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2024年10月11日 Fri

建築の話をしよう⑦「美しい」をつくるⅠ

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建物を造る目的には「美しい」を実現することが含まれています。

どんなに機能や性能が良くても美しくないものは支持されないばかりか残りません。

では「美しい」はどうすれば表現できるのでしょう。

装飾性や精神性も大切ですが、ここでは作図の時に考える「比率」についてお話させてください。

「比率」とは「プロポーション」のことをいいます。

美しい「プロポーション」といえば「スタイル」のことを思い浮かべますが、建築の場合も同じです。

外観の「プロポーション」などは重要な「美」の要素です。

ところが「空間」という掴みどころのないものに対しては、どのように美しさを表現すれば良いのでしょう。

建築にはその構成要素として「床」「壁」「天井」がありますからそれらで囲まれた「部屋」の形を「空間」と捉えることができます。

「間取り」と言われる部屋や廊下などの配置も「空間」です。

設計者は敷地を読み込み、建物の配置を決めますが、敷地の形はもちろん、太陽の位置や風向きによっても配置や「間取り」は決まります。

ここでは「壁」で囲われる「空間」の形の「プロポーション」にも留意しなけばなりません。

部屋は四角い矩形ですが、漫然と四角いだけではいけません。それが良い形をしているのかどうかが問題です。

日本の場合、寸法の体系が畳の大きさを基準にした「ヒューマンスケール」の「尺寸」で決まっているので、あまり部屋の「プロポーション」を気遣いません。

しかし石で囲まれた西洋の家などは厚い壁と壁に囲まれた部屋に基準になる寸法があったとは考えられません。

西欧の部屋は単一機能ですから、寝室などはベッドの大きさや家具の配置で必要な寸法を決めたのでしょう。

部屋の大きさは機能に従うことはもちろんですが、形は「美しいプロポーション」で決めることがいいと思います。

配置もまた「美しさ」が必要だ思います。

部屋は矩形の集まりですか、「幾何形体」の集合体の美しさを検討して決めるようにしています。

「形の良い部屋を形の良い廊下でつなぎ形の良い平面図」を造るように心がけているのです。

柱や梁の部材の寸法も「比率」の良い「縦横比」を採用するようにしています。

柱や梁がすべて見える「真壁」構造ですからその「断面」も美しくしたいのです。

「断面」は構造的に必要な寸法であることはもちろんですが、柱や梁の配置にも美しさを求めます。

つまり「美しい部材の集まりが、美しい部屋を作り、美しい家になる」と考えています。

民芸の創始者・柳宗悦は工芸品に「用と美」を求めました。

建築も「用の美」です。建築の「美」の探求にはそ部材の寸法の「プロポーション」までを含めたいのです。