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2023年05月06日 Sat

コラム「設計者と職人の協働」②

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美しくあたたかい住まいをつくりたいと願っている松井郁夫です。

前回のコラムの続きをお送りします。「設計者と職人の協働」についてです。

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古くてあたらしい問題ですが「設計者」と「職人」はなかなか仲良く協働できない悩みがあります。

古くから日本独自の伝統技術を引き継いできた「職人」の流れと明治時代に入ってきた「西洋建築」の流れにある「設計者」は水と油かもしれません。

「地震」や「台風」などの自然災害に対して日本の伝統的な建築技術は力で抑え込むのではなく自然に逆らわず受け流す考えかたです。一方西洋の考え方は自然を征服するという指向で力で抑え込む考え方です。

自然災害の常襲地域である日本列島で生まれた思想と硬い岩盤を持つヨーロッパ大陸のとの違いでしょうか?

日本の「木組」の技術はヨーロッパの「石組」のような「剛構造」ではなく、力をいなす「柳に風」の指向です。長い歴史の中で未曾有の災害には受け流すほうが良いと判断したのでしょう。

なので日本な大工と西洋の教育を受けた設計者は建物の構造の考え方のところでまずぶつかります。

木組を指向する大工の考え方は木の「めり込み」や「靭性」を生かした「減衰設計」ですが、構造設計者は木を均一な材料として捉え「強度設計」で建物を考えています。これでは意見が合わずに仲良く仕事はできません。

昨日も能登半島で震度6強の地震がありましたが、「強度設計」を指向する構造設計者は、これでまた建物の「強度」を上げる傾向をつよくすると思います。

わたしたち「木の特性」を知る設計者は、予断なく今後の動向に注目したいと思います。