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2023年01月15日 Sun

コラム「古民家から暗い寒いを取り除く」

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古民家は生きています。

わたしたちは、「古民家の再生」によって新築を超える「新しい住まい」をつくることができると考えています。

本来、古民家は、太くて丈夫な木材と健康に良い自然素材でできています。

長い年月を生きた古民家は貴重な財産ですが「暗い」「寒い」が理由で壊されています。

それならば、その理由を取り除けば、更に長く生きることができると考えました。

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古民家から「暗い」「寒い」を取り除く

古民家が失われる原因は、「暗い」と「寒い」の2つです。

本来、土壁や木材は温もりのある暖かい材料だと思われています。

しかし、実は土や木は、素材としては熱伝導率が良くて熱を通しやすく、「熱(ねっ)橋(きょう)」となり熱が逃げやすいのが事実です。

また、古い建物では気密の良くない建具のために、開口部から隙間風が入るので「寒く」北側に開けた窓は「うす暗い」のです。

そこで、古民家を「暖かく」「明るく」するには壁や屋根に断熱材を充填し窓を設けて、温熱性能を上げるために、ガラスを二重にして更に、隙間風をなくすことです。

「暗い」部屋は極端に明るくしたり、温めたりする必要はありません。南側の窓を大きくすることで暖かくて明るくなります。つまり「寒い」「暗い」を取り除けばいいのです。

そこで、古民家の「架構」に着目しました。本来日本の民家は軸組工法で造られているので、柱・梁を残せば開口部は大きく採ることができます。つまり、庭木の葉表を見るために北側の窓を開け、日射を取り込むために南窓を大きく採るのです。

また、古民家は、石の上に柱を置いていましたから、地面に近い柱の根元が、湿気で腐ることを恐れ、床下を通気することが一般的で、床下を大きく開けていましたが、そのために床下から冷えてくるので、床面を暖める必要があります。

そこで、松井事務所では、古民家といえども、床下を塞ぎエアコンを沈め、周囲に断熱材を張って、温風を吹き込みます。

床下エアコンで1階の室内温熱環境と床下を同じにするために床面にはガラリを設けます。

ガラリはガラス窓の冷気が下がってくる場所が有効です。冷えた空気は重いので、床下から温風で対流を起こし、室内を最適な温度にしてくれます。

床下を密閉することに伝統的な職人たちは抵抗を感じるかもしれませんが、竪穴式の縄文時代から床を掘り下げて囲炉裏を炊き、一年を通じて地面を温めて、半年後に戻ってくる地熱を利用して寒い冬をしのいできたと言います。そのことを考えると、床下エアコンはとても合理的です。

わたしたちは、古民家の「暗い」「寒い」を取り除き、これからの「みらい」に向けて「再生」を実践しています。

「懐かしくて新しい古民家再生」をHPからご覧ください。

開放的な日本家屋の座敷。庭木の葉表を見るために庭は北庭を良しとした。

竪に掘り下げた土間に、一年を通して囲炉裏を炊いて、地熱が5ヶ月遅れて冬にもどってくるのを待った。

エアコンの温風を床下に吹き、冷気の降りてくるガラス面を温めることで、室内に対流を起こしている。

イラストは「初めての人にもできる!古民家再生絵本」ウエルパイン書店 

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