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2014年04月11日 Fri

古民家の再発見

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千葉県佐倉市の旧市街地で、新築の住宅建設が始まるので、何度か敷地に足を運んだ。

久しぶりに、鏑木小路に保存公開されている武家屋敷を訪ねた。25年間に千葉大学の大河直身先生と田中文男棟梁に連れられて、文化財保存のお手伝いで実測調査をさせていただいた建物である。

佐倉は昔城下町で、起伏の多い通りには、いまも古い民家や武家屋敷が残っている。江戸時代の町人や武士になった気持ちで市内を歩くと、丘に続く小道や高低のある坂道の眺めには、城下の名残を強く感じる。

お手伝いさせていただいた武家屋敷は、但馬家と河原家である。武家屋敷といっても茅葺の屋根である。細い小路は両側に土手が盛り上がっており、屋敷林が続いている。馬で通ると、ちょうど良い高さに生垣ができているという。この通りには茅屋根が良く似合う。

調査は泊りがけで、古い建物の柱の痕跡を調べ、復元工事のために一本一本の記録を採ることだった。まるで探偵のように柱の傷を観察して、元の間取りを復元する作業は、シャーロックホームズのような推理の連続であった。

但馬家では、痕跡から、床の間の位置が、90度変わった。屋根裏に潜って、本来の床の間の向きが判明したのである。さらに、河原家では、建物の向きも大きく変わって、横向きに配置された。民家の持つ構造の可変性と融通無碍さに驚いたことを覚えている。

田中文男棟梁と大川直身先生の深夜に及ぶ論争の激しさも忘れられない。この調査に参加させていただいて、たくさんのことを教えていただいた。

古民家にはまだまだ私たちの知らない、多くのことが隠れていると思う。民家は、あまりにも身近すぎてよく見ていないことがあると思う。今回の新築の建物には、佐倉の歴史的な建物の思いを込めて、過去と未来をつなぐ現代の住まいとして設計させていただいた。