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2024年10月02日 Wed

建築の話をしよう①「設計者ってなに?」

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昨日も設計の依頼が来た。嬉しい。建築の設計は楽しい。最初のスケッが最高にスリリングだ。

与えられた条件を読み込み、敷地を見に行けば、自然と建物の姿が浮かんでくる。

事務所を始めて40年。毎回依頼内容を整理すると、姿が見えてくる。間取りや断面構成も3Dのイメージがボンヤリと頭に浮かんで、だんだんはっきりしてくるそのイメージが逃げないうちに紙に描く。

設計は最初のインスピレーションが大切。浮かんだ映像が消えないうちに鉛筆を走らせる。

インスピレーションは突然舞い降りてくるので、早く捕まえないと遠くに行ってしまう、今を逃すともう二度と降りてこないのではないかと焦る。

急いででアイディアスケッチを描く。手が早いので、もっと考えたほうがいいという忠告もあるが、自分の手は止まらない。

それでも一晩くらいは「寝かせて」オーナーに見せることにしている。早すぎては有り難みがない?(笑)しかし自分の能力の優れたところは「条件」整理の速さであるので時間をかけても答えは同じ。他の設計者も同じようにイメージが逃げないうちに早く描くのであろうか?

設計は「交通整理」に似ている。オーナーのさまざまな要望に道筋をつけるのは慣れてくるとそう難しいことではない。むしろルーティンになってしまうのが怖い。

ところで設計者という職業はいつから現れたのであろうか?日本の場合江戸時代までは大工棟梁が設計も施工も兼ねていたので設計者はいない。明治になって西欧の建築が入ってきて「職能」としての設計者が現れたようだ。

では西欧での設計者の出現はいつだろうか?

「告示録」という本がある。早稲田大学の教授だった「吉阪隆正」の名著である。学生運動が盛んな頃に書かれた学生と教授との対話集のような本だが、この中に出てくる「生命の曼荼羅」が面白い。設計者の思考を渦巻きにして見せてくれている。

ギリシャ時代「アルキテクトン」とは建築家のことであり「おせっかいやき」という意味であったという。職人とオーナーの間でおせっかいにも口出しをして質を高めようと努力したらしい。

現代のAIによる概要では「建築家とは、建築の設計や監理、その他建築関連業務を担うプロフェッショナルサービスを提供する職業」「建築家の仕事は、単に建物を設計するだけではなく、芸術的感性に基づく創造行為として業務を行うことなどに建築士との違いがあります。

建築家は、建物をつくるという行為の上位に、「人が幸せに過ごせる時間と空間をつくる」という目的を掲げています」どうやら設計者と建築家は少し違うようだ。

ただし「与えられた土地に対してどのような建物を建てるか、造形や構造を検討しながらデザインし図面を描く。法律に従い安全な建物を設計する。

新しい時代に合ったライフスタイルを考えたり、空間を活かす時間の使い方も含めてデザインしたりする。地域の人たちに空間への親しみや愛着を持ってもらったりする。」などの「社会的責任」が伴うことは共有された必然のようだ。

「建築士」は「資格」であるが「建築家」には資格はないからと言って自ら「建築家」と名乗ることは憚ったほうが良い。

「~家」とはその道を極めようとしている人物を指していう言葉であって他人が決めることだから。