仲間と書いた「木造住宅【私家版】仕様書」は初版から26年を迎えます。
阪神大震災がきっかけで、倒壊した木造住宅と犠牲者の多さに心を痛めて、当時知り得るだけの木造の知識を大工職人から聞いて書きました。今では4改定版を重ね、頁数も図版も多い分厚い本になりました。ここで描きたかったのは、大きな地震にも耐える木造住宅の丈夫な造り方と、徒弟制の中でクローズされていた大工職人の「知恵」と「工夫」を「技術」をオープン化することで広く使えるようにすることでした。田中棟梁には「大工の知恵をマニュアル化しやがって!」と叱られましたが、日本の伝統的な大工技術は「みんなのもの」だと確信して公開に踏み切りました。
いまでは、プレカット技術が木造建築の94%を占めるようになり、わずかな手仕事の技術者にしか通用しない【私家版】仕様書になったかもしれませんが、最近は、地球温暖化を阻止するべく、温熱の向上についても追記しています。分厚い本ですが、辞書のように項目で検索して使っていただければ幸いです。
また、【私家版】仕様書をより見やすく「絵本」にした、「初めての人にもできる!木組の家づくり絵本」も出版しております。「初めての人にもできる!古民家再生絵本」もあります。また、現代の木造住宅の成り立ちを日本の伝統建築から論じた「古民家への道」も出版しております。3冊とも「ウエルパイン書店」で検索ください。
最後は拙著の宣伝になってしまい失礼しました。よろしければ、こちらから検索下さい。
ブログ | プロジェクトレポート | 古民家コラム
2021年02月21日 Sun
ワークショップ「き」組で取り組んでまいりました木組の家「江古田の家Ⅱ」が竣工しました。
プロのカメラマンの写真撮影に同行したので、事務所で撮った写真を先行公開します。
プロカメラマンの写真は「き」組のHPから追って公開します。
まずはこちらから、どうぞご覧ください。
作品 | ブログ | 木組みの家 | 価格帯 | プロジェクトレポート | ワークショップ「き」組の建物 | 3,000-4,000万円未満 | 江古田の家Ⅱ
2021年01月17日 Sun
今年で、18期を迎える「木組のデザイン」ゼミナールの受講生を募集します。
今期はすべての講座をZoomにて開催します。
詳しくは、ワークショップ「き」組HPをごらんください。
お申し込みも、勉強会からお願いします。
ブログ | プロジェクトレポート | お知らせ
2021年01月01日 Fri
2021年があけました。
今年は、わたしたち人類にとって、試練の年の幕開けだと思います。
昨年、世界中に広がった「コロナウィルス」の感染は、まだまだ治まっておりません。
むしろ変異を続けて広がっています。
異常気象も予断を許しません。異常な積雪は北国を圧迫しています。
政治の世界も混迷を極めております。
なんとしても、この国の倫理や正義を取り戻さなくてはなりません。
このようなカオスな状態ですが、平静な気持ちを持ちながら、美しい地球を維持するために、今やるべきことは、一刻も早く普通の生活に戻れるように、ひとりひとりができることを実践したいと思います。
本年もよろしくお願いいたします。
2021年元旦 代表取締役 松井郁夫
2020年12月19日 Sat
「ウッドデザイン賞」の授賞式に行ってきました。
ワークショップ「き」組のプロトタイプの「東馬込の家」が「奨励賞」を頂いたので、木材会館の授賞式に参加しました。
応募作品432のうち受賞作品191そのうち「奨励賞」は15で上位賞です。
審査委員長の赤池学さんから表彰状をいただきました。
「国産材を使ってるから良いという時代ではなく、コロナ禍の中で次の時代を生きる可変的な空間づくりが賞に該当する」と言われて嬉しかったです。
ワークショップ「き」組は、国産材はもちろん、山に植林できる費用を還し、職人の手間を惜しまず、適正価格で、世代を超えて自由な空間を持つ家を提供する仕組みです。
今回の「き組の家」の受賞は事務所にとって大きな励みになります。
関係者のみなさん、ありがとうございました!
ブログ | プロジェクトレポート | 東馬込の家 | ワークショップ「き」組の建物
2020年08月23日 Sun
8月20日にライブ配信いたしました「江古田の家Ⅱ」が、無事に上棟いたしました!
これからも時々ご報告させていただきます!
ブログ | プロジェクトレポート | お知らせ | 住まいの相談会・見学会 | 江古田の家Ⅱ
2020年08月21日 Fri
ウエルパイン書店より「初めての人にもできる!…」シリーズ第二弾! 好調編集中!
表紙ができました! これから校正に入ります。いま少しお待ち下さい!
今回は精緻なイラストが特徴です。中身をチラ見せ!
近日発売! ウエルパイン書店発行。3900円+税
ブログ | プロジェクトレポート | 連載・執筆
2020年08月19日 Wed
絵本「初めての人…」シリーズ、第二弾!
執筆原稿を脱稿しました。いま編集中です。
今回は、精密なイラストが特徴です。
「古民家のはじまり」から、「古民家をまちづくりにつなげる」まで、
古民家の地域性や型を紐解き「実測のツボ」を公開し、
温熱向上や美しく魅せるコツを事例のスケッチと共にお届けします!
付録に実測図の野帳をつけて充実の内容です。ウエルパイン書店発売です。乞うご期待!
ブログ | プロジェクトレポート | 連載・執筆
2020年08月07日 Fri
8月20日に「江古田の家Ⅱ」の建て方を行います。
いつもは上棟後に構造見学会を開催するところですが、コロナウイルス感染症拡大の状況を踏まえ、今回はワークショップ「き」組の Facebook から建て方のライブ配信を行います。
建て方当日、8時~17時の間に何度か配信しますので、以下のページからアクセスしてご覧になってください。
Facebook に登録していなくてもご覧いただくことができます。
ワークショップ「き」組 アカウント
https://www.facebook.com/kigumi
木組の架構が立ち上がる様子を見れるまたとない機会ですので、お見逃しなく!
プロジェクトレポート | お知らせ | 江古田の家Ⅱ
2020年07月30日 Thu
昨年竣工いたしました、滋賀県長浜市木之本の「本陣薬局」の展示室の準備が進んでいます。
北国街道に面した町家は、275年前に建てられた由緒ある建物ですが、現代まで「漢方」のお店としての歴史を刻んできました。
江戸時代には参勤交代の侍たちの宿泊所となったことから「漢方の本陣」の由来となりました。
住宅部分は昨年の再生完了で、すでに暮らしておられますが、長浜市の要請で店舗部分を公開することになっています。
長い時代を超えて、蔵の中に眠っていた多くの展示品がいま所狭しと並び始めました。
今年の9月に、織田信長の書状や刀の展示を追えたところで、一般公開となるそうです。
お近くに行かれましたら、どうぞお尋ねください。
ブログ | プロジェクトレポート | 漢方の本陣
選択して下さい
選択して下さい