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設計 木造住宅 木の家 木組 ダイナミック 府中 なつかしい あたらしい 無垢の木 丸太 漆喰 蔵 戸 焼き杉 杉板 松井 | 松井郁夫建築設計事務所「木組の家づくり」

2024年06月20日 Thu

都内だからこそ選びたい、木組の家と木の魅力 

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皆さん、こんにちは。松井郁夫建築設計事務所のスタッフです。
これから家づくりを考え初めたい方へ向けた、
スタッフブログを不定期連載でお送りいたします。

今日のテーマは『都内に住まうからこそ選びたい、木組の家づくり』。

自然と触れ合うことの出来る環境で子育てをしたい方、
木の香りや質感を身近に感じられる家づくりをしたい方、
そんな想いを持つ、都内に住まうファミリー層の皆さまにぴったりな、木の家づくりのススメを
ご紹介します。

【はじめに:木の家の魅力とは?】

木の家には、多くの魅力があります。
パッと思いつくのが、漠然とした自然素材が持つ癒し効果ではないでしょうか。
実は『木』には科学的にも証明されている、たくさんの性能が備わっているんです。

・リラックスできる香り
木の家 香り

木の香りにはリラックス効果があり、
日々のストレスを軽減してくれます。
森の中で深呼吸をした時に、
清々しさや爽快感を得たことがある人は
多いのではないでしょうか。

これは、木から放出されるフィトンチッド
という揮発性の物質によるものです。
フィトンチッドに含まれる種類や量は
樹種によって異なるため、
それぞれの樹種によって特有の香りが
生まれるのです。特にスギの香りは、
血圧を低下させたり、怒りや緊張などを
緩和させたりする効果があるとされています。

・室内の湿度を快適する調湿効果

木には室内の湿度を適切に保ってくれる、調湿効果があります。

具体的には、湿度が高い時には湿気を吸収し、乾燥時には湿気を放出します。
そうする事により、湿度に応じた除湿・加湿の2つの働きをするため、室内を一年中快適な湿度に保つことができます。木材の調湿効果により湿度が適度に保たれることで、カビやダニの発生を抑制したり、健康に良い影響を与えたり、エアコンや加湿器、除湿機の使用頻度を減らすことができ、省エネルギーにもつながります。

無垢材の家と非無垢材の家で睡眠中の湿度の変化を調べた実験では、非無垢材の家では時間が経つほど湿度が上昇しましたが、無垢材の家では湿度が低く保たれました。その平均湿度の差は10%もありました。

通常、寝ている状態では人の呼気や発汗等により時間とともに湿度が上昇しますが、調湿効果に
より上昇が抑えられたと考えられます。

・やさしい飴色・木目の模様など視覚的効果
木の家 視覚的効果

木の自然な色合いや質感は、視覚的にも温かみや落ち着きを感じさせ、心を和ませます。

これは木が自然素材であるため、人間の心理にリラックス効果をもたらすことや、暖色が基調になっているためです。木材は金属やコンクリートに比べて紫外線をほとんど反射しないので、目に対して刺激が少ないことも特徴です。

さらに、木材の細胞にある微細な凹凸によって、独特の光沢を生み出し、味わいをつくりだして
います。また、木が与える心地よさは、木目が「1/fゆらぎ」効果を持つことも一因であると考えられます。
木目は同じ方向に並びながらも間隔に均一性はなく、どこかゆらいでいるように見えます。この絶妙な不規則性が視覚的に温もり感を感じさせ、癒しやリラックス効果をもたらします。

このゆらぎ効果は自然界にも数多く存在し、波の音やろうそくの炎、小川のせせらぎなどにもその効果があるといわれています。

都市の喧騒から離れてリラックスできる木の空間。

それが自宅だったなら、毎日の帰宅が楽しみになるというものです。
そして「木組」は伝統構法を扱った家づくり。
材木を『刻む』職人の手仕事によって、つくられます。古くから伝わる日本の伝統構法が、家の佇まいに重厚感をもたらします。都心だからこそ、自然を感じられることへの魅力、かつ伝統構法がもたらす木組の家の良さが一層光り、絵に映えるような家づくりができると思います。

【木組(木組み)の家を選ぶ理由】

【耐震性】木組によってしなやかな強さを持つ

木組(木組み)は、
日本の伝統構法であり、材木を『刻む』
職人の手仕事によってつくられます。
木組は、木と木が組み合わさることで、
地震などの強い力が外部からかかったときでも、
受け流すしなやかな強さを持ちます。

日本は島国ゆえ、地震大国と呼ばれます。
その日本において、古くから伝わり現代まで
継承されてきた伝統構法の木組であるからこそ、
耐震性に優れた家づくりができるのです。

【美しい構造】木の美しさをシンプルに最大限魅せる

木組の家の魅力一つ。それは「素材を活かしたシンプルな美しさ」にあります。
無駄を省いた設計(デザイン)は、木の本来の美しさを最大限に引き出します。
柱を見せる真壁造りは、色や木目の美しさが家全体に温かみをもたらし、家族の暮らしを豊かにしてくれます。

【長く住まう家づくり】人生100年時代、人ともに老いていく家

医療の目覚ましい進歩によって、現代は人生100年時代と呼ばれるようになりました。
木組の家も、長く住まい、人と共に老いていくことを見据えた家づくりをおこなっています。
人と共に長い時間を生き、そしていずれは古民家になる家。一世代で終わってしまわないからこ
そ、木組の家を選ぶ意味と価値もあるのだと思います。

【おわりに 】

都内に住みながらも、自然を感じることができる木組の家づくり。
木の持つ香りや調湿効果、そしてその美しさを最大限に引き出した家は、毎日の暮らしをきっと豊かにしてくれるでしょう。

松井郁夫建築設計事務所では、伝統的な構法木組の家づくりのお手伝いをいたします。
資料請求や見学会のご案内も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

2024年06月19日 Wed

「日本を住む」ということ

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毎回の設計依頼に繰り返し悩んでしまう松井郁夫です。

今日のお話は先日のテーマである「これからの木の家」について想うところを描きました。

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不惑を過ぎた身でありながら、設計依頼がきたときは毎回「住む」って何だろうと惑います。

ご依頼に見える方はそれぞれに「住まい」について想いがあり、夢を語ってくれますから、設計者はその夢の実現のために奔走します。

暮らしやすい間取りをどう実現するか、家族構成と要望をお聞きし、家族団欒の空間を考え、敷地を読み込み、災害に強い構造を考え、素材を活かすことや美しい仕上げを心がけます。

豊かな暮らしを実現するためには「自然素材」に包まれた家が良いでしょう。さらに快適に暮らすには設備にも気を配ります。

そして何よりも「日本を住む」ということを考えることです。

日本ほど「自然災害」の多い国はありません。「地震」「台風」はもちろん最近では異常気象で「豪雨」も頻繁に日本列島を襲います。

地球沸騰化の時代「脱炭素」は当たり前です。そのために省エネルギーを実践すべく木の家でも「断熱気密」は必須となりました。

また日本の伝統構法である「木組」も大切にしてさまざまな「災害」を凌ぐ家を造らなければなりません。

「山を守り、職人技術を継承すること」も課題です。

「造り手」である設計者や職人には将来を見越した発想と実践が求められます。

昨今の物価の高騰や人手不足という現実の中でどう夢を実現してゆくか実力が試されます。

今日あたらしい「住まい手」の方がこれからお見えになります。まずはじっくりとお話をお聞きしたいと思います。

 

2024年06月11日 Tue

卒業論文のテーマに「松井郁夫の仕事」が取り上げられました

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学部論文に取り上げてくれたのは、電機大学の4年生松崎直人さん(21)、指導教員は以前木組の講習会に通ってくださった小笠原正豊さんです。

伝統構法に興味を持って調べていてたら松井事務所のHPにたどり着いたようです。

若い人が伝統構法に興味を見ってくれたことがうれしいです。 

かなり深く調べてあって驚きました。自分のことをこんなに客観的に見ることができるのはありがたいことです。

お時間のある方はご一読ください。うれしいことが書いてあります。

2024年06月06日 Thu

いま求められる「木の住まい」の意見募集

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物価の上昇による資材の高騰や担い手の減少による職人不足など、最近の住まいづくりの実情は決して明るくありません。

現状の社会問題を解決しながら前に進めることを信条にしてきた松井事務所では、「山に植林費用を還す」取り組みや「職人や設計者の育成」にも積極的に取り組んできました。「山」と「住まい手」をつなぐ協働の仕組み「ワークショップき組」は2003年にグッドデザイン賞をいただきました。美しく丈夫な住まいづくりを目指して日々努力を重ねております。

職人や設計者に向けた「木の家づくり」の実践講座「木組みのデザインゼミナール」も20年間続けて今期で21年目になります。これまでに全国で延べ240名の受講生を世に送りました。活動は継続できており受講生も毎年熱心な実務者に支えられております。

そこで20年を節目に今後の「木の家づくり」の活動についてみなさんから意見を募りたいと思います。これまでに受講生はもちろんこれから「木の家づくり」を実践したいと考えている実務者のみなさんや学生さんにも広く声を集められたら幸いです。

「いま求められる【木の住まい】の条件」にできるだけ多くのみなさんのご意見を頂けないでしょうか?
これからの日本家づくりをご一緒しませんか?
採用者には拙著を差し上げます。松井事務所のHPのお問い合わせコーナーにどうぞふるって応募してください。

実測立面図

実測平面図

 

 

2024年05月29日 Wed

「継手・仕口」のこと

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現在進行している「天橋立の平屋」について工務店との打ち合わせで質問されたことに答えているうちに「時代が変わった」と感じてしまったので、今回は「大工と継手・仕口」の話です。

「天橋立の平屋」は「木組の家」に住みたいと望んでいる御夫婦が日本中の木組を実践している設計者を回って最後に松井事務所にたどり着いたのです。海に近い低地であったことから、高床式の「せがい造り」の平屋になりました。設計を終えて見積もりも承認され、いよいよ刻みに入る段階にこぎつけました。

平屋は単純なのですが、大変難しい床下の架構で梁組が大変です。何社かの工務店は見積もりを見送ってしまったので、熱心な工務店と最後まで打ち合わせを重ねてきました。

工務店さんが施工図を描いてくれたので、こちらも梁算段のスケッチをして提出したところ「若い大工に継手・仕口の寸法を教えてくれないか」と依頼されました。

僕たちが設計を始めた頃は大工仕事のほとんどは現場でベテランの大工さんから教わりましたが「時代は変わりました」

設計者が「継手・仕口」を考え寸法まで指示する時代になったのです!

さいわい私は大工棟梁のもとで設計を教わっていたので、木材の加工についても詳しく説明ができますが、ちょっとお驚いたので話題にしました。

今やプレカット全盛の時代だから大工も「継手・仕口」のことは工場に任せっぱなしで加工を考えなくなったのでしょう。

そういえば現代の家はほとんどが「大壁」という「柱」や「梁」の見えないつくり方になっています。

本来、木造住宅は「軸組工法」と呼ばれ骨組を生かした「真壁」工法だったのです。しかしいまや流行りの設計者はすべて「大壁」になってしまい軸組を考えなくなりました。軸を考えないで好きなところに窓を開けて見えないところで「金物」を使えるからです。

そういう意味では「大壁=金物工法」は便利です。しかし地震の時は金物が木という母材を割ってしまい倒壊し易くなります。最近の地震被害はそのことを物語っているのですが、地震のたびに金物補強の規制が強くなっています。

むかしから「豆腐を針金で釣ってはいけない」と大工の世界では金物を使うことを戒めていたのですが…。

真壁の家づくりを実践すれば、日本の地震や台風にも耐える、高温多湿の気候風土に沿った快適な家ができるのですが…。

 

2024年05月28日 Tue

「古民家からはじまる日本の家」執筆中②

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いままさに空前の古民家ブームです。

しかし「古民家」は定義もなく曖昧なままブームの中で埋もれてしまっていました。

日本の住まいの原点は「古民家」を見れば明らかですが、各地に多くの民家が日常的に残っていたために歴史的評価も少なく、しばらく忘れられていました。

また、現代の建築教育は明治以来西欧の建築学を下敷きにしているので、古来から日本の大工棟梁たちが造ってきた「民家」は軽んじられてきたのです。

ところが昨今の「古民家ブーム」に乗って、再生・利活用が増えて、本来の日本の家づくりが見直されてきています。

原点である「古民家のつくり方」は木と木を組む「木組み」が基本です。

金物がなかった時代のつくり方という一面もありますが、日本の大工たちはあえて金物は避けていたようにおもいます。

いわく「豆腐を針金で釣ってはいけない」

なぜなら木という柔らかい母材は硬い金物に負けて、地震で揺らされると木の繊維を割って建物を壊してしまいかねないからです。

ところが最近では、地震が起きるたびに「金物」を補強に使うような規制がかかり、改修されています。耐震性能を伸ばすためにはそれでいいのでしょうか?

五重塔が金物を使わず、木と木を組み上げて揺れて力を逃がすように。民家も「強度」で地震や風に抵抗するのではなく、柳に風の「減衰」の理論がいいと思います。

現在、家づくりを古民家に学び紹介する本「古民家からはじまる日本の家」を執筆中です。

松井事務所が20年間主催してきた「木組のデッザインゼミナール」を単行本化しています。

この本を読めば、金物に頼らず開放的な木の家をつくることができます。ご期待ください。

 

2024年05月17日 Fri

「古民家から始まる日本の家」執筆中①

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日本の家の原点は「古民家」を見れば一目瞭然です。

しかし残念ながら古い建物は身近にたくさんあるうえに「古民家」の正しい定義もなく埋もれてしまっています。

また、現代の建築教育は明治以来西欧の建築学を下敷きにしているので、日本の大工棟梁たちが造ってきた「民家」は軽んじられてきました。

ところが今、空前の「古民家ブーム」に乗って本来の日本の家づくりが見直されてきていると思います。

「古民家のつくり方」は木と木を組む「木組み」が基本です。金物がなかった時代のつくり方という一面もありますが、日本の大工たちはあえて金物は避けてきたようです。

いわく「豆腐を針金で釣ってはいけない」

何故なら木という柔らかい素材は硬い金物に負けて、地震で揺らされると建物を壊してしまいかねないからです。

ところが地震が起きるたびに「金物」を強化するような規制がかかります。でも本当にそうでしょうか?

五重塔は木を組んだだけで金物で固定されていません。揺れて力を逃がす「減衰」の理論です。

 

実は現在日本の古民家に学んだ家造りの本を企画しています。

松井事務所が21年間主催してきた「木組のデッザインゼミナール」の単行本化です。

ここではその一部を紹介します。まだ執筆中なのでごく一部ですがご覧ください。

 

 

2024年05月03日 Fri

寄付にご協力ください「藝大山岳部黒沢ヒュッテ」を未来に遺そう!

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2024年04月23日 Tue

増刷します!「初めての人にもできる!古民家再生絵本」

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増刷のお知らせ!

発刊してから3年6ヶ月。おかげさまで皆さんにご好評いただき、在庫が少なくなりになりました。

現在の古民家ブームに流されることなく、古民家の成り立ちから地理的歴史的考察を経て、曖昧になっている定義にも言及しています。

今回は嬉しい増刷です。私の描いた本の中では一番の売れ筋です。

Amazonにはまだ少し余部があるようです。お急ぎの方はポチしてください。

 

 

2024年04月19日 Fri

GWの営業について

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日々豊かな生活ができる家造りを目指している松井郁夫です。

今年のゴールデンウイークは、4月28日と5月4日以外は休まず営業いたします。

ご相談のある方はどうぞご遠慮なくご連絡ください。

 

2024年04月15日 Mon

第21期「木組ゼミ・古民家講座」始まりました

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今年で21期を迎える「木組みのデザインゼミナール」始まりました。

初日は「古民家再生講座」のオリエンテーションでした。

例年より多くの22名の受講生との初講座です。

みなさんの自己紹介を聞いて「古民家再生講座」に期待されていることがわかり、身の引き締まる思いです。

最初の座学では最近ブームで人気の古民家ですが、その年代が曖昧なこともあって「古民家の定義」を行いました。

「木造軸組工法の近代化」源愛日児著(中央公論美術出版)の定義に従い江戸時代まで遡って解明しました。

添付した「書評」を御覧ください。

拙著「初めての人にもできる!古民家再生絵本」ウエルパイン書店でわかりやすく解説し、

たくさんの「古民家再生事例」を見ていただきました。

午前~午後と1日がかりの長い時間のゼミでしたが、みなさん興味深く聞いていただけたようです。

次回は「日本民家園」で実際の古民家を見ていただき次次回「江戸東京たてもの園」で江戸期の農家の実測研修です。

受講生のみなさんには古民家の理解と実物に触れていただき実践力を身に付けていただきます。

他の勉強会にはない貴重な体験を通して日本の古民家の良さを後世に伝えてほしいと思います。

 

 

2024年04月03日 Wed

満員御礼「第21期・木組のデザインゼミナール」

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ひとつひとつの家を教科書のようにつくりたいと願っている松井郁夫です。

おかげさまで4月14日から始まる「第21期・木組みのデザインゼミナール」が満員になった御礼のブログです。

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毎年お送りしている「木造住宅」のスキルアップ講座がおかげさまで21期を迎えました。

毎回、参加者を募集しながら今年は何人集まるのだろうかと気をもんでいるのですが、

講座の始まる寸前には毎回12・3名になってホッとしています。

おかげさまで今期は定員の20名になりました。

毎回ひとりひとりの提出課題を添削するので、少人数制となっております。

 

「木組ゼミ」の特徴は木造住宅の設計を軸組みである「架構から学ぶ」点にあります。一

いまは「大壁」と言われる柱や梁の骨組みを包んで見えなくしてしまう工法が主流ですが、

この講座では「真壁」と呼ばれる柱や梁を見せる「架構」をデザインするという造り方にこだわっています。

日本建築は「真壁」という木材をすべて現しにする「軸組工法」が本来の姿です。

「木組」という呼び方で大工職人の腕前が問われる仕事です。

大工職人は金物に頼らない木と木を組み上げる木組の「継手・仕口」を使えれば一人前となります。

木造住宅の設計者が最初にぶつかる構造の壁でもあります。

 

江戸時代以前から続く伝統の技で、木の「めり込み」と「摩擦」で力を「減衰」することで地震に耐えるという地震国日本に最も適した工法と言えます。

本講座では「むかし」の仕事をつたえる「古民家」に学び、「いま」現代の建物に活かすし「みらい」につなごうとしています。

松井事務所では「むかしといまをみらいにつなぐ」を理念にこれからも「木組のデザインゼミナール」をスキルアップを目指すみなさんにお届けしたいと思っています。

今年は思いがけず受講生が多人数になりました。プレカット全盛時代に木の家を架構から学べる講座は本講座しかないようです。

受講生の皆さんありがとうございます。古民家の実測や見学案内、演習課題の添削に講師陣もがんばりますのでよろしくお願いいたします。

第21期木組のデザインゼミナール受講生募集

 

 

 

2024年03月21日 Thu

「社会的責任」のとり方

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建築行為は常に社会性が大切であり「あらかじめ取るべき責任がある」と考えている松井郁夫です。

今回は「社会的責任」についてお話ししたいと思います。

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生活の営みの「場」である建物を世に出すことは様々な意味で責任ある行為です。

まず場所を確保しなければなりませんし材料も用意しなければなりません。

そして何よりも生活する人の「健康」と「安全」を確保する必要があります。

 

まさに建築基準法の第一条には「国民の生命と財産を守るべき」という記述があります。

もちろん「美しさ」や「快適性」も必須事項です。

 

私の出身である東京芸術大学では「美は全てを統合する」という理念を掲げています。

尊敬する民藝運動の創始者柳宗悦は「用の美」を運動のテーゼに日本中の工芸品に新しい息吹を与えました。

 

そこには創作行為に対する厳しい「審美眼」と長く使うことに対する「製造責任」がついて回ります。

AIで可能性が広がり「真偽」さえも曖昧になったいまこそ「ものづくり」の世界に「安全性」の確保が求められます。

 

本来「ものづくり」に関わる人間には誰に言われなくても持つべき「社会的責任」があります。

「社会的責任」は、しくじる前にあらかじめ取っておくべき「責任」といえます。

言い換えれば「倫理観」や「正義感」かもしれません。

 

何も「無い」状態から「有」を生み出すことは女性の「出産」に似ているかもしれません。

生みの苦しみは、その後長く続く「育て」の楽しみに変わるからです。

 

設計行為も作る前から「社会的責任」を負うことになりますが、生み出したあとは育てることに喜びを見出したいと考えます。

とりとめもないお話で失礼しました。

 

2024年03月18日 Mon

「北区サイン計画」のいま

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都市に住む人たちが街に共通の思いを持ち続けられたら素敵な「コモン」ができると考える松井郁夫です。

今回は37年前に東京都北区で試みた「まちなかのサイン計画」のいまを訪ねました。

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まさにバブル景気が始まる1984年は日本中の自治体が「サイン計画」を策定し始めた頃です。

アーバンデザインを標榜していた私にも北区の「サイン計画」の実施設計が依頼されました。

「都市設計」と呼ばれた「アーバンデザイン」はアメリカで始まった都市の設計です。

いわゆる「都市計画」が広範囲な地域の人口構成や物流などを計画する際に「インフラストラクチャー」である道や公園、公共建築の詳細な「デザインコード」を創るのが「都市設計」(アーバンデザイン)の仕事です。

大学院で「楽しく歩ける街」づくりにをテーマにしていたころ横浜の都市計画にめぐりあい「岩崎駿介」さんに憧れた私は「アーバンデザイン」で日本の街をいきいきと活性化できると考えていました。

当時「日本システム開発」という大蔵省の外郭団体の研究員と知り合い各地の「都市設計」をお手伝いしておりました。

その頃北区では飛鳥山を中心とした都市景観づくりの一環として「まちなかのサイン計画」を策定中で、わたくしがデザインを担当しました。

計画策定にはいきなりサインを造るのではなくて「街歩き」から始まりました。まず対象の街の「歴史や産業」を知るのです。

王子駅周辺は北区役所や歴史ある王子神社や王子稲荷がありました。歓楽街の赤羽や芥川龍之介などの文豪の住んだ「田端文士村」など、北区は話題の豊富なところです。

そこでサインは単なる「案内板」ではなく「市民と街をつなぐ」「コミュニケーションツール」として考えました。

先日「せんとうとまち新聞」の主催者の栗生さんたちの活動が「王子駅ガード下ギャラリー」で展示されたことをFBで知って久しぶりに昔のサインに会いに行きました。

「王子ギャラリー」はJRの線路の高架下を利活用するために計画されました。鉄のコラムとフラットバーを組み上げた架構に展示パネルを仕込んだトンネルです。

歴史ある王子神社と駅前をつなぐ「タイムトンネル」です。周辺には公共施設を案内する「総合サイン」や「街角サイン」などがあります。

37年経っても更新されて健在で、道ゆく人たちの役に立っているようで嬉しくなりました。

お近くを通りお時間があれば覗いてやってください!

2024年03月07日 Thu

「デザイナー誕生」本阿弥光悦にちなんで

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デザイナー誕生

国立博物館平成館で開催されている「本阿弥光悦の大宇宙展」は圧巻の展示でした。

刀鍛冶の家に生まれ、蒔絵師として国宝「舟橋蒔絵硯箱」を制作し、書家としては俵屋宗達とのコラボレーションで美しい和歌をしたため、楽茶碗を焼き、まさに大宇宙展にふさわしい内容でした。1962年の美術選書「デザイナー誕生」では日本最初のデザイナーと称賛されています。その才能あふれる作品は当時も現代も社会に大きな影響を与えてくれています。

翻って私たち設計者には何を社会に伝えられるでしょうか?建築は総合芸術と言われてますが技術と美術をつなぐ行為だと思います。しかも社会性を求められています。優れた芸術がそうであるように時代を反映し新しいみらいを提案し訴求する力を持たなければならないと思います。本阿弥光悦が建築家であったらどんな建物を造っただろうと考えさせられた展覧会でした。会期は3月10日まで。

2024年03月03日 Sun

「真の文化の伝承者は職人である」白鷹幸伯

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日本の伝統を今に伝えみらいにつなごうと考えている松井郁夫です。

今回は文化の伝承者について描きました。

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法隆寺の大工であった故西岡常一さんとともに活躍した野鍛冶の白鷹幸伯が言っていた言葉が最近また耳に響いてきました。

いわく「真の文化の伝承者は職人である」「文化の伝承は大学の研究者や設計者のものではない」「むかしから受け継いできた伝統を無心に作る職人こそが真の伝承者である」ただし「職人は社会を俯瞰できないから自らの地位を知らない」

また民藝運動の発足時に書かれた「趣意書」に柳宗悦は「民芸には純粋な日本の世界があります。

外来の手法に陥らず、他国の模倣に終わらず、全てをこの国の自然と伝統から汲んで日本の存在を鮮やかに示しています。

おそらく美しさにおいても日本の独創性を顕著に示しているのは各地に残る民芸でしょう。

「民芸」には実用の美を見ることが出来ます。古い「民芸」の前に立つと、無名の職人たちの声が聞こえるようです。(中略)

わたしたちはながらく日本の工芸の本質が「民芸」を貫いてきたにも関わらず、あまりにも普通で身近なものとして気づかずにいました」

私はいま「職・人新世の時代」が来ていると感じています。

ものづくりの世界が手仕事を離れてデジタルに移行したいまこそ、手仕事の大切さを知るときではないでしょうか?

幸いなことに若い職人の中にはデジタル時代を生き抜く「技能」と「技術」を兼ね備えた新人類が出現してきました。

彼らに共通のことは、すでに職人の修行の中で「伝統技術」を身に着けている上に企画や設計までもこなしていることです。

SNSを駆使して自らの情報発信にも長けています。手仕事のできる設計者です。

彼らこそが「真の日本の文化」を担ってくれることに期待します。

 

2024年03月01日 Fri

伝えること

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伝統的構法で丈夫な暖かい現代住宅をつくり続けている松井郁夫です。

今日は仕事の伝え方について描きました。

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「仕事は見て覚えろ」と言われて親方から教わることがなかった我々世代の人間はいまのスタッフを育てることが下手だと思う。

手取り足取り教えてもわからないところは分からないのだから、結局わかるまで何度も同じ間違いを繰り返す。

職人の世界ではやってはいけないタブーばかり注意されるので、そのことに気を付ければあとはやっていいことがたくさんある自由な世界なのだが、若い頃は気づかない。

職人は「経験」を重ねて「技能」を磨く。やってはいけない経験は身体が覚えてくれる。ところが「知識」はやっていい「技術」を詰め込むので、やってはいけないタブーがわからない。

「技能」と「技術」の違いはそこにある。以前は設計者には資格試験で経験年数を聞かれたこともあった。いまでは試験に合格してから経験を積むことで資格が取れる。おかしな傾向だと思う。

だから若いスタッフには自らの手で失敗して経験を積んで欲しいが雇用主としてはそれも困る。そこには仕事を見て覚えるくらいの観察力と器用さを持ってなければならないようだ。いまやそんな若者はいないか?出よ!スタッフ〜ッ!笑

2024年02月18日 Sun

「浜松の木組の家」上棟しました。

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丈夫で暖かい木組の家を作り続けている松井郁夫です。

今回は「浜松の木組の家」の建て方見学会の報告です。

工務店は「木ごころ工房」の松村さんです。

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当日は晴天に恵まれて、早朝から終日建て方日和でした。

「木ごころ工房」は伝統的な木組みに特化した工務店だけあって、

職人さん同士のチームワークも大変良く夕方には棟が上がりました。

見どころは大黒柱の通りのダイナミックな「門型架構」です。

壁の中に「貫」を挿入しながらの建て方は慣れないと難しいのですが、

松村さんたちは各自の持ち場で木と木に格闘していましたが

見事な連携で美しい軸組を組み上げました。

建主さんは20年前の「木組のデザインゼミナール」OGの方です。

上棟おめでとうございます。みなさんご苦労さまでした。

最後まで怪我のないよう引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

2024年02月11日 Sun

「房総の古民家再生」始まります

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「むかしといまをつなぐ」丈夫で暖かい古民家再生を実践している松井郁夫です。

今回は房総半島の古民家を再生します。

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千葉の房総半島には黒潮に乗ってやってきた南方系の古民家が数多く残っています。

今回の民家は南方系ではありませんが、明治の建設で集落では古い民家です。

現在は残っている古民家の両翼に昭和に建てられたと思しき建物が増築されています。

平屋の建物で全体に約60坪くらいの大きさです。

若いご夫婦と4人のお子さんが暮らす住まいになる予定です。

古い架構を活かして現代的なインテリアを考えています。

少し時間がかりますが時間を超えて住み継がれる「むかしといまをみらいにつなぐ」家にしたいと考えています。

 

 

2024年02月06日 Tue

「手描きか?CADか?」アナログ人間のつぶやき…

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快適で心地よい家づくりを目指している松井郁夫です。

今日は設計者として最近思うところを書きました。

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いまや設計図はCADで書くことが当たり前になりました。

コンピューターを使って引く線は正確無比で狂いがありません。

縮尺を変えても作図の時はミリ単位で製図するので原寸で描くのと変わりありません。

現場で職人さんと図面を共有し検討するにも正確です。

そのことは充分わかっていながら松井事務所では作図を手描きの図面に戻しました。

松井がどうしてもCADに馴染めなかったということもありますが、

木造の住まいをプレカットを使わず手仕事で造っているので、

図面も手描きがちょうどいいと感じていました。

これまでも現場で指示するときはその場で手書きのスケッチを描いて職人さんに直接渡していました。

職人さんは手描きのスケッチを喜んでくれて「漫画を書いてくれヨ」といわれます。

CAD図面よりわかりやすいと言ってくれます。

私は少年時代に漫画家を目指したこともあってそう言われることにも悪い気はしません。

最近では以前のようにT定規に鉛筆で描くことが楽しくなりました。

一本一本の線を確かめながら描くので毎回ワクワクしながら描いてます。

手作業がこんなに楽しいなんてなぜ今まで気が付かなかったのだろう?

多分この楽しさは住まい手に伝わってくれるだろうと勝手に考えているアナログ人間のつぶやきでした!笑

図面は「篆刻美術館」1991年

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