私たちが古民家を再生するときに大切にしているこだわりをご紹介します。
古民家再生は、まず古民家の状態を把握し架構を理解することがスタートとなります。
当事務所では、簡易調査と詳細調査両方を行います。
簡易調査では、再生可能な古民家かどうか、住まい手の想いに沿った家をつくれるかどうかなどを判断し、アイデアを提案するためのもの。
詳細調査では、架構のチェック、木材に腐朽や蟻害(シロアリ被害)がないかどうかなど。古材の打音診断を行い、末長く使えるかどうかを判断します。その他、良質な柱、梁、美しい建具や家具などについても調査します。
「野帳」とは簡易診断や実測調査の内容を記録するための図面(平面図・展開図、断面図など)のことで、「フィールドノート」と呼びます。
わたしたちは、現地踏査・調査の時点できるだけ見やすく、できるだけ丁寧に描くように努めています。野帳はイメージをふくらませたり、パースや模型を制作したりするうえで非常に重要だからです。 野帳を描くためには、天井裏に上がったり床下に潜ったりしながら古民家の構造を的確に把握します。そして、それを誰が見ても理解できるように図面に落とし込みます。この事前の準備作業を丁寧に行い、設計図を正確に把握します。正確さを欠くとスケール(縮尺)感などに誤差が生じ、不都合が出ることもあるのです。
野帳を丁寧に描くと古民家の空間構成(光の採り方や風の流れ方など)が見えてきます。空間構成を知ることは、古民家再生における大切な要素です。増改築を繰り返したことで本来の機能が損なわれた事例は少なくありません。野帳によって古民家が本来備えている「快適に暮らすための機能」を知ることができるのです。
古民家の特徴は、架構(骨組み)にあります。古民家を読み解くには、架構をしっかりと読み解かなければなりません。
設計は、まず、読み解いた架構を最大限に活かし、住まい手のご要望にあわせた間取りを決めていきます。その上で、デザインを検討して設計図面をつくりこんでいきます。
古民家を再生する場合、住まい手の望む快適な暮らしを実現するためにも、新たなデザインが必要となってきます。
当事務所のデザインに対する考え方は、次のとおりです。
わたしたちは、時代が変わっても美しく住み続けられるデザインを大切にしています。
築100年以上のこの古民家を大学の建築の先生や設計者など様々な人に相談したところ、どの方も壊した方がいいだろう、助言されたそうです。 当建築設計事務所はご縁をいただき、リノベーションすることを提案し、調査解体してみたところ、明治時代の丈夫な木組、丁寧な左官仕事が残されており、とても価値のある建築であることがわかりました。しかし、床下の「足固め」の虫喰いや柱と足固めの「接合部」に用いられていたボルトの結露による 柱の腐朽など、建物の傷みもありました。
リノベーションでは、そのボルトを木栓に 、開口部はアルミサッシ二重ガラスに変更し、土壁は再利用の上、漆喰で仕上げました。天井には吸放湿+断熱性能のよい板を貼り、漏気をなくす断熱・気密に取り組み、吸放湿性の高い素材で湿度の高い山あいでの暮らしを快適にすることができました。
古民家と言うと、夏はいいけれども冬がとにかく寒い、というイメージがありますが、当事務所が行う古民家再生は、断熱改修と温熱向上にしっかりと力を入れていますので、夏涼しく、冬あたたかい暮らしが可能です。
断熱改修には、天然素材の木や土を用い、吸放湿と蓄熱性能を確保し結露のリスクをさける無垢材を使うことを基本としています。
また、床下にエアコンを沈めて温風を吹くことにより、大空間を温めることが出来ます。さらに、自然の持つエネルギー(太陽光、太陽熱、風、水)なども活かしたパッシブ設計を大切にしています。滋賀県の古民家再生「漢方の本陣」では「2019日本エコハウス大賞」「2020ウッドデザイン賞」を受賞し2020年には「登録有形文化財」にも選定されました。事例はこちら
南房総の家では、古民家再生時に断熱改修を施した場合とそうでない場合の熱損失、初期コストとランニングコストから見るコストパフォーマンスについて調査分析しました。詳細はこちらをご覧ください。
その土地の地場、気候風土を熟知していること、住まい手から近い施工業者さんを探し、迅速なアフターフォローができるように、その土地の職人と協働で施工を行います。
当事務所では、全国各地の職人と独自のネットワークを築いていますので、どの地方でも職人、施工業者のご紹介ができます。
また、当事務所では、全国各地でこれまでに多くの古民家再生の実績をあげてきました。経験の深い職人達とのコミュニケーションを密に取りながら、監理業務を進めています。