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2023年06月24日 Sat

コラム「伝統は革新によって進化する」木の建築賞にむけて①

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明日は第17回の「木の建築賞」の授賞式が行われます。大賞は第18回募集チラシの表紙を飾った「星野神社覆殿+本殿」です。審査の折に松井の一押しした作品です。同じ作者の「不惑の一棟」も入賞しました。

作者は古くからの友人で大工棟梁の望月昭さんの息子の望月茂高さんです。親父さんとは国土交通省の「伝統構法の検証実大実験」(2008年~2011年)でご一緒しました。二代目も伝統構法に精通した息子さんで大工棟梁ですが設計も得意で、2つ作品は彼の実力をいかんなく発揮した労作です。「覆殿」は古い神社の本殿を守るために伝統構法の「石場建て」を使い「柱」と「貫」だけ屋根を包みました。すでに8つの賞に輝いています。

神社は「神様の住まい」で人間の生活とはかけ離れた上屋ですから、つくる側の心構えがそのまま表われるという怖さがあります。いわば「つくり手」の純粋な技能や技術の表出の場で、神と向き合う神聖な気持ちをどう表すのかが試されます。もちろん手抜きは許されません、神様が見ていますから。

大工職人は「技術者」というより「技能者」です。体で覚えた技術を時と場合に応じて使い分け、存分に駆使できる人たちです。絵や写真や図面で表現する者とは一線を画しています。身につけた「技能」で木の性質を知り尽くし木と木を組み自然の猛威に備えなければなりません。それには多くの経験を積み、製材された後の木材でもどのように曲がり暴れるのかという木の癖を読み切ることが大切です。

この建物に採用された「石場置き」は大地を傷つけることなく活かし地震や台風に逆らうことのない挙動を示すことが予見されています。また、木材の特性である「めり込み」強さを発揮する「貫」は部材の「継手・仕口」と相まって「摩擦力」で力を減衰することが出来るように「限界耐力設計法」で計算され計画されています。

まさに「日本古来」の「伝統構法」と「新しい技術」を活かした革新的なシエルター「覆殿」の完成です。

「伝統は常に革新によって進化する」という実例を示し「大賞」にふさわしい仕事を見せてくれました。受賞おめでとうございます!

5月よりNPO木の建築フォラムと日本建築士会連合会主催の「第18回木の建築賞」の応募が始まりました。チラシを掲載しておきますので、みなさん奮ってご応募ください。