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2023年04月17日 Mon

コラム「誰のためにデザインするのか」

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「古民家再生」と「木組の家」で美しくあたたかい家づくりを目指している松井郁夫です。

今回は「誰のためにデザインするのか」について考えてみたいと思います。

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4月から「木組のデザインゼミナール」の「古民家講座」が始まりました。

初日の講座で「民衆のためのデザイン」という意味で「コミュニテイデザイン」の話をしたところ、その意義についての質問を受けました。

前々回のコラムの「民藝と民家」の話の中では「用の美」という概念があることをお話ししました。つまり「使うこと=用」が「美しく」あることが大切であり、また「美しい」は「用」の中にあること、だという話です。民藝では美しさのみを追求するのではなく「用の美」は、「民家」も「民具」も「民器」も民衆が使うためにあるものには「用」があり「美」があるというのです。

「コミュニティデザイン」もまさに民衆のためのデザインです。民家やその集積である都市デザインは「特定の人」のためのものではなく「不特定多数」のためのデザインだと思います。

オンリーワンのデザインを否定することはしませんが、住まいの場合、事情によっては住む人が代わったり時代がかわって生活のスタイルが変わることもあります。

それゆえに、多くの人々の要望を聴いたり、意見の相違を乗り越える「合意形成」を図ったり、将来の生活の変化に対応できるように計画すべきで、特殊解ではなく一般解としての「スタンダード」な答えが求められるのだと思います。その意味で「民家」はまさに、長い時間を生きた地域の人達のための「コミュニティデザイン」だと思います。

写真は、塩尻平の古民家「馬場邸」です。雨の少ないこの地域では一般的な大屋根の「本棟づくり」の家です。