プロジェクトレポート

2013年05月29日 Wed

連載【木組みの家に住んで】第十四話
「越し屋根と地窓のある風景 家にまもられて暮らす」

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 「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイの第14話です。
木組の家に住み心地を、不定期連載でお届けします。

 

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十四話
越し屋根と地窓のある風景 家に守られて暮らす

 

前回までの「木組みの家に住んで」の連載は、夏日(25℃)の頃で終了してしまいました。あれから30℃以上の真夏日があって、35℃以上の猛暑日がつづいたのです。
昨年(13年)のあの猛暑を、木組みの家で、どう、くぐり抜けてきたのか、今日は、そのことをお伝えしたいと思います。

越屋根「高円寺の家」

越屋根。夏はここから熱気が抜けます

とりあえずは、あの夏がどれだけ暑かったのかを、ふり返ります。
8月12日、高知県の四万十市では41℃を記録。これは体温より高いと評判になりました。東京都心の夜の最低気温が30.4℃までしか下がらない日がありました。これは過去138年間でもっとも高い最低気温だった…。ことほどさように、世間では、昼も夜も記録だらけの暑さがつづきました。

140403「木組の家に住んで」隠しエアコン

我が家、唯一のエアコン

わが家のエアコン事情をご説明すると、階下の食堂に据え置き型のエアコンが一台、そなえられているだけです。寝室は2階にありますから、就寝中にエアコンをつけてもベッドまで冷気は届きません。

結論から先に申し上げますと、あの猛烈な酷暑の中でエアコンのスイッチを入れたのは3日間だけでした。
風がそよとも動かない曇りの日。気温だけでなく、湿度が高かった日が3日間あったのですが、その時だけエアコンのお世話になりました。そして、それにも増す熱帯夜を、こちらは一度もエアコンに頼らずに過ごすことができたのです。

 

昼にしても夜にせよ、どうしてそんなことが可能だったのか。

室内に自然の涼風が入ってくる仕掛けが、この家にはあったからなのです。
松井郁夫建築設計事務所にわが家の設計をお願いしたときに、4つのセットが提案されました。

 

それは、
1. 南部屋の吹き抜け
2. 地窓
3. 天井のインテリアファンの設置
4. 越し屋根(腰屋根)

の4点です。

なんと、これが仕掛けとなって、夏場の室内に涼風がもたらされたのです。

地窓「高円寺の家」

地窓。テレビの下です

わたしは窓について、この家に住むまで勘違いしていたことが2つありました。
それは、窓というのは人間の腰より上に設置されるものだと思っていたこと。
写真でおわかりいただけると思いますが、わが家の食堂には低い位置の窓があります。これが、「地窓(じまど)」というものなのだ、そうです。普通の位置に窓はあるのですよ。食堂テーブルの向こう側が、普通に見られるのと同じ窓です。その他に地窓も用意されている。これに意味があったのです。

140403「木組の家に住んで」吹抜とファン

吹き抜けとインテリアファン 上の開口部に寝室があります

もうひとつ、わたしが思い違いしていたのは、窓を開けると室内の風は水平に動いていくのだと考えていたことです。
たとえば、東側の窓から風が入って、西窓に抜けていくというような…。

ところが、暑い夏場では、風は水平に動くのではなかった。
熱せられた空気は上昇気流になって、下から上に流れていく。
これは、この家に住んだ新たな発見でした。

140403「木組の家に住んで」寝室

2階の寝室から見た吹き抜け

140403「木組の家に住んで」寝室閉

普段は障子で仕切られている

4点セットの
最後に「越し屋根」をあげました。
越し屋根とは、屋根の部分に取り付けられた空気の吐き出し口です。
わが家の越屋根は、リモコンで開閉ができます。

地窓を開ける。越し屋根も開口する。
それだけで空気が抜けていくルートができあがる。
夏場では熱せられた空気が上に行こうとしますから、越し屋根を開ければ、そこから室内の熱気が逃げ出します。
それに伴い、地窓からより冷えた風を引っぱりこむ。
こういう循環によって、わが家にそよ風をもたらしてくれたのです。

風を2階から天井に通り抜けさせるためには、地窓のある部屋は「吹き抜け」になっていなくてはいけません。
そして、吹き抜け天井に設置されたインテリアファンがゆっくり回って、上昇気流をさらに支援する。

140403「木組の家に住んで」越屋根

ベッドから見た越し屋根

 

この4者の仕掛けが相まって、室内に風がおきるので、エアコンなしの夜を過ごすことができたのです。

日本は高温多湿の気候をかかえている、とこの連載でわたしは幾度か申し上げてきました。
エアコンなど器具がなかった昔の日本家屋はどうだったのでしょう? と、ふと思います。

昔の日本家屋は、部屋と部屋を仕切る上部に「欄間」という開口部をつくって高温を逃がす工夫がされたと、先日、松井さんからお伺いしました。

 

140403「木組の家に住んで」階下

ベッドルームから見た階下

 暑い空気は上にこもる。
そのこもった熱気を逃がす工夫で、住みやい家屋にするという古人の智慧には、あらためて驚かされます。

わたしは現在の家に住みはじめて1年半(14年春現在)が経過します。

先日、建築専門誌の記者から、「住んだ感想はどうか」とインタビューされたので、
わたしは次の4点をあげました。

 

 

(1) 家の持つ調湿機能で、暑さ寒さが緩和されている。(エアコンをあまり使わないで済む)

(2) 調湿のお陰で、肌の保湿が保たれるようになった。

(3) 木肌の吸着作用により、室内でほこりが立たない。結果、襟の汚れが少なくなった。(身体の汚れが少ない)

(4) 地窓、越し屋根の働きで、熱帯夜でもそよ風の中で就寝できる。

その結果、この家に住むようになって、『自分が家に守られて暮らしている』という実感を持つようになった、とおこたえしたのでした。

 

<第十五話につづく>
第一話はこちらです

 

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140403「木組の家に住んで」スケッチ図面2「松井事務所」より

Kさん、久しぶりの原稿をありがとうございます。
竣工して1年と3ヶ月、暮しそのものを味わっていただいてなによりです。
夏にエアコンを頼らずに過ごすために、松井事務所は通風も設計をしています。
高円寺の家は、空気の温度差を利用して、下から上へ流れるほんの少しの「ゆらぎ」が、快適な室内環境を生みます。温度差換気です。無風のときでも、空気が流れていくので、熱帯夜でも過ごしやすい寝室です。

今年も、執筆者であるKさんのお宅を拝見する「お住まい内覧会」を企画しています。
木組の家を体験してみませんか?
詳細は、後日当HPで告知いたします。どうぞお楽しみに。

 

2013年05月29日 Wed

連載【木組みの家に住んで】
第十五話「外になくても起きる風(見学会の秘密)」

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 「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイの第15話です。
木組の家に住み心地を、不定期連載でお届けします。

 

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十五話
外になくても起きる風(見学会の秘密)

 

14年4月29日の祝日、わが家で4回目の「お住まい見学会」が催されました。
完成後1年半で4回目の開催。 これはちょっと多めです。

でも、これがなかなか刺激的でおもしろいのです。
これまでの連載でわたしは、「身体の汚れが少なくなった」、「冬場に頭髪からフケが出なくなった」、「熱帯夜でもエアコンなしで寝られている」などを報告してきました。
わたしは素人ですから身体の変化を感じ取ることはできても、それがどういう理由でもたされたのかがわかりません。
まして、松井事務所はセールストークで、あらかじめ「木組みの家に住むと、こんなことがありますよ」なんて言ってきません。ですから、自分では説明がつかない中で、でも何だか住み心地が良いなと思って暮らしてきたのです。

内覧会になると、見学者は当然、住み手のわたしに「(住んで)どうですか?」訊いてきますね。
わたしは「何か知らないけれど、洋服の襟汚れが少なくなったような気がします。たぶん身体があまり汚れなくなったのかもしれません」と答えます。 それだけしかわかりませんから。
すると、となりに立っている松井さんが、解説を入れてくれるのです。
「無垢の木は湿気を帯びているので、家に入ってきた埃(ほこり)をそれで吸着してしまう特長があります」 と断言する。 「だから部屋の中で埃が舞っていない」と。
「へぇー、そうだったの」とわたしは見学者への説明をやめて、ひとしきり感心してしまうのです。
自分が普段から何気なく感じていたものが、このお住まい見学会で究明されることが多い。 それが楽しいのです。

今回のエッセイでは、見学会でわたしが何を聴いて、そのどこに驚いてきたのかを、みなさんにご報告したいと思っています。

「あの東の窓から朝日が差しこんでいますね。」と松井さんが指さします。
「普通の家でしたら、光に照らされて細かい埃(ほこり)が静かに、限りなく落ちていくのが見えるはずです。 でも、この家では、朝日に透かしても、埃はぜんぜん見えません。 これは部屋の中で埃が舞っていないからです」と言うのです。
「なるほど。それで、この家にいると、何かわからない清浄な空気感があるのですね」とわたしは身を乗り出して納得してしまう。

「木組みの家に住んで」埃のたたない無垢の家

日が射してもホコリが見えません

1年半前の新築完成の時、 「新しい家には空気清浄機を」と思い立って、機器を買い求めて寝室に設置しました。
ですが、月に1度の内部掃除をしても、フィルターにゴミが溜まらない。 「埃を集めない役立たずの空気清浄機」と思って、すぐに粗大ゴミに出してしまいました。
でも今日、 松井さんの解説をお聴きして、あれは機械の性能の問題ではなかったのだと、気づいたのです。
部屋に埃が立っていなかったのでした。

「木組みの家に住んで」紙芝居で説明

お住まい内覧会の様子

今回の内覧会で発見したのは、もう少しあります。
わたしは連載の第一回目で、「板敷きの寒さの経験」を述べています。 高校時代、剣道の練習で立った体育館の板敷きの冷たさ。 その経験をもとに、「新家の板敷き」を想像してしまったのです。
その時、松井さんから伺ったのは、「檜(ひのき)や杉だったら冷たくありません」というものでした。 それで、わたしは初めて木の種類によって感じる温度に違いがあるのだということを知ったのです。
今回でふた冬を越しましたが、なるほど檜の板敷きは冷たくありません。 2年とも暖房はほとんど使わずに春が来てしまいました。

でも、木の種類で感じる温度が違うことがわかっても、それがどうしてなのかは、まだわたしの中では理解できていません。

それが、今回の内覧会で新しい発言を耳にしたのです。
「木には針葉樹と広葉樹の2種類があります。針葉樹である檜や杉には内部で空気を通す『導管』がたくさんあって、それが羽毛の布団のように空気の層をつくって木肌を温かく感じさせるようなのですよ」と松井さんがおっしゃったのです。

 

木の種類とは、そういうことを指していたのか。
わたしが見学会を終えてから、すぐに「針葉樹」と「広葉樹」を検索して調べたのはいうまでもありません。

「広葉樹」を調べると、その中に樫の木があります。 昔、お巡りさんの警棒にも使われた、堅い木です。 これは、密度があって、松井さんがおっしゃった「導管」が、少ないものと予想されます。 だから、こちらの肌目は冷たいのかもしれません。

そうすると、どうして「針葉樹」には導管がたくさんあって、「広葉樹」には少ないの? と、わたしには新たな疑問がわいてくるのです。

針葉樹は比較的、寒い地方や山の高度に分布していることが知られています。 反対に広葉樹は、温かい所に分布している。

これだけで推測すれば、寒い所で育つ檜や杉は、自分の内部に空気の層をたくさん取り込んで寒さをしのぐ働きをもっているのだろうか。 それはまるで、寒い地方の水鳥から取れる羽毛が温かいのと同じなのかもしれません。 後日、松井さんにわたしの説を尋ねたところ、 「それはわかりません」とお答えになりました。 考えてみれば、松井さんは設計士さんで、植物学者ではなかったのです。

ともかく、わたしの家の板敷きがどうして冷たくないのかが、こうしてわかったのでした。

「木組みの家に住んで」越屋根から温度差換気

越屋根から温度差換気

今回の見学会で、もうひとつ気づかされたことがありました。
前回(14回目)の連載で、わたしは「地窓、吹き抜け、越屋根」の3セット効果で真夏の熱帯夜をエアコンなしでしのいだ、とレポートしました。

それは、専門的な知識もわからずに気づいたままを書いたのです。
松井事務所の解説で、「温度差換気」という専門用語があるのをあとで知りました。
扇風機やエアコンで人工的に風を起こさなくとも、窓の配置だけで自然に風をおこしてしまうという古来の智慧です。
これが「温度差換気」という現代的言辞であらわされているのでしょう。

このことも、わたしなりの解説で見学者の質問に答えました。

(1)越屋根を開けることで、上部にこもった熱気が外に吹き出し、それにしたがい地窓から冷気を連れ込んでくれる。

(2)地窓と越屋根の高低差が大きければ大きいほど、室内におこる風のうねりが大きくなるようだ。

「そうやって、エアコンなしでも室内には風が起きるようなのですよ」と説明したのです。

すると横から松井さんが、 「外に風が無くてもね」と、小さく申し添えたのです。

え! と、それを聴いてわたしはとても驚いたのです。
そうなのです。東京の熱帯夜は風なんか吹いていない。 なのに、家の中に風がおきている――。
この対比。 わたしの言いたかったのはこれなのです。

「木組みの家に住んで」地窓から温度差換気

地窓が大事です

専門家って、すごいですよね。 言葉をすこし足しただけで、説明が聴く者の胸にわかりやすく迫ってきます。

「木組みの家に住んで」吹抜のインテリアファン

インテリアファンを逆回転させて対流を起こします

「しかも、越屋根からは一方的に熱気が排出されているわけではありません。少しだけですが、屋根に這っていた冷気が、越屋根を通して入り込んでくることが実験でわかってきているのです。 出る風があれば入ってくる冷気もある。 すなわち、小さな対流が部屋の中で起きていることになります。 それがそこに住む人間に心地よさをもたらしているのかもしれません」。

こうやって、わたしの好奇心を満足させて、4回目のお住まい見学会は終了しました。

見学者をお見送りした後で、すこし雑談。

その軽い話の中で、わたしは松井さんから彼による驚くべきデザインの秘密を聞かされたのです。
たぶんそれは、企業秘密。 松井さんの許可をいただきましたら、 次号にレポートさせていただきたいと思っています。

 

<第十六話につづく>
第一話はこちらです

 

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南雄三「通風トレーニング」上方一面開放熱対流型換気

南雄三「通風トレーニング」(建築技術発行)による「上方一面開放熱対流型換気」

「松井事務所」より

Kさん、今回も内覧会を開催させていただきありがとうございました。
家について、もっとタネ明かしが必要だったようで…。文章を書く方は探究心が違いますね。
耐震の工夫などは、かなりの時間お話をさせていただていたのですが、木組の家の快適さの理由やデザインのことは、それほど説明しなかったかもしれません。松井事務所は本質的には職人気質ですので……。デザインのお話も、どうぞよろしくお願い致します。

それに、民家の知恵は、最近になって科学で解明され、やっと説明できるようになったことも数多くあるのです。

例えば、文中の「温度差換気」ところで出てきた、越屋根から熱気が排出されるのと同時に、冷気も入るという話もそうです。
住宅技術評論家の南雄三さんの新刊「通風トレーニング」では『上方一面開放熱対流型換気』と呼ばれています。
この日は、南雄三さんにもにお越しいただきました。一緒に、越屋根の下に立って手をかざし、ゆるやかに冷気が降りてくるの体感しました。計算によると高さ80センチの窓があると、より効果的だそうです。

このように昔から町家でも使われていた技術が、現代で解説できるようになってきたのです。
これからも科学が発展していくと、木組の家の良さを、もっと解説できるようになると思います。たのしみですね。

また、南雄三さんと松井は5月20日に対談しますので、こちらもぜひどうぞ。

 <匠>

2013年05月28日 Tue

連載【木組みの家に住んで】
第十六話「デザインでも住みやすさを演出」

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 「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイの第15話です。
木組の家に住み心地を、不定期連載でお届けします。

 

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十六話
デザインでも住みやすさを演出

 

松井郁夫事務所では、後継者を育てるために専門家対象の「木組みゼミ」を不定期で開いています。

設計士さんと言えば、構造計算が主の理系の資格だと思いがちですが、このゼミではデザインの重要性も説いているようです。それもそのはず、松井さんは難関の東京藝大を現役で合格した方ですから、そもそも建築士さんというよりも絵描きさんに近いのだと思われます。

 

木組みの家というのは、骨組みがしっかりしていて、その上に自然素材で作りあげられています。それだけでも住み心地が良いのですが、今回はデザインを重視してより住まいのレベルをあげる、というお話です。

 

1

見慣れる 大壁

とりあえず、ひとつだけ専門的なお話をさせていただきます。

家の壁には大別して「大壁」と「真壁(しんかべ)」の2種類があるということをお知りおきください。

2

従来に見られる 真壁

大壁というのは今、流行りの2×4住宅に見られる壁です。囲いだけで柱がないので、壁一面にクロスを貼ったものです。これが「大壁」。

それに対し「真壁」というのは、柱で建てた家にある壁で、日本間によく見られる壁です。柱を前面に押し立て、壁は脇役になるのかもしれません。

その2種類を頭に置き、高円寺の家をふり返ってみます。

この家は木組みの家ですから、柱がふんだんに使われています。木組みというのは、柱と梁の架構で作られているのを総称としていうのだそうです。

 

ですから自慢の柱を前面に押し出して「真壁」にしても良かったのです。でも、絵心のある松井さんは、あえて高円寺でそういう手法を取らなかった。

これが今回の注目点です。

 

3

縦の柱を壁で隠した

 

「柱を前面に立てたらお寺や神社のようになってうるさいでしょ」と松井さん。

それで、高円寺の家は縦線の柱を壁に隠して「大壁」にしてしまった。

横線の梁は建築用語で「あらわし」といって天井を貼らずに見せるというデザイン。縦線は隠して、横線は見せるというコンセプトだったのです。

 

それでどうなったかというと、壁は「大壁」にしてモダン、そして上を見上げれば梁が「あらわし」でむき出しになっている。

ひと言でいうと、高円寺の家は「和風モダン」という作りになった。

梁は通常よりひと回り太い素材を使っていますので、住まう者にとって豪勢な印象を与えます。

そして真っ白に塗られた大壁作りの漆喰。

 

5

柱で支えるがそれはちょっとだけ見せる。ボードの下には柱の全貌が

よく見るとここにデザインの秘密があったのです。

大壁といっても、柱のすべてを隠しているわけではない。少しだけ片りんを見せる。

それは文章で表現するのは難しいので、写真での説明をご覧ください。

「太い梁があるのにそれを支えている柱が全然、見えないと、そこに居る人は不安を感じる」という心理が人にはあるらしいのです。

それで、柱はちょっと見せる。ここが支えているから安心して、とでも言うのでしょうか。

さりげなくそれが施されているので、住んでいて潜在意識に不安を感じることはありません。

こういう技法に私は感心してしまうのです。

この細部のこだわりは誰でも出来るものでは、きっとないのでしょう。絵心のある松井さんのセンスに依るところが大きいのだと思われます。

 

このデザインの良さも、木組みの家の居心地の良さ→住みやすさにつながっているのでしょう。

高名な住宅評論家の方が高円寺の家を見に来られたことがあります。先生はソファーに腰かけながら、「どの家もだいたい破綻が見られるものだが、この家についてはそれがない」としみじみおっしゃっていたのが印象に残ります。

木組みの家は、無垢の木や漆喰の性能のお陰でそれだけでも住みやすさを感じます。その上にデザインでもなんだかわからない効果で住む人間に安寧を与えるのです。

高円寺の見学会にお越しになることがあれば、デザインもご注目いただけると、この家の住みやすさの秘密がわかってきていただけると思います。

 

<第十七話につづく>
第一話はこちらです

 

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高円寺の家

チラッとみせる階段

「松井事務所」より

Kさんの不定期連載ということで、久々の原稿をありがとうございました。
真壁でありながら、モダンで軽やかにみせるデザインを心がけています。
さり気なく見せるために時間かけて推敲するのですが、あとからご説明しないと、建主さんにも伝わりませんよね。
でも、住んでいて「なんとなく心地良いな……」というのは、さり気ないデザインの力なのです。
ある建築家は、「建物を見た帰り道に、思い出しながら”あの家はあの部分が良かった”というより”どこかわからないけどなんだか良かった”」というほうが、いい家なのだ」と言いました。そういう家になるように、日々考えています。

 <匠>

2013年05月28日 Tue

連載【木組みの家に住んで】
第十七話「私たちが住んでいるのは復興住宅だったのか」

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「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイの第17話です。
木組の家に住み心地を、不定期連載でお届けします。

 

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十七話
私たちが住んでいるのは復興住宅だったのか

 

「よく16話まで話が続きますね」と、この連載をお読みになった方から言われることがあります。私は文筆のプロではありません。なのに、どうしてこんなに書けるのか? というのは私にもわからない。でも、「キーワード」が頭の中に浮かぶと、それに続いて文章がスラスラ出てきてしまうことはあります。

 

さて、今回のキーワードは2つあります。

ひとつ目は、お住まい見学会のことです。

高円寺の家は、3ヶ月に一回のペースで松井郁夫事務所による「お住まい見学会」を実施しています。かなり頻繁です。でも、見学会にはたくさんの方が興味津々でお見えになります。そんなある時、松井事務所が懇意にしているハウスメーカーの方から電話があったのだそうです。

「HPでよく見学会の告知をされていますが、見に来られるお客様はいらっしゃるのですか?」という問い合わせでした。「毎回、賑わっていますよ」とスタッフが答えると、「こちらは、見学会をしても見にくる方はいません」と先方は言ったのだそうです。

木組みの家は見学者が引きもきらないのに、どうしてハウスメーカーのモデルルームは見にくる人が少ないのか?
これが今回のキーワードです。

そしてもう一つ。

150526-1

松井事務所設計の30年前の家 劣化しない室内

最近のことですが、松井事務所が30年前に設計して建てた木組みの家が売りに出され、結構よい値段がついて売却成立したというニュースが入ってきたのです。
これについてはちょっと詳しくお伝えします。車の値段は6年で査定ゼロになるのはよく知られていますが、木造住宅は20年経つとゼロになると言われています。上物の価値はナシで土地の値段だけが残るというのがこれまでの常識です。
なのに、松井さんが設計した木組みの家は30年たっても価値が損なわれないということは一体どういうことなのでしょう?

 

私は戦後すぐの生まれで、戦災の復興の中で育ちました。
時の政府は焼け野原になった土地に復興住宅を建てるのが急務だった時代です。

やがてくる経済の高度成長。
その結果、土地の価値はうなぎ上りですが、家の価値はないという時代が永くつづきます。極端なはなしですが、土地付きの家を買ってそこに一日でも住めば家の価値は半減するといわれたのです。20年で査定ゼロどころか、一日住めば値段が半減してしまう家。それが家というものの資産価値だったのです。

それに対して、30年たっても値段がついて売れる木組みの家とは、いったい何なのでしょうか。

松井事務所30年前設計の家 現在

松井事務所30年前設計の家 現在

今回は、その興味深いテーマにふれたいと思っています。
この答えをさぐるためには、建築基準法の移りかわりを知るとわかりやすくなります。建築基準法を調べると、災害があるたびに見直されていくのに気づかされます。

古くは関東大震災
そして、戦災後
阪神淡路大震災
東北大震災。
つまり、建築基準法は災害のたびに見直されて改正されていくのです。

 

斜めに入っているのが筋交い

斜めに入っているのが筋交い

そして今日の着目点は、戦災後の改正です。
木組みの家は「伝統構法」の作りといわれています。柱・梁による古来からの伝統的な家作り。

しかし、木組みにするためには継手・仕口などの大工手間がかかります。おまけに柱材、梁材などの材料がふんだんに必要とされます。焼け野原になった国土を前にして悠長なことをしていられないと、国は思ったのでしょうね。

そこで建築基準法を改正して、簡易な家を作れるよう奨励した。それが、「在来工法」という建て方だったのです。「在来」と名乗っていますから昔からあるような錯覚に陥りがちですが、戦後に出た工法です。

伝統構法とはどう違うのでしょう。

伝統構法と在来工法の違い

伝統構法と在来工法の違い

在来工法の大きな特徴は、筋交い(斜め材)を施すことでした。。日本の古来の建て方は柱、梁などの垂直、平行の架構で、斜めに材をいれるという考え方はなかったのです。

斜め材で柱同士を支えてそこに壁板を貼る。柱を立てた軸組なのですが、壁板で補強するのが「在来工法」といわれるものなのです。
後に現れる壁板だけで作られる2×4工法と伝統構法の折衷だと考えれば良いのでしょう。

bが貫(ぬき) 伝統構法では柱と柱の間に貫が渡してあり、これが地震の備えとなります

bが貫(ぬき) 伝統構法では柱と柱の間に貫が渡してあり、これが地震の備えとなります

 

 

 

在来工法の利点は何か

  • 筋交いと壁板で補強したので、柱が従来より細くてもOK
  • 壁板と柱・梁の併用なので木材が少なくてもOK(壁板は合板)
  • 継手・仕口でなく金具で止めるようになったので、人手がかからない
    こうして、焼け野原だった国土に「復興住宅」が次々と建てられていくのです。在来工法が始まったのが1950年と年表にあるので、戦後の需要だったことがわかります。
貫の支えで地震にあっても倒壊しない

貫の支えで地震にあっても倒壊しない

 

そして時代は移ります。
70年代半ばに、もっと簡便な2×4工法が北米から取り入れられました。住宅の工場生産が可能になり工期も大幅に短縮されるに至ったのです。

在来工法と2×4工法

在来工法と2×4工法

国の統計によると、平成26年の木造戸建ての着工件数は49万戸。
そのうち在来工法で建てられたものが99%、伝統構法は1%という数字が示されています。住宅の現状を知るうえでは重要な指標です。

 

専門的になりましたが、もう一度、木組みの家を考えてみます。

木組みの基本は、わかりやすくいえば「架構」にあります。柱と梁の骨組みのことです。これをまず大切にしようという建て方です。これに対し在来工法や2×4住宅は戦災からの復興のために考えだされた住宅です。その延長線上に今、私たちが生きているといえます。

 

 

一方、私たちは戦災後に高度経済成長を経験してきました。
経済的に豊かになって住宅機器の豪華さに目を奪われています。それで現在ではもう復興住宅から脱したような錯覚に陥りがちです。しかし、日本古来の「架構」から現在の住宅事情をみれば、私たちはまだ復興住宅に住んでいるのだということに思い至るのです。

そのことを念頭に置いてモデルルームの話に戻りましょう。どうして木組みの家には見学者が多くて、ハウスメーカーの建物には少ないのか?それは、ハウスメーカーの建物が復興住宅の延長なので、人は住の魅力を感じないからと、考えられないでしょうか。

どうして、木組みの家は30年たっても価値が減じないのに、普通の家はすぐに値段がなくなってしまうのか。これも箱でしかない復興住宅だから価値が見いだせないのではないかと考えれば、納得がいくのです。

 

 

 

<第十八話につづく>
連載「木組みの家に住んで」まとめページはこちら

 

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木組みの家「松本城のみえる家」構造見学会報告2

木組みの架構は斜め材がありません

「松井事務所」より

「貫」は、中国から伝わり、地震大国日本で受け継がれてきた耐震技術の叡智です。
日本の住宅は、簡便化の流れの中で「貫」が失われていきましたが、永く安心して住める家を考えていくと、「貫」はやめていけないというのが松井事務所の考えです。
いい家をつくっていけば、時が経っても価値が認められるというのは、励みになりますね。
それと、建物が上棟するといつも思うのですが、架構に斜め材が無く、縦と横だけで構成されていると、綺麗だと思いませんか? <匠>

2013年05月28日 Tue

連載【木組みの家に住んで】
第十八話「父と兄ががっしりスクラムを組み、
妹たちはつないだ手をはなさない」

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 「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイの第18話です。
木組の家に住み心地を、不定期連載でお届けします。

 

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十八話
父と兄ががっしりスクラムを組み、妹たちはつないだ手をはなさない

松井さんにお願いをして高円寺の家を建ていただくまで、わたしは建築について何も知りませんでした。
それが戦後の建築史などを語ったり(17話)して、生意気このうえないことになっています。
どうぞ素人の戯言だとお見逃しください。

先日、おこなわれた高円寺の「お住まい見学会」(15年4月)にわざわざ山口県から来られた方がいらっしゃいました。
リフォーム会社にお勤めで、社長が木組みの家を気に入って、会社から派遣されたのだといいます。

山口に帰ったら見学会と家の様子を社員や社長にレポートしなくてはいけないと、写真をたくさん撮っていました。
彼は、「写真をいくら見せても、私がいくらプレゼンしても説明できないことがあります。それは、この家の居心地よさなのです」と漠然とした居心地のよさを、口では伝えきれないもどかしさをおっしゃるのです。

私もこの連載を通して、自分の身体が汚れなくなった、冬に乾燥しない、
熱帯夜でも涼風のなかで就寝できている、などと家の利点を挙げてきましたが、
いちばん肝心なことが表現できないでいるのに気づきました。

それは、山口の方と同じで、この家の居心地の良さをどうしても言葉で表せないでいるのです。
もう、実際に来てもらって感じていただくしかありません。

そして、見学した方たちが一様に口にするのがその居心地の良さだったりするのです。

今回はがんばって、木組みの家の居心地について究明してみたいと思います。
今回の見学会で耳をひいたのは松井さんが説明していた次の言葉です。
「建物はいつも小さく動いているのですよ」ということ。

私はそれをお聞きするまで建物というのは地面から屹立して微動だにしないものだと思っていました。
でも考えてみれば、風が吹いたり気圧の変化などの気象条件もあります。地殻の動きだって考えられます。
それに合わせて家が小さく動いているのは、言われてみれば当たり前のことでした。
庭の木立でさえ風に吹かれて小さくそよいでいます。家がそういうことに影響されないことはあり得ません。

ただ、建物には、鎧のように固めて環境に負けないように作るのと、
自然と調和するように建てられるものと2種類があるらしい。
そのことを少し詳しく見ていきたいと思います。

150724nuki

ハンマーを持っている大工さんが 足をかけているのが貫

西洋の建物は「剛」の設計
日本家屋は「柔」の建物
というのはよく比較されることです。

「柔」が支配的であった日本の建築様式も明治維新の西洋化により、「剛」の考えが取り入れられてきました。その結果、建物を地面に縛り、ボルトで締め付けて自然災害に負けないような設計が主流になってきたようなのです。それは「剛」の方が構造計算として数値化しやすいからのようでした。

西洋の考えは数値化がすべてです。一方、日本の伝統というのは形に残しにくい文化で成り立っています。

 

ボルトで締める

一般の木造住宅。ボルトで締める

昔の大工には設計図がなく口伝で技術を継承してきました。
楽譜はなく、口唱歌(くちしょうが)で伝えられる伝統楽器。
シナリオ台本を用いず口伝で全体化する舞台芸術。
そして、数値化できないような日本家屋の柔構造。

前回、お示しした在来工法の筋交いを例にとります。
筋交いをしてそこに何寸の釘を何本打ち付けると、それで構造計算ができるらしいのです。
さらに壁板を貼ればもっと強度が増し数値化ができる。素人的に考えると、つまり構造計算とは建物を強固にする計算式なのかもしれません。

でも、災害はいつも想定外の力で襲ってきます。
いくらボルトで締め付けても、大きな揺れがあったら木材は金属に負けて砕かれてしまいます。
木材を金具で固定して強固にするからこそ、それがかえって脆い原因をつくるともいえるのです。

松井さんが木組みの家を志したきっかけは95年の阪神淡路大震災の現地調査だったとお聞きしています。

先年の東日本大震災で大きかったのは津波の被害でした。
大正時代の関東大震災では火災だったと記録にあります。
そして、松井さんが調査した阪神淡路大震災では、建物の倒壊による圧死が多かったというのです。
住む人を守るはずの家が、そうではなかったのですから建築家としてはショックだったと思います。
以来、松井さんは木組みの家に取りかかるようになった。

伝統構法と在来工法の違い

貫と筋交い

さて在来工法の筋交いを例に出しましたので、伝統構法の「貫(ぬき)」はどうなっているのかを検証したいと思います。

これが居心地の良さを解明する今回のテーマです。

「貫は木組みの家では不遇です」これは松井さんの口癖です。貫は、とても大切な役割をしているのに、家が完成してしまうと漆喰壁にかくれて見えなくなってしまう。

木組みの家で前面に姿を見せる「柱」や「梁」が主役だとしたら、「貫」はそれを脇で支える黒子なのかもしれません。

貫とは名前の通り、柱と柱の間を貫き通しています。柱同士に手をつないで支えている様子を思い浮かべてみてください。貫は柱同士を支えますが、それはがっちりと固めているわけではありません。
柱が動けば一緒に動く。

想定外の揺れがあっても、つないだ手を離さない

想定外の揺れがあっても、つないだ手を離さない

まさしく柔構造。
その貫の上に漆喰などの泥壁が塗られます。
大きな地震で揺れれば壁はぼろぼろになる。
ボードや合板壁をがっしりと金物で打ち付けた剛建築から比べれば一見しても弱々しそうです。
ですから日本家屋は強固な建物を求めるための構造計算が成り立たちにくい時代が永くつづいたようです。
柔構造なので数値化できないといった方がわかりやすいのかもしれません。

それでは想定外の地震があればどうなるのか?
大きな揺れがあっても木で組まれた柱と梁です。
がっしりとスクラムを組んで揺れを吸収しようとします。
そして、貫は何があってもつないだ手を決してはなそうとはしない。

柱と梁が父と兄に例えるなら、貫は妹たちなのかもしれません。

さて、今回のテーマである、木組みの家の居心地の良さについてです。

大きな地震に遭遇するのはまれなのですが、家は小さな気象現象によっていつも揺れている。
それに負けないようボルトで締め付け、壁を金具で固めて頑強にした「鎧」のような建物が一方であります。
その鎧の空間にいることが果たして心地よいのかということです。

木組みの家は、自然の環境を吸収しながら小さく揺れている。
それは組まれた柱や梁のお陰だし、一見ひ弱そうな漆喰壁の効果もあるのでしょう。
それを陰で支える貫の存在も関与している。
この柔構造こそが住む者に居心地のよさを与えているのではないかと、私は思っています。

完成して今はもう見えないけれど壁の中でつないでいる手に、わたしはいつも感謝して暮らしているのです。

<第十九話につづく>
連載「木組みの家に住んで」まとめページはこちら

 

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「松井事務所」より

150723kouenji「安心できる」という心地よさは、家にとって、とても大切なことだと考えています。

木組みの家の安心のひとつには、地震があっても倒れないということがあり、建主さんにはいつも「大きな地震が来たら、家が一番安全なので、外に飛び出さないでくださいね」と言っています。
でも、安心できる居心地の良さをつくるためには、地震で倒壊しないだけでなく、ほかにもいろいろな知恵と工夫があって、それはありがたいことに、この連載でたくさん触れていただいています。性能も意匠も、「総合的」にデザインすることで、居心地の良い家になるのだと思います。<匠>

2013年05月24日 Fri

「高円寺の家」電気代が200円でした

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木組みの家「高円寺の家」エアコン設置の工夫

床置エアコン設置を工夫して
冷暖房効率を大幅に上げました

太陽光発電の設置と、省エネの工夫をした「高円寺の家」。
5月の電気料金は3,700円で、売電分3,500円を差し引くと200円だったそうです。
これからの時代に向けた
「燃費の良い木組みの家」です。

2013年05月23日 Thu

1980万円で設計料込のパッケージプラン
木組みの家「キューブ・ミニ」

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木組みの家「キューブ・ミニ」

 

 

最近、小さな家のご相談を受けるようになりました。
そこで、狭小地でも建てられる「小さな木組みの家」を、
お求めやすいパッケージプランでご用意いたしました。

永く住める丈夫な木組みの骨組みは、将来の増改築も可能です。

本格的な木組みの家が、この価格で実現できるのは、ワークショップ「き」組みだけです。

地震に強く、省エネで燃費が良く、快適な住み心地で、
いつまでも飽きのこないデザインの木組みの家をつくりませんか?

詳細は、お気軽に松井事務所までお問い合わせください。

 

「き」組の家【キューブ・ミニ】印刷用シートはこちらです

2013年05月16日 Thu

「南房総の民家再生」骨組みがあらわれました

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古民家再生「南房総の民家再生」解体

解体がはじまりました

解体工事が進むにつれて、床下や屋根裏の骨組みが見えてきました。

 

古民家再生「南房総の民家再生」解体床

床と天井をはがして骨組みがみえました

明治40年の建物は、実に丈夫な骨組でできています。
特に、床下と屋根を支える木組みが丈夫です。

 

古民家再生「南房総の民家再生」解体小屋裏

棟木の墨書に「明治四十年」とあります
106年前の建物です

古民家再生「南房総の民家再生」解体足固め

足固めの造り方は、奄美大島のヒキモンづくりに学びました

床下の足固めには、太いボルトを使っていました。
このころになると、大きな金物が手に入ったのでしょう。
足固めは、松材の8寸板で土台併用です。

土台は腐朽が少なかったのですが、足固めの松材はほとんど取り替えました。

 

また、床下の湿気で結露したボルトは、木の栓に取り替えました。
足固めは、桧の4寸角をクサビ締めしました。金物を避ける作り方です。

 

クサビ締めの足固めは、奄美大島のヒキモンづくりに学びました。
建物が動いても壊れない、丈夫な床下をつくります。

 

古民家再生「南房総の民家再生」解体床2

縁側です。趣を大切にした耐震エコ改修をします

日本の伝統構法が息づいていたころの古民家ですから、木組の知恵と工夫でで改修しました。

 

「限界耐力設計法」という構造の解析のおかげで、伝統構法の建物に適した再生が可能になりました。

基礎石の上に建物を載せたままで、構造補強ができるのです。

 

丈夫な骨が出来上がり、これからいよいよ断熱改修と心地よい仕上げの始まりです。

 

 

2013年03月04日 Mon

「南房総の民家再生」限界耐力計算で耐震診断

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「南房総の民家再生」限界耐力計算

「限界耐力計算」軸組図

古民家再生「南房総の民家再生」耐震診断小壁

小壁も地震に有効です

「南房総の民家再生」は築106年の古民家で、石の上に置いただけの建物です。足元が、通常の基礎コンクリートではなく石場置きの場合は、現在よく使われている耐力壁などの構造解析では正確に判断できないため、耐震診断に「限界耐力計算」を採用しました。

「限界耐力計算」は、耐力要素として、壁の中の貫や足固め、差し鴨居などの横材のめり込みや摩擦、開口部の上下にある小壁なども算入する詳細な構造計算法で、古民家再生には最も適しています。

今回は「限界耐力計算」に詳しい滋賀県の川端眞さんに依頼し、耐震診断を行っていただきました。
結果は「極めて稀に発生する大きな地震でも倒壊しない」というものでした。現地の地盤や建物の架構のバランスが良く、土壁と貫が地震に対して揺れながら力を減衰するということで有効なのです。
この家が、むかしからの大工職人の知恵で、大地震から命を守る家であったことに改めて感心しました。

わたしたちは、これからも足元の固定されていない古民家の再生のお手伝いをしたいと思います。さらに、耐震改修とともにエコ改修を行い温熱環境の向上も図ります。見積もりも上がって、いよいよ工事が始まります。ご期待ください。

2013年02月25日 Mon

「ひとつ屋根の下計画」復興共同住宅の提案

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ひとつ屋根の下計画全体配置図
ひとつ屋根の下計画の提案1ひとつ屋根の下計画の提案3ひとつ屋根の下計画の提案軸組模型1ひとつ屋根の下計画の提案軸組模型2

松井郁夫建築設計事務所では、東日本大震災の復興提案として、被災した方々が寄り添って住むことができる「ひとつ屋根の下計画」(復興共同住宅)を提案します。

被災した方々の不自由な仮説生活も、はや2年になろうとしていますが、当事務所では、被災した方々に一日も早く、 団らんと活力の場となる住まいを提供したいと考えております。

「ひとつ屋根の下計画は」被災者の方々の負担を軽減する共同住宅です。
住戸の形状は、冬の日差しが全戸に入るように計算された扇型のデザインです。

中心には住民と近隣と人たちが交流できるコミュニティスペースを設け、地域の交流の場としました。

住宅の外壁と内部の床・天井には無垢の木を使い、自然素材の快適な住み心地を大切にします。野菜を育てる菜園や公園も計画し、菜園につながる縁側も各住戸毎に用意しました。

被災者の方々に一刻も早く、仮設住宅よりも居心地の良い木の住まいで暮らしていただきたいという願いで提案しました。

本提案に関するご質問ご要望などについては、当事務所までご連絡ください。スタッフ一同、復興のお役立てること願っております。

 

 

2013年02月22日 Fri

「高円寺の家」作品集ができました

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「高円寺の家」の作品集ができました。
住宅密集地の狭小敷地に建つ、木組み準耐火建築物です。
下の画像をクリックしてどうぞ御覧ください。

 

木組みの家「高円寺の家」の作品集ができました

 

 

 

 

 

 

2013年02月21日 Thu

「南房総の民家再生」お祓いを執り行いました

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古民家再生「南房総の民家再生」「南房総の民家再生」では、工事に先立ち、神主さんにお祓いをお願いしました。
正面の式台玄関に祭壇を設け、工事の安全と家族の健康を祈願していただきました。

2013年02月20日 Wed

「高円寺の家」レングスのHPで紹介されました

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木組みの家「高円寺の家」屋上庭園から 木組みの準耐火建築「高円寺の家」は、無垢の杉板で出来た防火構造面材「Jパネル」を採用しています。

この度、「Jパネル」を製造販売している協同組合レングスのブログで「高円寺の家」が紹介されました。

無垢材をふんだんに表しにしても、火災に強い「木組みの家」をつくることができます。

レングスのHPでも松井郁夫建築設計事務所が紹介されています。

 

 

 

2013年02月06日 Wed

「高円寺の家」テーブルができました

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お庭の設計を進めるために、造園屋さんと一緒に「高円寺の家」にお伺いしました。

ダイニングには出来たばかりのテーブルが置かれていました。

製作は、Soui woodworks 代表 神保哲也さんです。

中心で板の分かれているデザインは、松井事務所オリジナルです。建主さんがお花を生けて待っていてくださいました。

お庭が出来た頃に、お住まい見学会を開催させていただけることになりました。詳細が決まりましたら当サイトでお知らせ致します。

 下の写真は

階段の一段目に桧を使ってみました。さりげなく、無垢材の段板です。

 

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2013年01月24日 Thu

「高円寺の家」雪の日にご訪問しました

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130124高円寺の家東京に大雪が降った日、竣工したばかりの「高円寺の家」にご訪問しました。
松井が桧に手書きした表札をお渡しし、カーテンなどインテリアが取付いた様子を拝見させていただきました。
「庭を眺めながら暮らしたい」という言葉ひとつをいただいて、完成したお住まいです。
雪が溶けたら、庭づくりがはじまります。

2013年01月17日 Thu

林政ニュースに掲載「高円寺の家」

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「木組みの準耐火建築物」として注目を集めている「高円寺の家」が、
日本林業調査会から取材を受け、林政ニュースに掲載されました。

「高円寺の家」の敷地は東京都条例による「新防火地区」です。
防火規制の厳しい都会の狭小敷地でも、国産の無垢材をふんだんに使った、
丈夫で快適で省エネルギーな住まいを実現出来ます。

(印刷用PDFはこちらです)

2013年01月15日 Tue

「吉祥寺の家Ⅱ」1年点検

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「吉祥寺の家Ⅱ」が竣工して1年が経ち、点検にお伺いしました。

この日の都内は大雪だったので、「吉祥寺の家Ⅱ」が雪の中に佇む姿を見ることができました。
家の中に入ると暖かく、1年を通じて快適にお暮らしとのことでした。
吹抜のある延床40坪の住まいをエアコン一台で空調できる工夫を施した、燃費の良い、省エネに優れた木組みの家です。

2013年01月12日 Sat

温熱エコ改修「南房総の民家再生」

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130112minamiQgenkyo1130112minamiQ1「南房総の民家再生」では温熱環境を向上させる改修を行います。

既存家屋、無断熱土壁の家の実測から、熱損失係数(Q値)を算出し、次世代省エネ基準(Q値2.7W/㎡K以下)を満たす仕様を提案しました。

Q値とは、室内外の温度が1℃の時、家全体から1時間に床面積1㎡あたりから逃げ出す熱量のことをいいます。
数値が小さいほど、熱が逃げにくい家ということになります。

「南房総の民家再生」では、現況の10.54W/㎡K(表上)という値であったにもかかわらず、温熱エコ改修によって、次世代省エネ基準を上回る2.39W/㎡K(表下)まで下げることが可能です。

上の判定書が改修前、下が改修提案後の判定書です。
一番下の棒グラフを見ていただくと、改修前に屋根、外壁、窓や床から逃げていた熱が、温熱エコ改修によって抑えられた様子がわかります。
つまり、古い無断熱の建物でも、温熱エコ改修によって燃費がかからないうえに快適な暮らしができることがわかります。

 さらに耐震性能を加えて、耐震エコリフォームをお勧めします。これからのリフォームには欠かせない改修方法です。

(岐阜県立森林アカデミー講師・辻充孝さん作の判定ソフトを使用しています)

 

 

2013年01月12日 Sat

「高円寺の家」が木材新聞に掲載されました

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「高円寺の家」は「木組みの準耐火建築」として各方面から取材を受けました。
日刊木材新聞の記事を、掲載いたします。

————以下掲載記事————

東京都杉並区の防火地区内にムクの木材を使った木造住宅が完成し、設計士の間でちょっとした話題になっている。
同住宅を設計した建築事務所の代表者は「防火地域でも木造住宅が建設できることの参考例になれば」と話す。
同住宅は、JR高円寺駅から徒歩10分の住宅密集地に建設されたK邸。当地は建築基準法とは異なる「新防火地区」。
これは住宅密集地を対象に都条例で定めれられたもの。敷地30坪弱に約20坪の2階建て。

燃えしろ設計による準耐火建築物で、外装に45ミリ厚の木材、タルキに150ミリ角を使ったほか、 梁も150×240ミリなど内外に木材を大量に使い「木材費は建築費の2割程度」という。

設計は松井郁夫建築設計事務所(東京都松井郁夫社長)、施工はキューブワン・ハウジング(同、細沢龍雄社長)が それぞれ手掛けた。
同建築設計事務所は燃えしろ設計の建築は初めてだったため、桜設計集団・安井昇氏の指導を受けた。
木材は天竜TSドライシステム協同組合が供給した天竜材を使った。
施主のK氏は「風呂場からライトアップした中庭が見えるようにしてほしいという以外は、全て松井先生にお任せした。
建坪からするともっと狭いかと思ったが予想外に広く、使い勝手も良い。大変満足している」と話している。

 

(印刷用PDFはこちらです)

 


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2013年01月10日 Thu

耐震エコリフォーム「南房総の民家再生」

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130110小屋裏調査「南房総の民家再生」は耐震エコリフォームです。まず詳細な調査で現状を把握しました。実測をもとに構造計算を行い、劣化した部材を取り替え、断熱材を入れ、床を張り替えます。地震に強く、快適な温熱環境で省エネに優れた空間に生まれ変わります。

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