プロジェクトレポート
2013年05月30日 Thu
ブログ | プロジェクトレポート | 髙円寺の家 オーナー連載 | 高円寺の家
「高円寺の家」のオーナーのKさんが、エッセイを送ってくださいました。
今日から、連載をはじめます。
Kさんは60歳でこの家を建てられ、お一人でお住まいになっています。
無垢の木と漆喰の木組みの家の生活は、どのような暮らしなのでしょうか。
日々のお住まいの様子をお楽しみください。
「高円寺の家」施主
第一話
木組みの家の暖房事情
今冬の寒さはとても厳しいといわれています。
野菜が育たなくてスーパーで高騰しているくらいです。
おまけに東京では成人の日の大雪。
新しいわが家は畳がなくすべての床が板敷の設計です。
その板敷と寒さには思い出がありました。
わたしが40年前に入学した高校では、柔道と剣道の選択授業があったのです。わたしの選んだのは「剣道」クラス。
この剣道が寒かった。
防具をつけて板敷の体育館で素足にならなくてはいけません。
冬場はこれがつらい。
床板が冷たくて、凍える思いがするのです。
先生がくるまでは、ちゃんと立っていられなくて、震えながら「かかと」だけで立っていたおぼえがあります。
みると他の同級生も同じような格好になっていた。
ですから「板敷は寒い」というのがその頃からのわたしの印象だったのです。
今回、家を建てるにあたって、床はすべて檜(ひのき)の板敷になると聞かされていました。
床下暖房を設置するとは聞いていましたが、「板敷の寒さの」印象がよみがえってきます。
いったい、どんな住環境になるのでしょう?
引っ越し日は、昨年のクリスマスでした。
実際に住んでみないとどれだけの寒さかわかりませんでしたから、 旧家から4畳半のカーペット1枚と10畳用のファンヒーターを持ち込んで寒さ対策に備えたのでした。
寒さがつらければ、すぐこれを取り出すつもりです。
暮らしてわかったことは、室内が寒くないのです。
板敷も冷たくない。
専門家に聞くと、
「床が檜(ひのき)なら冷たくないでしょ」と言われました。
床材につかう木の種類で、冷たさが違うらしいのです。
前に住んでいたのは、終戦後すぐに建てられた木造モルタルの家だったのですが、冬のさかりには頭が冷えて暖房なしではいられなかった。
でも、新しい家では、そういう厳しさを感じなくてすむのです。
それは床の材質のほかに、壁が昔ながらの「漆喰(しっくい)」
だということに秘密があったようなのです。
室内の湿度の違い。
「同じ30度の気温でも、日本の夏とハワイでは感じる暑さが違う」とは、よくいわれます。
湿度によって体感温度が異なるという。
夏は湿度が低いほうが涼しい。
ということは冬に乾燥(湿度が低い)すると、寒さはより厳しいことになります。
湿度からみてみれば、日本の夏は多湿なので
「厳しく」暑く、冬は乾燥していて「厳しく」寒いのですね。
木組みの家は、壁が漆喰です。
たとえ外気が乾燥していても、室内では壁が呼吸をしていて適度な湿り気を排出してくれます。
だから低温でも寒さを感じなかったのでしょう。
暮らして1ヶ月ですが、暖房をほとんどかけていません。
そのかわり、ウールの帽子をかむり、綿入れを着て、厚手のソックスをはいて一日をすごしています。
引っ越しして2日目の12月26日にこの家の設計をしてくださった松井さんから
「どうですか。寒くはないですか」というお電話をいただきました。
わたしは暖房をつけずに住んでいることを話して、持ち込んだファンヒーターのことなどをお伝えしました。
すると松井さんは、
「煤のつく石油ストーブをたくのは壁によくないですよ」とおっしゃったのです。
炎をたくとどうしても室内の空気がよごれて、それを吸った白壁が、長年月をかけて黒ずんでしまう、とのことでした。
ほんとうに壁は呼吸をしているのですね。
「松井事務所」より
Kさん、エッセイありがとうございます。
「高円寺の家」は無垢の木と漆喰の調温湿効果によって、室内の温度と湿度が安定しているので、一度温まると冷えにくいのでしょうね。また、乾燥した時期に湿気を放出してくれると、体感温度は良いかもしれません。
床置エアコン一台で全室が空調できる工夫を施した、省エネルギーの木組みの家ですが、エアコンはあまりつけていらっしゃらないようですね。この冬の寒さは、大丈夫でしょうか?
燃費の良さを計るために、1年を通して温熱環境がわかる、温湿度計を置かせてもらっています。
シーズン毎にデータを公開します。夏のレポートも楽しみですね。
「高円寺の家」では、庭づくりがはじまりました。
斜めに流れるイメージで石を置いていきます。塀は竹でつくりました。
家づくりのご依頼のとき、建主さんからひとつだけいただいたご要望は「庭を眺めて暮らしたい」というものでした。
家の中からは、どこからでもお庭を臨めるようになっています。
5月の「お住まい内覧会」をご期待ください。