鷹巣の古民家再生 〈福井県〉

鷹巣の古民家再生

入れ子の古民家

福井県の日本海側に鷹巣という港があります。

裏が日本海という造り酒屋の古民家再生です。

訪ねていったときは、玄関が増築されていて、真っ暗な天井にかすかに黒々とした梁が見えました。

オーナーは私設郵便局を経営されているこの土地の名士で、日頃多くの人が集まる家なので大きな広間がほしいというご要望でした。

そこで建物の中央にあった玄関の位置を変えて、南側に大広間をつくりました。

かつての玄関は土間であったらしく、しばらく浴室になっていましたが、その脇の大黒柱が水がかかって腐っていました。

そこで大黒柱の床下の礎石をすべて取り替えるという大仕事でしたが、養生をしてやり遂げました。

大正時代に屋根をかけたそうですが、架構を詳しく調べていくと江戸時代の骨組みがでてきました。

江戸時代に火を出したと聞いていましたが、火事の痕跡の残る骨組みがでてきました。その上に屋根を掛けてあったのです。

大正時代の大工は江戸の仕事に敬意を払って、むかしの骨組みに頼ることなく新しい屋根を掛けていたのです。

つまり、屋根の下に江戸の構造が「入れ子」になっていたのです。

こちらも大工に敬意を評して、江戸の架構を切ることなく、小屋組の中に子ども部屋をつくりました。

水廻りを更新して広間ができたので大勢集まれる古民家再生となりました。

大人になって一度は家を出た子どもたちも、戻って来るようです。広間に家族や地域の人が集まる様子が目に浮かびます。

所在 福井県福井市浜住町
構造規模 木造2階建(改修工事)
敷地面積 1605.00㎡(486.14坪)
建築面積 251.85㎡(76.28坪)
延床面積 376.15㎡(113.93坪)
1階 251.85㎡( 76.28坪)
2階 124.30㎡( 37.65坪)
旧用途
旧建築物当初竣工
建築費 4,500万円(参考価格)
設計監理 松井郁夫建築設計事務所
施工 おだ住建
竣工 1999年7月
建蔽率
容積率
地域地区
防火地域