プロジェクトレポート
2024年08月29日 Thu
新しい建築をコンペで選ぶことが増えています。
優れた建物のデザインを競い合い、選ぶことは良いことです。
しかし、作品性を競い合うことに熱心なあまり、「気をてらったもの」が多いのも事実です。
デザインとは他とは違う「変わりもの」を考えるのだと勘違いしている傾向があるようです。
また審査する側にもデザインを理論的に分析することをしないで選ぶことが問題になっているように思います。
実際には審査員の個人的な「好き・嫌い」や「カッコいいか?よくないか!」で決まります。
審査に「評価軸」を設けず、人気の作家さんや実作のない大学の先生たちが審査員となって
自由に選び選考の様子は原則公開しません。
以前わたくしが審査員を務めさせていただいた審査会では「場所性と時間性」の軸を設けて審査を薦めるように提案しました。つまり「地域性や歴史」の視点からの採点です。
しかし審査員の方々には不評でした。「周辺の環境」や「構法や職人の歴史」に興味や造詣の深い方が少なかったのです。
むしろプレゼンテーションの上手なパネルが残ります。
これまでにいくつかのコンペに関わっていますが、残念ながら自由な人気投票での審査に限界を感じています。
とはいえ、ひとつでも社会的視点を持った作品を選ぶように努力しなければなりません。
他の審査員が選ばない大工さんが応募した地味ながら堅実な建物をわたしが選んで提示すると、それが賞を受賞するのです。ただし、他の審査員を説得する努力が必要です。
最近では、デザインの優れた職人さんも増えてきました。全国各地に若くて新しい職人が設計者を脅かしています。
それを「職人新世の時代」と呼んでいます。
審査員も試される時代になりました。