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11月, 2020 | 松井郁夫建築設計事務所「木組の家づくり」

2020年11月29日 Sun

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川口の古民家再生


川口の古民家再生

昭和の民家再生 : 耐震+温熱改修

埼玉県川口市に建つ立派な民家です。元は織物工場を営んでいた方の町家で、昭和7年築の建物ですが、古民家と呼ぶにふさわしい伝統的な木組の家です。

昭和年代には、道路側に木造建物で工場があったと言います。主家は祖父が建てたのですが、現在のご当主は古い家が嫌で、裏に新しい家をつくって住んでいました。最近になって自分が幼い頃を過ごした民家に戻りたいと思い始めたと言います。

道路に面した土地はコンビニエンスストアに貸して、母屋を改修することにしました。

建物は出桁造りの関東らしい町家形式です。88年の風雪に耐えてきた架構は、むかしのままの伝統的な仕事で昭和の建築とは思えないくらい柱や梁も立派で丈夫な建物です。ただし、内部は座敷の続き部屋で、暗く寒い状態でした。

そこで、耐震性能と温熱性能の両方を向上させる設計としました。

まず、傾きを直しすために柱だけを残す、骨組みだけの状態にしました。建主さんは間取りの大きな変更を望まなかったので、架構はそのままとして限界耐力設計法により、板壁や足固め貫の耐力要素を加えました。スケルトン改修と言います。

温熱性能の向上は床下を密閉して、約50坪の平屋を第三種換気により床置きエアコン一台で空気の流れをコントロールし温めることにしました。

南側に大きなガラス戸を断熱気密の良い木製窓に交換して、屋根瓦は既存を葺き直し、外壁に外断熱を施し焼き杉板で包み込みました。増築部分の台所は最近の改修でしたが、材料も仕事も悪かったので取り除きました。

大きな屋根の下は小屋裏収納になっていましたが、今回ロフトにしてご主人の書斎になりました。

古民家の再生でありながら、大きな木製窓の外観がモダンです。貫を切らずに補強して耐震を向上させ、外断熱と気密の向上で温熱改修と省エネを実現した事例です。

所在 埼玉県川口市
構造規模 木造平屋建(ロフト付き)
敷地面積
延床面積 156.09㎡(47.2坪)
建築費 約6000万円
設計監理 松井郁夫建築設計事務所
施工 山口工務店・神谷棟梁
構造監修 悟工房
温熱監修 夏見工務店
竣工 2020年7月
構造材 古材
床板 杉 厚15mm
外壁仕上 屋根:瓦
外壁:焼杉板
断熱材 壁:フェノバボード 25mm
屋根:高性能グラスウール300mm
床・基礎:スタイロフォーム50mm
内壁仕上 漆喰塗・土壁藁入り
開口部 木製オリジナル建具(ペアガラス)
樹脂サッシ(ペアガラス)

2020年11月23日 Mon

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エッセイ:「石場建て」の真実

最近、古民家に見られる「石場建て」を再現する大工職人や設計者が増えています。

古民家によく見られる「石場建て」は免震性能があるということで注目されているのでしょう。その事自体は素晴らしいことだと思います。

しかし、伝統構法の本来の造り方を正確に理解しないと、一過性のブームに終わってしまう危険性があります。

伝統構法を標榜する多くの職人も、明治維新による西欧化が始まる以前の日本建築への理解が足りないように思います。

ここに、日本建築が近代化する過程において、いかに西欧建築の影響を受け、日本古来の伝統構法が分断されたのかを論考した本があります。

源愛日児著「木造軸組工法の近代化」(中央公論美術出版2009年)です。(書評添付)

この本には、現在の日本の一般的な家づくりである「在来工法」が明治以降西欧の技術を取り入れた「和洋折衷」であり、日本の伝統的な部材が失われ、多くの西欧的部材に置き換えられ衰退していったかが明確に示してあります。

まず、江戸時代には二階建ての家屋がほとんどなく「胴差」はなかったこと、明治になって二階建ての学校や庁舎が建てられることになり、下見板を貼る下地の間柱を止めるために横材として胴差が必要となったこと。さらに地震国日本の重要な耐震要素であった「貫」が「間柱」や「胴差」と「土台」を結ぶ「筋違」によって壁の中から追いやられ後退したこと。

日本建築が「減衰設計」を基本にしており「貫」のめり込み強さによるレジリエンス(復元力)を持ったしなやかで粘り強い構造であったことがこの本によってわかります。

その中で「石場建て」が地震国日本の重要な免震要素であったことも想像がつきます。

日本の建物は、自然の猛威に対して力で抵抗する「強度設計」ではなく「柳に風」で地震力や風の力をいなしていたのです。

その場合、建物は変形はしてもある程度の力に耐え、損傷限界の前にそれ以上力が入力しない仕組みを持っていたのです。

そこで「石場立て」の石の上を滑る「足元フリー」が重要になるのです。

その際に最も注意しなければならないのが、石の上においた柱がバラバラに動いて足元が開いて建物が崩れないようにすることです。

ですから石場建ての礎石は柱の足元にあることが重要なのです。さらに柱同士は「足固め」という横材で強固に結ばれていなければなりません。現在の在来工法のように、3尺おきの束はありません。

さらに上部の柱と梁同士も強固に結びついて一体化する必要があります。

そこで古民家を見ると、床下には「足固め」や「大引」と呼ばれる大きな横材があり、柱頭では「折置組」という「柱と梁と桁の三部材が一体化」した丈夫な木組みになっています。

地震や台風等の大きな力が加わるとそれらの部材は、一斉に同じ方向に動いて建物が滑り、免震的に働くのです。

ここで留意しなければいけないのが、束の存在です。足元がムカデのように何本もの束によって支えられていては、建物が一体に動くことは困難で傾いた束が床を持ち上げて建物が滑ってくれません。

在来工法になれた現代の大工や設計者には、ここが最も気づかない盲点となります。

また、「強度設計」の建物は「許容応力度計算」によって耐震性を計算しますが、「減衰設計」の場合は「限界耐力計算」によって粘り強さを確認します。

国土交通省によって2011年に兵庫県の防災センターで行われた足元フリーの実大実験の結果も、ムカデの足ように並んだ多くの束が、建物が滑る邪魔をして、隅柱をくじいてしまいました。

また、胴差が通し柱を折ってしまうこともわかりました。筋違も梁を持ち上げて、胴差を折り、一階が倒壊します。

明治以降に二階建て庁舎や学校の建物を作るために挿入された胴差しは、地震時に通し柱を折る悪さをするのです。

熊本地震では、続けて起きた二度の大きな波に、強い筋違が胴差を突き上げて建物を崩壊に導くような事例もあり、当時の国の構造設計担当者の間でも、筋違の是非が問われたと聞いています。

古民家の架構を免震の観点から見れば明らかな事実も、明治以来、和洋の工法が混在したままの状態で現在まで推移しているのが混乱を生んでいます。

ここで一度立ち止まって「伝統構法の定義」を明確にし、次の世代に引き継げる構法として進化を図るべきだと考えます。

変形を許容しても「生存空間」を作る「貫・足固め・折置組」による「減衰設計」を選択するならば、伝統構法の継承を形だけの模倣に終わらず、真実を伝承する科学的かつ人間的知見を持ちたいところです。

そのためには、2008年から行われた国交省の実大実験による検証をさらに進めてほしいと思います。

 

 

 

2020年11月21日 Sat

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伝統の木組みをユネスコ世界遺産に!

【朗報】日本が誇る伝統建築の技術が、無形文化財の指定を受けそうです。
以下「京都新聞社説」2020年11月20日より

日本の伝統建築を支えてきた職人たちへの大きな励ましとなりそうだ。

 宮大工や左官職人らが継承する「伝統建築工匠(こうしょう)の技 木造建築物を受け継ぐための伝統技術」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が無形文化遺産に登録するよう勧告した。12月に正式に決まる見通しだ。

 登録を機に、匠(たくみ)たちの貴重な技を未来へとつなげていく機運が高まることを期待したい。

 対象は木工や左官など17分野の技術。瓦屋根、かやぶき屋根、建具、畳などの製作のほか、建物の外観や内装に施す装飾や彩色、漆塗りも含まれる。

いずれも社寺や古民家の修理に不可欠な技術だ。

 全てが国の「選定保存技術」で、京都市に拠点を置く全国社寺等屋根工事技術保存会など14団体が保存団体に認定されている。

 奈良・法隆寺などに代表される木造建築は、木や草、土など脆弱(ぜいじゃく)な素材を使って地震などに耐える構造を生み出し、高度な保存修理の技術で維持されてきた。

 屋根ふきなどに地域住民が関わることがあり、社会の結束を強める役割を果たしてきた面もある。

 残念ながら建築技術や生活様式の変化に伴い、一般住宅で伝統技術が使われることが少なくなり、技の継承は難しくなっている。

 例えば、金物をほとんど使わずに、切り込みを入れた木と木をはめ合わせて構築する伝統の「木組み」の技術がそうだ。

 事前に工場で木を刻むプレカット工法などに置き変わり、生かす場が減っている。

 かやぶき屋根やしっくいの壁も珍しくなり、畳でさえ工場製品に押され気味だ。

 神社仏閣の建築や修繕に携わる宮大工も減り、今では全国で100人ほどと言われる。

 そんな中、保護すべき世界的な無形文化遺産として伝統建築の技に光が当たる意義は大きい。

 若い人たちが改めて日本建築の良さに目を向けるきっかけにもなるだろう。

 同時に、国や自治体、伝統建築の関係者は匠の技を保護し、次世代に受け継いでいく責任が、これまで以上に重くなることを忘れてはならない。

 伝統の技を保存修理技術にとどめず、住宅の新築などにも生かして職人が活躍する場を増やす。そんな仕組み作りも求められよう。

 建築を巡る教育や法規制の在り方も含め、伝統技術のすそ野拡大へ知恵を絞りたい。

 

2020年11月20日 Fri

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「初めての人にもできる!古民家再生絵本」電子書籍化のお知らせ

 

10月に発刊しました「初めての人にもできる!古民家再生絵本」を電子書籍化しました。

来週には、Amazonや楽天で購入できます。

ウエルパイン書店 第3弾「初めての人にもできる!シリーズ」です。

昨年発刊した「古民家への道」とセットで見ていただくと事例の古民家の仕組みが手にとるようにわかります。

どうぞご覧下さい。

 

2020年11月07日 Sat

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エッセイ:「いつか古民家になる!」木組の家とドミノシステム

住まいの設計をしながら日頃から思っていることがあります。

それは、わたくしの設計した木造住宅が「愛着を持って使われて長く生きてほしい」ということです。「いつか古民家になる」ような住まいです。

何世代もの家族に受け継がれ、使い込まれて、再生されて命をつなぐ事になったら設計者冥利に尽きます。そのためには古民家がつくられた地域を知り、歴史を知り、技術を知り、最も大切なものを大事に保持することだと考えます。

古民家には、地域の気候風土に沿った決まり事があります。それは屋根の形状や素材の使われ方の違いによってわかります。民家独特の共通のルールもあります。それは丈夫な架構のつくりかたによって受け継がれています。木組と言われる日本独自の伝統構法です

建築史家の伊藤ていじ氏は「民家には動かせない柱と梁がある」と言いました。「民家の流れはコンクリートや鉄骨造につながる」とも言い「架構の制約が多い」とも言っています。

しかし、民家の丈夫な架構がつくり出した開放空間は、融通無碍で自由でした。まさに「ユニバーサルスペース」の日本版です。

民家は日本版「ユニバーサルスペース」と言う「ガランドウ」の空間に幾世代もの生活が刻まれ、長く住み継がれました。

ドイツの建築家ブルーノ・タウトは、戦前に日本を訪問した折に「桂離宮」と「合掌民家」を発見し高評価し日本建築を合理的な建物として世界に紹介しました。フランスの現代建築の巨匠ル・コルビジェの弟子のシャルロット・ペリアンは、戦後日本を旅した時に「日本ではすでに規格された建物をもっている」と言って驚きました。コルビジェのいう「モジュロール」や「ドミノシステム」との共通点を見たのでしょう。

日本の建物は、人体寸法をもとにした建物の寸法が、山から木材を伐り出す時から決められていました。「木割」という木材寸法のルールは「匠明」によって大工職人の規範となっています。

東京芸術大学環境デザイン研究室教授・稲次敏郎先生は著書「環境デザインの歴史的展望」の中で、日本民家を「再生機構を持つ住居である」と定義ました。さらに古民家の架構は、コルビジェのいう「ドミノシステム」と同じであると論じています。

学生時代から薫陶をうけたわたくしは、1995年の「阪神大震災」を契機に木造住宅の耐震化を目標に実踐を重ねています。古民家のようなドミノシステムの架構を持つ「いつか古民家になる!」木組の家づくりをこれからも精進していきたいと願う今日この頃です。

長文お付き合いありがとうございました。

*稲治先生のドミノと民家の架構を示す図版とわたくしの「建築知識」連載記事2001年8月号の関連ペイジを添付しておきます。さらに興味のある方は記事の全容を下記のURLからご覧下さい。

建築知識記事全文

 

 

 

2020年11月03日 Tue

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ウエルパイン書店 3部作 揃いました

古民家から学ぶ木組の家シリーズ

3部作が揃いました。

木組の家づくりの原点は古民家です。

古民家から学ぶ木組の家。

家づくりの歴史から地域性、構法から技術まで、読んで見て楽しく身につく3冊です。

ウエルパイン書店からの絶賛発売中です。

Amazonからも購入できます。電子書籍版もあります。

どうぞお買い求め下さい。

「古民家への道」

「初めての人にもできる!古民家再生絵本」

「初めての人にもできる!木組の家づくり絵本」

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