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2023年07月09日 Sun

コラム「美しい町並みをつくるために」

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美しい住まいと町並みを造りたいと望んでいる松井郁夫です。今回は都市景観の話です。

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先輩に岩崎駿介さんという敬愛する友人がいます。18歳も年上ですが友人と呼んでいいと言われています。僕が現在のまちづくりや建築の道に進むきっかけとなった人です。

元横浜市都市デザイン室の室長で今は自力建設でご自宅を創っています。自力と言っても半端なくデザイン性の高い家で「日本建築学会賞」をもらいました。茨城県八郷に建つ「落日荘」と言います。

学生の頃から岩崎さんに憧れて「都市デザイン」を目指しましたが、役所勤めは嫌で、藤本昌也先生の現代計画研究所に入所して色々な都市の「景観計画」をお手伝いしてきました。

そこでわかったのは、日本の町には江戸時代から「町触れ」という建物の美しさや生活の規範があったり、職人たちの徒弟制の仕組みの中で叩き込まれた言わずもがなの決まり事によって日本の町並みは美観が守られてきたということでした。

いまでは美しい町並みは歴的な保存地区にしか残っていません。

町並みを壊してきたのは「美の基準」を持たない戦後の「建築基準法」です。「規制」や「制限」の「べからず集」でしかなかったのです。

どうつくれば町並みが良くなるのかという「理念」を示した「基本法」が必要なのですが、現在の日本にはありません。

お隣の韓国では日本の「建築基準法」は真似しないようにしています。

「韓国建築基本法」(2007年制定2008年施行)がすでにあって「質の高いまちづくり、建築づくり」を実践していると聞いています。

日本の「基本法」については、神田順先生という方が長年ロビー活動をされていますが、永田町の行政や議員は動きが鈍いようです。

本来大工の世界では新しい建物を建てる時には、むかしからの「口伝」が規範となっていたといいます。

例えば「下屋勾配は一寸返し」というのは上屋と下屋の勾配を同じにするとお尻が下がったようで美しくないので下屋は少し跳ね上がったほうが格好がいいということです。

現行の基準法では建物の規制については、今の5m,10mという地球の円周から割り出したメートル法で規制するので大工の使う人間の身体寸法から創り出した尺寸の三進法に合わなくてヒューマンスケールを失っています。

また「相場崩しはするな」という相隣関係に配慮した大工職人たちの「暗黙知」が歴史的な街並みを美しく保ってきたのですがそれも戦後に失われました。

わたしたちは各地に残る歴史的な建物や町並みに学んで理想的な美しいまちづくりを目指す必要があると思います。