プロジェクトレポート
2024年10月05日 Sat
木造の建物の骨組みは、大切です。骨格を作る重要な構造を「架構」と呼びます。
通常は、柱や梁などの主要な構造材は無垢の木でできています。
木の部材は一本一本が軸状になるので、その軸を組みを「木造軸組工法」と呼びます。
軸状の材料は組み上げれば立体になりますが、棒状のままだとトラックの荷台に積む事ができます。
木造軸組の歴史は長く法隆寺の昔に中国から伝えられた建築技術です。
木と木を組むにはその接合部に「継手・仕口」と言われる加工が必要になります。
「継手」とは手と手を握手するように長手方向につなぐことで「仕口」とは腕を横から掴むように直角方向につなぐことをいいます。
金物がなかった頃に接合部を堅固に結ぶ工夫を重ねてできた加工技術で、伝統的な工法には欠かせない技術です。
30年ほど前から木造の家は「プレカット」でつくるようになって今では伝統的な「継手・仕口」はなかなか見ることができません。
伝統構法の優れたところは接合部を固くつなぐのではなく、木材の「めり込み」と「摩擦」を利用して多少の粘りや滑りを許容します。
金物で固く締め付けた接合部の工法との違いは、地震や台風のときに「強度」で対抗するのではなく、力をいなして「減衰」することで建物を守ります。
金物が木より強くて母材を壊してしまうことがあるからです。「豆腐を針金で釣ってはいけない」とむかしからの大工職人の忠告です。
また全ての構造材を見せる「真壁」工法が架構を美しくダイナミックに見せてくれます。
壁は「土壁」が本来です。柱と柱を貫く「貫」に竹を網状に組んだ「小舞下地」に縄を巻いて土をつけます。
「貫」は壁の中に入って見えなくなりますが、重要な「構造材」で、繰り返しの地震の揺れにたいして復元力を発揮して、建物の倒壊を防ぎます。
「貫」は明治24年の「濃尾地震」以降に西欧から「筋違」が導入されたため、壁の中で部材同士が競合して衰退しました。
最近では地震のたびに耐震構造として「筋違」を入れるように推奨されていますが、場合によっては梁を押し上げる斜め材として働き建物を壊すような悪さをします。
地震後に一階が潰れて二階が道路に落ちている写真をよく見かけますが、筋違が胴差しを押して柱を折ってしまったのです。
2007年から2011年まで行われた国土交通省による実大実験の試験体はわたくしが設計したのですが、実験では「貫」による復元力が確認されました。「貫」は「やめてはいけない部材」なのです。
それでも永田町は建築基準法を変えませんでした。
「架構」は「貫」と「足固め」と「折置組」でつくるようにすれば、今よりは地震に耐える「軸組」が出来るのですが…。
つくば防災研究所の反力壁から押す実験 30センチ傾けると胴差がすべての柱を折る
つくばの実験 貫が復元力を発揮して繰り返しの揺れにも倒壊しない「貫をやめてはいけなかった」