プロジェクトレポート

2022年11月29日 Tue

「小平の古民家」進捗報告③

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現在工事中の「小平の古民家」の再生現場から進捗状況をご報告します。

この古民家は、江戸時代に小平の新田開発に尽力した郷士のご実家です。

2021年6月より設計をはじめて、2022年2月に実施設計を終え、解体工事が始まりました。

入り母屋造りの茅葺き民家の写真も残っており、当時からかなり裕福な家であったことが伺えます。

昭和になって屋根は瓦に葺きの入母屋造りに替えられ一回り大きくなりました。土間部分が増築された様子が写真と小屋裏の痕跡からもわかりました。

今回の再生は、先祖の建物に新しい用途を与え、重厚な外観となりました。住まいとは別の用途を加えて住み継ぐための大改修です。

まず入り母屋の「式台玄関」は残し、中央の部屋は「板張りの広間」とし、生け花のアトリエ兼展示室とします。畳敷の座敷は茶道のできる「茶席」として炉を切り水屋を付けます。

増築部の土間は、新しい台所と生花の水場を兼ねてオリジナルシンクと調理のできるストーブを据えます。シャワー室にもこだわり建物全体は趣味の家となります。

現場は外壁の断熱や仕上げと小屋裏の断熱材工事を終えて、室内の壁仕上げ工事に入っています。解体中は間取りの分からなかった室内も壁ができてだんだんに様子がわかるようになりました。

仕上げの土壁や漆喰壁、タイル工事はこれからですが、無地の桧の板も張り終えて「床下エアコン」の設置が終われば、完成を待つのみとなりました。

途中経過ですが、むかしの茅葺きの頃の外観と工事現場の写真をお送りします。解体中に大きな足固めの存在がわかりましたが、その補強がポイントです。

 

 

2022年10月14日 Fri

「小平の古民家」進捗報告②

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進めております「小平の古民家」再生現場に小屋裏断熱を施し、天井にルーバーをかけて美しい室内をつくります。屋根裏を二重構造にすることで断熱材の挿入を容易にします。内部足場が取れたので写真を撮りに行ってきました。

ルーバーの桧は吉野材です。桧小節の床板も納品されていました。無地に近い板でした。

薪ストーブの煙突も施工済みです。次はオリジナルキッチンの施工会社との打ち合わせです。

外部出窓の庇は古式に則って「七五三庇」としました。手前に木格子がつく予定です。コロナの影響で進行が遅れていますが、丁寧な仕事の完成が楽しみです。

2022年09月17日 Sat

「小平の古民家」進捗報告①

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進めております「小平の古民家」外部足場が取れました。

木製の框ガラス窓を設置しています。

室内の足場は10月の中頃に取れる予定です。

ルーバーの様子をチラ見せ!

室内の変わりようが楽しみです。ご期待ください。

2022年08月24日 Wed

ひさびさの「お住い見学会」のお誘い

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コロナ禍が続いていますが、ひさびさの「お住い見学会」のお知らせです。

場所は吉祥寺の静かな住宅街で若いご夫婦と愛犬のお住まいです。

「木漏れ日のある家」というテーマを頂き、隣家の日陰になることを避けて、南を開けた建物に「木漏れ日ルーバー」を設置しました。幅も間隔も違うランダムな木製格子です。3Dによる隣家からの日陰検討も行いました。

丈夫な木組の架構はもちろん、エアコン一台で温熱をコントロールして、快適な室内環境を実現しております。

構造材や仕上げに国産材の無垢の木と自然素材の漆喰をふんだんに使った、落ち着いた佇まいを是非ご体験ください。

予約制ですので、当事務所までメールok@matsui-ikuo.jpもしくはFAX03-5996-16-370にてお申し込みください。吉祥寺駅からの地図をお送りいたします。

みなさまのご参加をお待ち申し上げております。

 

 

2022年08月14日 Sun

【再掲】仕事集の紹介

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36年間に松井郁夫が手掛けさせていただいた建物の「写真集」のご紹介です。
「作品集」と呼ばず「仕事集」と呼んでいます。多くの建主さんや職人たちとの協働作業から生まれた建物ですから…。
カラー写真と実際に使った図面とコラムによる解説付きです。
どうぞお手にとってご覧ください。
Amazonで購入できます。

松井郁夫仕事集1
美しい木組の家「いつか古民家になる」
松井郁夫仕事集2
古民家のみらい「成熟した社会を目指して」
オールカラー200頁~240頁¥5000
ウエルパイン書店発行

2022年08月08日 Mon

「浜松の家」検討用白模型

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住まいの構造や間取りを考える時に、最も考えやすいのが白い模型だと思います。

白には余分な情報がないので、架構をつくる壁や光を取り込む窓を、純粋に考えることができます。

白い壁の配列や開口部の連続は、建物の造形に小気味のいいリズムとタクトをつくります。

白模型は、飾りを捨てた無駄のないシンプルでモダンな家づくりには、うってつけの方法だと思います。

 

2022年07月14日 Thu

かやぶきの家27年目の訪問

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阪神大震災の年に、福島県の中通り青木村で「かやぶきの家」を再生しました。

先日27年ぶりに訪ねていきました。茅の維持ができなくなったので、どうしようかという相談です。

オーナーの境野さんご夫婦は福島大学の社会学の元教授の旦那さんと薬剤師の奥さんです。

以前は、郡山市内に住んでいましたが、息子さんの健康のために水のきれいな青木村に古民家を求めました。

当初、自給自足の農業を目指していました。おふたりとも学生運動時代の世代で、お仲間は就職しないで農業に従事した方が多いのです。

譲り受けた古民家は山の際の井戸水の枠小高い斜面にありました。もともと茅葺きだったので、茅のまま直そうと茅葺き職人を探しました。

萱刈も自分たちの仲間で行い4年かけて直しました。東京からもボランティアを募って泊りがけで作業をしました。

当時「健康な住まい賞」をいただき賞金で村長さんはじめ近所の村人達と宴会をした楽しい思い出があります。

10年前には「東北大震災」後に屋根に放射能を被ってしまい、環境省にお願いして全面葺替えをしましたが、いよいよお年を召されたのと今後の費用を考えて、金属屋根を吹くことになりました。

残念ですが、どうせ葺くならきれいな屋根にしょうと、出掛けてきました。

当時の大工棟梁や、復興に尽力してくれた県の職員の方も集まり、懐かしい話に花が咲きました。

翌日、金属葺きの職人さんとの打ち合わせが終わって、今は見積りを待っています。

本当は茅葺きにしたかったのですが…。

屋根が、綺麗になったら来たいと思っています。

2022年06月21日 Tue

谷口吉生の設計について

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ニューヨーク近代美術館MoMAの受賞祝いの席で、開口一番! 英語でジョークを言った「谷口吉生」に驚いた記憶がある。

その洒脱な立ち振舞や、凛と引き締まる空間の理路整然としたシンプルな建築デザインと設計理念に憧れている。

谷口吉郎建築は、すべてが簡潔で、一切の装飾が無いにも関わらず、すべてが必要でムダがない。

最近時間を見ては、谷口吉生建築を巡っている。

先日は広島の清掃工場を、金沢の鈴木大拙館、金沢建築館を、東京ではGSIX、法隆寺宝物館と葛西臨海公園展望レストハウス、水族館を見た。

どの建物も全体に清らかな空気が流れ、空間が透過する透明感がある。その場に立つと時間を超えた永続性すら感じる。

数ある設計者の中でもっとも敬愛する建築家だ。同じいまを生きていることに感謝している。

写真は順不同

 

 

 

2022年06月11日 Sat

「浜松の木組の家」始まります。

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浜松で木組の家が始まります。

建主さんは今から15年くらい前に「木組のデザインゼミナール」に通われた方ですが、今回設計の依頼を受けました。

浜松は、トレーサビリテイを実践している「天竜ドライシステム」のお膝元です。

懇意にしている腕のいい大工も揃っています。

さぁ!みんなで頑張りましょう!

 

2022年06月10日 Fri

追悼「木組のモダニスト・小川行夫」

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「お前なんか、中年モンだ!」「モノになんねぇから、帰れ、帰れ!」

26歳になったばかりの自分がまさか、「中年モン」と言われるとは思いもよらなかったので、酷い!と思って必死で食い下がったことを昨日のことのように覚えています。

「建築家・小川行夫」のことを知る人は少ないと思います。妻の実家を設計した元大工棟梁で建築家協会会員の「建築家」です。

「都市計画」に夢を抱いて藤本昌也先生の「現代計画研究所」に在籍していた頃、一軒でも手仕事の家を設計したかった私が訪ねていった時の話です。大工の世界では、中年モンは18歳からを言うようです! 弟子は従順な若い頃まで、と言う意味のようです。

当時から金物を使わない伝統的な木組の木造住宅を設計する建築家・小川行夫は「知る人ぞ知る」存在だったと思います。

元施主で義父の脚本家「須藤出穂」に無理を言ってもらい、世田谷の若林にあった、木造二階建ての古い裁縫教室だった事務所に通いました。

とは言っても、一年半で辞めさせられました。「生意気だ」というのが理由だったことは、私の独立後に届いた手紙に書いてありました。つまり「破門状」です。

私としては独立したばかりで仕事が面白くてしょうがない頃のことで、なぜ「破門状」が届いたのかわかりませんでしたが、妻は「額に入れて飾っておけば」と気がついていました。

当時、雑誌に取り上げられて調子に乗っていた私が経歴に小川行夫を「元・大工棟梁」と書いたことが逆鱗に触れたのです。小川行夫いわく「オレは建築家だ!」

慌てた私は「僕は大工棟梁を尊敬しています!」と手紙を書いたのですが、後の祭りでした。小川事務所に在籍した経歴は削除するように言われました。

今も一年半の経歴は白紙です…。しかしながら、その一年半は、私にとっては貴重な時間でした。

毎晩、ウイスキーを飲みながら語ってくれた大工言葉の奥の深いこと。「お前は内弟子だから教えてやる」という職人の「符牒」はまるで外国語でしたが、知れば知るほど木造建築がよく見えて理解出来ました。

スポンジが水を吸うように木造建築の「コンコンチキ」を学ぶことが出来て、今では感謝でいっぱいです。

面白いのは、三年に一軒しか建てていなかった人ですが、日本の伝統を知りながら「アメリカのバーン(納屋)をつくるんだ」と言ってバタ臭い家を設計していたことです。「木組のモダニムズ」と呼んでいます。

ある日、「木造建築の構造設計をデキる人はいないのか?」と聞かれて、現代計画時代に都市計画室の若造に建築の手ほどきしてくれた「山辺豊彦」さんを紹介しました。

あまりの個性の強さに山辺さんも最初は戸惑っていたようですが、そのうち仲良くなって、当時では珍しかった木造住宅の構造計算をやってくれるようになりました。

「ヤマベの木構造」誕生の秘話です。

ずっと破門されていたので、私から「小川行夫」を語ることは出来ませんでしたが、今日、亡くなっていたことがわかり、筆を執りました…。

享年89歳。静かな最期だったと聞きます。日本の木造建築の木組の伝統を継承した、数少ない大工棟梁で建築家でモダニストだったと思います…。

小川さん、安らかにお休みください。今夜は妻と小川さんの大好きだったお酒で献杯します…。そちらでも、出穂さんとパイイチやってください…合掌…。

下の写真は、代表作「西荻の家」わたくしの義叔父の家です。現存していませんが、この家を見て木組の世界に魅了されました。小川行夫28歳の時の作品です。

 

2022年05月24日 Tue

「所沢の平屋」始まります。

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お持ちの敷地を分割して緑に囲まれた平屋の生活をご希望されています。

これから造成工事が始まりますが、できるだけ樹木を残して環境の良い住宅地にしたいとお望みです。

南庭の樹を眺めるばかりでなく、北庭で樹木の葉表を楽しむ間取りにできればいいと思っています。

南窓から北窓に視野の抜ける透過性のある木組の家です。

 

 

2022年05月20日 Fri

インスタグラムはじめました。

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いまやFBよりも人口が多いという「インスタグラム」を、遅ればせながら先月よりはじめました。

コツが分からなくて、苦戦しておりますが、どうぞみなさんフォローをお願いします。

2022年05月12日 Thu

「鶴見の古民家再生」白模型

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関東大震災(大正12年)で被災した建物を再生しています。

平屋部分は大正の架構で真壁で伝統構法ですから丈夫です。

二階部分は昭和の増築で金物工法ですから大壁で直します。

現場は少しづつ進んでいますが、白模型を作って再度検討しています。

これから気になるところを訂正しながら現場を進めます。

完成は来年になります。またご報告します。

2022年05月11日 Wed

「小平の古民家」進行報告

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進めています「小平の古民家再生」の現場報告です。

スケルトン改修で架構を現しにして、本来の位置に入っていた構造材が取り除かれていたので、床下の足固めや壁内の貫を入れ直しました。

耐力壁も補強して、断熱材を充填しています。「暗い」「寒い」が古民家の弱点ですが、そこを取り除くことで「明るく」「暖かい」改修が可能です。床下を閉じて断熱補強することで、エアコン一台でこの家の室内全てを暖めることが出来ます。

工事は丁寧に行われているため完成は来年になりますが、仕上げ工事の様子もまたご報告いたします。

入れ直した新しい足固め。これで丈夫な構造ができます。

外壁に断熱材を貼り付けた様子

 

 

2022年05月05日 Thu

出版本のお知らせ

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ゴールデンウイークも後半に差し掛かりましたが、コロナ規制の無いお休みを満喫されていると思います。お出かけ中の方もそうでない方にも、松井郁夫の著作本を再度お知らせいたします。

ウエルパイン書店では、これから家を建てる方や「木の家」や「古民家」にご興味のある方に向けて5冊の本を提供しております。

古民家再生の意義と理論を書いた「古民家への道」

木組の家づくりを豊富なイラストで解説した「初めての人にもできる!木組の家づくり絵本」

古民家の再生を豊富なイラストで解説した「初めての人にもできる!古民家再生絵本」

どちらも技術書ですが、絵本になっていますので、興味のある方にはどなたでも、見て読んで楽しんでいただけます。

写真集「美しい木組の家」ーいつか古民家になりたいーは伝統的な木組でつくる松井事務所の37年間の仕事をまとめました。

「古民家のみらい」-成熟した社会を目指して-は、これまで手掛けてきた古民家の再生事例をまとめました。

どちらも大判の210頁~240頁でオールカラーの見ごたえある仕事集です。

Amazonでも買えます。どうぞお手にとってご覧ください。

2022年04月30日 Sat

Non-built-Project

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長い間設計をしていると、設計はしても建たなかった建物があります。
資金や時間など、いろいろな理由がありますが、建てばよかったのにと思われるプロジェクトには愛着が残ります。
ここにあげる建物は、建っていればきっと喜んでもらえただろうと思うのですが…。

2022年04月16日 Sat

エッセイ「木造住宅の真実」

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「木造住宅」は、いつの間にか「骨組み」を語らなくなりました…。

最近の木の家づくりの傾向は「大壁」と言われる「柱」や「梁」を見せないで造る方法が主流になったのです。

白い壁に白い天井の箱のような家です。骨組みは、壁の中で構造の美しさを見せることもなく封じ込められています。

一方、美しい架構である「柱」も「梁」も見せていた「真壁」と言われるつくり方は、日本の伝統的な建て方でしたが、いまでは過去のものになってしまったのでしょうか?

「木造住宅」の工法的な名称は「軸組工法」です。つまり「軸」となる「柱」や「梁」で骨組みをつくることです。

古来より日本では、「杉」「桧」などの木が多く生えていたために、その直材の長所を使って「軸」どうしを「組む」ことで社寺などの水平垂直の構成美の「木造建築」を造ってきました。それが日本の伝統的な家づくりでもありました。

気候的に湿度の高い日本では、木材を現しで使うことは、素材の乾燥のためにも大切であったと考えられます。木を壁の中に入れてしまうと中で蒸れるからです。

しかしプレカットの登場によって、金物を使う工法が一般的になったために、金物を隠す必要が生まれ「大壁」が主流になってきました。その結果、金物を必要としない「継手・仕口」などの加工をする職人の手仕事が追いやられてしまったのです。

建築もいずれ3Dプリンターによる家造りも可能になるでしょうが、その時の工法は金物もいらない粘土を削ったような建物になるでしょう。

そこまでいかなくても、木材は建築の「みらい」を考えるときに、かけがいのない素晴らしい素材といえます。木材は植えて育てれば無限の資材となり、木は植林しながら利用することで山の環境保全にもつながるのです。

さらに樹木は、空気中の二酸化炭素を酸素に変える「光合成」を繰り返し、地球を守り環境を整え生物の命の要となる植物です。

この優れた素材と共存することが人類にとっても、地球にとっても欠かせない大切なことだと考えます。

最近の設計で想うことです…。

2022年04月15日 Fri

「小平の古民家再生」進行中

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「小平の古民家再生」耐震補強工事を進めています。スケルトン改修ですから、今が骨組みの一番見える状態です。

新しい「足固め」も入り、骨組みがしっかりしてきました。

最近の中地震でもしっかりしていたと、現場の大工が言っております。

外壁周りの断熱工事の仕事がまだ残っています。

昨日は、セコムの配線打ち合わせをしました。見えないように!見えないように!

完成後は床下エアコン一台で暖かい家になります。乞うご期待!

2022年03月04日 Fri

ウクライナに平和を!

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2022年02月19日 Sat

「浜松の木組の家」計画案

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「木組のデザインゼミナール」に通われた浜松の受講生から依頼されました。

浜松には、付き合いのある「天竜の山」TSドライがあります。

「天竜杉」は国内でも固くて丈夫な杉の産地です。長年一緒に「山に植林費用を還す仕組みづくり」に取り組んできました。

毎回「生まれも育ち」もわかる「木材の履歴」を証明できる(トレーサビリティ)で杉・桧を手配していただいています。

今回も山と一緒に仕事ができるといいですね。