2014年03月11日 Tue
●居住歴 6年 ●家族構成 夫(60代)・妻(60代)
もともと木が好きなんです。木工や打ち刃物、日本建築が好きで、自分で道具を一式そろえて、家具や木の小物などを作っていました。ある時、とある古民家を取り壊すという話を聞いて、素晴らしい松材の柱を手に入れたことがありました。いま思えば、その頃から少しずつ、終の棲家としての家を建て替えようと思い始めた気がします。いろいろと調べながら心の準備をしてきました。家づくりを真剣に考え始めたのは、仕事を退職する時期ですね。
以前から木が大好きでしたので、最初から、ごく自然に、建て替えるなら「木組みの家」にしようと思っていました。そのため、木組みの家を設計できる建築家を調べては、いろいろな方に会いに行きました。そのなかで松井さんのことを知り、飛び込みで事務所にお伺いしたのが始まりです。
木について、木組みの家について、職人さんについてどう考えているのかを松井さんに尋ねた時に、その人柄に惹かれました。後から松井さんには「あの時の質問はいじわるだったよ!」と言われますが、「この設計士さんならおまかせできる」と思いました。それで、お願いすることに決めました。今でも年に一度は、松井さんと我が家で一緒にお酒を呑むんですよ。とても楽しいひとときです。
松井さん、棟梁をはじめとした職人の皆さま、そして私。みんなが「本当にいい家をつくりたい」という強い思いを持ち、それぞれの立場で自分の考えや思いをはっきりと、後くされなく言い合いました。時には良い意味で戦いながら、家をつくりあげたような気がしています。松井さんも「ここまで、がっつりと木を組ませてもらえる家づくりはなかなかありません」と仰っていました。それだけ、それぞれが大変な思いをしながら家づくりに関わったのだと思います。松井さんや職人さんは、仕事のやりがいがあっただろうと思いますよ!私は非常に面白かったです。
この素晴らしさは、実際に生活をしてみないと分からないと思います。そのため、言葉ではうまく言えないのですが…。なんと言いましょうか、家の中に流れる「風」がとてもやわらかいんです。春夏秋冬、四季折々の季節の良さを運んでくれるようなやわらかさです。この家に住んで6年目ですが、今でも木の香りが「風」にのってふんわり漂っています。そして、いつも空気が澄んでいるように感じます。
今では、この家ではない生活は考えられません。家に入り込んでくる朝焼けの光、夕陽、どれもが本当に美しい。夕陽に照らされ反射した黄金色の木の美しさを眺め、「あぁ、今日も一日よかったな」と、しみじみと幸せを噛みしめます。そして、この家で目覚めることのできる幸せを、日々感じながら暮らしています。リビングは吹き抜けになっていますので、家の天井を見上げれば立派な木組みをいつでも眺めることもできます。これも幸せなことですね。
我が家は4軒分の木材を使って木を組んだ「せがい造り」の家で、建方の時はとにかくすごい迫力でした。そのため、ご近所の方々が「何ができるんだろう」と、頻繁に見に来て下さいましたね。家が完成した後は、いろいろな友人知人がよく遊びに来て下さるようになりました。面白いことに、皆さんそれぞれに、ご自分のお気に入りの場所というのがあるようです。ある方はキッチンカウンター、ある方はリビング、ある方は工房で、めいめいがくつろいでいかれます。私たちもなんだか嬉しいですよ。娘もこの家が大好きで、早く住み継ぎたいと言っています。
本物の家が持つ様々な力には、本当にすごいものがあると実感しています。この木組みの家に住む機会があれば、誰もが自然と「楽しみながら目一杯しっかりと生きていこう」と思えるようになるでしょう。これは、決して大げさではありません。毎日の充実感が、まるで違います。本物の家とは、それくらい良いものです。家づくりを思い立ったなら、予算はもちろん大切ですが、まずは「本物の家に住みたい」という思いを持ち、その実現にむけて一つ一つ進んでいくといいですよ。そうすれば、私のように良い縁と良い家に必ず巡り会えると思います。もちろん、私は松井チームがつくる木組みの家をおすすめします。
2013年11月18日 Mon
●居住歴 4年 ●家族構成 夫(60代)、妻(60代)
主人の仕事の関係から、若い頃は京都に住まいがありました。10回以上引っ越しを繰り返し、大手住宅メーカーや京都の大工さんに依頼して、家を数件建てました。どれも仕上がった時はいいのですが、劣化が早いんですよね。そんな残念な気持ちがあったので、埼玉に家を建てるときは「終の棲家にしよう」と思っていたんです。そして「最後なら、とことん木組みの家に住みたい」という気持ちが芽生えてきました。
「木組みの家にしよう」と決めてから、まずはインターネットで建築家を調べました。実際に秩父や飛騨の高山など遠方まで訪ねましたよ。いい家もありました。どうしようか決めかねているときに、たまたま本屋で松井郁夫先生の著書に出会ったんです。「これがいいかも!」とインスピレーションを感じ、本を読んでさらに松井郁夫先生のポリシーを感じて。“木そのものを大切にする”という考えに共感しました。
結婚相手を選ぶのと一緒ですよ(笑)。私は実際お会いして、余生のすべてを託そうと腹を決めていましたから(笑)。松井郁夫先生から「木と漆喰の家で、価格も無理なくできますよ」とおっしゃってくださり、納得しました。 主人とふたりで伺ったとき、自分たちが考えた間取りをお見せしようとしたところ「見せないでください」と松井郁夫先生が言われました。そして「どんな家に住みたいのか、言葉で教えてください」と。私たちの希望、要望、すべてを聞いて、言葉を図面に落とし込んでくれたのです。希望を図面にして、形を与える、ああ、これがプロの仕事なんだな、と感動しました。
とにかくプロの考え方を、打合せ中でも、施工中でも、いろんなところで感じました。そして、じゅうぶんに納得しました。一番の腕を持った職人さんが集まって、しっかりしたグループになっていましたね。
木のぬくもりが素晴らしいです。この良さは、住んでみないと分かりません。 引っ越しを繰り返していたので、マンション住まいも知っています。コンクリートの冷たさと、木の冷たさは違うんですよね。冷たい、というより暖かい、というのでしょうか。いつまでも家が暖かいんです。家が持つ保温力を実感しています。 住み始めてから、家のことをまじまじと見つめるようになりました。大きな梁を眺めたり、トイレに空気抜けの窓を見つけたり、松井郁夫先生のこだわりと良さが後でじわじわくるんです。
気持ちが変わりました。落ち着きましたね。4年経った今でも、家中に木の香りがします。外出先から戻ると「帰ってきたなあ」と感じるんです。主人も私も、そして娘たちもみな笑顔になるというか。陽の光の温かさ、木と漆喰の調和がこれほどとは。お願いして本当に良かったです。
建前のときのむき出しの梁をみて「すごいのができるんだね」と言われました。骨組みだけで分かるんですね。ほかの家のつくりと、構造が違うそうです。近くに住む大工さんにも「ここは料理屋ができるんですか?」と聞かれたほどです。ほかにも、通りがかった左官屋さんが「この壁は本当にすごい。いい壁だ」と感心していかれました。
2013年11月18日 Mon
吉祥寺の家2夜景
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吉祥寺の家2
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ヨガに使う畳コーナー
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対面式カウンター
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吉祥寺の家 ダイニング
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吉祥寺の家2
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二階フリースペース
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吉祥寺の家 二階寝室
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吉祥寺の家2
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吉祥寺の家2 桧の浴室
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吉祥寺の家 吹抜
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玄関
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ヨガコーナー
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対面式カウンター
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TVカウンター
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階段室
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吉祥寺の家2
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畳コーナー
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二階フリースペース
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書斎
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吉祥寺の家2
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子供室
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洗面所
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木のバルコニー
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吉祥寺の家2 図面
外資系の証券会社にお勤めのオーナー家族が、日本一住みたい街「吉祥寺」で敷地を探すところからお手伝いしました。
整形の敷地を探して、ようやく巡り会って設計を終えた頃に東北大震災がありました。
直後に建設が始まりましたが、原発事故の影響で省エネルギーの家づくりが課題となりました。
そこで、工事中に設計を変更して、省エネルギーを図るために、床下にエアコンの温風を吹き込むことにしました。
当事務所の「床下エアコン」採用の第一号です。
そのためには基礎と土台を密着させる必要があります。
住宅の床下を閉じることは、伝統的な工法にはないので心配しましたが、床下を一階の環境と同じにすることで、問題はありませんでした。
むしろ空気環境を同じにしたことで、温熱的にはコントロールしやすくなり、エアコン一台で環境が快適になりました。
吹き抜けを通して空気が二階にも廻り、窓からの光は一階のリビング・ダイニングを明るくしました。
一階は対面式の台所とヨガの出来る畳敷コーナーのあるリビングとなりました。
二階は階段ホールをフリースペースとして、子どもさんの個室のとなりに共有の場をつくりました。
二階の部屋は、子どもたちの成長に合わせて壁で仕切るようにしています。
和式の主寝室とご夫婦の書斎と納戸もついて、4人家族には充分な広さを確保しました。
バルコニーは屋根から釣っているために軽く見えます。
二階天井は、屋根裏の複雑な構造の形が小屋組にでない工夫をしてスッキリと納めました。
どちらも太い木組だからできることです。
伝統的な木組の家でもモダンなデザインで温熱環境の向上を図ること出来る事例です。
所在 | 東京都武蔵野市 |
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構造規模 | 木造2階建 |
敷地面積 | 141㎡(42.65坪) |
建築面積 | 70.15㎡(21.22坪) |
延床面積 | 127.57㎡(38.59坪) |
建築費 | – |
設計監理 | 松井郁夫建築設計事務所 |
作図協力 | 春紫建築設計事務所(赤川真理) |
施工 | キューブワン・ハウジング |
竣工 | 2011年12月 |
建ぺい率 | 50% |
容積率 | 100% |
地域地区 | 第一種低層住居専用地域 |
防火地域 | 準防火地区 |
構造材 | 天竜桧・天竜杉(葉枯し乾燥) |
床板 | 天竜桧 厚15mm |
外壁仕上 | 土壁風藁入りモルタル |
断熱材 | ウッドファイバー(木の繊維) |
内壁仕上 | 漆喰塗 |
開口部 | アルミサッシ(ペアガラス) |
作品 | 美しい木組の家 | 価格帯 | 3,000-4,000万円未満
2013年02月25日 Mon
松井郁夫建築設計事務所では、東日本大震災の復興提案として、被災した方々が寄り添って住むことができる「ひとつ屋根の下計画」(復興共同住宅)を提案します。
被災した方々の不自由な仮説生活も、はや2年になろうとしていますが、当事務所では、被災した方々に一日も早く、 団らんと活力の場となる住まいを提供したいと考えております。
「ひとつ屋根の下計画は」被災者の方々の負担を軽減する共同住宅です。
住戸の形状は、冬の日差しが全戸に入るように計算された扇型のデザインです。
中心には住民と近隣と人たちが交流できるコミュニティスペースを設け、地域の交流の場としました。
住宅の外壁と内部の床・天井には無垢の木を使い、自然素材の快適な住み心地を大切にします。野菜を育てる菜園や公園も計画し、菜園につながる縁側も各住戸毎に用意しました。
被災者の方々に一刻も早く、仮設住宅よりも居心地の良い木の住まいで暮らしていただきたいという願いで提案しました。
本提案に関するご質問ご要望などについては、当事務所までご連絡ください。スタッフ一同、復興のお役立てること願っております。
2013年02月06日 Wed
お庭の設計を進めるために、造園屋さんと一緒に「高円寺の家」にお伺いしました。
ダイニングには出来たばかりのテーブルが置かれていました。
製作は、Soui woodworks 代表 神保哲也さんです。
中心で板の分かれているデザインは、松井事務所オリジナルです。建主さんがお花を生けて待っていてくださいました。
お庭が出来た頃に、お住まい見学会を開催させていただけることになりました。詳細が決まりましたら当サイトでお知らせ致します。
下の写真は
階段の一段目に桧を使ってみました。さりげなく、無垢材の段板です。
ブログ | プロジェクトレポート | 高円寺の家
2013年02月05日 Tue
2013年度 第10期「木組のデザインゼミナール」受講生を募集します
丈夫で快適な、燃費の良い木組みの家づくりを身につけたい方に
いま、日本の家づくりは大きな節目を迎えています。戦後68年つづいた簡便な在来軸組住宅の時代から、丈夫で長寿命の架構を持つ省エネルギー住宅へ変わろうとしています。 そこで見直されてくるのが、日本の気候風土に合った伝統の木組みです。さらに、省エネルギー基準をクリアする性能の住宅を造るための手法です。
本講座では、伝統構法による日本の家づくりを、職人がこれまで培ってきた木を組む技術に学び、さらに美しい日本の風景を取り戻すために美術の習得を目指します。
今年度は、岐阜森林文化アカデミー講師・辻充孝先生による、木組みの家の温熱環境と改正省エネ法への対応が身につく講座も準備いたしました。 架構を知りつくした「き」組による、快適で燃費の良い木組みの家づくりを身につけませんか?
対象は、木組みの家づくりを学びたい設計者および施工者です。 本講座の特色は、美しいデザインと耐震的な構造のバランスの取れた木組みを学べる点にあります。 美術大学出身のメンバーが美術講座を、国土交通省による伝統構法の見直し委員会に参画する「木造住宅【私家版】仕様書」執筆メンバーが木組み講座を指導します。
美術と技術の二方向から美しい木組みの架構と温熱環境の構築の手法を学びます。 知識だけでなく、実際に手を動かしてデッサンや軸組模型をつくることで、しっかりと実践力を身に着けることができます。
ワークショップ「き」組の家づくりが「平成20年度 長期優良住宅先導的モデル事業」の採択を受けたことを契機に、全コースとも「長期優良住宅」に対応するプログラム構成となっています。 講座は「入門コース」と「上級コース」と「実践コース」の3講座制です。 実際の建物の架構を実践するコースも、サポート体制として用意しました。受講生による実践事例も増えています。
わたしたちは、伝統的な大工技術と国土保全につながる木材の循環の仕組みから、省エネルギーにつながる日本の家づくりを考えます。 日本の優れた木組みの仕組みを、みなさんと共に未来へつなげていきたいと思います。 全国の皆様のご参加をお待ちしております。
ワークショップ「き」組 代表理事 松井郁夫
◆2013年度 「木組のデザイン」ゼミナール受講生募集要項
(募集要項+お申込書のPDFはこちらです)
■ 入門コース: 美術講座と木組みの理念
■ 上級コース: 私家版メンバーによる木組み講座
■ 実践コース: 現場研修、温熱講座、より実践的な木組み講座
■ 開講日:4月~8月、9月~1月 基本的に月1回 (入門・上級コースは日曜日、実践コースは土曜日)
※実践コースの木組みの家の見学会は、現場の進行状況により日程が変更される可能性がございます。あらかじめご了承ください
■ 時間:10:00~17:00 全5回(詳細は別紙スケジュールを参照)
一泊研修(植林ツアーまたは伐採ツアー、自力建設補助+スケッチ旅行:費用別途) 詳細後日
■ 費用:入門コース・上級コース 受講料8万円(1講座1万6千円×5回)+入学金1万5千円(お申込み時)
実践コース 受講料5万円
■ 場所:一般社団法人ワークショップ「き」組事務局内(東京都中野区江原町1-46-12-102)
※受講生多数の場合は会場を変更することがありますのであらかじめご了承ください。
■ 講師: 美術講座:松井郁夫、松井奈穂、松井匠
木組み講座:現場講座:私家版研究会メンバー・松井郁夫、宮越喜彦、小林一元
温熱講座:辻充孝(岐阜森林文化アカデミー講師)
■ 講座内容
美術講座 「美術を身につける」 家づくりにかかわる基礎的な美術の実技を行い、プロポーションや色彩感覚を養う。 デザインの基本となるスケッチや色面構成、立体造形を学ぶ。
木組み講座 「木組みを学ぶ」 初めて木の家を学ぶ人や改めて木組みの家を学びたい人のための、実習。 木組みの家づくりにかかわる、実施構造図から模型までの木組みを学ぶ。 私家版研究会メンバーによる課題と講評。
実践講座
「温熱講座」 省エネルギー法改正に基づく温熱対応の手法を学ぶ。
「現場研修」 実務に役立つ詳細設計や監理を、現場の実際を見て学ぶ。
「実践木組講座」 木組みの積算や申請業務などを学び、実務に即活用できる木組みの講座。
実際に計画中の建物を私家版メンバーが添削する「スペシャルプログラム」(別途料金)も用意しました。 今すぐ建てる家を木組みでつくりたいとお考えの実務者にオススメです。
10年目を迎え、温熱講座が加わったことで、これまでで最も充実した内容となっています。 全国から奮ってのご参加をお待ちしております。
■ 申し込み: 所定の申し込み用紙に必要事項を 手書きで 記入の上、下記に郵送する。
〒165-0023 東京都中野区江原町1-46-12-203
一般社団法人ワークショップ「き」組事務局 「木組のデザイン」ゼミナール 係
■ 問い合わせ: 一般社団法人ワークショップ「き」組事務局 (松井郁夫建築設計事務所内)
TEL 03-3951-0703 FAX 03-5996-1370 E-MAIL info@kigumi.jp
2013年02月05日 Tue
1955年 全国いたる所に民家と呼ばれる人々の暮らしがあったころ。
日本の風景が美しく、高速道路もない頃に、一人の若者が、日本中の民家を撮って回りました。
写真家二川幸夫さん(80歳)です。その写真展「日本の民家ー1955」が3月まで汐留ミュージアムで開かれています。
わたしも20代の頃、二川幸夫さんの写真に触発されて、全国の民家を訪ね歩いたことがあります。
35年前、大学を卒業し町並み保存運動に参加しはじめた頃です。
わたしのふるさとも美しい城下町でしたが、その頃は日本中の歴史的な町並みが開発の名の下に
伝統の民家が壊されてゆく高度成長時代でもありました。
1955年といえば、さらに20年前に、民家と呼ばれる庶民の家が、時代遅れで誰も見向きもしなかったころ、
二川幸夫さんは、日本の民家の美しさを再発見し、世界に発信した人です。
今回の展覧会では、58年前の日本の風景と民家の素晴らしさに改めて驚かされます。
展覧会に使われた、日本の民家全10冊は、一冊にまとめられて写真集として発売されています。
唐突かもしれませんが、3.11以来、日本の伝統的な暮らしを見直し民家を見直すことが大切に思えるのです。
伝統構法の見直しが、国土交通省でも始められたこの時期に、民家の展覧会はよい機会だと思います。
むかしながらの民家が日本の家の原点だと思うからです。
2013年02月02日 Sat
3.11以来、イエについてずっと考えている。
あの日多くの家が津波で流され、多くの命が失われた。
かろうじて助かった人たちは、今も仮設住宅に暮らしている。
避難生活は困難を抱えたまま、もうすぐ2年がたとうとしている。
仮設住宅は、避難している人たちの生活を支えきれているだろうか?
狭くて無機質な仮説住宅は、家族が集う器として、決して満足ゆくイエではないと思う。
イエとは何か?家族が住まうイエとは何か?
人の生活を支えるためのイエ。子供たちが元気に育ってくれるイエ。
家族が集い団欒するためのイエ。自然の猛威から身を守ってくれるイエ。
イエは本来どうあるべきか?
寝て起きて食事をするだけがイエではないだろう。寒さ暑さをしのげればよいばかりでもないだろう。
人の生活には家族が大切だ。人間らしく生きるということは、家族がともに暮らし支えあうことではないか。
家族みんなが心豊かに、過不足のない暮らしができるイエ。子供たちが健やかに育つイエ。
丈夫で長持ち、安心して暮らせるイエ。住んでいる地域の風景となるイエ。
一家族のイエが始まりとなって、隣との関係が生まれ地域が育ってゆく。
イエは人格形成の原点。家族の原点。
イエづくりにかかわる一人として、人間らしく暮らし、人と社会がつながる住まいを提供したいと心から思う。
2013年01月29日 Tue
一軒の古民家の改修計画が始まります。
実測調査の結果、明治40年一月上棟の建物とわかりました。106年前の建物ということになります。
足元の作り方に特徴があります。石の礎石に載せただけの、いわゆる石場建ての民家です。
土台の上に足固めを併用した、床下のしっかりした建物です。
6間×4間の母屋に当たる丈夫な架構に下屋がついています。
このような建物は、現在の基礎コンクリートに土台を緊結した建物とは違う構造でできています。
足元がフリーなのです。
そこで限界耐力設計法という構造解析をお願いしました。
その結果、この家の耐力は巨大地震にも耐えることがわかりました。
約42坪の平屋ですが、開放的でかつ耐震的な建物ということがわかったのです。
さらに調べてみると、一間置きの梁を一間置きの柱が支える、合理的で素直な造りかたでした。
座敷の床構えもけれんみのない清楚な感じです。
この家を造った大工の人柄が、この家の人格を表している気がしました。
明治の職人の気質を大切に、この家再生しなければと思います。
耐震に加えて、温熱環境にも過不足のない改修を目指します。
またご報告いたします。
2013年01月25日 Fri
全国に残る歴史的な町は、文化庁の伝統的建物群保存制度によって保存されています。いわゆる伝建地区と呼ばれる町並みです。
しかしながら、そのような保存制度に守られた町の建物でさえ、改修や増築の折には現行の建築基準法に適合しない建物とみなされてきました。 むかしながらの日本の大工技術で作られた伝統的な家が、既存不適格という不名誉な名前で呼ばれているのです。
歴史的な町並みに建っている多くの民家は、明治時代もしくはそれ以前に建てられた家々です。その多くは伝統的な木造建築で、石の上に載ったいわゆる石場建ての工法です。現在の法規の基礎との緊結という条件が、石場建てでは適合していなかったのです。そのために、文化財となっている木造建築の多くは、耐震改修に窮していました。
しかしながら、昨年度まで実施された、国土交通省の伝統的木造建築の設計法作成委員会において、振動台で揺らされた実大の建物は、石場建てで巨大地震に耐えました。実験棟は、歴史的な建物に多く見られる足元フリーの木造二階建てでしたが、実験の結果、大きな破損もなく、巨大地震をしのぐ石場建ての効果が見られたのです。
この結果は、日本の伝統的な建物のこれまでの常識を覆す大きな出来事ですが、あまり多くの方に知られていません。現在、国土交通省では実験の検証結果を取りまとめ足元フリーの設計法を検討しているところです。
この成果によって、これまで既存不適格と言われてきた歴史的な民家が工法的に見直され、多くの歴史ある町並みに光明が与えられることを願っています。
先人たちが作ってきた歴史的な建物が、最も新しい検証実験で地震に強いことが証明されたことを知っていただくとともに、わたしたちは、民家の知恵と工夫を、これからの家づくりに活かして行きたいと考えます。
2013年01月24日 Thu
東京に大雪が降った日、竣工したばかりの「高円寺の家」にご訪問しました。
松井が桧に手書きした表札をお渡しし、カーテンなどインテリアが取付いた様子を拝見させていただきました。
「庭を眺めながら暮らしたい」という言葉ひとつをいただいて、完成したお住まいです。
雪が溶けたら、庭づくりがはじまります。
ブログ | プロジェクトレポート | 高円寺の家
2013年01月22日 Tue
東京都杉並区「善福寺の家Ⅱ」 お住まい見学会
2月9日(土) 13:00~16:00
(印刷用PDFはこちらです)
(定員に達しましたので締め切らせていただきました。ありがとうございました。)
「善福寺の家Ⅱ」が竣工して4年が経ちました。
東京都杉並区善福寺公園の近くに建つ、パティオのある木組みの家です。パティオに緑を植え、四季の変化を楽しめます。2階には空中回廊と呼ぶバルコニーがあり、上から中庭を臨めます。 この度、建主さんのご厚意により、お住まいの様子を見学させていただけることとなりました。 無垢の木と漆喰による、人の体にやさしい室内です。調温湿に優れた自然素材の快適な住み心地をぜひ体感ください。 お申し込みをお待ちしております。
お申込み先
一般社団法人ワークショップ「き」組事務局 (松井郁夫建築設計事務所内)
電話:03-3951-0703 メール:info@kigumi.jp
※お申込みの方に、地図をお送りします。
※お申込み、お問い合わせは「お問い合わせフォーム」からも受付しております。
※一般向け見学会ですので建設業関係の方のお申込みはご遠慮ください。
2013年01月17日 Thu
「木組みの準耐火建築物」として注目を集めている「高円寺の家」が、
日本林業調査会から取材を受け、林政ニュースに掲載されました。
「高円寺の家」の敷地は東京都条例による「新防火地区」です。
防火規制の厳しい都会の狭小敷地でも、国産の無垢材をふんだんに使った、
丈夫で快適で省エネルギーな住まいを実現出来ます。
(印刷用PDFはこちらです)
ブログ | プロジェクトレポート | 高円寺の家
2013年01月15日 Tue
「吉祥寺の家Ⅱ」が竣工して1年が経ち、点検にお伺いしました。
この日の都内は大雪だったので、「吉祥寺の家Ⅱ」が雪の中に佇む姿を見ることができました。
家の中に入ると暖かく、1年を通じて快適にお暮らしとのことでした。
吹抜のある延床40坪の住まいをエアコン一台で空調できる工夫を施した、燃費の良い、省エネに優れた木組みの家です。
ブログ | プロジェクトレポート | 吉祥寺の家II
2013年01月12日 Sat
建築技術2013年1月号は「改正省エネ基準と省エネ住宅計画原論」特集です。「伝統建築の省エネ設計」と題して、南雄三氏より依頼された松井の原稿が掲載されました。
伝統的建物が断熱化によって、温熱性能の向上が可能なことを計算によって確かめました。
これから日本の気候風土に根ざした住まいの快適性を実現するために、断熱だけでなく湿度や通風などをコントロールする総合的な家づくりを目指します。
架構を知り尽くした松井事務所がつくる、快適で燃費の良い家にご期待ください。
2013年01月12日 Sat
「南房総の民家再生」では温熱環境を向上させる改修を行います。
既存家屋、無断熱土壁の家の実測から、熱損失係数(Q値)を算出し、次世代省エネ基準(Q値2.7W/㎡K以下)を満たす仕様を提案しました。
Q値とは、室内外の温度が1℃の時、家全体から1時間に床面積1㎡あたりから逃げ出す熱量のことをいいます。
数値が小さいほど、熱が逃げにくい家ということになります。
「南房総の民家再生」では、現況の10.54W/㎡K(表上)という値であったにもかかわらず、温熱エコ改修によって、次世代省エネ基準を上回る2.39W/㎡K(表下)まで下げることが可能です。
上の判定書が改修前、下が改修提案後の判定書です。
一番下の棒グラフを見ていただくと、改修前に屋根、外壁、窓や床から逃げていた熱が、温熱エコ改修によって抑えられた様子がわかります。
つまり、古い無断熱の建物でも、温熱エコ改修によって燃費がかからないうえに快適な暮らしができることがわかります。
さらに耐震性能を加えて、耐震エコリフォームをお勧めします。これからのリフォームには欠かせない改修方法です。
(岐阜県立森林アカデミー講師・辻充孝さん作の判定ソフトを使用しています)
ブログ | プロジェクトレポート | 南房総の古民家再生
2013年01月12日 Sat
「高円寺の家」は「木組みの準耐火建築」として各方面から取材を受けました。
日刊木材新聞の記事を、掲載いたします。
————以下掲載記事————
東京都杉並区の防火地区内にムクの木材を使った木造住宅が完成し、設計士の間でちょっとした話題になっている。
同住宅を設計した建築事務所の代表者は「防火地域でも木造住宅が建設できることの参考例になれば」と話す。
同住宅は、JR高円寺駅から徒歩10分の住宅密集地に建設されたK邸。当地は建築基準法とは異なる「新防火地区」。
これは住宅密集地を対象に都条例で定めれられたもの。敷地30坪弱に約20坪の2階建て。
燃えしろ設計による準耐火建築物で、外装に45ミリ厚の木材、タルキに150ミリ角を使ったほか、 梁も150×240ミリなど内外に木材を大量に使い「木材費は建築費の2割程度」という。
設計は松井郁夫建築設計事務所(東京都松井郁夫社長)、施工はキューブワン・ハウジング(同、細沢龍雄社長)が それぞれ手掛けた。
同建築設計事務所は燃えしろ設計の建築は初めてだったため、桜設計集団・安井昇氏の指導を受けた。
木材は天竜TSドライシステム協同組合が供給した天竜材を使った。
施主のK氏は「風呂場からライトアップした中庭が見えるようにしてほしいという以外は、全て松井先生にお任せした。
建坪からするともっと狭いかと思ったが予想外に広く、使い勝手も良い。大変満足している」と話している。
ブログ | プロジェクトレポート | 高円寺の家
2013年01月10日 Thu
「南房総の民家再生」は耐震エコリフォームです。まず詳細な調査で現状を把握しました。実測をもとに構造計算を行い、劣化した部材を取り替え、断熱材を入れ、床を張り替えます。地震に強く、快適な温熱環境で省エネに優れた空間に生まれ変わります。
ブログ | プロジェクトレポート | 南房総の古民家再生
2013年01月01日 Tue
2012年12月30日 Sun
全国6ヵ所キャラバンツアーが終わりました。
このツアーは、国土交通省が進める、伝統的構法の設計法作成および性能検証実験検討委員会の一環として、
全国6ヵ所で開催された講演会です。
「知恵と工夫の設計ー伝統建築に学ぶ」というタイトルで、日本全国の伝統民家21軒の調査に基づき、
現代に生かすことのできる構法的な工夫を紹介するものです。
金沢を皮切りに、松江、東京、高知、鶴岡、日田を回りました。
伝統的木造建築のこれからの設計法の考え方や伝統構法の定義に加えて、
構法歴史部会の事例調査の一員として、民家から見えた知恵と工夫を解説させていただきました。
全国の熱心な設計者や施工者、行政や審査期間の方たち、学生や一般の参加者も含めて、
約800人の方々に聞いていただくことができました。
自然災害の多いこの国で、むかしからつくられてきたの民家の知恵や工夫が、
いま わたしたちのつくっている木造住宅にどのようにに活用され、これからの日本の家の未来につながってゆくのか。
日本の家はどこから来てどこへゆくべきか。この大きなテーマに立ち向かい、価値観を転換する時期が来ています。
災害にも強い日本の家を取り戻し、新しい展望を拓く機会です。
伝統の知恵と工夫をいかした構法の法制化に向けて、実務者の声を集めましょう。
キャラバンにお運びいただいた皆様に、あらためて感謝いたしますとともに、
全国の伝統を大切に家づくりを進めるすべての方に、今後の活動にどうぞお力添えください。
プロジェクトレポート