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2022年11月13日 Sun

コラム「快適な真壁の住まい」

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みなさんこんにちは、いつか古民家になるような丈夫で美しい木組みの家をつくりたいと想い続けている松井郁夫です。
このコラム欄では、日々の設計から考える家づくりのことや環境問題のことなどを綴っています。今回は「真壁」について書きました。

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真壁へのこだわり
 
住宅が充足している今日、住まい手はご自身の家に何を求めているのだろう。いまや丈夫な家は金物で縛れば容易に造ることが出来ますから「プレカット」の骨組みが全盛です。そこでは金物は室内に見せる事が出来ないので壁で隠すことになります。いわゆる柱や梁を見せない「大壁」工法です。
 
架構を見せないので、住まい手の興味は無垢の木や板ではなくて、利便性の高い設備に向いています。もしくは室内の飾り付けに熱心で自由度の高いインテリアデザインが好まれます。いまや「真壁」といわれる「柱梁」を見せる工法はほとんど採用されなくなってしまいました。
 
最近まで「真壁」は日本の建築の一般的な工法でした。なぜなら日本のような高温多湿の気候風土では、木材は壁の中に入れて蒸れないように露出して使うほうが腐りにくく長い時間の使用に耐えるからです。古民家が長く生きるのも全ての木が見えていたので維持管理がしやすかったからだと思われます。
ところが「真壁」は間取りの変更が難しいと考えられ、柱につながる梁や土台が自由に動かせないために設計者は振り向かなくなってしまいました。
本来、日本建築は軸組といわれる柱や梁の骨組みを表しにする「真壁」工法が主流でしたが、金物を見せずに木と木を組むには「継手・仕口」と言われる接合部の加工を丁寧につくらないと見せられません。もちろん手仕事に時間がかかるので、残念ながら今では採用する設計者や大工職人はごくわずかです。
しかしながら、わたしは「真壁」工法の「木組の家づくり」を続けていきたいと思います。柱や梁がつくるダイナミックな水平垂直の美しさは何ものにも変え難いからです。丈夫な骨組みに力が伝わる様子が室内から見えることで安全安心にもつながります。また、無垢の木は人を癒やしてくれて豊かな気持ちにしてくれると考えています。
 
写真は二本の大黒柱と梁や天井板が現しの室内です。無垢の木と漆喰の呼吸する素材を採用し、床下に温風を吹いて快適な室内をつくっています。「南長崎の家」