_

ブログ

2013年05月28日 Tue

_

連載【木組みの家に住んで】
第十六話「デザインでも住みやすさを演出」

 「高円寺の家」のオーナーのKさんによる連載エッセイの第15話です。
木組の家に住み心地を、不定期連載でお届けします。

 

【木組みの家に住んで】

「高円寺の家」施主

第十六話
デザインでも住みやすさを演出

 

松井郁夫事務所では、後継者を育てるために専門家対象の「木組みゼミ」を不定期で開いています。

設計士さんと言えば、構造計算が主の理系の資格だと思いがちですが、このゼミではデザインの重要性も説いているようです。それもそのはず、松井さんは難関の東京藝大を現役で合格した方ですから、そもそも建築士さんというよりも絵描きさんに近いのだと思われます。

 

木組みの家というのは、骨組みがしっかりしていて、その上に自然素材で作りあげられています。それだけでも住み心地が良いのですが、今回はデザインを重視してより住まいのレベルをあげる、というお話です。

 

1

見慣れる 大壁

とりあえず、ひとつだけ専門的なお話をさせていただきます。

家の壁には大別して「大壁」と「真壁(しんかべ)」の2種類があるということをお知りおきください。

2

従来に見られる 真壁

大壁というのは今、流行りの2×4住宅に見られる壁です。囲いだけで柱がないので、壁一面にクロスを貼ったものです。これが「大壁」。

それに対し「真壁」というのは、柱で建てた家にある壁で、日本間によく見られる壁です。柱を前面に押し立て、壁は脇役になるのかもしれません。

その2種類を頭に置き、高円寺の家をふり返ってみます。

この家は木組みの家ですから、柱がふんだんに使われています。木組みというのは、柱と梁の架構で作られているのを総称としていうのだそうです。

 

ですから自慢の柱を前面に押し出して「真壁」にしても良かったのです。でも、絵心のある松井さんは、あえて高円寺でそういう手法を取らなかった。

これが今回の注目点です。

 

3

縦の柱を壁で隠した

 

「柱を前面に立てたらお寺や神社のようになってうるさいでしょ」と松井さん。

それで、高円寺の家は縦線の柱を壁に隠して「大壁」にしてしまった。

横線の梁は建築用語で「あらわし」といって天井を貼らずに見せるというデザイン。縦線は隠して、横線は見せるというコンセプトだったのです。

 

それでどうなったかというと、壁は「大壁」にしてモダン、そして上を見上げれば梁が「あらわし」でむき出しになっている。

ひと言でいうと、高円寺の家は「和風モダン」という作りになった。

梁は通常よりひと回り太い素材を使っていますので、住まう者にとって豪勢な印象を与えます。

そして真っ白に塗られた大壁作りの漆喰。

 

5

柱で支えるがそれはちょっとだけ見せる。ボードの下には柱の全貌が

よく見るとここにデザインの秘密があったのです。

大壁といっても、柱のすべてを隠しているわけではない。少しだけ片りんを見せる。

それは文章で表現するのは難しいので、写真での説明をご覧ください。

「太い梁があるのにそれを支えている柱が全然、見えないと、そこに居る人は不安を感じる」という心理が人にはあるらしいのです。

それで、柱はちょっと見せる。ここが支えているから安心して、とでも言うのでしょうか。

さりげなくそれが施されているので、住んでいて潜在意識に不安を感じることはありません。

こういう技法に私は感心してしまうのです。

この細部のこだわりは誰でも出来るものでは、きっとないのでしょう。絵心のある松井さんのセンスに依るところが大きいのだと思われます。

 

このデザインの良さも、木組みの家の居心地の良さ→住みやすさにつながっているのでしょう。

高名な住宅評論家の方が高円寺の家を見に来られたことがあります。先生はソファーに腰かけながら、「どの家もだいたい破綻が見られるものだが、この家についてはそれがない」としみじみおっしゃっていたのが印象に残ります。

木組みの家は、無垢の木や漆喰の性能のお陰でそれだけでも住みやすさを感じます。その上にデザインでもなんだかわからない効果で住む人間に安寧を与えるのです。

高円寺の見学会にお越しになることがあれば、デザインもご注目いただけると、この家の住みやすさの秘密がわかってきていただけると思います。

 

<第十七話につづく>
第一話はこちらです

 

_
高円寺の家

チラッとみせる階段

「松井事務所」より

Kさんの不定期連載ということで、久々の原稿をありがとうございました。
真壁でありながら、モダンで軽やかにみせるデザインを心がけています。
さり気なく見せるために時間かけて推敲するのですが、あとからご説明しないと、建主さんにも伝わりませんよね。
でも、住んでいて「なんとなく心地良いな……」というのは、さり気ないデザインの力なのです。
ある建築家は、「建物を見た帰り道に、思い出しながら”あの家はあの部分が良かった”というより”どこかわからないけどなんだか良かった”」というほうが、いい家なのだ」と言いました。そういう家になるように、日々考えています。

 <匠>

ブログ

プロジェクト

選択して下さい

月刊アーカイブ

  1. 2017年7月
  2. 2017年6月
  3. 2017年5月
  4. 2017年4月
  5. 2017年3月
  6. 2017年2月
  7. 2017年1月
  8. 2016年12月
  9. 2016年11月
  10. 2016年10月
  11. 2016年9月
  12. 2016年8月
  13. 2016年7月
  14. 2016年6月
  15. 2016年5月
  16. 2016年4月
  17. 2016年3月
  18. 2016年2月
  19. 2016年1月
  20. 2015年12月
  21. 2015年11月
  22. 2015年10月
  23. 2015年9月
  24. 2015年8月
  25. 2015年7月
  26. 2015年6月
  27. 2015年5月
  28. 2015年4月
  29. 2015年3月
  30. 2015年2月
  31. 2015年1月
  32. 2014年12月
  33. 2014年11月
  34. 2014年10月
  35. 2014年9月
  36. 2014年8月
  37. 2014年7月
  38. 2014年6月
  39. 2014年5月
  40. 2014年4月
  41. 2014年3月
  42. 2014年2月
  43. 2014年1月
  44. 2013年12月
  45. 2013年11月
  46. 2013年10月
  47. 2013年9月
  48. 2013年8月
  49. 2013年7月
  50. 2013年6月
  51. 2013年5月
  52. 2013年3月
  53. 2013年2月
  54. 2013年1月
  55. 2012年12月
  56. 2012年11月
  57. 2012年10月
  58. 2012年9月
  59. 2012年8月
  60. 2012年7月
  61. 2012年6月
  62. 2012年5月
  63. 2012年4月
  64. 2012年2月
  65. 2011年12月
  66. 2011年11月
  67. 2011年10月
  68. 2011年9月
  69. 2011年8月
  70. 2011年7月
  71. 2011年6月
  72. 2011年5月
  73. 2011年4月
  74. 2011年3月
  75. 2011年2月
  76. 2011年1月
  77. 2010年12月
  78. 2010年11月
  79. 2010年10月
  80. 2010年9月
  81. 2010年8月
  82. 2010年7月
  83. 2010年6月
  84. 2010年5月
  85. 2010年4月
  86. 2010年3月
  87. 2010年2月
  88. 2010年1月
  89. 2009年12月
  90. 2009年11月
  91. 2009年10月
  92. 2009年9月
  93. 2009年8月
  94. 2009年7月
  95. 2009年6月
  96. 2009年5月
  97. 2009年4月
  98. 2009年3月
  99. 2009年2月
  100. 2009年1月
  101. 2008年12月
  102. 2008年11月
  103. 2008年10月
  104. 2008年9月
  105. 2008年8月
  106. 2008年7月
  107. 2008年6月
  108. 2008年5月
  109. 2008年4月
  110. 2008年3月
  111. 2008年2月
  112. 2008年1月
  113. 2007年12月
  114. 2007年11月
  115. 2007年10月
  116. 2007年9月
  117. 2007年8月
  118. 2007年7月
  119. 2007年6月
  120. 2007年5月
  121. 2007年4月
  122. 2007年3月
  123. 2007年2月
  124. 2007年1月
  125. 2006年12月
  126. 2006年11月
  127. 2006年10月
  128. 2006年9月
  129. 2006年8月
  130. 2006年7月
  131. 2006年6月
  132. 2006年5月
  133. 2006年4月
  134. 2006年3月
  135. 2006年2月
  136. 2006年1月
  137. 2005年12月
  138. 2005年8月
  139. 2005年6月
  140. 2005年5月
  141. 2005年4月
  142. 2004年12月
  143. 2001年12月

このページの先頭へ