プロジェクトレポート
2024年11月05日 Tue
現代の「在来工法の家」では下地材としか使わなくなった部材に「貫」があります。
「貫」はもともと大切な「構造材」で土壁をつくるときに柱と柱の間に小幅板を梯子状に貫通させて小舞と呼ばれる細い竹材を固定するために用いれられていました。
明治24年の「濃尾地震」のおりにお雇い外国人建築技術者たちが「筋違」を耐震壁に採用したので「貫」は壁に中で競合して後退しました。
それでも土壁が一般的だった昭和30年代ころまでは当たり前に使われていましたが、ラスボードという穴開きのパネルが現れて土塗りの下地を代用するようになって、ますます後退し「構造材」から薄い「下地材」になってしましました。最近ではパネル化された壁が台頭しているので、「貫」さえも見なくなりました。
このブログでは何度も述べていますが「貫」は建物が傾くと柱の中で「ノッチ」がかかります。「ノッチ」とは横材の貫が柱との接点で上下に揺れて衝突を繰り返すことです。
また「貫」は「めり込み」や「摩擦」を起こして力を「いなし」ます。つまり揺れながら「地震力」や「風力」を「減衰」する「柔構造」なのです。
繰り返しの揺れにも粘り強く「貫」が潰れて柱や梁が折れない限り「倒壊」に至ることはありません。さらに、傾いた建物をもとに戻す「復元力」もあります。
木の「めり込み」は繊維の直交方向に強いので最初の強い力で建物が傾斜しても、いつまでも「ぺしゃんこ」になることがないのです。
反対に「筋違」のように力に対して「剛構造」で対抗しようとすると、耐えきれなくなって「破壊」することがあります。それを「脆性破壊」と呼びます。
日本のような「地震」や「台風」の多い災害国では「貫」はやめてはいけない!部材だったのです。
「ノッチ」の仕組み 木造住宅【私家版】仕様書 118ペ―ジ