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2023年08月18日 Fri

コラム「みんなが歌える歌を描く」

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家族が幸せに暮らすことができる暖かくて明るい家づくりを目指している松井郁夫です。

住まいはそこに住む人のためにつくるのですが、今回はその先にある広い社会に向けて住まいづくりを考えたいと思います。

 

 

「家づくりは社会の仕組みそのものだ。」といったのは「現代棟梁・田中文男」です。

 

田中棟梁のことは何度かこのコラムで取り上げていますが、

この人ほど名言の多い大工さんはいないと思います。

 

阪神大震災の後に「木造住宅【私家版】仕様書」という技術書を友人と共著で書いたときには

「大工のノウハウをマニュアル化しやがって!」と怒っていたと伝え聞いています。

 

地震で倒れた多くの木造住宅を見ていかに耐震性が大切かを訴えるために地震に強い木組の家づくりについて書いた本ですが、

当時は徒弟制度の中の大工の世界に閉じられていた技術をオープンにしたことが田中棟梁の逆鱗に触れたようです。

しかし閉じた大工の世界を開かなければ、木組の伝統は先細るばかりで社会には伝わらなかったのです。

「オープンシステムを目指せ!」という掛け声の下「建築知識」という雑誌で連載を重ね一冊の技術書としてまとめました。

連載中は読者との討論を「誌上ワークショップ」と称して毎月の月刊誌に質疑応答を載せました。

読者の設計者はもちろん大工さんたちもたくさん参加していて議論が盛り上がりました。

 

最後に「建築知識」の会議室に全国の実務者が集まって用語の一つ一つを定義したことを覚えています。

おかげさまで28年経った今も版を重さねてロングセラーを続けております

この本を高く評価してくださる方の一人に岐阜県立森林アカデミーの学長の涌井史郎さんがいらっしゃいます。

いまは長男の匠がお世話になっているのですが、息子が面接のときに言われた言葉は私にとっては最高の賛辞でした。

曰く「君のお父さんは、自分が歌う歌だけではなく、みんなが歌える歌を描いたんだよ…」

なんという賛辞でしょう!  涌井さんとはそれまでに講演会で何回かご一緒しましたが、この言葉は本当に嬉しい言葉でした!

帰ってきた息子が「親父って有名なんだなァ」と言ってました。あはは…。そこじゃぁないんだけど…。(笑)

 

 

明後日からその【私家版】仕様書を教科書に木組講座第20期が始まります。

木造の基本である木組を学んでご自身のスキルを上げたい方はどうぞご参加ください。

先程、時の人「遠野未来」さんが参加を表明してこられました。彼の課題の回答も楽しみです!

みんなで楽しく歌いましょう!