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2023年03月10日 Fri

コラム「古民家は伝統構法で再生する」

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日頃から日本の古い建物の大切さを次世代に伝え「古民家のみらい」を創りたいと思っている

松井郁夫です。

今回は少し苦言になりますが、最近、古民家再生の仕事で感じていることを書きました。

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先日「小平の古民家再生」の内覧会にお越しの方から設計のご相談を受けました。

古民家に住みたいとお考えで、すでにS社に古民家再生設計を依頼されたそうです。

内覧会場でひととおりの説明を終えると、S社で設計された事柄についての「苦情」を並べ立てられ、多くの質問を受けました。

「要望は全て聞いてくれるのか?」「要望通り設計してくれるのか?」「設計されたら変更はできないのか?」などなど…。

松井事務所では「要望は」全てお聞きするということと「たたき台」を提案して案をご一緒に共有し検討しながら進めることをお答えしましたが、S社では要望もしていない設計ができてきて、変更も聞いてもらえないようでした。

「もう古民家再生を諦めようと思います。」と悩まれていました。かなり酷い目にあわれたようで、設計者不信に陥っているようでした。

実は、S社の設計で悩んで、松井事務所に来られる方は一件や二件ではありません。

2021年に「ウッドデザイン賞」を受賞した「八王子の古民家再生」では明らかに古民家の良さを知らない設計で、一般的な建て売り住宅のような平屋を提示していました。施主さんはがっかりして、すっかりS社に不信を持っていました。その後、当社の設計で再生されて、今では大変喜んでおられますが、初対面の時は上目遣いでした。

八王子の古民家再生

また、鴨川では最初松井事務所にご相談がありましたが、大手の方がいいというご家族の意見でS社で進めたところ工事が進んで屋根の高さが整合しない事に気づいて、再度ご相談に見えた方もいらっしゃいます。こちらで訂正の提案をして感謝されましたが…大手が安心というのは危険です。「わたしたちの事務所では大手の会社が知らないノウハウとスキルの体得が必要で、古民家が造られた技術である伝統構法を勉強してます」とお話したところ納得していただけました。

普段は同業者のことを悪く言わない松井ですが、さすがに貴重な価値ある古民家が改悪されるのは日本の文化の損失につながるので忍びないと思いコラムに書きました。

本来「古民家」は日本の伝統技術が集約された文化財にも匹敵する重要な建物です。設計者は、明治時代に外来技術が入る前の日本古来の「伝統構法」による大工技術を知る必要があり、戦後の簡便化された「在来工法」との違いを知る必要があります。

また、古民家が壊される原因となっているのは「暗い」「寒い」ですから「暗い」を克服するために開口部を広げて補強する「限界耐力計算」が必要ですし「寒い」を克服するためには「温熱計算」をして断熱を強化する必要があります。

古民家の持つ伝統的な民家の価値を大切に次の世代につなげ「古民家のみらい」と創りたいと思います。