プロジェクトレポート
2024年08月21日 Wed
ブログ | プロジェクトレポート | 松井郁夫著書 | 「木組のデザイン」ゼミナール | 単行本
伝統的な木組の技術を広めようと始めた「木組のデザインゼミナール」が21期を迎え、現在10名ほどの受講生と3人の講師がマンツーマンで課題の添削を実施しています。
木造住宅の勉強会や講習会は数々ありますが、架構から間取りまで添削の手ほどきを受けられる講座は少ないと思います。
毎年4月に募集を開始しますが、途中からも申し込めますし、単発のスポット受講も可能です。
「木造は軸組がすべて」「架構は見せる」ことをモットーに21年続けてこられたのは、熱心な受講生のみなさんのおかげです。
今回からカリキュラムを「初級講座」と「上級講座」に分けて、「初めてに人にもわかる」木組講座を実践しております。
住宅設計とはさまざまな与条件を解決しながら理想の家に近づけるのですが、まず「家づくりとはなにか」を考えていただきます。
敷地は世界に一つしかないので「敷地を読み込む」ことから始まります。
さらに「災害に強い家」を架構に反映し「住みやすさ」を間取りに反映します。
専門的な仕事ですが、実はわたしたちが普段から暮らしている生活の延長ですから、みんなが生活の専門家とも言えます。
このような仕事は「実学」と言って学問の分野でも机上の論理ではなく実生活にすぐに役立つ学問だと思います。
「木組ゼミ」では身近な実学を、さらに身近に感じていただくために「初めての人にもできる!木組の家づくり絵本」と「初めての人にもできる!古民家再生絵本」を発行しております。
わかりやすいイラストで解説していますから本当にどなたでも手に取るようにわかり安く、すぐに実践できます。
また「仕事集」としてこれまで実践してきた建物の写真集も揃えております。
「美しい木組の家」ーいつか古民家になるー
「古民家のみらい」ー成熟した社会を目指してー
ともに実例を見ていただくにはうってつけの全ペイジカラーの写真集です。
「日本の家づくり」を一緒に進めましょう!
2024年08月13日 Tue
新しい外部スタッフを紹介します。
中村季美子さん
「木組ゼミ」の受講生です。いまは「木組ゼミ」の事務局や住宅の設計図面をお手伝いいただいています。
長野県松本在住。「木組の家」に興味を持たれています。
Zoomでお手伝いいただいていますが、何でも相談できる心強い女性です。
石井瀬奈さん
優秀なウエブのデザイナーです。
抜群のセンスで事務所や「き」組のHPを担当していただいています。
STAFF BLOGも書いてもらっています。
これから立ち上げる松井郁夫のYouTubeの構成やデザインの作成をお願いしています。
おふたりとも大変優秀な方たちです。
これから一緒に仕事を手伝っていただきます。どうぞよろしくお願い致します。
2024年08月07日 Wed
2024年07月30日 Tue
最近の異常気象をどう捉えるか。少し考えました。
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世界各地で起きている異常気象をどう捉えたらいいのでしょう。
日本でも気温40度を記録した昨今、まさに「地球沸騰化」の時代を迎えていることは間違いありません。
問題は自然現象として考えるのか?
人類の生産活動であるCO2排出が原因として考えるのか?
まず思いつくのは、人が地球の資源を使いたい放題に使って自然界に取り返しのつかない影響を与えているのではないかということです。
いまわたしたちは「地球資源は有限」であり「温暖化の原因」がCO2の排出なのかを改めて議論すべき時期に来ています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は、2018年に発行した「1.5℃特別報告書」において、
世界の平均気温上昇を産業革命以前からの比較で+1.5℃以内に抑えることの必要性を訴えると同時に、
その実現には2050年前後までにネットゼロを実現する必要があると提起しました。これを1.5℃目標と呼ぶそうです。
これからわたしたちが努力することは二酸化炭素の「排出ゼロ」を目指さなければいけないということです。
そのためには自然エネルギーの利用が必須になってきます。太陽光発電や風力発電の活用です。
これからの家づくりには「カーボンニュートラル」が推奨されています。
カーボンニュートラル(気候中立)とは、ライフサイクル・エネルギーを全体で見たときに、
二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になることです。
しかし建築材料の製造時の二酸化炭素の削減は難しく、吸収量増やすために植林を促すことです。
そのためには、木材を供給する山には樹を植林し育て、つくる側には山に植林費用を還元し適正な値段で買い取り、
無垢の木を活かしながらオーナーに提供する責任があります。
これからも山からつながる地球環境に配慮した「快適で長く使える美しい木の家づくり」を続けていきたいと思います。
2024年07月20日 Sat
設計を進めてまいりました「浜松の木組の家」が完成間近となりました。
建主さんは3年前に松井事務所の主催する「木組みのデザインゼミナール」に通われて、自宅を建て替えるなら「木組」と決めていたそうです。
このたびは、ご厚意で「内覧会」を実施させていただきます。
日本古来の「貫」や「足固め」を使った「減衰設計」による「耐震性能」を実施し、夏は涼しく冬暖かい「床下エアコン」による「温熱性能」の良い家です。
地震の力を受け流す「柔軟」で「粘り強い」構造は、「折置組」という金物を使わず木と木を組み上げた「継手・仕口」のチカラです。
静岡県の住宅の審査は日本でも有数の厳しさでしたが、この後完了検査を終えれば、お引渡しとなります。
ガランドウの「架構」は生活の変化に対応する仕組みです。
地元の天竜杉を使い「伝統構法」を実践する大工集団「木ごころ工房」の松村寛生棟梁の手づくりです。
この機会に、無垢の木の「自然素材」に包まれた「豊かな空間」をご体感ください。
「内覧会」のお申し込みは、メールもしくはFAXにて受け付けております。申し込まれた方に地図をお送りします。
みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げております。
松井郁夫・拝
2024年07月15日 Mon
国産材の「木組の家」と「古民家再生」を実践している松井郁夫建築設計事務所です。
2024年の夏休みは8月14日から18日までいただきます。
休み中もメールは届きますのでご連絡ください。
「大宮の平屋」2024年9月着工予定
2024年07月15日 Mon
今回は松井郁夫事務所の家づくりに対する「使命感」について書きました。
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いま、わたしたちの周りに建っている住宅は、美しい家といえるのでしょうか?
残念ながら「美の規定」のない現行の「建築基準法」に従っているだけでは建物も町並みも美しくはなりません。
むしろ基準法の第一条「目的」には「最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り…」とありますから「最低の基準」で建てられた貧相な建物が並んでいると言っても過言ではありません。
学生の頃読んだ「住宅貧乏物語」早川和男(1979年岩波書店)は基本的人権である生存基盤や都市環境の整備が欧米に比べて大きく劣っていることを指摘した衝撃の書でした。
日本は第二次大戦後に焼け野原になった国土の復興を急ぐため、そのほとんどが「チープ」な安物の住宅です。屋根や外壁は波板鉄板、木材不足から柱は4寸に満たない3寸5分の細い柱。「胴差」までも3寸5分の細さで肝心の接合部は、羽子板ボルトのみ。雨露がしのげれば良い程度の「バラック」同然の建物であったのです。ここに戦後から続く庶民の住宅の「貧乏物語」が始まります。
そこで昭和25年の建築基準法制定時には戦後「バラック」の一掃を目指し、ボトムアップ(底上げ政策)を図ることとして、もともと日本にあった「在来」の工法が法制化されたのだといいます。
建築基準法制定時を知る故・内田祥哉先生から生前の「日本建築セミナー」で伺った話では、当時の内務省では「庶民の家は金物で縛ればよい」「文化財には伝統的な【継手・仕口】を使えば良い」という気分であったといいます。
なんとも悲しい話ですが、それでも市井の大工職人たちはそれには納得できず、自分たちのプライドにかけても【継手・仕口】の技術を口伝で伝承してきました。
しかし高度成長期に入ると、国の「持ち家政策」に押されて「住宅メーカー」が現れ、木造住宅にもさまざまな新工法が開発されて、ますます混乱を極めていきました。そんな背景の中、現在、戦後の建物を建て替えもしくは改修する時期を迎えてしまったのです。戦後の復興住宅である貧相な家を改修せざるを得ないという不幸な時代を迎えたのです。
わたくしは大学進学で上京した時、あまりにも東京の住宅事情が貧相で驚きました。建物は弱々しくて汚く、町並みは「おもちゃ箱」をひっくり返したように混乱していました。
歴史的な町並みの残る美しい城下町に生まれ育ったわたくしにとっては、伝統の蓄積の希薄な都市はまさにコンクリートジャングルで貧相な家が建ち並ぶカオスでした。
そんな問題意識を抱えて、大学はデザイン科に席を置き建築科ではありませんでしたが、建築の研究室に出入りして「町並み保存運動」にのめり込みました。
全国の美しい歴史的な町並みを回るうちに、一軒でも歴史的な民家を残さなければならないという「使命感」に燃えました。修了後には都市計画事務所に入りまちづくりを学び、その後に大工棟梁の門を叩いて伝統の「木組」を学ぶ道を選びました。
そこで「古民家」や「伝統家屋」の美しさと優れた環境適応性を知りました。
伝統的な古民家ならば、立派な柱や梁も残っていて「継手・仕口」を外すことで改修や再生は容易にできます。
もともと「伝統構法」とは「再生機構」を持っていたのです。組んでは外すことができる「木組」の技術がそのことを可能にしています。
ですから新築の家は「いつか古民家になる」ような丈夫で長く使える快適な家を目指して「むかしといまをみらいにつなぐ」ことをテーゼに「木組の家」づくりを実践しています。
さらに2003年に始めた「木組のデザインゼミナール」は「木組の家」の設計や「古民家再生」の要請に応えるための実践と、技術者を育成する場として20年間活動しています。
これからも国産材による手仕事の家づくりを進めてゆくことがわたくしの「使命」だと考えています。どうぞご期待ください。
2024年06月30日 Sun
住まいの設計は長く愛されて飽きることのないデザインが大切だと考えている松井郁夫です。
今回は尊敬する建築家「吉村順三」のデザインについて考えました。
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設計者の間では「吉村イズム」という言葉が知られています。
「吉村順三」の設計理念を受け継いだデザインという意味です。
「吉村順三」は1908年日本橋に生まれて戦前戦後とアメリカのモダニズムを日本の建築に取り込み、日本の感性や思想を反映した設計で多くの後進に影響を与えた建築家で東京藝術大学の名誉教授です。
代表作に軽井沢の山荘がありますが、先生の別荘でもあります。
生前お会いしたことはありませんが、母校の建築学部の人たちはその「吉村イズム」を色濃く引き継いでいます。故・宮脇檀さんや伊礼智さんなど…。
私は工業デザイン専攻で建築の授業は受けていませんでしたが、最初に住宅の設計を依頼された折には「吉村順三」の写真集や全集を参考にしました。
なんとか「吉村イズム」に近づこうとしたのだと思います。
吉村先生の設計は、一見さりげないデザインや間取りで普通に見えます。形を真似ることもさほど困難に見えないのですが、実は洗練されたディテールや深い思考の裏付けがあるので気軽に追従すると火傷をします。
「聖的領域」といいますか、「通俗」を乗り越えなければいけないレベルの高い壁があって近づくことができないのです。
真似だけではどうにも俗っぽくなるのです。これみよがしではなく、さり気なく、日々の暮らしの中に美しさを実現する住まいの設計に憧れます。
藝大の教えの中にはその「吉村イズム」は脈脈と生きている気がします。我が恩師の曰く「立ち振舞を美しくすることがデザインだ」などなど…。
自分自身の設計でその「俗と聖」の違いを思い知らされる毎日です。雲の上からより深い思考とディテールを精進せよと言われているような気がします。
2024年06月19日 Wed
毎回の設計依頼に繰り返し悩んでしまう松井郁夫です。
今日のお話は先日のテーマである「これからの木の家」について想うところを描きました。
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不惑を過ぎた身でありながら、設計依頼がきたときは毎回「住む」って何だろうと惑います。
ご依頼に見える方はそれぞれに「住まい」について想いがあり、夢を語ってくれますから、設計者はその夢の実現のために奔走します。
暮らしやすい間取りをどう実現するか、家族構成と要望をお聞きし、家族団欒の空間を考え、敷地を読み込み、災害に強い構造を考え、素材を活かすことや美しい仕上げを心がけます。
豊かな暮らしを実現するためには「自然素材」に包まれた家が良いでしょう。さらに快適に暮らすには設備にも気を配ります。
そして何よりも「日本を住む」ということを考えることです。
日本ほど「自然災害」の多い国はありません。「地震」「台風」はもちろん最近では異常気象で「豪雨」も頻繁に日本列島を襲います。
地球沸騰化の時代「脱炭素」は当たり前です。そのために省エネルギーを実践すべく木の家でも「断熱気密」は必須となりました。
また日本の伝統構法である「木組」も大切にしてさまざまな「災害」を凌ぐ家を造らなければなりません。
「山を守り、職人技術を継承すること」も課題です。
「造り手」である設計者や職人には将来を見越した発想と実践が求められます。
昨今の物価の高騰や人手不足という現実の中でどう夢を実現してゆくか実力が試されます。
今日あたらしい「住まい手」の方がこれからお見えになります。まずはじっくりとお話をお聞きしたいと思います。
2024年06月11日 Tue
学部論文に取り上げてくれたのは、電機大学の4年生松崎直人さん(21)、指導教員は以前木組の講習会に通ってくださった小笠原正豊さんです。
伝統構法に興味を持って調べていてたら松井事務所のHPにたどり着いたようです。
若い人が伝統構法に興味を見ってくれたことがうれしいです。
かなり深く調べてあって驚きました。自分のことをこんなに客観的に見ることができるのはありがたいことです。
お時間のある方はご一読ください。うれしいことが書いてあります。
2024年06月06日 Thu
物価の上昇による資材の高騰や担い手の減少による職人不足など、最近の住まいづくりの実情は決して明るくありません。
現状の社会問題を解決しながら前に進めることを信条にしてきた松井事務所では、「山に植林費用を還す」取り組みや「職人や設計者の育成」にも積極的に取り組んできました。「山」と「住まい手」をつなぐ協働の仕組み「ワークショップき組」は2003年にグッドデザイン賞をいただきました。美しく丈夫な住まいづくりを目指して日々努力を重ねております。
職人や設計者に向けた「木の家づくり」の実践講座「木組みのデザインゼミナール」も20年間続けて今期で21年目になります。これまでに全国で延べ240名の受講生を世に送りました。活動は継続できており受講生も毎年熱心な実務者に支えられております。
そこで20年を節目に今後の「木の家づくり」の活動についてみなさんから意見を募りたいと思います。これまでに受講生はもちろんこれから「木の家づくり」を実践したいと考えている実務者のみなさんや学生さんにも広く声を集められたら幸いです。
「いま求められる【木の住まい】の条件」にできるだけ多くのみなさんのご意見を頂けないでしょうか?
これからの日本家づくりをご一緒しませんか?
採用者には拙著を差し上げます。松井事務所のHPのお問い合わせコーナーにどうぞふるって応募してください。
2024年05月29日 Wed
現在進行している「天橋立の平屋」について工務店との打ち合わせで質問されたことに答えているうちに「時代が変わった」と感じてしまったので、今回は「大工と継手・仕口」の話です。
「天橋立の平屋」は「木組の家」に住みたいと望んでいる御夫婦が日本中の木組を実践している設計者を回って最後に松井事務所にたどり着いたのです。海に近い低地であったことから、高床式の「せがい造り」の平屋になりました。設計を終えて見積もりも承認され、いよいよ刻みに入る段階にこぎつけました。
平屋は単純なのですが、大変難しい床下の架構で梁組が大変です。何社かの工務店は見積もりを見送ってしまったので、熱心な工務店と最後まで打ち合わせを重ねてきました。
工務店さんが施工図を描いてくれたので、こちらも梁算段のスケッチをして提出したところ「若い大工に継手・仕口の寸法を教えてくれないか」と依頼されました。
僕たちが設計を始めた頃は大工仕事のほとんどは現場でベテランの大工さんから教わりましたが「時代は変わりました」
設計者が「継手・仕口」を考え寸法まで指示する時代になったのです!
さいわい私は大工棟梁のもとで設計を教わっていたので、木材の加工についても詳しく説明ができますが、ちょっとお驚いたので話題にしました。
今やプレカット全盛の時代だから大工も「継手・仕口」のことは工場に任せっぱなしで加工を考えなくなったのでしょう。
そういえば現代の家はほとんどが「大壁」という「柱」や「梁」の見えないつくり方になっています。
本来、木造住宅は「軸組工法」と呼ばれ骨組を生かした「真壁」工法だったのです。しかしいまや流行りの設計者はすべて「大壁」になってしまい軸組を考えなくなりました。軸を考えないで好きなところに窓を開けて見えないところで「金物」を使えるからです。
そういう意味では「大壁=金物工法」は便利です。しかし地震の時は金物が木という母材を割ってしまい倒壊し易くなります。最近の地震被害はそのことを物語っているのですが、地震のたびに金物補強の規制が強くなっています。
むかしから「豆腐を針金で釣ってはいけない」と大工の世界では金物を使うことを戒めていたのですが…。
真壁の家づくりを実践すれば、日本の地震や台風にも耐える、高温多湿の気候風土に沿った快適な家ができるのですが…。
。
2024年05月28日 Tue
いままさに空前の古民家ブームです。
しかし「古民家」は定義もなく曖昧なままブームの中で埋もれてしまっていました。
日本の住まいの原点は「古民家」を見れば明らかですが、各地に多くの民家が日常的に残っていたために歴史的評価も少なく、しばらく忘れられていました。
また、現代の建築教育は明治以来西欧の建築学を下敷きにしているので、古来から日本の大工棟梁たちが造ってきた「民家」は軽んじられてきたのです。
ところが昨今の「古民家ブーム」に乗って、再生・利活用が増えて、本来の日本の家づくりが見直されてきています。
原点である「古民家のつくり方」は木と木を組む「木組み」が基本です。
金物がなかった時代のつくり方という一面もありますが、日本の大工たちはあえて金物は避けていたようにおもいます。
いわく「豆腐を針金で釣ってはいけない」
なぜなら木という柔らかい母材は硬い金物に負けて、地震で揺らされると木の繊維を割って建物を壊してしまいかねないからです。
ところが最近では、地震が起きるたびに「金物」を補強に使うような規制がかかり、改修されています。耐震性能を伸ばすためにはそれでいいのでしょうか?
五重塔が金物を使わず、木と木を組み上げて揺れて力を逃がすように。民家も「強度」で地震や風に抵抗するのではなく、柳に風の「減衰」の理論がいいと思います。
現在、家づくりを古民家に学び紹介する本「古民家からはじまる日本の家」を執筆中です。
松井事務所が20年間主催してきた「木組のデッザインゼミナール」を単行本化しています。
この本を読めば、金物に頼らず開放的な木の家をつくることができます。ご期待ください。
2024年05月17日 Fri
日本の家の原点は「古民家」を見れば一目瞭然です。
しかし残念ながら古い建物は身近にたくさんあるうえに「古民家」の正しい定義もなく埋もれてしまっています。
また、現代の建築教育は明治以来西欧の建築学を下敷きにしているので、日本の大工棟梁たちが造ってきた「民家」は軽んじられてきました。
ところが今、空前の「古民家ブーム」に乗って本来の日本の家づくりが見直されてきていると思います。
「古民家のつくり方」は木と木を組む「木組み」が基本です。金物がなかった時代のつくり方という一面もありますが、日本の大工たちはあえて金物は避けてきたようです。
いわく「豆腐を針金で釣ってはいけない」
何故なら木という柔らかい素材は硬い金物に負けて、地震で揺らされると建物を壊してしまいかねないからです。
ところが地震が起きるたびに「金物」を強化するような規制がかかります。でも本当にそうでしょうか?
五重塔は木を組んだだけで金物で固定されていません。揺れて力を逃がす「減衰」の理論です。
実は現在日本の古民家に学んだ家造りの本を企画しています。
松井事務所が21年間主催してきた「木組のデッザインゼミナール」の単行本化です。
ここではその一部を紹介します。まだ執筆中なのでごく一部ですがご覧ください。
2024年05月03日 Fri
2024年04月23日 Tue
増刷のお知らせ!
発刊してから3年6ヶ月。おかげさまで皆さんにご好評いただき、在庫が少なくなりになりました。
現在の古民家ブームに流されることなく、古民家の成り立ちから地理的歴史的考察を経て、曖昧になっている定義にも言及しています。
今回は嬉しい増刷です。私の描いた本の中では一番の売れ筋です。
Amazonにはまだ少し余部があるようです。お急ぎの方はポチしてください。
2024年04月19日 Fri
日々豊かな生活ができる家造りを目指している松井郁夫です。
今年のゴールデンウイークは、4月28日と5月4日以外は休まず営業いたします。
ご相談のある方はどうぞご遠慮なくご連絡ください。
2024年04月15日 Mon
今年で21期を迎える「木組みのデザインゼミナール」始まりました。
初日は「古民家再生講座」のオリエンテーションでした。
例年より多くの22名の受講生との初講座です。
みなさんの自己紹介を聞いて「古民家再生講座」に期待されていることがわかり、身の引き締まる思いです。
最初の座学では最近ブームで人気の古民家ですが、その年代が曖昧なこともあって「古民家の定義」を行いました。
「木造軸組工法の近代化」源愛日児著(中央公論美術出版)の定義に従い江戸時代まで遡って解明しました。
添付した「書評」を御覧ください。
拙著「初めての人にもできる!古民家再生絵本」ウエルパイン書店でわかりやすく解説し、
たくさんの「古民家再生事例」を見ていただきました。
午前~午後と1日がかりの長い時間のゼミでしたが、みなさん興味深く聞いていただけたようです。
次回は「日本民家園」で実際の古民家を見ていただき次次回「江戸東京たてもの園」で江戸期の農家の実測研修です。
受講生のみなさんには古民家の理解と実物に触れていただき実践力を身に付けていただきます。
他の勉強会にはない貴重な体験を通して日本の古民家の良さを後世に伝えてほしいと思います。
2024年04月03日 Wed
ひとつひとつの家を教科書のようにつくりたいと願っている松井郁夫です。
おかげさまで4月14日から始まる「第21期・木組みのデザインゼミナール」が満員になった御礼のブログです。
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毎年お送りしている「木造住宅」のスキルアップ講座がおかげさまで21期を迎えました。
毎回、参加者を募集しながら今年は何人集まるのだろうかと気をもんでいるのですが、
講座の始まる寸前には毎回12・3名になってホッとしています。
おかげさまで今期は定員の20名になりました。
毎回ひとりひとりの提出課題を添削するので、少人数制となっております。
「木組ゼミ」の特徴は木造住宅の設計を軸組みである「架構から学ぶ」点にあります。一
いまは「大壁」と言われる柱や梁の骨組みを包んで見えなくしてしまう工法が主流ですが、
この講座では「真壁」と呼ばれる柱や梁を見せる「架構」をデザインするという造り方にこだわっています。
日本建築は「真壁」という木材をすべて現しにする「軸組工法」が本来の姿です。
「木組」という呼び方で大工職人の腕前が問われる仕事です。
大工職人は金物に頼らない木と木を組み上げる木組の「継手・仕口」を使えれば一人前となります。
木造住宅の設計者が最初にぶつかる構造の壁でもあります。
江戸時代以前から続く伝統の技で、木の「めり込み」と「摩擦」で力を「減衰」することで地震に耐えるという地震国日本に最も適した工法と言えます。
本講座では「むかし」の仕事をつたえる「古民家」に学び、「いま」現代の建物に活かすし「みらい」につなごうとしています。
松井事務所では「むかしといまをみらいにつなぐ」を理念にこれからも「木組のデザインゼミナール」をスキルアップを目指すみなさんにお届けしたいと思っています。
今年は思いがけず受講生が多人数になりました。プレカット全盛時代に木の家を架構から学べる講座は本講座しかないようです。
受講生の皆さんありがとうございます。古民家の実測や見学案内、演習課題の添削に講師陣もがんばりますのでよろしくお願いいたします。
2024年03月21日 Thu
建築行為は常に社会性が大切であり「あらかじめ取るべき責任がある」と考えている松井郁夫です。
今回は「社会的責任」についてお話ししたいと思います。
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生活の営みの「場」である建物を世に出すことは様々な意味で責任ある行為です。
まず場所を確保しなければなりませんし材料も用意しなければなりません。
そして何よりも生活する人の「健康」と「安全」を確保する必要があります。
まさに建築基準法の第一条には「国民の生命と財産を守るべき」という記述があります。
もちろん「美しさ」や「快適性」も必須事項です。
私の出身である東京芸術大学では「美は全てを統合する」という理念を掲げています。
尊敬する民藝運動の創始者柳宗悦は「用の美」を運動のテーゼに日本中の工芸品に新しい息吹を与えました。
そこには創作行為に対する厳しい「審美眼」と長く使うことに対する「製造責任」がついて回ります。
AIで可能性が広がり「真偽」さえも曖昧になったいまこそ「ものづくり」の世界に「安全性」の確保が求められます。
本来「ものづくり」に関わる人間には誰に言われなくても持つべき「社会的責任」があります。
「社会的責任」は、しくじる前にあらかじめ取っておくべき「責任」といえます。
言い換えれば「倫理観」や「正義感」かもしれません。
何も「無い」状態から「有」を生み出すことは女性の「出産」に似ているかもしれません。
生みの苦しみは、その後長く続く「育て」の楽しみに変わるからです。
設計行為も作る前から「社会的責任」を負うことになりますが、生み出したあとは育てることに喜びを見出したいと考えます。
とりとめもないお話で失礼しました。
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