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2021年06月29日 Tue

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「安達屋豆腐店」内覧会のご案内

定員になりましたので、締め切らせていただきました。

親子3代で地域密着型のこだわりのお豆腐屋さん「安達屋」が木組の家でオープン致します。

商店街の密集地のため、3Dで日射の検討を重ね、狭いながらも明るく暖かな木組の家となりました。

 

この度、建主様のご厚意で2階の住宅エリアのみの内覧会を開催させていただく運びとなりました。

 

開催日時 : 2021年7月17日(土) 10:00〜17:00

 

コロナ渦での内覧会ですので、消毒・換気・マスク着用など安全に配慮し、完全予約制で時間を区切ってご案内致します。

ご希望の方には、見学時間を設定の上、最寄り駅からの案内図をお送りいたします。

 

ご参加希望の方はこちらから ↓

MAIL: ok@matsui-ikuo.jp

FAX  : 03-5996-1370

 

この機会に、力強い架構と自然素材に囲まれた心地の良い豊かな暮らしを体感しませんか?

みなさまのご応募を心よりお待ち申し上げます。

 

定員になりましたので、締め切らせていただきました。

 

2021年06月29日 Tue

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コラム: 木組の真実

木造住宅の多くがプレカットで軸組をつくることになって、骨格である柱・梁を見せなくなりました。

プレカットは、金物で接合しなければ成り立たない「金物工法」です。プレカットの家は、接合部に金物が見えると美しくないので、隠します。なので「大壁工法」です。

大壁にした途端、柱・梁の組み方を美しく見せる工夫の必要がなくなるので、多くの設計者の興味は壁の仕上げや家具などに集中します。建築雑誌や写真集が表面の細部のデザインに多くのページを割く由縁です。

一方「木組」は、金物に頼らないで、木と木を組み上げる「伝統構法」です。柱や梁が全て見えますから骨組みを美しく整える必要があります。なので「真壁工法」が当たり前です。

最近では、ほとんどの設計者が「難しいからやらない」という「真壁工法」は、日本の本来の建築物です。湿度の高い日本では壁の中に木材は入れませんでした。

「真壁工法」で建物を設計する場合は、「大壁工法」とアプローチが違います。「真壁工法」では、まず柱の配置が大切です。また柱につながる梁の掛け方も同時に考えなければいけません。柱の配置は、梁組みで決まります。さらに、梁組は美しく架けなければいけません。ここが難しいと言われるのでしょう。しかし、少し原理がわかれば、楽しい設計作業です。もちろん敷地の形状と建主の要望を満足させることを同時に考えることになります。

金物に頼らないので、梁を掛けるときには木と木の接合部である「継手・仕口」を知る必要があります。この「継手・仕口」も難しいと言われていますが、一軒の住宅だと12種類程度の接合部と適材適所を覚えれば誰でもできます。

架構は「軸組構法」という軸状の木材の組み合わせで出来ています。この軸状の木材を握手をするように長手方向に組むのが「継手」です。一方、腕を掴むような交差する方向に組むのが「仕口」です。組手を加工すれば、金物がなくても堅牢な木組の「接合部」が出来ます。

木組の家の特徴は、木の本来柔らかい母材を利用して、接合部が揺らされると「めり込み」と「摩擦」で「復元力」を発揮して「粘り強い」「しなやかな」骨格をつくることにあります。繰り返しの揺れにも対応するのです。

超高層ビルの耐震構造と同じ考え方です。

金物は強固ですが、木より強く母材を壊すので要注意です。むかしから大工たちは「豆腐を針金で釣ってはいけない」といいます。

木は人にとって親和性のある素材ですから、組み上がった木組は安心感と安らぎをもたらします。人間工学的にも、快適で安全な高さや広さは、ヒューマンスケールと呼ばれる「人間尺度」が決め手になります。日本の家には、むかしから畳の寸法や柱の寸法に「人間尺度」が使われています。座敷のある和風住宅が落ち着く理由です。尺寸と言われている寸法体系は、人の体の寸法から決められました。

また、柱で支える「軸組構法」の木組の家は、「壁構法」にはない開放感を味わえます。柱や梁を抜ける視線が空間の広がりをつくるからです。室内に柱や梁が現しでインテリアにもなり、家具類を置かなくても美しい室内のデザインが完成します。また、外部の庭や街に開かれた空間が魅力です。木と木の組手には、まだまだ工夫の余地があり、美しい納まりが可能です。

木組の納まりこそ、「用」の「美」が実現できる世界です。ディテールの美しさや工夫を競って特集されるべき真実です。

 
 
 

 

 

2021年06月25日 Fri

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故郷の恩師の思い出

高校時代に美大受験でデッサンを描いている僕に「お前の絵は匂いがないから屁でもひっとけ!」と言った母校の美術教師で兄貴のように慕っていた先生が一昨日亡くなりました…。子供の頃から器用に絵を書く僕の安直さを簡単に見やぶられて、一瞬でプライドがぶっ壊されました。笑

いつの間にか、82歳になってましたが、しばらくコロナで会ってなかったのが残念です…。

破天荒な人で、教育実習で母校に行ったときも蕎麦屋に昼食に行って、お銚子をずらっと並べ、ふたりともフラフラしているのに「午後の授業はお前に任せた!」といってその店で授業が終わるのを待ってました。僕は真っ赤な顔をして教室に行ったのを覚えています。生徒たちは気がついていただろうなぁ…

すごい武勇伝があって、高校教師同士の宴会で、先生は気に入らない教頭にビールに小便を混ぜて飲ませて、左遷されました。本当に嫌な教頭で、坊ちゃんの赤シャツみたいな奴で、僕も実習の最中に朝礼で「ジーパンで学校に来ている実習生がいる」と嫌味を言われた教頭です。いい気味でした。(笑)

日頃は温厚で、ニコニコお酒ばかり飲んでましたが、いつも楽しいお酒でした。卒業以来、帰省のたびに一緒に飲んで、みんなから兄弟のようだと言われました。

今思えば、相当の呑み友達です。カミさんや義父とも飲み友達でした。芸大の芸術祭に遊びに来て、金のない美大生にビールを奢ってくれたので、僕の友人からは英雄扱いされました。

毎年、年賀状葉書に一つ一つ手書きの作品を送ってくれました。写真は、恩師の残した貴重な葉書に描いた、アブストラクションです。生涯、作品を発表しなくて、逝っちゃいました。何度か銀座で個展を開こうと誘ったのですが…。こういう人を本当のアーティストっていうんだろうなぁ…

今気がつきましたが、葉書の表には「まだ死ぬまでのみたらん」と書いてありました。夜、床に入って、朝に起きてこなかったそうです。最高の最期やないか…涙 

今日はこの絵を見て献杯です…合掌

 

 

 

2021年06月19日 Sat

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建前映像・足固め

「足固め」とは柱の足元にあり、柱と柱を繋いで建物を一体に固める横材です。

むかしの建物は、柱を石の上に置く「石端建て」であったことから、柱の足元が開かないように結ぶ横材が必要でした。

現代では土台に柱を差すので柱は開きませんが、本来、石の上を滑って免震的に働くためには必要な材です。

2021年06月18日 Fri

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建て方映像「木組の家・東馬込の家」

「木組の家」の建方の動画をご覧ください。

「東馬込の家」は、フラットな基礎コンクリートの上に、土台と足固めを併用した免震的な床下を造り、

柱と柱の間には貫を入れて、大きく変形しても倒壊しない壁をつくります。

「貫はやめてはいけない構造部材」です。柱にめり込んで、

何度揺らされても建物が元に戻る「復元力」を発揮します。

「木組の家」は、太い梁と柱で命を守ります。

温熱環境の向上を目指して「進化する木組の家」の実現です。

 

 

 

2021年06月18日 Fri

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「小金井の家」建前映像・仕口

木と木を直角に組むときには「仕口」という接合部をつくります。

接合部が外れないように扇状に作る仕口を「蟻」といます。

昆虫の蟻の頭の形に似ているからでしょうか?

先端を太らせて外れないようにエラをつけるのを「鎌」といいます。

カマキリの首に似ています。

どちらもオスメスの関係です。

 

2021年06月16日 Wed

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「小金井の家」建前映像・ダボ

木と木を接合するときに木の栓を入れてつなぎます。

棒状の木がめり込んで部材をつなぐのです。

金物を使わない方法です。

金物は強すぎて母材である木を壊すので、

むかしから大工は「豆腐を針金で釣ってはいけない」といいました。

「木は対等に組む」ともいい同じ強さの木を組み、

硬い木には硬い木で組み、柔らかい木には柔らかい木で組むように。

継手や仕口の材も種類を使い分けたようです。

2021年06月16日 Wed

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「小金井の家」建前映像・ビンタ

太い柱に梁が掛かるときに、柱が梁からこぼれた分をビンタといいます。

人の顔でいうと耳にかかる髪の毛の部分です。

木と木が組まれていることがよく分かるように、ビンタを少し残すのですが、

ここを壊さないように組むのが一仕事です。

美しいディテールなので、完成後の姿は、また掲載します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年06月16日 Wed

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「小金井の家」建前映像・重ホゾ

一本の柱に梁と桁の二本の材を組むときに柱のホゾを二重にします。

「重ホゾ」という仕口です。

主に小屋下の地回りで組む「折置組」の時の仕口です。

柱と梁が一本の木で結合するので、丈夫な一体化した門型の架構ができます。

梁の下に必ず柱が建つので、構造に制約が生まれ開口部が自由に開けられませんが、

内部を開放的にできるので、むかしは納屋によく使われました。

松井事務所では室内を開放的にして造り込まない標準仕様にしています。

何世代もの生活の変化に耐えるガランドウの家ができるからです。

常に、「古民家」のように長寿命の家を目指しています。

「いつか古民家になる」家です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年06月16日 Wed

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「小金井の家」建前映像・継手・仕口

映像は、「追っかけ継ぎ」という継ぎ手です。

梁を長く継ぐときには、継手という加工を施して、木と木を握手するように組みます。

継手の面はよく削って、上から滑り勾配を付けて、滑らせるように繋いで、木と木を一本にします。

長い木が一本では取れないので、一軒の建物に何箇所か継手がでます。

木と木を直角に組む場合は「仕口」といいます。

金物を使わない仕口には、蟻や鎌をという加工をします。

2021年06月16日 Wed

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「小金井の家」建前映像・貫

通し貫を入れます。

貫は厚さ30ミリの構造材です。

地震で建物が変形しても崩壊しない粘り強さと復元力があります。

「貫」は明治以来、壁の中で「筋違」や「間柱」と競合して後退しましたが、

地震国日本では、やめてはいけない部材です。

繰り返す地震にも「木のめり込み」で柱同士をつなぎとめます。

見直されても良い、大切な耐震部材です。

2021年06月16日 Wed

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「小金井の家」建前映像・柱勝ち

 

最初にヒノキ5寸の通し柱を建てます。

通し柱は基礎まで落とす柱勝ち工法です。

土台に蟻を仕掛けて、輪内で通し柱を落とします。

これで、土台に差すよりも強い柱になります。

通し柱以外でも要になる構造柱は土台に差すよりも基礎に落として柱を勝たせます。

そのほうが丈夫な骨組みができるからです。

写真は細い柱ですが、建物の荷重を受ける要の柱です。

2021年06月14日 Mon

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コラム: 軸組工法の真実

近頃の木造住宅の傾向として、大壁という柱の見えない構法で自由な間取りをつくる家が一般的になってきました。

大壁の家は、架構をすべて隠してしまうので、柱の位置や梁の配置を考えずにつくることができます。

壁を建てることで家の構造を支えますから、壁式構法です。耐力的に必要な壁を残せば、好きなところに窓を開け、金物で補強して、見苦しいところは隠してしまえます。

一方、日本家屋は柱・梁がすべて見える真壁構造の軸組工法と呼ばれています。

柱・梁の軸部だけで空間を造るので開放的な空間が可能です。

湿度の高い日本では壁の中に木を入れると、構造材が蒸れるので避けたのです。

真壁は柱と柱の間に壁が入ることによって、線と面がつくり出す構成が室内外をつくり、家具を置かずに、造り込まない部屋も充分美しい空間が成立します。

ここで柱・梁を見せるためには、軸組と間取りを合致させる必要があります。

合理的で美しい架構の木の家は、柱の配置や梁の組み方を整理したシンプルな軸組が命です。

「木造は軸組だ!」と言い切ったのは、現代棟梁と呼ばれ文化財の改修や「民家型構法」を実践した故・田中文男棟梁です。私も若い頃、薫陶を受けました。

建築史家・伊藤ていじは「民家の構造はコンクリートの建物に引き継がれる」と述べました。「民家の柱や梁は自由に動かすことができない。なぜなら、まわりの構造がそれを許さないから」と、軸組の重要性を指摘しました。

ここまで書くと、民家のように丈夫な家をつくるには、間取りには架構の制約があり、骨組への理解が必須なことがわかります。

大壁のように間仕切りや壁の並べ替えによって幾とおりもプランのできる自由度の高い「パズルゲーム」は出来ないのです。

むしろ間取りの自由度は、普遍性のある丈夫な架構の成立よって生まれるのであって、柱・梁の制約なしで架構を間取りに合わせるパズルのような設計は、耐震性や耐風性に対して危険で、やってはいけないことではないでしょうか。

建築基準法の「目的」には「国民の生命と健康の保護」が第一条にあります。

木造住宅では、命に関わる骨格を最優先に考えることが大切だということです。

2021年06月12日 Sat

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予告「小金井の家」ライブ配信

6月15日午前9時より「小金井の家」の建て方をライブ配信します。

一本一本手刻で加工された木組の組み立ての様子をリアルタイムでご覧になれます。

柱や梁の木と木が軋みながら組み上がってゆく様子は圧巻です。

お時間のある方はこちらのHPから当日ご覧ください。

(写真は参考です。「安達屋豆腐店」建方の様子)

 

2021年06月08日 Tue

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「写真集」編集中

事務所開設から40年。いろいろなお仕事をいただきました。

その都度、精一杯の力を出し切ってきましたが、ここでしばしまとめてみようと思います。

これまでの「仕事」の積み重ねを「写真集」として編集しています。この本は「仕事集」と呼ぶことにします。

書名は「いつか古民家になる」内容は―「美しい木組の家」と「古民家再生の未来」―

事例は31例。仕事の数だけ工夫があります。

10月1日に発行予定です。乞うご期待!