_

ブログ

2013年05月30日 Thu

_

連載【木組みの家に住んで】
第十話「居ながらにして森林浴」という贅沢

 「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイ第十話です。

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十話
「居ながらにして森林浴」という贅沢

 

この回は、木組みの家の「空気感」と「音楽事情」をレポートします。

この家に住んで4カ月がたちますが、
わたしの身体に小さな変化がおきていることに気がつきました。
毎日、生活をしていて、体の汚れが少なくなっているのです。とくに着ているシャツの襟(えり)汚れがあまり目立たなくなった。

わたしは、「どうしてだろう」とずっと思っていました。

木組みの家「高円寺の家」食事室床

床は桧の無垢板です

するとある日、設計士さんに、「木の床は適度な湿り気があるので、落ちてきた塵を吸着してしまうのですよ」と教えられたのです。
「床にとらえられた塵は舞わないので、掃除は床だけを拭けばよい」と。
木の家に住むと、室内の空気が清浄な印象があったのですが、木の床に秘密があったのです。
塵が舞っていなかった。

わたしは、一日の半分はこの家で過ごしています。
床の効果により、塵が室内で飛散しないので、それでわたしの身体の汚れが少なくなったのだと知りました。

花粉症の例を見れば、もっとわかりやすいかもしれません。

わたしがこの世に生を受けて(昭和27年)、物心ついたときに日本は高度経済成長をはじめます。
戦災で疲弊した国土が、経済成長とともに復興していくのです。

経済の成長はいろいろな変化を日本にもたらしました。
そのときなぜか、わたしは地面の移り変わりを見ていたのです。

わたしが小さい時には雨が降るとぬかるみになるような土の地面ばかりだったのに、それは、見る間にアスファルトで覆い尽くされていきました。
道路を国土の隅々まで舗装していった歴史が、わたしが目にした高度成長だったのです。

その結果どうなったのか。

たしか昭和45年ころに「花粉症」というアレルギーがあらわれてきました。
高度成長が始まったといわれる昭和33年から12年後のことです。

地面が土だった時代には、花粉は落ちてそこに吸収されてそれでおしまいでした。
しかし、アスファルトはそういう機能を持ち合わせてはいません。
一旦、アスファルトに落ちた花粉は行き場を失い、風が吹けば、それが舞い上がる。
飛んで落ちてくるものだけでなく、一旦落ちたものが再び舞いあがって、2重、3重に花粉に囲まれているのが現在の塵の事情なのではないかと思われるのです。
その花粉群にヒトが反応して花粉症になった……。
素人なりに、そう推測されます。

 

木組みの家「高円寺の家」ボーズのスピーカー

テレビの横にボウズ社制のiPhoneスピーカー

前出の設計士さんの言葉をここに合わせるとおもしろい。
「木の床は適度な湿り気があって、落ちてきた塵を吸着する」

木の床は、昔の「土の地面」に匹敵するものだったのです。

現在の住宅は、
鉄筋コンクリートのマンション
新建材のツーバイフォー住宅
が主流になっています。

これらは難燃性ということでは画期的だったのでしょうが、
アスファルトと同じで、室内の塵を吸着する働きをもっていません。
室内に落ちた塵が、ヒトが移動するたびに風が起こって舞いあがる―。
すると、
「空気清浄機」が売れはじめます。
舞っている塵を吸い込んでもらうのです。
その機械を使うこと自体、室内の空気が汚れているということになるのでしょうね。

木の家には空気清浄機は必要ありません。
わが家では2階の軒裏(のきうら)が「あらわし」で施されています。
「あらわし」というのは建築用語で、ふつうは隠してしまう所をあえて露出してしまう工法をいうらしいのです。2階に天井を設けずに梁を露出させてしまうのが、それなのでしょう。
天井で隠してしまうなら、節だらけの梁でもOKということになります。
でも、目に見せてしまうのだから、材料も吟味されなくてはなりません。

 

木組みの家「高円寺の家」屋根野地板

「あらわし」の2階軒裏

上を見上げると楽しい。当たり前ですが、一本一本の木目がすべて違うのです。自然が織りなす美しい文様で見ていて飽きがきません。

前回、わたしは、「隠して奥ゆかしさを演出」とレポートしましたが、逆に、本来、隠すべき所をあえて「あらわし」てしまうというのも、この家のおもしろい見所です。

そういうわけで、わたしは上も下もムクの木に囲まれて暮らしています。
家全体をおおう「木霊(こだま)」の力によって、空気の清浄感がもたらされているのかもしれません。
ですから、わが家では空気清浄機が必要ないのです。

第1話でお話ししたように、除湿機も、加湿器もいりません。
漆喰の壁と無垢の木が呼吸をしてしぜんに湿度を調節してくれます。
現代の建築物のように、別の機器で補完しなくとも、「木組みの家」自体に湿度調整の働きはつまっていたのです。

去年の12月にわが家が完成。

入居前にベッドを購入しました。
業者さんがやってきて2階の寝室で組み立てをはじめます。
その方は作業の手を休め、
「木の香りがすごい。これでは家に居ながら森林浴ですね」とおっしゃったのです。
わたしはあとになって、木の香だけでなく、室内に漂う空気の清浄感が、この方をして「居ながらにして森林浴」と言わしめたのだろうと感じました。

もうひとつの木組みの音楽事情。

「建て主さんは音楽が好きですか?」と設計士さんに訊ねられたことがあります。
わたしにとって音を楽しむ生活は、これまで想像もしていないことでした。
「木組みは音楽と共鳴して、良い音がでるのですよ」と設計士さん。「吹き抜けにステレオ機器を置くと、素晴らしい音響になると聞いています」。

 

木組みの家「高円寺の家」食事室の吹抜け

食事室の吹抜け

狭いわが家ですが、6畳くらいの食事室が吹き抜け構造になっています。
ここで「ポン」と柏手を打つと、とてもよく響きます。
「うーん、音楽か?」そんなことを提案されれば、「どんなだろう」と、うずうずしてしまいます。
それで、わたしはボウズのステレオ装置を購入することにしました。

ステレオだったら、昔からボウズに憧れがあったのです。

CDステレオだと、盤の入れ替えが面倒。
それでわたしが選んだのは、携帯電話のiPhoneを挿せばそれを通じてスピーカーから音の流れるボウズのステレオだったのでした。
近くのレンタル屋さんで大量のCDを借りて、iPhoneに入れ込みました。それを「シャッフル」機能で再生しますから、どんな曲が流れてくるかわからない。

音は設計士さんのおっしゃった通り、吹き抜けの食事室で軽やかに響いています。

JAZZ演奏をバックに食堂内の照明を落とします。その上で庭のライトアップをすれば、もうそこはナイトレストラン気分に早替わりです。

来る5月6日は、わが家の内覧会です。

この日は、ご出席のみなさまを、室内の清浄な空気感と、低く流れるJAZZの調べでお迎えしたいと思っております。

 

 

 <第十一話につづく>

第一話第二話第三話第四話第五話第六話第七話第八話第九話

 

_
木の拡大写真

無垢の木の拡大写真

 

「松井事務所」より

 木は呼吸する素材です。手で触るとすべすべした無垢の木の触り心地ですが、拡大するとスポンジのように穴が開いており、表面にはたくさんの凹凸があります。ここに埃や花粉は吸着され、歩いても舞い上がることはありません。

また、周囲の温湿度環境によって、常に収縮を繰り返していますので、「呼吸」しているように部屋を調湿してくれます。

その無垢の木の性能を活かすため、塗料も厳選しています。ウレタンのように塗膜を貼るものではなく、含浸性で体に害のない自然素材のものを採用しました。

木組みの家の居心地の良さを、ぜひ内覧会でご体感ください。

ブログ

プロジェクトレポート

選択して下さい

月刊アーカイブ

  1. 2017年8月
  2. 2017年7月
  3. 2017年6月
  4. 2017年5月
  5. 2017年4月
  6. 2017年3月
  7. 2017年2月
  8. 2017年1月
  9. 2016年12月
  10. 2016年11月
  11. 2016年10月
  12. 2016年9月
  13. 2016年8月
  14. 2016年7月
  15. 2016年6月
  16. 2016年5月
  17. 2016年4月
  18. 2016年3月
  19. 2016年2月
  20. 2016年1月
  21. 2015年12月
  22. 2015年11月
  23. 2015年10月
  24. 2015年9月
  25. 2015年8月
  26. 2015年7月
  27. 2015年6月
  28. 2015年5月
  29. 2015年4月
  30. 2015年3月
  31. 2015年2月
  32. 2015年1月
  33. 2014年12月
  34. 2014年11月
  35. 2014年10月
  36. 2014年9月
  37. 2014年8月
  38. 2014年7月
  39. 2014年6月
  40. 2014年5月
  41. 2014年4月
  42. 2014年3月
  43. 2014年2月
  44. 2014年1月
  45. 2013年12月
  46. 2013年11月
  47. 2013年10月
  48. 2013年9月
  49. 2013年8月
  50. 2013年7月
  51. 2013年6月
  52. 2013年5月
  53. 2013年3月
  54. 2013年2月
  55. 2013年1月
  56. 2012年12月
  57. 2012年11月
  58. 2012年10月
  59. 2012年9月
  60. 2012年8月
  61. 2012年7月
  62. 2012年6月
  63. 2012年5月
  64. 2012年4月
  65. 2012年2月
  66. 2011年12月
  67. 2011年11月
  68. 2011年10月
  69. 2011年9月
  70. 2011年8月
  71. 2011年7月
  72. 2011年6月
  73. 2011年5月
  74. 2011年4月
  75. 2011年3月
  76. 2011年2月
  77. 2011年1月
  78. 2010年12月
  79. 2010年11月
  80. 2010年10月
  81. 2010年9月
  82. 2010年8月
  83. 2010年7月
  84. 2010年6月
  85. 2010年5月
  86. 2010年4月
  87. 2010年3月
  88. 2010年2月
  89. 2010年1月
  90. 2009年12月
  91. 2009年11月
  92. 2009年10月
  93. 2009年9月
  94. 2009年8月
  95. 2009年7月
  96. 2009年6月
  97. 2009年5月
  98. 2009年4月
  99. 2009年3月
  100. 2009年2月
  101. 2009年1月
  102. 2008年12月
  103. 2008年11月
  104. 2008年10月
  105. 2008年9月
  106. 2008年8月
  107. 2008年7月
  108. 2008年6月
  109. 2008年5月
  110. 2008年4月
  111. 2008年3月
  112. 2008年2月
  113. 2008年1月
  114. 2007年12月
  115. 2007年11月
  116. 2007年10月
  117. 2007年9月
  118. 2007年8月
  119. 2007年7月
  120. 2007年6月
  121. 2007年5月
  122. 2007年4月
  123. 2007年3月
  124. 2007年2月
  125. 2007年1月
  126. 2006年12月
  127. 2006年11月
  128. 2006年10月
  129. 2006年9月
  130. 2006年8月
  131. 2006年7月
  132. 2006年6月
  133. 2006年5月
  134. 2006年4月
  135. 2006年3月
  136. 2006年2月
  137. 2006年1月
  138. 2005年12月
  139. 2005年8月
  140. 2005年6月
  141. 2005年5月
  142. 2005年4月
  143. 2004年12月
  144. 2001年12月

このページの先頭へ