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2023年05月06日 Sat

コラム「設計者と職人の協働」②

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美しくあたたかい住まいをつくりたいと願っている松井郁夫です。

前回のコラムの続きをお送りします。「設計者と職人の協働」についてです。

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古くてあたらしい問題ですが「設計者」と「職人」はなかなか仲良く協働できない悩みがあります。

古くから日本独自の伝統技術を引き継いできた「職人」の流れと明治時代に入ってきた「西洋建築」の流れにある「設計者」は水と油かもしれません。

「地震」や「台風」などの自然災害に対して日本の伝統的な建築技術は力で抑え込むのではなく自然に逆らわず受け流す考えかたです。一方西洋の考え方は自然を征服するという指向で力で抑え込む考え方です。

自然災害の常襲地域である日本列島で生まれた思想と硬い岩盤を持つヨーロッパ大陸のとの違いでしょうか?

日本の「木組」の技術はヨーロッパの「石組」のような「剛構造」ではなく、力をいなす「柳に風」の指向です。長い歴史の中で未曾有の災害には受け流すほうが良いと判断したのでしょう。

なので日本な大工と西洋の教育を受けた設計者は建物の構造の考え方のところでまずぶつかります。

木組を指向する大工の考え方は木の「めり込み」や「靭性」を生かした「減衰設計」ですが、構造設計者は木を均一な材料として捉え「強度設計」で建物を考えています。これでは意見が合わずに仲良く仕事はできません。

昨日も能登半島で震度6強の地震がありましたが、「強度設計」を指向する構造設計者は、これでまた建物の「強度」を上げる傾向をつよくすると思います。

わたしたち「木の特性」を知る設計者は、予断なく今後の動向に注目したいと思います。

2023年05月03日 Wed

「鶴見の古民家再生」竣工しました

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「鶴見の古民家再生」3年の歳月をかけて竣工いたしました。

設計契約はコロナ禍の最中でメールでのやりとりで受注しました。

建物は「関東大震災」で被災した後に修復してちょうど100年経過しました。

今回これから100年の命をつなぐために再生工事を行いました。

平屋の建物が古民家と呼べる石場建ての架構で建てられていましたので、再生計画は石場建てのまま「限界耐力計算法」という「超高層ビル」に採用されている「減衰設計」で力をいなす計算方法を採用しました。

「耐震補強」をするためと「温熱性能向上」のために建物を「骨組」にまで裸にして断熱材を充填したり外張りに付加断熱したりして「スケルトン改修」を行いました。

昭和に増築した二階部分は「大壁」のままですが、平屋は柱梁の見える「真壁」の和風です。

最新の設備を装着して「むかしといまをみらいにつなぐ」再生となりました。

わたしたちは「古民家のみらい」を創る仕事を得意にしています。

まずは竣工写真をご覧ください。

 

 

 

2023年04月25日 Tue

コラム「設計者と職人の協働」①

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美しくて暖かい家をつくりたいと考えている松井郁夫です。

今回は「設計者」と「職人」との協働について考えてみました。

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古くて新しい問題ですが、設計者と職人の協働はなかなかうまくいきません。

「口は出すけれどお金は出さない」という「設計者」は「職人」に嫌われています。

現場で何度も変更して平気な「設計者」はもっと嫌われます。

だいたい「職人仕事」に理解がないように思われています。

それもそのはず「職人言葉」の分からない「設計者」が多いのです。

なぜなら学校では建築設計を習っていても大工職人の仕事は習いません。

明治以来、西洋の建築学の教育を受けてきているので、日本の家づくりに縁が浅いのです。本来は日本建築の源流である「民家」から学んでいなければならないのですが。

文明開化当時の日本は「西欧化」を急ぐあまり海外の技術を取り込む教育に舵を切りました。あまりにも身近で普通であったために、それまでの大工職人の技術を積極的に評価しようとしてこなかったのです。

日本の大学の建築教育では大工に教えを乞うことはしないで外国から建築家をまねいて市庁舎や学校を建てました。

それでも大工職人は古くからの技術を「徒弟」の社会で口伝により最近まで手仕事の技術として生きてきました。いまではその「徒弟制度」もなくなり「プレカット」という機械が木材を刻む時代になりました。

ますます「設計者と職人の協働」の機会は減りました。いずれは「設計者」も「職人」もいなくなるかもしれません。

すでに「2001年宇宙への旅」に描かれたコンピュータの「ハル」が生活を支配する時代が来ているのでしょう。AIが人の質問に答える「チャットGTP」の時代ですから…。

「設計者と職人の協働」によって「豊かな住まいをつくろう!」という話をしようとしていましたが何やらあらぬ方に矛先が向かいました……(汗) 続きは後ほど…   

 

2023年04月22日 Sat

「鶴見の古民家再生」内覧会のお知らせ

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「鶴見の古民家再生」が竣工しました。この度オーナーさんのご厚意で内覧会の運びとなりました。

大正12年の「関東大震災」で倒壊を免れた古民家です。その時に少し壊れた家を直して100年が経ちました。

今回、その古民家にさらに100年の命をつなぐために「限界耐力計算法」による「耐震補強」と「床下エアコン」による「温熱改修」を行いました。

「むかしといまをつなぐ」

「懐かしくてあたたかい」

古民家再生をご覧ください。

2023年4月30日(日)12:00~16:00

お申し込みの方に地図をお送りします。

お申込み先:松井郁夫建築設計事務所

もしくはワークショップ「き」組

MAIL:ok@matsui-ikuo.jp

MAIL:info@kigumi.jp

FAX:03-5996-1370

 

 

 

2023年04月18日 Tue

著作本の紹介「古民家への道」

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いま、古民家はブームになっています。

「古民家」は日本の家づくりの原点ですが、私たちはあまりにも身近にあるので、長い間その良さに気づくことなく過ごしてきました。

最近、「民泊法」ができて海外からも日本の古民家に宿泊する人が大勢訪れるようになりました。

むかしからの日本の家の「本来」の自然素材やつくり方がが見直されて「本物」の時代が来たのはいいことですが、古民家をブームで終わらせてはいけません。

そこで、私たちの祖先が住んだ家の優れた点を探り解き明かした「理念書」を描きました。

拙著「古民家への道」(ウエルパイン書店発行)です。

この本は「古民家」と呼ばれる建物の真実を解明するために、その歴史から「定義」を定め、再生事例を掲げて「古民家」の行方を示しています。

5月の連休にお出かけの方は、この本を持って日本のすまいのルーツを訪ねてはいかがでしょう。ぜひ一度手にとってご覧ください。

事例の写真集「古民家のみらい」(ウエルパイン書店発行)と絵本も用意しております。

ご一緒にどうぞ!

古民家への道https://www.amazon.co.jp/%E5%8F%A4%E6%B0%91%E5%AE%B6%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93-%E6%9D%BE%E4%BA%95-%E9%83%81%E5%A4%AB/dp/4910069003/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=GZ14F934T0OV&keywords=%E5%8F%A4%E6%B0%91%E5%AE%B6%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93&qid=1681787216&sprefix=%E5%8F%A4%E6%B0%91%E5%AE%B6%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93%2Caps%2C201&sr=8-1

 

2023年04月17日 Mon

コラム「誰のためにデザインするのか」

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「古民家再生」と「木組の家」で美しくあたたかい家づくりを目指している松井郁夫です。

今回は「誰のためにデザインするのか」について考えてみたいと思います。

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4月から「木組のデザインゼミナール」の「古民家講座」が始まりました。

初日の講座で「民衆のためのデザイン」という意味で「コミュニテイデザイン」の話をしたところ、その意義についての質問を受けました。

前々回のコラムの「民藝と民家」の話の中では「用の美」という概念があることをお話ししました。つまり「使うこと=用」が「美しく」あることが大切であり、また「美しい」は「用」の中にあること、だという話です。民藝では美しさのみを追求するのではなく「用の美」は、「民家」も「民具」も「民器」も民衆が使うためにあるものには「用」があり「美」があるというのです。

「コミュニティデザイン」もまさに民衆のためのデザインです。民家やその集積である都市デザインは「特定の人」のためのものではなく「不特定多数」のためのデザインだと思います。

オンリーワンのデザインを否定することはしませんが、住まいの場合、事情によっては住む人が代わったり時代がかわって生活のスタイルが変わることもあります。

それゆえに、多くの人々の要望を聴いたり、意見の相違を乗り越える「合意形成」を図ったり、将来の生活の変化に対応できるように計画すべきで、特殊解ではなく一般解としての「スタンダード」な答えが求められるのだと思います。その意味で「民家」はまさに、長い時間を生きた地域の人達のための「コミュニティデザイン」だと思います。

写真は、塩尻平の古民家「馬場邸」です。雨の少ないこの地域では一般的な大屋根の「本棟づくり」の家です。

 

2023年04月15日 Sat

「彦根・足軽屋敷のまちづくり」講演会のお知らせ

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城下町彦根の市街地には江戸時代の「足軽屋敷」が残っています。

幕末の大老、井伊直弼の父直中は足軽を大切にした名君で、城下に庭付きの一軒家を足軽屋敷としてたくさん建てました。今も残っている屋敷を見ると最下層の侍の家としては破格の扱いです。

歴史的佇まいを残す芹橋地区には「足軽屋敷」と見張りのための「辻番所」が残っています。

ご実家が足軽屋敷内に残っている友人笠原啓史さん(木組ゼミ受講生)に招かれて「住民参加のまちづくり」の講演をしたのが7年前です。当時「景観からのまちづくり」として課題にしたことが実践されたので、今年はその続きとして実現可能な仕組みを考えるための二度目の講演となりました。

前回のまとめは、①地元の再発見と発掘②近隣関係の復権③地域の価値を共有しビジョンを描く④快適空間の創出⑤空き家利用でした。その後地元ではワークショップを繰り返し実践を重ねてこられました。

今回は「町並みづくりのアイディアや実現の仕組み」についてさらなる実践を目指します。

2023年4月23日(日曜日)15時から 芹橋2丁目「辻番所・旧磯島家」にてみなさんのお越しをお待ちしています。急なお誘いですが、お近くでお時間のある方はどうぞお運びください。

古民家の利活用や歴史的町並み保存に興味のある方は必見です。

2023年04月04日 Tue

第20期「木組のデザインゼミナール」

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今年で20期を迎える「木組ゼミ」は記念講座として、豪華講師陣と「古民家再生講座」を充実させて4月16日より12月17日まで開催します。

木の建築の基礎である「木組講座」や「温熱講座」はもちろん、20年間の蓄積を余すところなく公開いたします!スキルアップを目指している実務者の参加をお待ちしております。

第21期木組のデザインゼミナール受講生募集

2023年03月23日 Thu

コラム「民藝と民家」②

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「古民家再生」と「木組の家」づくりで、美しくあたたかい丈夫な住まいづくりを目指している松井郁夫です。

先日、益子の濱田庄司記念参考館で「民家」と「民藝」のつながりについて話をさせていただきました。

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民家が「民藝運動」の中に位置付けられていることは柳宗悦の「民藝宣言」(大正15年)をみれば明らかです。陶芸家の人間国宝・濱田庄司も柳宗悦の考えに賛同して民藝運動に参加しました。

柳は民藝の中に「民家、民具、民器」があると述べています。つまり「民衆の住まい、民衆の道具、民衆の器」のことです。

むかしの職人たちは運送手段のない頃から現場周辺の木や土を使い丈夫な民家をつくりました。幹の曲がった木をたくみに組み上げ「木組の家」を建てたのです。

このような伝統的な素材と技術でつくる「木組の民家」は、まさに日本建築の原点です。

竪穴式住居から現代住居まで続く無名の職人たちの仕事は「真の日本の住まい」と呼ぶにふさわしいと思います。

質実剛健で高価にならないようにつくり、出来るだけ多くの人に美しい民家を提供することは、まさに民藝の理念です。

民藝はファインアート(純粋美術)ではなく民衆のフォークロアでありクラフト(民族工芸)の世界です。そこが「用の美」と言われる所以です。

講演では「古民家再生の理念と事例」についてスライドトークを行い。次の日は、クラウドファンディングで茅屋根を葺き替えた「長屋門」の実測を行いました。古民家の仕組みを観察する「みかた」各間取りや部材の寸法を測る「しらべかた」古民家を再現するつもりで作図する「つくりかた」の実践です。

今回のイベントで古民家再生を実践する人が増えて、日本建築の伝承に新たな展開が生まれれば幸いです。

わたしたちは新築住宅の設計でも「いつか古民家になる」民の家づくりを目指しています。

 

 

 

 

2023年03月19日 Sun

コラム「民藝と民家」①

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いつか古民家になる木組の家をつくりたいと望んでいる松井郁夫です。

昨日、濱田庄司益子参考館で古民家再生についてお話しさせていただきました。

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「民家」は「民藝」の中に位置付けられています。

民家、民具、民器のひとつで、民衆の家を言います。名もない職人が建てた骨組みが丈夫で長寿命の住まいです。

「用の美」と言われる民藝の思想は柳宗悦が中心になり、陶芸品家・濱田庄司も参加しました。

民藝では常に美しさを追求するのですが、使える用があることも大切だと言う工芸の考え方です。まさに民家はその代表です。

また工芸は美しさを求めることはもちろん、用がたたねばなりません。工業デザインにつながる理念があります。多くの人に美しく使えるものを提供する考えかたが同じです。

当日は、民家の実測ワークショップを行い参加者の皆さんに、「みかた」と「しらべかた」を体験していただき観察することと作図することが、古民家再生の「つくりかた」につながることを実感していただきました。参加者のみなさんは大変熱心で実測が初めてにも関わらず、時間を超えて作図していました。次回のイベントで実測図を展示しようということになりました。力作ぞろいで展示会が楽しみです。

 

2023年03月11日 Sat

コラム「3.11を忘れない」

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2011年14時46分。

東日本を襲った地震による大津波は、22000人の命を奪いました。また、津波による原発事故は、深刻な土壌汚染を引き起こし、未だに生まれた土地に帰還出来ない31000人の方たちが避難生活を余儀なくされています。

この地震と津波は、自然が計り知れない猛威を振るうことがわかりました。

わたしたちは、地震に対する備えと原発に頼らない生活をおくり、自然エネルギーを使うことにシフトするべきだと思います。

わたしたちは、建物の耐震化と省エネルギー化に努めることを誓います。

合掌…。

 

2023年03月10日 Fri

コラム「古民家は伝統構法で再生する」

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日頃から日本の古い建物の大切さを次世代に伝え「古民家のみらい」を創りたいと思っている

松井郁夫です。

今回は少し苦言になりますが、最近、古民家再生の仕事で感じていることを書きました。

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先日「小平の古民家再生」の内覧会にお越しの方から設計のご相談を受けました。

古民家に住みたいとお考えで、すでにS社に古民家再生設計を依頼されたそうです。

内覧会場でひととおりの説明を終えると、S社で設計された事柄についての「苦情」を並べ立てられ、多くの質問を受けました。

「要望は全て聞いてくれるのか?」「要望通り設計してくれるのか?」「設計されたら変更はできないのか?」などなど…。

松井事務所では「要望は」全てお聞きするということと「たたき台」を提案して案をご一緒に共有し検討しながら進めることをお答えしましたが、S社では要望もしていない設計ができてきて、変更も聞いてもらえないようでした。

「もう古民家再生を諦めようと思います。」と悩まれていました。かなり酷い目にあわれたようで、設計者不信に陥っているようでした。

実は、S社の設計で悩んで、松井事務所に来られる方は一件や二件ではありません。

2021年に「ウッドデザイン賞」を受賞した「八王子の古民家再生」では明らかに古民家の良さを知らない設計で、一般的な建て売り住宅のような平屋を提示していました。施主さんはがっかりして、すっかりS社に不信を持っていました。その後、当社の設計で再生されて、今では大変喜んでおられますが、初対面の時は上目遣いでした。

八王子の古民家再生

また、鴨川では最初松井事務所にご相談がありましたが、大手の方がいいというご家族の意見でS社で進めたところ工事が進んで屋根の高さが整合しない事に気づいて、再度ご相談に見えた方もいらっしゃいます。こちらで訂正の提案をして感謝されましたが…大手が安心というのは危険です。「わたしたちの事務所では大手の会社が知らないノウハウとスキルの体得が必要で、古民家が造られた技術である伝統構法を勉強してます」とお話したところ納得していただけました。

普段は同業者のことを悪く言わない松井ですが、さすがに貴重な価値ある古民家が改悪されるのは日本の文化の損失につながるので忍びないと思いコラムに書きました。

本来「古民家」は日本の伝統技術が集約された文化財にも匹敵する重要な建物です。設計者は、明治時代に外来技術が入る前の日本古来の「伝統構法」による大工技術を知る必要があり、戦後の簡便化された「在来工法」との違いを知る必要があります。

また、古民家が壊される原因となっているのは「暗い」「寒い」ですから「暗い」を克服するために開口部を広げて補強する「限界耐力計算」が必要ですし「寒い」を克服するためには「温熱計算」をして断熱を強化する必要があります。

古民家の持つ伝統的な民家の価値を大切に次の世代につなげ「古民家のみらい」と創りたいと思います。

 

 

2023年03月08日 Wed

「小平の古民家再生」竣工しました。

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小平の新田開発に尽力された祖先をお持ちの古民家を再生させていただきました。

昭和になって屋根を瓦に変えたのですが、それまで江戸時代の茅葺の外観が残っていました。

100年以上も前の建物をスケルトンにして耐震補強と温熱改修を行い、室内を茶室と、生花のアトリエとギャラリーに改装してさらに100年超の命をつなぎました。

お引渡しの前に写真を撮らせていただきました。プロのカメラマンの写真の前に松井が取った竣工写真を公開します。

丈夫で暖かい「古民家のみらい」を御覧ください。

2023年02月27日 Mon

コラム「変わらない理念」を持つ

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住まいの設計を通して「家族のしあわせ」を実現したいと望んでいる松井郁夫です。

本日は、日頃から考えている「普遍性=変わらない理念」について書きたいと思います。

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短い俳句の中にも「不易と流行」が必要だと説いたのは、俳人・松尾芭蕉です。

「不易」とは「変わらないもの」「流行」とは「流れゆき変わるもの」と解釈されています。

建物にも「流行」があります。時代の流れに沿って変わってゆくものです。

現代の設計者の傾向としては、この流行(はやり)廃(すたり)が最大の関心事のようです。

しかし「流行」を取り込んだとしても、それは技術的なことで、時代を超えて変わらない「理念」が伴うことが必須です。

建築の目的は、デザインする設計者の作品性ではなく、人々が生活し、まなび、遊ぶ場を提供することです。人々の健康や快適性を求め、幸福を実現することだと思います。

さらに環境に対する配慮が必要です。エネルギーの消費や排出量を抑え、CO2の削減を図ることです。エネルギー効率の良い建物を目差し、再生エネルギーを活用し、廃棄物の削減が求められます。

社会や文化に対する取り組みも必要です。人々の共生や格差のない社会の実現や、歴史文化の継承は、要求がなくても取り込む責任があります。

設計者は単なるデザイナーではなく「社会的責任」を負う「理念」を持つべき「仕事」だと思うのです。

写真は、私が敬愛する都市計画家で、世界中の難民問題に取り組み「日本ボラティアセンター」の設立に尽力した「岩崎駿介」さんの著書です。

もういくつか原発事故がおきないと人々は手を結ばないだろうという絵です。地球人としての自覚を問いかけた思想の本です。

現在84歳で自宅と息子さんの家を自力建設しており、FBで毎日精力的なコメントを世界向けて発信しています。

地球規模の「変わらない理念」に毎回感服しております。

2023年02月17日 Fri

内覧会のお知らせ「小平の古民家再生」

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お待たせ致しておりました「小平の古民家再生」の内覧会の日程が決まりました。

オーナーのご厚意により、2023年3月5日(日)10時から16時までの開催となります。

お申し込みは、下記松井事務所までご連絡ください!地図をお送り致します。
MAIL:ok@matsui-ikuo.jp     TEL03-3951-0703      FAX03-5996-1370

 

 

2023年02月16日 Thu

「小平の古民家再生」進捗報告⑦

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「小平の古民家再生」は今月の完成を目指して追い込みに入っております。

間接照明のあかるさの調整や家紋入りの本襖の制作を入念にやっております。

生花の水切り作業をする台所やお茶室になる座敷には土塗りの炉壇も入り畳と炉縁を据えるだけになっております。水屋も竹釘の位置を決めました。

台所や洗面トイレは奥様こだわりの黒を基調にしたインテリアになっています。古民家の中にモダンを感じる仕上がりとなりました。

一般公開の内覧会をさせていただくことになっておりますので、3月にはいって日程が決まりましたらご案内致します。

耐震補強と温熱向上を施した「懐かしい古民家のみらい」をご堪能ください。

梅の花が咲き始めました。

本塗りの炉壇が入りました。

照明設計をしてくれたヤマギワの遠藤くん。8通りのシーン設定ができるスポットライトの調整中。生花を照らします。

黒を基調にした台所と洗面所。

床は吉野中央木材から直送された「吉野桧」です。

 

2023年02月15日 Wed

コラム「トルコ大震災」の被害について

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6日トルコ南部で発生した大地震はマグネチュード7.8に達し発生から一週間経ち、亡くなった人は3万9000人を超えています。地震の震度は阪神大震災の22倍と聞いて驚きました。

現地では必死の救出作業が続けられて、尊い命が救われています。凍てつく空の下に投げ出された人たちには一刻も早い救援が必要です。そんな事態の中、倒壊した建物のほとんどは違反建築であったという衝撃のニュースが入ってきました。

トルコでは日本と同じ耐震基準があるものの、安全基準を満たさなくても一定の金額を払うと使用を認められる制度があると来てびっくりしました。

「恩赦」と言われる制度が存在すること自体が犯罪ではないかと思います。エルドアン大統領は違反者を逮捕して回っているそうですが、そんなことより救出や避難所の建設が先だと思います。

遠いトルコの国で起きた地震ですが、日本も他人事ではありません。28年前の阪神大震災以降、能登、熊本、東日本の地震は予想を超える大きな災害を生みました。

地震に備えるためには、まず建物の耐震性を高めることがわたしたち建築関係者には求められます。

阪神大震災を教訓に、実務者のために『木造住宅【私家版】仕様書』を執筆し、「地震に強い家づくり」のための「木組の家づくり」を進めてきた松井事務所ですが、さらに気を引き締めて実務の設計に当たりたいと思います。

「倒壊しにくい貼り強い木組」は地震国日本で生まれた命を守る仕組みです。

トルコ・ハタイの被災地の様子(2023年2月8日撮影)。(c)DHA (Demiroren News Agency) / AFP

 

 

2023年02月12日 Sun

コラム「農村都市構想」

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わたしたちの暮らしは「空間」によって決まると思います。

豊かな空間に暮らすかどうかによって、幸福度も変わる気がします。

今回は都市空間の「農」化について書きました。

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19世紀の産業革命後のイギリスでは、都市化による生活空間の荒廃を嘆いたハワードによって「田園都市構想」が提唱されたことがあります。

日本でも住宅公団による郊外の住宅団地計画は、田園都市構想の影響を受けていたといえます。

最近では、気候変動の危機的状況から都市生活の価値観も変わって「農村都市構想」ということが言われ、都市に「農」を持ち込む「都市型農園」が提唱されています。

ギャラリー「間」では「How is Life?」という展示会が開催されています。

サブタイトルはー地球と生きるためのデザインーとあります。

この展示では、現在の暮らしによって、これ以上環境破壊を進めないために負荷を低減する行動に切り替え、「成長なき繁栄」も検討すべきだと訴えています。

建築的営為が人々の暮らしに奉仕するならば、生産ー消費ー廃棄の反復から抜け出さなくてはいけないということです。

それには建物を構法から素材、暮らしまでを自然のままを受け入れることを提案しています。建築展というより民俗学的な展示ですが、空間の視点を超えた共感があります。

2022年10月21日から2023年3月19日までの長い展示です。お時間のある方は是非!

https://jp.toto.com/gallerma/

「まちを変える都市型農村」という本もお薦めです。

2023年02月11日 Sat

コラム:参加のデザイン「ワークショップ」②

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快適で住みよい空間をつくることは住まい手の「しあわせ」につながると思います。

意見の違いを乗り越えて「しあわせ」の目標に向かってみんなで作業する場を「ワークショップ」といいます。

一時期、日本全国を席巻した「住民参加の手法」です。いまでも多くの自治体や設計者が採用しています。

松井事務所では、「まちづくり」ばかりでなく「木組の家づくり」の仲間との「協働の場」として「ワークショップき組」を実践しています。

今回は、住まい手と職人と設計者の協働の場「ワークショップき組」について解説します。

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松井事務所が、「ワークショップ」で家づくりを進めようと考えたのは20年前になります。

1995年の阪神大震災のあと、ものづくりの職人の力は大きいと感じていたので、職人との協働は実践していましたが、2000年に「近くの山の木で家をつくる運動」に参加して、職人の手仕事と山の保全つながりが一気に見えたのです。

荒れていた日本の山を救い、伝統的な日本の職人技を駆使して、住まい手の「しあわせの家づくり」を実現したいと思ったのです。

当時、海外に頼っていた木材をやめて、近くの山の木を使うことで、その願いは解決すると確信したのが「ワークショップき組」の結成につながりました。

長い時間をかけて育てた山の木を大切に使い、腕に自信のある大工に技術を振るってもらう。

伐った木は、植林をして山を守り、次の世代が建て替えるまで長寿命で丈夫な家を一般の人でも手に入れられる価格でつくる「山と職人と住まい手をつなぐ」仕組みです。

山の木は「トレーサビリティ」という生産履歴がついた「生まれも育ちもわかる木」です。

職人は「木組」という日本古来の伝統的な大工技術を実践する人たちです。

「プレカット」という工場加工の家が大勢を占める木造住宅業界の中、「手仕事」をいとわない家づくりの集団をつくる必要があったのです。

「手仕事」の職人と組める設計者の育成もはじめました。「木を知り」「職人言葉のわかる」設計者をつくることです。

それが今年で20期を迎える「木組のデザインゼミナール」です。20年間で240人の木組のわかる受講生を世に送ってきました。

いまでは「木組ゼミ」を修了した全国のメンバーが「ワークショップき組」を構成しています。

「第20期木組のデザインゼミナール」は4月16日から12月16日まで、「古民家講座」「木組講座」「理念講座」「温熱講座」をZoomで行います。20年を記念して豪華な講師陣を揃えました。木造住宅の設計のスキルアップを目差している方はぜひご参加ください。

最後は広告になってしまいました…。

広告「住む」掲載

 

2023年02月08日 Wed

コラム:参加のデザイン「ワークショップ」①

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快適で住みよい空間をつくることは、住まい手の「しあわせ」をつくることにつながると考えています。

住まいづくりは家族のしあわせをつくることですし、まちづくりは心地よい地域をつくることだと思います。

わたしたちの目指す「しあわせ」な空間づくりも多くの人の参加によってデザインできると考えています。

そのためには「オープンマインド」が有効だと思います。本日は参加のデザイン「ワークショップ」について書きました。

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「ワークショップ」という「合意形成の技術」をご存知でしょうか?

ひと頃、まちづくりの現場でよく使われた「手法」が「住民参加のワークショップ」です。

意見が違う様々な人たちの想いをまとめるためには、お互いの意見を集約するための工夫が必要です。

肌の色も、目の色も習慣も違う別々の人種を乗り越えて「合意形成」をはかるためにアメリカで生まれた技術だといいます。

出し合った意見を「カード」に書いて「KJ法」で整理したり、相手の立場に立って意見を述べる「ディベート」を通して違いを知ったり、考えを共有したりして様々なゲームを駆使して問題の解決の方向性を探ります。

この手法を使えば、現在の社会が抱えている大きな問題も、果敢に取り組むことが出来ます。

地球環境の問題も、近隣の問題も、人間関係も解決できるかもしれません。

それには心を開いて開放的で隠し事のない「オープンマインド」でいなければなりません。

すべての気持ちを開放して、心置きなく話せる環境を作ることが大切です。そんな場をつくるための講習や本もあります。

実はいま各地で起きて問題になっている「再開発」も最初からこの「ワークショップ」を取り入れて、意見の集約を図れば、意見の衝突や困難も避けられたのではないかと思うのです。

  

 

 

 

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