プロジェクトレポート
2021年06月18日 Fri
ブログ | プロジェクトレポート | 東馬込の家
「木組の家」の建方の動画をご覧ください。
「東馬込の家」は、フラットな基礎コンクリートの上に、土台と足固めを併用した免震的な床下を造り、
柱と柱の間には貫を入れて、大きく変形しても倒壊しない壁をつくります。
「貫はやめてはいけない構造部材」です。柱にめり込んで、
何度揺らされても建物が元に戻る「復元力」を発揮します。
「木組の家」は、太い梁と柱で命を守ります。
温熱環境の向上を目指して「進化する木組の家」の実現です。
2021年06月18日 Fri
木と木を直角に組むときには「仕口」という接合部をつくります。
接合部が外れないように扇状に作る仕口を「蟻」といます。
昆虫の蟻の頭の形に似ているからでしょうか?
先端を太らせて外れないようにエラをつけるのを「鎌」といいます。
カマキリの首に似ています。
どちらもオスメスの関係です。
2021年06月16日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 小金井の家
木と木を接合するときに木の栓を入れてつなぎます。
棒状の木がめり込んで部材をつなぐのです。
金物を使わない方法です。
金物は強すぎて母材である木を壊すので、
むかしから大工は「豆腐を針金で釣ってはいけない」といいました。
「木は対等に組む」ともいい同じ強さの木を組み、
硬い木には硬い木で組み、柔らかい木には柔らかい木で組むように。
継手や仕口の材も種類を使い分けたようです。
2021年06月16日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 小金井の家
太い柱に梁が掛かるときに、柱が梁からこぼれた分をビンタといいます。
人の顔でいうと耳にかかる髪の毛の部分です。
木と木が組まれていることがよく分かるように、ビンタを少し残すのですが、
ここを壊さないように組むのが一仕事です。
美しいディテールなので、完成後の姿は、また掲載します。
2021年06月16日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 小金井の家
一本の柱に梁と桁の二本の材を組むときに柱のホゾを二重にします。
「重ホゾ」という仕口です。
主に小屋下の地回りで組む「折置組」の時の仕口です。
柱と梁が一本の木で結合するので、丈夫な一体化した門型の架構ができます。
梁の下に必ず柱が建つので、構造に制約が生まれ開口部が自由に開けられませんが、
内部を開放的にできるので、むかしは納屋によく使われました。
松井事務所では室内を開放的にして造り込まない標準仕様にしています。
何世代もの生活の変化に耐えるガランドウの家ができるからです。
常に、「古民家」のように長寿命の家を目指しています。
「いつか古民家になる」家です。
2021年06月16日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 小金井の家
映像は、「追っかけ継ぎ」という継ぎ手です。
梁を長く継ぐときには、継手という加工を施して、木と木を握手するように組みます。
継手の面はよく削って、上から滑り勾配を付けて、滑らせるように繋いで、木と木を一本にします。
長い木が一本では取れないので、一軒の建物に何箇所か継手がでます。
木と木を直角に組む場合は「仕口」といいます。
金物を使わない仕口には、蟻や鎌をという加工をします。
2021年06月16日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 小金井の家
通し貫を入れます。
貫は厚さ30ミリの構造材です。
地震で建物が変形しても崩壊しない粘り強さと復元力があります。
「貫」は明治以来、壁の中で「筋違」や「間柱」と競合して後退しましたが、
地震国日本では、やめてはいけない部材です。
繰り返す地震にも「木のめり込み」で柱同士をつなぎとめます。
見直されても良い、大切な耐震部材です。
2021年06月16日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 小金井の家
最初にヒノキ5寸の通し柱を建てます。
通し柱は基礎まで落とす柱勝ち工法です。
土台に蟻を仕掛けて、輪内で通し柱を落とします。
これで、土台に差すよりも強い柱になります。
通し柱以外でも要になる構造柱は土台に差すよりも基礎に落として柱を勝たせます。
そのほうが丈夫な骨組みができるからです。
写真は細い柱ですが、建物の荷重を受ける要の柱です。
2021年06月14日 Mon
近頃の木造住宅の傾向として、大壁という柱の見えない構法で自由な間取りをつくる家が一般的になってきました。
大壁の家は、架構をすべて隠してしまうので、柱の位置や梁の配置を考えずにつくることができます。
壁を建てることで家の構造を支えますから、壁式構法です。耐力的に必要な壁を残せば、好きなところに窓を開け、金物で補強して、見苦しいところは隠してしまえます。
一方、日本家屋は柱・梁がすべて見える真壁構造の軸組工法と呼ばれています。
柱・梁の軸部だけで空間を造るので開放的な空間が可能です。
湿度の高い日本では壁の中に木を入れると、構造材が蒸れるので避けたのです。
真壁は柱と柱の間に壁が入ることによって、線と面がつくり出す構成が室内外をつくり、家具を置かずに、造り込まない部屋も充分美しい空間が成立します。
ここで柱・梁を見せるためには、軸組と間取りを合致させる必要があります。
合理的で美しい架構の木の家は、柱の配置や梁の組み方を整理したシンプルな軸組が命です。
「木造は軸組だ!」と言い切ったのは、現代棟梁と呼ばれ文化財の改修や「民家型構法」を実践した故・田中文男棟梁です。私も若い頃、薫陶を受けました。
建築史家・伊藤ていじは「民家の構造はコンクリートの建物に引き継がれる」と述べました。「民家の柱や梁は自由に動かすことができない。なぜなら、まわりの構造がそれを許さないから」と、軸組の重要性を指摘しました。
ここまで書くと、民家のように丈夫な家をつくるには、間取りには架構の制約があり、骨組への理解が必須なことがわかります。
大壁のように間仕切りや壁の並べ替えによって幾とおりもプランのできる自由度の高い「パズルゲーム」は出来ないのです。
むしろ間取りの自由度は、普遍性のある丈夫な架構の成立よって生まれるのであって、柱・梁の制約なしで架構を間取りに合わせるパズルのような設計は、耐震性や耐風性に対して危険で、やってはいけないことではないでしょうか。
建築基準法の「目的」には「国民の生命と健康の保護」が第一条にあります。
木造住宅では、命に関わる骨格を最優先に考えることが大切だということです。
2021年06月12日 Sat
ブログ | プロジェクトレポート | 小金井の家
6月15日午前9時より「小金井の家」の建て方をライブ配信します。
一本一本手刻で加工された木組の組み立ての様子をリアルタイムでご覧になれます。
柱や梁の木と木が軋みながら組み上がってゆく様子は圧巻です。
お時間のある方はこちらのHPから当日ご覧ください。
(写真は参考です。「安達屋豆腐店」建方の様子)
2021年06月08日 Tue
ブログ | プロジェクトレポート | 連載・執筆
事務所開設から40年。いろいろなお仕事をいただきました。
その都度、精一杯の力を出し切ってきましたが、ここでしばしまとめてみようと思います。
これまでの「仕事」の積み重ねを「写真集」として編集しています。この本は「仕事集」と呼ぶことにします。
書名は「いつか古民家になる」内容は―「美しい木組の家」と「古民家再生の未来」―
事例は31例。仕事の数だけ工夫があります。
10月1日に発行予定です。乞うご期待!
2021年05月19日 Wed
駒沢大学駅前の「安達屋豆腐店」の足場がはずれました。
商店街の中に木組の店舗建住宅がもうすぐ完成します。
今日は外観のお目見えです。ランダム格子がきれいです。
現在、お店のサイン計画中です。
後2ヶ月で内部も完成します。乞うご期待!
2021年04月28日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | お知らせ
2020ウッドデザイン賞のパンフレットが届きました。
当事務所からは、「東馬込の家」と「漢方の本陣」が掲載されました。
「東馬込の家」は「奨励賞」という上位の賞でした。
新築の建物と古民家再生の両方が賞を頂いたことを大変嬉しく思っています。
これを機会に、ますます精進して、「木組の家」と「古民家再生」に励みたいと思います!
2021年04月17日 Sat
小平で始まるご夫婦のちいさな終の棲家。20坪の二階建「木組の家」。奥様は「松井事務所のクイズがあれば全問正解します」というファン!地鎮祭も終えて、木材が入りました。
吉野の杉、桧の天然乾燥は含水率15%の非常に良い材料です。
無駄なく使いきるように製材所が番付を打ってきてくれます。
2021年04月02日 Fri
木造住宅を設計したことがある人ならば、小屋廻りの桁と梁の組み方の違いがることをご存知だと思います。今回は、「折置組」の丈夫で優れている真実を描きます。
現代住宅では、一般的に「京呂組」が多いでしょう。「折置組」という組み方を採用する方は少ないと思います。なぜならば、「京呂組」の方が桁下の柱の配置を気にせず、自由に小屋梁を掛けられるからです。歴史的に見ても、「折置組」のほうが古く「京呂組」が新しいことになってます。それは「折置組」が梁の上に桁をかけ、桁を支える梁と柱を一本の柱で貫通させて、さらに垂木とも一体化するために、必ず梁下に柱が必要で柱の配置に制約がでるからです。
「折置組」の梁と柱で構成された「門型フレーム」は丈夫で、内部空間を開放するのですが、常に柱と一体化して架構をつくらなければなりません。つまり梁の下に柱を建てるということは、梁下に開口部を設けることができないので、窓のレイアウトが柱の配置で拘束されて、自由なファサードにならないのです。
そのことが嫌われて、梁に桁を掛けずに桁に梁をかけることで柱の拘束から逃れられる「京呂組」が採用されるようになりました。この事によって柱の位置を気にすることなく、窓が開けられるので、間取りの自由度が広がりました。
しかし地震で倒れた家の屋根を見ると、「京呂組」は桁から梁が外れて、屋根を支えることができずに建物を押しつぶして壊してしまいます。(後ほど写真を掲載します。)
「京呂組」は、図8のように、桁の上に乗せた梁では屋根垂木を支えにくいために、仕口の加工が難しく、「兜蟻掛け」でしか組むことができないので、仕口の浅い梁が外れやすいのです。その欠点をカバーするために「羽子板ボルト」が梁を桁に緊結するために使われましたが、屋根がねじれて梁と桁に回転がかかると、「羽子板ボルト」は簡単に外れてしまいます。
一方図7の「折置組」は柱から伸びた二重のホゾが梁と桁と垂木をも貫き、一体の仕口をつくるので「渡り腮」で組んだ強固な「仕口」が、屋根がねじれることに抵抗して、外れることはありません。建方の時にも鳶が梁の上に乗って掛矢を振るっても揺れることがなくて安心だといいます。
「門型フレーム」の連続した架構がつくる家は、古い農家の納屋によく使われています。架構が丈夫で内部を開放的に使えるので物を入れるには適した構造なのです。農家の母屋が建て替えられても、納屋だけが長く残っていることがあります。使い勝手が良く長く持つからでしょう。
「折置組」は小屋組の「仕口」の部位ですが、室内をガランドウにできるので、住まいとしても、間取りが自由になり長く使える丈夫な工夫に溢れた、優れた木組の架構であると言えます。
これからの木造住宅の長寿命化の時代に使える「仕口」としておすすめします。
図;折置組と京呂組の違い
図;丈夫な木組の架構
写真上;折置の梁下に柱
写真二枚目;折置組の梁と桁の一体化
写真三枚目;門型のフレームの連続
写真最後;折置組に取り付く重ホゾの柱
2021年03月26日 Fri
今期で18期を迎える木組ゼミですが、
実際に建てるときのお手伝いもしています。
昨日は10期のOBが設計した木組の家の竣工報告に来てくれました。
設計の途中で何回か添削させていただきましたが、時間が空いてしまい心配していました.
よくまとまった設計と、しっかりした木組に感心しました。
若井さん、わざわざ大阪から来てくれてありがとう!
2021年03月10日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 古民家コラム
わたしたちが建てる建築工事には、設計図書が必要ですが、その一部として「仕様書」があります。
「仕様書」は建物の質を決めるスペックが書かれていますから、大変大切な図書です。しかし、今日のような「仕様書」は、建築が直営工事で行われていた江戸時代には概念がなかったようです。「仕様書」が必要になった要因は、明治時代になって「契約」の概念がでてきたことと、設計と施工の分離が上げられます。
「請負契約」は、請けたほうが負けるから請負(うけまけ)だなどと冗談交じりに言われますが、契約内容がはっきりしていないとトラブルになったことが明治5年の竹中工務店の「名古屋鎮台訴訟事件」に詳しく書かれているようです。この事件では、立場の弱い地位の低い竹中工務店が悲哀をみました。竹中はこれ以降、最近まで官公庁相手の工事を受けなくなったといいます。「言った言わない」の揉め事は建築業界に限らず騒動のもとになるのは、どの世界にもあることです。
明治以前の仕様書は、「大福帳」記載されている、工事に関わる材料やお金の出入りが書かれた見積もりが、約束事になっていたようです。この約束事が曖昧で、トラブルのもとになったので、契約書によって両者の立場を「対等」にすることと、「仕様書」が管理体制や技術水準を上げることになったようです。このことは、「普請研究」NO11.1985.3の「特集・建築の仕様書」に詳しい記述があります。この「普請帳研究会」のメンバーでもあった故・田中文男棟梁は、常々「お前らみたいな仕事のわからない設計者がでてきたから、仕様書が必要になったんだ!」と言っていました。さすが、江戸時代から続く大工棟梁の言葉です。
おそらく江戸までは、施主も建築に造詣が深く、大工棟梁とのやり取りでスペックが決まっていったと考えられます。そのころの「大福帳」には、材料の出入りばかりでなく、家の大きさと部屋の広さが示してあり、壁や天井の仕上げによって支払い金額がわかるようになっていました。例えば「和室六畳、畳敷き、竿縁天井杉板貼り、床の間一間、床柱磨丸太、土壁。」と書けば確実に六畳の和室が造られたのでしょう。施主とのやり取りは、お互いに共通の理解があれば、「ようがす、ガッテン!」ですんだことでしょう。少ない会話でスペックが決まったよき時代です。
ところが西洋建築の導入後は、大工にも経験がない新しい部材や仕上げがでてきて、細かな「仕様書」が必要となったと考えられます。その頃は、新しい職能としての建築設計者登場し、豊富な西洋建築の知識を持っていて、職人を指導したようです。このあたりの記述は、工作社の室内選書「職人」竹田米吉著(昭和50年)に詳しく書かれています。明治なって入ってきた新職種ペンキ仕事についてのくだりが面白いです。
ところで、私達が仲間と書いた「木造住宅【私家版】仕様書」は初版から26年を迎えます。
阪神大震災がきっかけで、倒壊した木造住宅と犠牲者の多さに心を痛めて、当時知り得るだけの木造の知識を大工職人から聞いて書きました。今では4改定版を重ね、頁数も図版も多い分厚い本になりました。ここで描きたかったのは、大きな地震にも耐える木造住宅の丈夫な造り方と、徒弟制の中でクローズされていた大工職人の「知恵」と「工夫」を「技術」をオープン化することで広く使えるようにすることでした。田中棟梁には「大工の知恵をマニュアル化しやがって!」と叱られましたが、日本の伝統的な大工技術は「みんなのもの」だと確信して公開に踏み切りました。
いまでは、プレカット技術が木造建築の94%を占めるようになり、わずかな手仕事の技術者にしか通用しない【私家版】仕様書になったかもしれませんが、最近は、地球温暖化を阻止するべく、温熱の向上についても追記しています。分厚い本ですが、辞書のように項目で検索して使っていただければ幸いです。
また、【私家版】仕様書をより見やすく「絵本」にした、「初めての人にもできる!木組の家づくり絵本」も出版しております。「初めての人にもできる!古民家再生絵本」もあります。また、現代の木造住宅の成り立ちを日本の伝統建築から論じた「古民家への道」も出版しております。3冊とも「ウエルパイン書店」で検索ください。
最後は拙著の宣伝になってしまい失礼しました。よろしければ、こちらから検索下さい。
2021年02月21日 Sun
ブログ | プロジェクトレポート | ワークショップ「き」組の建物 | 江古田の家Ⅱ
ワークショップ「き」組で取り組んでまいりました木組の家「江古田の家Ⅱ」が竣工しました。
プロのカメラマンの写真撮影に同行したので、事務所で撮った写真を先行公開します。
プロカメラマンの写真は「き」組のHPから追って公開します。
まずはこちらから、どうぞご覧ください。
2021年02月10日 Wed
昨年「あんしん解体業者認定協会」という、解体業者の協会の担当者で、面白い方が訪ねてきて、取材を受けました。
その記事にリンクを貼ってほしいという依頼きました。とても丁寧な取材だったので、お時間のある方はご一読ください。
以下のコノイエという紹介サイトに掲載されています。
コノイエ ←ここをクリック
インタビユァーの的確なツッコミに答えたので、松井事務所の理念や木組の家に対する想いが、大変よくまとめられています。(笑)
古民家再生をやってると、解体にも深い関係が生まれますからね。
2021年01月17日 Sun
ブログ | プロジェクトレポート | お知らせ
今年で、18期を迎える「木組のデザイン」ゼミナールの受講生を募集します。
今期はすべての講座をZoomにて開催します。
詳しくは、ワークショップ「き」組HPをごらんください。
お申し込みも、勉強会からお願いします。
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