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2023年03月19日 Sun

コラム「民藝と民家」①

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いつか古民家になる木組の家をつくりたいと望んでいる松井郁夫です。

昨日、濱田庄司益子参考館で古民家再生についてお話しさせていただきました。

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「民家」は「民藝」の中に位置付けられています。

民家、民具、民器のひとつで、民衆の家を言います。名もない職人が建てた骨組みが丈夫で長寿命の住まいです。

「用の美」と言われる民藝の思想は柳宗悦が中心になり、陶芸品家・濱田庄司も参加しました。

民藝では常に美しさを追求するのですが、使える用があることも大切だと言う工芸の考え方です。まさに民家はその代表です。

また工芸は美しさを求めることはもちろん、用がたたねばなりません。工業デザインにつながる理念があります。多くの人に美しく使えるものを提供する考えかたが同じです。

当日は、民家の実測ワークショップを行い参加者の皆さんに、「みかた」と「しらべかた」を体験していただき観察することと作図することが、古民家再生の「つくりかた」につながることを実感していただきました。参加者のみなさんは大変熱心で実測が初めてにも関わらず、時間を超えて作図していました。次回のイベントで実測図を展示しようということになりました。力作ぞろいで展示会が楽しみです。

 

2023年03月11日 Sat

コラム「3.11を忘れない」

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2011年14時46分。

東日本を襲った地震による大津波は、22000人の命を奪いました。また、津波による原発事故は、深刻な土壌汚染を引き起こし、未だに生まれた土地に帰還出来ない31000人の方たちが避難生活を余儀なくされています。

この地震と津波は、自然が計り知れない猛威を振るうことがわかりました。

わたしたちは、地震に対する備えと原発に頼らない生活をおくり、自然エネルギーを使うことにシフトするべきだと思います。

わたしたちは、建物の耐震化と省エネルギー化に努めることを誓います。

合掌…。

 

2023年03月10日 Fri

コラム「古民家は伝統構法で再生する」

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日頃から日本の古い建物の大切さを次世代に伝え「古民家のみらい」を創りたいと思っている

松井郁夫です。

今回は少し苦言になりますが、最近、古民家再生の仕事で感じていることを書きました。

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先日「小平の古民家再生」の内覧会にお越しの方から設計のご相談を受けました。

古民家に住みたいとお考えで、すでにS社に古民家再生設計を依頼されたそうです。

内覧会場でひととおりの説明を終えると、S社で設計された事柄についての「苦情」を並べ立てられ、多くの質問を受けました。

「要望は全て聞いてくれるのか?」「要望通り設計してくれるのか?」「設計されたら変更はできないのか?」などなど…。

松井事務所では「要望は」全てお聞きするということと「たたき台」を提案して案をご一緒に共有し検討しながら進めることをお答えしましたが、S社では要望もしていない設計ができてきて、変更も聞いてもらえないようでした。

「もう古民家再生を諦めようと思います。」と悩まれていました。かなり酷い目にあわれたようで、設計者不信に陥っているようでした。

実は、S社の設計で悩んで、松井事務所に来られる方は一件や二件ではありません。

2021年に「ウッドデザイン賞」を受賞した「八王子の古民家再生」では明らかに古民家の良さを知らない設計で、一般的な建て売り住宅のような平屋を提示していました。施主さんはがっかりして、すっかりS社に不信を持っていました。その後、当社の設計で再生されて、今では大変喜んでおられますが、初対面の時は上目遣いでした。

八王子の古民家再生

また、鴨川では最初松井事務所にご相談がありましたが、大手の方がいいというご家族の意見でS社で進めたところ工事が進んで屋根の高さが整合しない事に気づいて、再度ご相談に見えた方もいらっしゃいます。こちらで訂正の提案をして感謝されましたが…大手が安心というのは危険です。「わたしたちの事務所では大手の会社が知らないノウハウとスキルの体得が必要で、古民家が造られた技術である伝統構法を勉強してます」とお話したところ納得していただけました。

普段は同業者のことを悪く言わない松井ですが、さすがに貴重な価値ある古民家が改悪されるのは日本の文化の損失につながるので忍びないと思いコラムに書きました。

本来「古民家」は日本の伝統技術が集約された文化財にも匹敵する重要な建物です。設計者は、明治時代に外来技術が入る前の日本古来の「伝統構法」による大工技術を知る必要があり、戦後の簡便化された「在来工法」との違いを知る必要があります。

また、古民家が壊される原因となっているのは「暗い」「寒い」ですから「暗い」を克服するために開口部を広げて補強する「限界耐力計算」が必要ですし「寒い」を克服するためには「温熱計算」をして断熱を強化する必要があります。

古民家の持つ伝統的な民家の価値を大切に次の世代につなげ「古民家のみらい」と創りたいと思います。

 

 

2023年03月08日 Wed

「小平の古民家再生」竣工しました。

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小平の新田開発に尽力された祖先をお持ちの古民家を再生させていただきました。

昭和になって屋根を瓦に変えたのですが、それまで江戸時代の茅葺の外観が残っていました。

100年以上も前の建物をスケルトンにして耐震補強と温熱改修を行い、室内を茶室と、生花のアトリエとギャラリーに改装してさらに100年超の命をつなぎました。

お引渡しの前に写真を撮らせていただきました。プロのカメラマンの写真の前に松井が取った竣工写真を公開します。

丈夫で暖かい「古民家のみらい」を御覧ください。

2023年02月27日 Mon

コラム「変わらない理念」を持つ

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住まいの設計を通して「家族のしあわせ」を実現したいと望んでいる松井郁夫です。

本日は、日頃から考えている「普遍性=変わらない理念」について書きたいと思います。

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短い俳句の中にも「不易と流行」が必要だと説いたのは、俳人・松尾芭蕉です。

「不易」とは「変わらないもの」「流行」とは「流れゆき変わるもの」と解釈されています。

建物にも「流行」があります。時代の流れに沿って変わってゆくものです。

現代の設計者の傾向としては、この流行(はやり)廃(すたり)が最大の関心事のようです。

しかし「流行」を取り込んだとしても、それは技術的なことで、時代を超えて変わらない「理念」が伴うことが必須です。

建築の目的は、デザインする設計者の作品性ではなく、人々が生活し、まなび、遊ぶ場を提供することです。人々の健康や快適性を求め、幸福を実現することだと思います。

さらに環境に対する配慮が必要です。エネルギーの消費や排出量を抑え、CO2の削減を図ることです。エネルギー効率の良い建物を目差し、再生エネルギーを活用し、廃棄物の削減が求められます。

社会や文化に対する取り組みも必要です。人々の共生や格差のない社会の実現や、歴史文化の継承は、要求がなくても取り込む責任があります。

設計者は単なるデザイナーではなく「社会的責任」を負う「理念」を持つべき「仕事」だと思うのです。

写真は、私が敬愛する都市計画家で、世界中の難民問題に取り組み「日本ボラティアセンター」の設立に尽力した「岩崎駿介」さんの著書です。

もういくつか原発事故がおきないと人々は手を結ばないだろうという絵です。地球人としての自覚を問いかけた思想の本です。

現在84歳で自宅と息子さんの家を自力建設しており、FBで毎日精力的なコメントを世界向けて発信しています。

地球規模の「変わらない理念」に毎回感服しております。

2023年02月17日 Fri

内覧会のお知らせ「小平の古民家再生」

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お待たせ致しておりました「小平の古民家再生」の内覧会の日程が決まりました。

オーナーのご厚意により、2023年3月5日(日)10時から16時までの開催となります。

お申し込みは、下記松井事務所までご連絡ください!地図をお送り致します。
MAIL:ok@matsui-ikuo.jp     TEL03-3951-0703      FAX03-5996-1370

 

 

2023年02月16日 Thu

「小平の古民家再生」進捗報告⑦

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「小平の古民家再生」は今月の完成を目指して追い込みに入っております。

間接照明のあかるさの調整や家紋入りの本襖の制作を入念にやっております。

生花の水切り作業をする台所やお茶室になる座敷には土塗りの炉壇も入り畳と炉縁を据えるだけになっております。水屋も竹釘の位置を決めました。

台所や洗面トイレは奥様こだわりの黒を基調にしたインテリアになっています。古民家の中にモダンを感じる仕上がりとなりました。

一般公開の内覧会をさせていただくことになっておりますので、3月にはいって日程が決まりましたらご案内致します。

耐震補強と温熱向上を施した「懐かしい古民家のみらい」をご堪能ください。

梅の花が咲き始めました。

本塗りの炉壇が入りました。

照明設計をしてくれたヤマギワの遠藤くん。8通りのシーン設定ができるスポットライトの調整中。生花を照らします。

黒を基調にした台所と洗面所。

床は吉野中央木材から直送された「吉野桧」です。

 

2023年02月15日 Wed

コラム「トルコ大震災」の被害について

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6日トルコ南部で発生した大地震はマグネチュード7.8に達し発生から一週間経ち、亡くなった人は3万9000人を超えています。地震の震度は阪神大震災の22倍と聞いて驚きました。

現地では必死の救出作業が続けられて、尊い命が救われています。凍てつく空の下に投げ出された人たちには一刻も早い救援が必要です。そんな事態の中、倒壊した建物のほとんどは違反建築であったという衝撃のニュースが入ってきました。

トルコでは日本と同じ耐震基準があるものの、安全基準を満たさなくても一定の金額を払うと使用を認められる制度があると来てびっくりしました。

「恩赦」と言われる制度が存在すること自体が犯罪ではないかと思います。エルドアン大統領は違反者を逮捕して回っているそうですが、そんなことより救出や避難所の建設が先だと思います。

遠いトルコの国で起きた地震ですが、日本も他人事ではありません。28年前の阪神大震災以降、能登、熊本、東日本の地震は予想を超える大きな災害を生みました。

地震に備えるためには、まず建物の耐震性を高めることがわたしたち建築関係者には求められます。

阪神大震災を教訓に、実務者のために『木造住宅【私家版】仕様書』を執筆し、「地震に強い家づくり」のための「木組の家づくり」を進めてきた松井事務所ですが、さらに気を引き締めて実務の設計に当たりたいと思います。

「倒壊しにくい貼り強い木組」は地震国日本で生まれた命を守る仕組みです。

トルコ・ハタイの被災地の様子(2023年2月8日撮影)。(c)DHA (Demiroren News Agency) / AFP

 

 

2023年02月12日 Sun

コラム「農村都市構想」

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わたしたちの暮らしは「空間」によって決まると思います。

豊かな空間に暮らすかどうかによって、幸福度も変わる気がします。

今回は都市空間の「農」化について書きました。

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19世紀の産業革命後のイギリスでは、都市化による生活空間の荒廃を嘆いたハワードによって「田園都市構想」が提唱されたことがあります。

日本でも住宅公団による郊外の住宅団地計画は、田園都市構想の影響を受けていたといえます。

最近では、気候変動の危機的状況から都市生活の価値観も変わって「農村都市構想」ということが言われ、都市に「農」を持ち込む「都市型農園」が提唱されています。

ギャラリー「間」では「How is Life?」という展示会が開催されています。

サブタイトルはー地球と生きるためのデザインーとあります。

この展示では、現在の暮らしによって、これ以上環境破壊を進めないために負荷を低減する行動に切り替え、「成長なき繁栄」も検討すべきだと訴えています。

建築的営為が人々の暮らしに奉仕するならば、生産ー消費ー廃棄の反復から抜け出さなくてはいけないということです。

それには建物を構法から素材、暮らしまでを自然のままを受け入れることを提案しています。建築展というより民俗学的な展示ですが、空間の視点を超えた共感があります。

2022年10月21日から2023年3月19日までの長い展示です。お時間のある方は是非!

https://jp.toto.com/gallerma/

「まちを変える都市型農村」という本もお薦めです。

2023年02月11日 Sat

コラム:参加のデザイン「ワークショップ」②

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快適で住みよい空間をつくることは住まい手の「しあわせ」につながると思います。

意見の違いを乗り越えて「しあわせ」の目標に向かってみんなで作業する場を「ワークショップ」といいます。

一時期、日本全国を席巻した「住民参加の手法」です。いまでも多くの自治体や設計者が採用しています。

松井事務所では、「まちづくり」ばかりでなく「木組の家づくり」の仲間との「協働の場」として「ワークショップき組」を実践しています。

今回は、住まい手と職人と設計者の協働の場「ワークショップき組」について解説します。

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松井事務所が、「ワークショップ」で家づくりを進めようと考えたのは20年前になります。

1995年の阪神大震災のあと、ものづくりの職人の力は大きいと感じていたので、職人との協働は実践していましたが、2000年に「近くの山の木で家をつくる運動」に参加して、職人の手仕事と山の保全つながりが一気に見えたのです。

荒れていた日本の山を救い、伝統的な日本の職人技を駆使して、住まい手の「しあわせの家づくり」を実現したいと思ったのです。

当時、海外に頼っていた木材をやめて、近くの山の木を使うことで、その願いは解決すると確信したのが「ワークショップき組」の結成につながりました。

長い時間をかけて育てた山の木を大切に使い、腕に自信のある大工に技術を振るってもらう。

伐った木は、植林をして山を守り、次の世代が建て替えるまで長寿命で丈夫な家を一般の人でも手に入れられる価格でつくる「山と職人と住まい手をつなぐ」仕組みです。

山の木は「トレーサビリティ」という生産履歴がついた「生まれも育ちもわかる木」です。

職人は「木組」という日本古来の伝統的な大工技術を実践する人たちです。

「プレカット」という工場加工の家が大勢を占める木造住宅業界の中、「手仕事」をいとわない家づくりの集団をつくる必要があったのです。

「手仕事」の職人と組める設計者の育成もはじめました。「木を知り」「職人言葉のわかる」設計者をつくることです。

それが今年で20期を迎える「木組のデザインゼミナール」です。20年間で240人の木組のわかる受講生を世に送ってきました。

いまでは「木組ゼミ」を修了した全国のメンバーが「ワークショップき組」を構成しています。

「第20期木組のデザインゼミナール」は4月16日から12月16日まで、「古民家講座」「木組講座」「理念講座」「温熱講座」をZoomで行います。20年を記念して豪華な講師陣を揃えました。木造住宅の設計のスキルアップを目差している方はぜひご参加ください。

最後は広告になってしまいました…。

広告「住む」掲載

 

2023年02月08日 Wed

コラム:参加のデザイン「ワークショップ」①

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快適で住みよい空間をつくることは、住まい手の「しあわせ」をつくることにつながると考えています。

住まいづくりは家族のしあわせをつくることですし、まちづくりは心地よい地域をつくることだと思います。

わたしたちの目指す「しあわせ」な空間づくりも多くの人の参加によってデザインできると考えています。

そのためには「オープンマインド」が有効だと思います。本日は参加のデザイン「ワークショップ」について書きました。

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「ワークショップ」という「合意形成の技術」をご存知でしょうか?

ひと頃、まちづくりの現場でよく使われた「手法」が「住民参加のワークショップ」です。

意見が違う様々な人たちの想いをまとめるためには、お互いの意見を集約するための工夫が必要です。

肌の色も、目の色も習慣も違う別々の人種を乗り越えて「合意形成」をはかるためにアメリカで生まれた技術だといいます。

出し合った意見を「カード」に書いて「KJ法」で整理したり、相手の立場に立って意見を述べる「ディベート」を通して違いを知ったり、考えを共有したりして様々なゲームを駆使して問題の解決の方向性を探ります。

この手法を使えば、現在の社会が抱えている大きな問題も、果敢に取り組むことが出来ます。

地球環境の問題も、近隣の問題も、人間関係も解決できるかもしれません。

それには心を開いて開放的で隠し事のない「オープンマインド」でいなければなりません。

すべての気持ちを開放して、心置きなく話せる環境を作ることが大切です。そんな場をつくるための講習や本もあります。

実はいま各地で起きて問題になっている「再開発」も最初からこの「ワークショップ」を取り入れて、意見の集約を図れば、意見の衝突や困難も避けられたのではないかと思うのです。

  

 

 

 

2023年02月06日 Mon

古民家講演と実測のお知らせ in益子・濱田庄司記念参考館

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古民家は生きています。

その丈夫で長寿命の架構と自然素材でつくられた豊かな空間を追体験できる企画です。

2日間の連続講座ですが、古民家に興味のある方は奮ってご参加ください。専門家はもちろん、一般の方も大歓迎します!

貴重な財産である古民家を活かして「みらい」につなぎましょう!

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古民家の再生スライドトークと長屋門の実測ワークショップのお知らせです。

3月18日(土)と19日(日)に日本の民家の成り立ちから再生までの講演会と実測調査の実習を行います。

場所は益子の「濱田庄司記念益子参考館」です。クラウドファンデイングで長屋門の茅屋根の吹き替えを達成できた記念の企画です。

以前にもお知らせいたしましたが、詳しいチラシが届きましたので、再度お知らせいたします。

18日は午後13時半から16時まで「日本の民家の歴史 縄文から現代まで」のスライドトーク

19日は午前10時から16時まで「古民家を読むー茅葺き長屋門」の実測ワークショップで実際に長屋門を測ります。

日本の家の原点は古民家にあると思います。ここで体験したことは、かならずこれからの新しい設計や暮らしに活かされると思います。

 

 

 

 

2023年02月05日 Sun

「小平の古民家再生」進捗報告⑥

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古民家は生きています。

むかしからの民家をつくった大工技術は、日本が世界に誇る伝統構法です。

「小平の古民家」は、江戸時代にこの地域で新田開発を行った開祖の方のお宅です。

茅葺きから瓦葺きになり長い時間を刻みましたがこの度、生花のギャラリーと茶室と事務所を併合した別宅として生まれ変わります。

もう少しで完成です。

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今月の完成を目指して、現場では最後の追い込みに入っています。

先日は、梁の上の間接照明の明るさをチエックするために仮に通電を行い点検しました。

天井の明るさや、照度にムラがないかを確認し明るすぎるところにはフィルターを掛けて優しい明かりが均等になるよう調整しております。

照明計画は、ヤマギワ照明の後輩に依頼しました。細かなところまで神経の行き届いた計画です。

耐震補強はもちろん、温熱計画も実施して完成が待ち遠しい古民家です。

2023年02月03日 Fri

コラム「成熟した社会を目指して」

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わたくしの生まれ育った故郷が、とても美しい城下町で住み良かったために、若い頃は環境デザインを勉強して「都市計画」に進みました。

「まちづくり」の目的である住みやすい町をめざしていたのですが、その頃は都市開発が主流で「開発」が計画の全てと知って驚き、古い町並みの「保存運動」に身を投じました。そこから建築に進み、そこで学んだことを実践しています。

今回は、古い町に住む住民の方から学んだ「成熟した社会をめざす」ことについて書きました。

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「町並み保存運動」に没頭していた20代から今日まで、全国の商店主の旦那さんや地元の学校の先生やお住まいの主婦の方まで、多くの市民の方たちに教えていただいた、たくさんの言葉があります。

みなさん、故郷の町を愛している方たちで、自分たちの住んでいる歴史的な町並みを、都市開発で壊してはいけないと立ち上がった人たちばかりです。

共通するのは、歴史的な美しい古民家を守ること、御成小学校を守ること、小樽運河を守ること、角館の山を守ること、想いは様々でしたが、自分たちの地元を誇りに思っていて、子供や孫に、生まれ育ったルーツを残すことに熱心でした。

保存運動のメンバーの中には、出版社の編集者、大学の研究者や都市計画コンサルタントもいましたが、そんな専門家たちの議論の中でも町の住民である当事者の言葉には、圧倒的な力がありました。

開発を止めて、保存運動を広げるためにどんどん学習して専門家以上に能弁になってゆく市民の一人にある時、新聞記者が聞きました「みなさんが古い町並みを残す目的は何ですか?」と。

絞り染めの問屋が並ぶ町並みの残る愛知県有松の主婦が答えます。

「成熟した社会を目指しているのです。」

意味は、健全な社会には古民家のような、お年寄りもいれば子供もいて、成熟した文化を醸し出しているということでしょう。

50年近い町並み保存運動の中で最も記憶に残った一言です。どんな学者や研究者よりも重い言葉です。

「知恵は、住民にあり!」社会的な実体験から生まれた言葉です。これで自分の道も決まったなと思った瞬間でした。

いま、町並み保存運動から「まちづくり」を学び、古い民家から「木組」を学び、「懐かしいみらい」に向けて実践している自分がいます。

伊勢河崎の町並み(スケッチ・松井郁夫)

2023年01月30日 Mon

「温熱計測器による測定値の可視化」

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松井事務所では、日頃から「木組の家」や「古民家再生」の耐震性、温熱性の向上に力を入れています。今回は「室内の温熱環境の向上」について測定器を使って見える化していることについて書きました。

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松井事務所では、新築の「木組の家」を「いつか古民家になる」ことを目標につくり続けています。それには耐震性が必須ですが、室内の温熱性能についても気配りしています。

二年前に竣工した「小金井の家」では先日、測定器を屋外と屋内に置かせていただき、リアルタイムで測定値を見える化しました。

随時スマートフォンから、建主さんにも見えるように設定しています。

「木組の家」といえども、断熱性能と気密性能を向上させることで、外気温1℃の時に「無暖房」でも屋内温度は一階17℃、二階18℃になります。

これからのエネルギー消費量の削減や地球温暖化の抑止につながる試みです。

松井事務所では「断熱気密」は「設備仕様」の一貫としてすべての建物に実践しています。

  

 

2023年01月28日 Sat

お住いの様子を撮影させていただきました

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「小金井の木組の家」は2年前に竣工した、延坪で20坪の小さな木組の家です。

松井事務所のことなら何でも知っているという大ファンの奥様ご夫婦が住んでいます。

昨日は、お住まいの様子を動画で撮影させていただき、取材もさせていただきました。

シンプルに整理された木組みの家に、センスよく綺麗にお住まいで、とても良い映像が取れました。

その様子は、近いうちにHPにアップさせていただきます。

あらためて、設計した木組の家の良さを実感できた一日でした。ちょっと、自画自賛…(笑)

最初からお持ちだった照明器具(アルテック)と丸テーブル(オーローズ)が木組の家によく似合います。

奥様は、とてもセンスのいい版画家です。二階吹き抜けに面した作業場の様子を撮影させていただきました。

寝室はロフト付きの和室です。

二年目の夕景。木の色がまだまだ新鮮です。

2023年01月25日 Wed

コラム「価格上昇と木組の家」

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いつか古民家になる木組の家をつくりたいと願っている松井郁夫です。

今回は最近の工事価格の上昇について、松井事務所が考えている木組の家の取り組みについて書きました。

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今年も早くも一ヶ月が過ぎようとしています。

世間ではコロナも戦争も先の見えない様子で、明るい話題がほしいところです。

建築の現場も工事価格の上昇でみんな苦しんでいます。現在見積もりを控えている木組の家を抱える松井事務所もできるだけ手の届く価格で良質な家を届けたいと頑張っていますが、さらに努力を迫られています。

木組の家の良さを残しながら、国産材の無垢の木と手仕事を生かすために無駄をなくし、豊かさをなくさないよう徹底した見直しを検討しています。

具体的には、架構の材のメンバーと部材数を支障のないギリギリまで整理し、広い面積の屋根や壁を効率よく配置してミニマムにすることです。ミニマムデザインは、モダニズムの究極の形なので、設計者としては充分工夫する価値があります。

まずは、木組のスタンダードであるプロトタイプを改良したいと思います。

これから始まる木組の家の価格の異次元の挑戦にご期待ください。

 

 

2023年01月19日 Thu

第20期記念「木組のデザインゼミナール」受講生募集

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木の家づくりを基礎から学ぶ「木組のデザインゼミナール」が20周年を迎えました。

発足当時から木造住宅の基本である、架構を丈夫につくることを目差してきました。これまでに約240人の修了生を世に送り、日本の家づくりの伝統である「木組」の技術を伝えてきました。

「軸組工法」と呼ばれる木の家の構造を理解することは、家づくりには必須です。

本講座では、長い時間を生きた「古民家」から木の家の構造である「木組」を学びます。

「木組」は金物に頼らない粘り強くて倒壊しにくい架構です。その習得には、架構の模型づくりの演習が効果的で、木構造の理解を深めます。

無垢の木や土壁などの自然素材に包まれた暮らしから「豊かさ」や「美しさ」を実感できる家づくりを習得します。

さらに、CO2排出を抑える温熱向上による「あたたかい」家造りを学びます。「日本の木造住宅づくり」は、ここから始まります。

今期は20期の記念講座ですので、受講生のスキル向上のために「古民家講座」と「木組講座」に「理念・温熱講座」加えて、例年になく豪華な講師陣で充実した講座をお送りします。みなさんのご参加をお待ち申し上げております。

「木組のデザインゼミナール」事務局:松井郁夫

2023年01月17日 Tue

コラム「阪神大震災を忘れない」

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28年前の1995年1月17日5時46分52秒、マグネチュード7.3の地震が兵庫県南部地域で発生し、6434人の命が失われました。内8割である約5000人が建物や家具の下敷きになって亡くなりました。阪神淡路大震災です…。横揺れの20センチに加えて縦に10センチの突き上げるような地震だったのです。
 
当時、わたしは40歳で、それまでデザイン重視の住宅設計を続けていてマスコミにもでていましたが、この日を境に設計の考え方が大きく変わりました。
 
「人の命を守る木造住宅は造れないのか?」デザイン重視から構造重視への転換です。
 
そこで、構造に詳しい学者や研究者さんに「丈夫な木造住宅の作り方」を聞いて周りました。その時にうかがった多くの方は「金物」で締め付けることで強くなると答えてくれました。木造住宅も、この地震を契機に金物が主流になりました。しかし、むかしから大工たちが「日本の家は地震に強いんだ」と言っていたことが気になりました。震災後の神戸では、大きく傾いても倒れていない伝統的な木造住宅を数多く見ていたからです。
 
その後、元東大工学部教授で構法の専門であった故・内田祥哉先生から、むかしから「豆腐を針金で釣ってはいけない」という大工たちの戒めがあることを知りました。つまり、木という母材は金物に比べると柔らかく、強い力がかかると硬い金物が木材を壊してしまうというのです。
 
そこで、日本古来からの力をいなす「減衰設計」の「木組」に着目し、当時仲の良かった友人と大工さんの知恵を集めて仕様書を作ろうと集まりました。大工さんの父親と弟を持つ小林一元さんとデータの収集に長けた研究者のような宮越嘉彦さんです。
 
「木造住宅【私家版】仕様書」は、1955年から執筆が始まりました。雑誌「建築知識」に毎月、問題提起し、職人や設計者の知恵を集める「誌上ワークショップ」を試みたのです。成果は3年後の1998年に単行本にまとめられて、いまでは重版4回をかさねるロングセラーです。
 
その本を教科書に「木組のデザインゼミナール」を20年継続しています。おかげさまで、毎年全国から受講生が集まり「大工の知恵」を設計に活かす「技術」や「技能」を学んで頂いています。すでに240名ほどの修了生が全国にいます。そのメンバーのうちの有志が、木組の家を実践するワークショップ「き」組を運営しています。
 
わたしたちの目標は、生存空間を残し倒壊しにくい「木組の家」をつくり続けることです。
「美しい木組の家」をつくり「住まい手の命を守る」事が設計者の使命であり、犠牲者への供養だと考えています。合掌…。
 
大きく傾いても倒壊しなかった納屋。貫が効いている。
二階が道路に落ちて、一階が壊れた家。

2023年01月15日 Sun

コラム「古民家から暗い寒いを取り除く」

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古民家は生きています。

わたしたちは、「古民家の再生」によって新築を超える「新しい住まい」をつくることができると考えています。

本来、古民家は、太くて丈夫な木材と健康に良い自然素材でできています。

長い年月を生きた古民家は貴重な財産ですが「暗い」「寒い」が理由で壊されています。

それならば、その理由を取り除けば、更に長く生きることができると考えました。

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古民家から「暗い」「寒い」を取り除く

古民家が失われる原因は、「暗い」と「寒い」の2つです。

本来、土壁や木材は温もりのある暖かい材料だと思われています。

しかし、実は土や木は、素材としては熱伝導率が良くて熱を通しやすく、「熱(ねっ)橋(きょう)」となり熱が逃げやすいのが事実です。

また、古い建物では気密の良くない建具のために、開口部から隙間風が入るので「寒く」北側に開けた窓は「うす暗い」のです。

そこで、古民家を「暖かく」「明るく」するには壁や屋根に断熱材を充填し窓を設けて、温熱性能を上げるために、ガラスを二重にして更に、隙間風をなくすことです。

「暗い」部屋は極端に明るくしたり、温めたりする必要はありません。南側の窓を大きくすることで暖かくて明るくなります。つまり「寒い」「暗い」を取り除けばいいのです。

そこで、古民家の「架構」に着目しました。本来日本の民家は軸組工法で造られているので、柱・梁を残せば開口部は大きく採ることができます。つまり、庭木の葉表を見るために北側の窓を開け、日射を取り込むために南窓を大きく採るのです。

また、古民家は、石の上に柱を置いていましたから、地面に近い柱の根元が、湿気で腐ることを恐れ、床下を通気することが一般的で、床下を大きく開けていましたが、そのために床下から冷えてくるので、床面を暖める必要があります。

そこで、松井事務所では、古民家といえども、床下を塞ぎエアコンを沈め、周囲に断熱材を張って、温風を吹き込みます。

床下エアコンで1階の室内温熱環境と床下を同じにするために床面にはガラリを設けます。

ガラリはガラス窓の冷気が下がってくる場所が有効です。冷えた空気は重いので、床下から温風で対流を起こし、室内を最適な温度にしてくれます。

床下を密閉することに伝統的な職人たちは抵抗を感じるかもしれませんが、竪穴式の縄文時代から床を掘り下げて囲炉裏を炊き、一年を通じて地面を温めて、半年後に戻ってくる地熱を利用して寒い冬をしのいできたと言います。そのことを考えると、床下エアコンはとても合理的です。

わたしたちは、古民家の「暗い」「寒い」を取り除き、これからの「みらい」に向けて「再生」を実践しています。

「懐かしくて新しい古民家再生」をHPからご覧ください。

開放的な日本家屋の座敷。庭木の葉表を見るために庭は北庭を良しとした。

竪に掘り下げた土間に、一年を通して囲炉裏を炊いて、地熱が5ヶ月遅れて冬にもどってくるのを待った。

エアコンの温風を床下に吹き、冷気の降りてくるガラス面を温めることで、室内に対流を起こしている。

イラストは「初めての人にもできる!古民家再生絵本」ウエルパイン書店 

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