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2013年05月30日 Thu

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連載【木組みの家に住んで】
第十二話
「防災としての木組み そして、フケが出なくなった」

 「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイ第12話です。
一週間に1回の更新でお送りしています。

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十二話
「防災としての木組み そして、フケが出なくなった」

 

この回は、防災としての「木組み」をレポートしたいと思います。
その前にわたしのもうひとつの身体的変化を報告します。

わたしの永年の悩みは、冬場になると頭皮からフケ出ることでした。
たぶん、身体が乾燥してしまうからなのでしょう。
対策として洗髪のあとに頭皮に保湿のオイルを塗り、フケを防御するのが毎年のならわしでした。

しかし、この冬はそのオイルの出番がありませんでした。
フケが出なかったのです。

家に備わる調湿性能のお陰で、身体が乾燥しなかったものと思われます。

日本の気候の特徴は、冬場の低温・乾燥、夏の高温・多湿です。
冬は乾燥するから余計に低温が身にしみるし、夏になると多湿のために高温がより激しく感じるのがわが国の気候風土といわれています。
夏の同じ気温でも、乾燥しているハワイと湿気のある東京では快適さが違うというのは、よく聞かれる話です。

それなら、湿度を調整することが出来れば、快適な住生活ができることになります。
昔のひとはそう考えたのかもしれません。そうやって試行をくり返しながら日本家屋は姿を整えていったのでしょう。

わたしは去年12月にこの家に入居すると同時に、デジタル式の湿度計を購入しました。しかし、気温には馴染みがあるけれど、湿度計は見慣れない。
ネットで調べると、「40%~60%」の範囲なら生活するのに快適な湿度とあります。
以来、起床すると同時に湿度計を見るのがならわしとなりました。

木組みの家「高円寺の家」温湿度時計

デジタル式湿度計。46%を示しています

この冬、外がどんなに乾燥しても、室内は常に40%が確保されていました。
それでわたしの身体がむやみに乾燥しないで済んだのです。
無垢の木と漆喰の壁によって守られたのかもしれません。

湿度が保たれていると、同じ「気温5度」でも体感温度がやっぱり違うのです。
第1話でレポートしたように、それで暖房器具を使わないでも暮らすことができました。
フケが出なかった、というのはその副次効果だったのかもしれません。
わが家にはありませんが、畳にも湿度を調整する機能があるといわれています。

知れば知るほど、日本家屋が持つ智慧の奥深さに驚かされます。

わたしは、前々回のレポートで室内の空気の清浄感を言いました。
そして、今回は身体におよぼす保湿作用に気づいたのです。

もしかすると、この家に暮らし続けることは、身体の美容にとても良い影響をおよぼすのではないかと思ってしまいます。

これから高温多湿の夏場になります。
酷暑といわれる季節の中で、この家が、住んでいるわたしの身体にいったいどんな影響をおよぼすのか、今から楽しみです。

 

さて、今日のテーマは「防災としての木組み」です。
昔から言われている「怖いもの」。

「地震・かみなり・火事・おやじ」。

怖いものの筆頭にあげられているのが、「地震」です。
いくら日本の家屋が「湿度調整」機能を持っていたとて、この「地震」に対する手立てにぬかりがあっては、もともこもありません。

ところが、この「木組みの家」は、地震に対しては自信があったのです。

「籠を編んだものとして建物をイメージとしてください」と、最初に、この家の設計をお願いする時に、松井事務所から説明を受けました。
なるほど、籠を編んだものだったら、地震でどんな揺れがきても平ちゃらです。
「木に金具でつないだ建物が大きな揺れにあったとしたら……。木よりも金具が強くて、木材を壊れしてしまいます。
しかし、木だけで組んで貫を入れた場合、揺れがきてもお互いにがっしりとスクラムを堅くするだけで、影響は少ないのですよ」。

ここに、松井建築設計事務所が、あえて「木組みの家」と標榜するだけの秘密があったのです。

一番、わかりやすいのは、第3話でご紹介した、「蔵のギャラリー・結花」の証言です。
「結花」というのは、所沢の駅前開発で解体を余儀なくされた薬種問屋の見世蔵を、増田さんという建築士が惜しんで、松戸市に移築したものです。
ここで娘さんが喫茶店を開いています。その店名が「結花(ゆい)」。
前回、「170年」と申しましたが、正確には築130年の歴史があるといわれているものです。

木組みの家の元祖。

木組みの家「結花」外観

結花の全容 正面が喫茶店。左手が住まい

わが家の「入魂(たまいれ)」をしてくれた甥が、今年の初めに、この2階でライブをしたので、出かけてきました。
その本番前に、3.11の地震の話が出たのです。
「あの時、揺れはあったけれど、棚のコップひとつ落ちなかった」と増田氏の夫人から衝撃的なお話をお伺いしました。

どうしてこれが衝撃的なのか。

当時、地震にあった人たちの証言は、住まいは倒壊こそしなかったものの、揺れの大きさで食器棚にあった器がみんな落ちてしまった、というものが多かった。
増田夫人のお話をわたしの隣で聞いていたのは、わたしの家の設計にも関わった赤川さんという建築士なのですが、
この方は、自宅マンションに骨董品を飾っておいて、それがみんな落下して壊れてしまった、と述懐しています。

「結花」は1階で喫茶店を経営しています。
写真でおわかりの通り、壁の上のほうにまで棚をつくって食器類を並べています。これがあの揺れで「ひとつも落ちなかった」というのが、やはりわたしには衝撃的にきこえたのでした。

木組みの家「結花」内観

店内の様子。壁側に食器類。
左が増田夫人。梁の太さに注目

畏るべし、「木組みの家」。

日本は自然災害の多い国です。
地震、高温多湿、低温乾燥。
くり返しになりますが、これらに耐えるために長年月をかけて工夫されてきたのが日本家屋の特徴だったのではないかと、わたしは素人ながら考えるのです。

その建築様式が、今は業界の主流から外れているというのも、なんとも惜しい気がします。

 

 

ただ、弱点はあるのですね。

「怖いもの」の三番目にある火事に弱いということです。
考えてみれば、日本家屋は燃えやすい材料で構成されています。

木→柱、床、天井、木戸、構造材
紙→襖(ふすま)、障子(しょうじ)
草→畳(たたみ)
泥→漆喰(しっくい)

石造りの欧米人にはとても想像できないでしょうが、日本の家屋はこうした天然素材で構成されているのです。
そのぶん、火には弱い。

「火事は江戸の華」なんて言って、江戸っ子は強がっていました。

でも、いつまでも木造建築が火事に弱いわけではありません。
現代の智慧だって導入されているのです。

「もえしろ設計」という火事に強い建て方があるらしいのです。その説明は、巻末で松井事務所からしていただきましよう。

耐火について
ここでわたしから言えるのは、地域的なことがらです。
この家が建つ「高円寺」は東京都から「新防火地域」に指定された場所です。
住宅密集地に燃えやすい建物を建てない、というのがこの新防火地域の考え方のようです。
でも、その中で木組みの家は許可された。
これは木造であっても燃えにくいと、お国から判定された結果なのだと思われます。

火事に対応できるのならば、
木組みの建築は、湿度調整にすぐれ、地震に耐えて、火事にも強いという
日本の気候風土にもっとも適した工法なのではないかと、わたしには思えるのです。

 

  <第十三話につづく>

第一話第二話第三話第四話第五話第六話第七話第八話第九話第十話第十一話

 

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木組みの家「高円寺の家」燃えしろ設計の柱

燃えしろ設計の太い柱

「松井事務所」より

「木組みの準耐火建築物」である「高円寺の家」は、
通常の木造住宅よりも、火災に対してずっと強くできています。

先ず、構造をつくる柱や梁が太くなっています。
火事で燃えた時に、構造材の表面が45分間燃えつづけても、
燃えていない部分で、建物を支えることができる太さで設計しています。
これを「燃えしろ設計」といいます。

木組みの家「高円寺の家」Jパネル

レングスの「Jパネル」。杉無垢板の三層構造です

また「Jパネル」という杉の無垢板を三枚重ねたパネルを使うことで、
屋根や2階の床も、普通の建物よりも火事に強くなっています。

内部仕上げの漆喰は「不燃材料」として建築基準法でも定められていますので燃えません。
外壁はモルタルを20ミリ塗った上に、無垢板を張ることで、さらに防火性能を向上しています。

本格的な木組みの家の準耐火建築物として、林野庁、東京都からも職員の方が見学にお見えになりました。
日本住宅新聞日本木材新聞新建ハウジング林政ニュースにも掲載され業界でも話題になっています。

防火規制の厳しい都会の住宅密集地でも、無垢の木をふんだんに使った木組みの家を建てることができます。

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