プロジェクトレポート
2016年03月29日 Tue
わたしたちのつくる家には越屋根が付いている事があります。
越屋根は、大屋根の上についた小さな屋根です。昔から古民家にはよく見かける屋根です。かまどや囲炉裏の上にあり、煙を出すためであったり、窓が開いていたりします。
この越屋根があるおかげで、室内の熱を排出したり、光をとり込んだりする役目を果たしてくれます。
風がなくても一階の床に近い窓を開けると吹き抜けを通して、室内の空気が動きます。
温度差換気でわずかな風が産まれることを「ゆらぎ」といいます。夏の風のない熱帯夜でも、風を体感出来ます。1/f「ゆらぎ」という、やんわりとした風を選ぶことができる扇風機のダイヤルもありますよね。
わたしたちは、エアコン等の機械に頼る前に、自然を利用した工夫や知恵を取り込んだ家づくりを進めています。
2016年03月21日 Mon
木材は、天然乾燥材にこだわっています。
わたしたちがつくる家は、木と木を組み上げる木組みの家です。組手と呼ばれる接合部は、一本の木から造り出した継手や仕口と言われる加工部から成り立っています。
一本の木の芯を削りだして造りますから、芯の部分が丈夫でなければいけません。
ところが、最近の木材の人工乾燥技術は進んでいますが、KD材と呼ばれる木材は、表面は割れていないのですが、強制的に乾燥するので芯の部分が割れてしまいます。
そんな人工乾燥材で木を組むと、地震や台風など大きな力がかかった時にポッキリ折れてしまいます。
一方、天然乾燥材は木材の芯が丈夫なので木組みの加工に向いています。ただし自然乾燥の際に、表面が割れることがあります。構造的な問題はないのですが、気になるところでもあります。
でも、安心してください。木の表面が割れても家が壊れることはありません。天然乾燥の木の繊維は絡み合ったままなので、二つに割れることはないのです。
なによりも天然乾燥の木は、色艶と香りが違います。年月が経てば、飴色に輝いてその違いが分かります。そこが、いつまでも木の家が愛される所以です。
わたしたちは、天然乾燥材の良さを活かして、家づくりを実践しています。
2016年03月13日 Sun
ブログ | プロジェクトレポート | 日記 | 高円寺の家
日本の伝統的な家の床下は、風通しを良くすることが常識です。床下を解放することで、湿気の多い梅雨時にも木材を乾燥させていました。
ところが現在の家のように、ベタ基礎が一般的になってその常識が覆りそうです。場合によっては、床下のコンクリートや断熱材の裏面が結露するかもしれないというのです。
床下の断熱には二通りの施工方法があります。基礎コンクリートに通気を取り、一階の床下に断熱材を入れる「床断熱」と、基礎コンクリートと土台を密閉して基礎コンクリートを断熱する「基礎断熱」です。
計測の結果、「床断熱」の結露の危険性が指摘されました。周辺環境の違いもありますが、風通しが悪いはずの「基礎断熱」のほうが危険性の少ないことが報告されました。
床下を密閉するということは、結露には不利なような方法ですが、床下が解放されている場合、湿度の高い空気が床下の冷やされた空間を通るときに露点温度に達するのです。
むしろ、床下も室内と同じように空気が通うようにして一体化すれば、床下の湿度環境はよくなるということです。さらに床下にエアコンで暖房を施せば、温熱環境も向上します。
今回、工学院大学中島研究室の石川さんが、一年を通して「高円寺の家」を計測していただいた結果です。
わたしたちは、伝統的な家づくりを実践しながら、科学的な検証もおこなって家づくりを進めています。
2016年03月07日 Mon
生まれも育ちもわかる木を使っています。履歴のはっきりした木材のトレーサビリティの実践です。
木材は、市場で他の木と混ざると産地がわからなくなってしまいますので、直接、山に注文することにしています。そのことによって、木の植林費用が還る適正な価格を山に支払うことができます。
木材の値段は、山に植える一本の苗木の植林費用から間伐、伐採費用までを逆算して決めています。直接林業家に費用を還すのが目的ですが、木材の管理もしっかりしなければなりません。
天竜(TSドライシステム協同組合)では、伐った木にその場で、バーコードを付けて伐採から出荷まで日程を追えるようにしています。一軒の家のすべての木材に育った場所と伐った時から出荷までの流れが分かる仕組みです。毎回すべての木の履歴と出荷証明書が付いてきます。
何代にもわたって大事に育てられた山の木が、市場で買いたたかれて、山に植林費用が戻らない現実を変えたいと思います。
わたしたちのつくる家は、どこで育ったのかわかる木を使い、植林することによって次世代に資源を担保し、山の保全を目指しています。
2016年 / 3月-->