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2024年11月06日 Wed

再掲:建築の話をしよう⑱「貫」はやめてはいけない

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このブログは以前「構法の変遷」として描いた 建築の話をしよう⑥の一部の再掲です。

昨日アップした「貫」に焦点を当てて国土交通省が行った実大実験(2007年~2011年)から見えた知見を再度載せました。昨日のブログの根拠となる実大実験です。御覧ください。

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ここに日本の「木造住宅の構法の変遷」を図にしました。

この図からは、明治維新で江戸時代以前から続く日本人の伝統的な生活や文化が大きく変化したことがわかります。

日本は明治時代になるまで300年もの間「鎖国」をしていたので、西欧の影響を受けずに独自の建築文化を継続し、日本の伝統を受け継いできました。

ところが明治24年の「濃尾地震」を契機に、地震調査を行った「お雇い外国人建築家」によって西欧の力学にシフトしていきます。

「木造軸組構法の近代化」(2009年発行・中央公論美術出版・源愛日児著)によれば、「筋違」や「土台」「胴差」などの部材は江戸時代にはありませんでした。

地震国日本において「粘り強く」繰り返しの地震にも「復元力」を発揮する、最も重要な耐震要素の「貫」は壁の中で筋違と競合して衰退していきました。

1950年(昭和25年)に「筋違」が築基準法に位置づけられたため、現在わたしたちの住んでいる住宅は「日本の家」というより西欧化した「和洋折衷」の家となったのです。

最近、地震被害のたびに一階が潰れて二階が道路に落ちている写真を見かけますが、これは「筋違」が圧縮側に働いて「胴差」を押し上げ「通し柱」を折ってしまうからなのです。

そのことは2007年から2011年までおこなわれた国土交通省による「伝統的日本家屋の実大実証実験」によって明らかにされております。実験は、土壁と貫の「伝統的な日本家屋」をつくばの実験装置である動かない「反力壁」に押し当てて繰り返し加力し「層間変形角」1/15のまで傾けてその後の耐力をはかることでした。

実験は5回の繰り返しの加力で30センチ傾いたところで余力10トンを残してそれ以上倒壊しないことが確認されました。貫がセイフティとして働き倒壊を防ぐようです。

この実験からも、もう一度粘り強く地震に耐え復元力を発揮する「貫」を見直さなければならないと思います。

「貫」はやめてはいけない のです。

明治になって伝統構法は西欧化した

土壁と貫でつくった実験棟 1/15まで傾けて全ての通し柱が折れましたが、2階は無傷でした

繰り返しの加力に5回耐えて18センチ変位したところで止まり余力10tありまりました。50センチ傾いてもこれ以上は倒れません。