日記

2016年03月07日 Mon

なぜ木を使うのか ③

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生まれも育ちもわかる木を使っています。履歴のはっきりした木材のトレーサビリティの実践です。

木材は、市場で他の木と混ざると産地がわからなくなってしまいますので、直接、山に注文することにしています。そのことによって、木の植林費用が還る適正な価格を山に支払うことができます。

木材の値段は、山に植える一本の苗木の植林費用から間伐、伐採費用までを逆算して決めています。直接林業家に費用を還すのが目的ですが、木材の管理もしっかりしなければなりません。

天竜(TSドライシステム協同組合)では、伐った木にその場で、バーコードを付けて伐採から出荷まで日程を追えるようにしています。一軒の家のすべての木材に育った場所と伐った時から出荷までの流れが分かる仕組みです。毎回すべての木の履歴と出荷証明書が付いてきます。

何代にもわたって大事に育てられた山の木が、市場で買いたたかれて、山に植林費用が戻らない現実を変えたいと思います。

わたしたちのつくる家は、どこで育ったのかわかる木を使い、植林することによって次世代に資源を担保し、山の保全を目指しています。

トレイサビリテイ

トレイサビリテイ

2016年02月29日 Mon

なぜ木を使うのか ②

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無垢の木は「強い」と言われていますが、「強い」という意味は2通りあります。

「強度」があるという意味と「腐りにくい」という意味の2つです。一本の木の中で、それぞれに受け持つ部位が違います。

無垢の木には、赤身という心材と白太という辺材がありますが、心の部分は腐りにくさを受け持ち、辺材は強度を受け持つのです。

木が成長するときは、土中の水分を根から吸い上げ、水分は幹の外輪の導管を通り、枝や葉に供給されますが、木が成長するのはこの外輪の辺材部分で、成長とともに年輪が形成されてゆきます。

年輪は柔らかい春目と固い秋目からできています。一年に一本造られますが、年輪の詰まった辺材が強度を担当するといわれています。

心の赤身の部分は、成長が止まった細胞の集まりです。木は、成長が止まるとタンニンという成分を出して役目を終えます。タンニンは、腐りにくく虫も付きにくい成分で、樹木の心を守ります。

木を輪切りにすると、年輪に表れた樹齢だけでなく、木の強さがわかります。赤い心の部分と白い辺材がその両方を分担しているのです。

わたしたちは、木の持っている強さを生かした家をつくり続けています。

2016年02月22日 Mon

なぜ木を使うのか ①

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木は無垢の木が一番だと考えています。

私たちの周りに身近に生えている木は、丈夫で長持ちする優れた素材です。

木は、人の肌に馴染みやすく、触れると温かい感覚があります。また、加工しやすいので、さまざまな形をつくることができます。

私達の先人たちも、木の使いやすさに着目して木の家をつくってきたのでしょう。

建物の骨組みとなる強い木に育つためには、杉の木で60年必要と言われています。

よく知られたことですが、木は土の中から水分を吸収し、太陽のエネルギーをいただいて成長してゆきます。

その際に太陽の光を浴びて、空気中の二酸化炭素を取り込んで、酸素に変える作用があります。「光合成」という地球上の生物にとっては、大切な植物の仕事です。

木の中に閉じ込められた炭素は、製材して家に使われても、廃棄して燃やすことがなければ、ずっと固定化されて空気中に二酸化炭素を放出しません。

つまり、木の家が建っている間は、ずっと温暖化対策の役に立っているのです。

だから、家をつくる時には最低でも60年の間、次の木が育つまで使えることが、地球環境にとっても大事なことだと思います。

そこで、できるだけ長い時間を生きる家をつくりたい考えています。古民家再生などをリノベーションして長く使うことも大切です。

わたしたちは、丈夫で長持ちをする家づくりと古民家再生などのリノベーションを実現しています。

mini-木の循環の仕組み

出典:有馬孝礼

 

 

2016年01月24日 Sun

鎌倉近代美術館の水面

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鎌倉近代美術館が閉館になるという。近代モダニズムの建築でありながら、古都鎌倉の歴史環境に溶け込んだ名建築なのに、残念だ。

1951年開館した日本初の公共美術館。坂倉準三の設計で、多くの市民に「鎌倉近美」の愛称で長く愛された。シンプルなファサードで自己を主張しないことが、周囲の景観にもよく溶け込んでいる。

水辺にたたずむ姿は、凛とした静けさがあり、池に臨むテラスでは、水面の反射が美しく、天井を眺めるといつまでも飽きることがなく、時間を忘れることができた。

鎌倉近代美術館

鎌倉近代美術館

2016年01月17日 Sun

今日を忘れない

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1月17日です。6434人の死者を出した阪神大震災から21年になりました。そのうち8割が圧死です。約5000人の人が、建物もしくは家具の下敷きになって亡くなりました。

建築に携わる人間とって、今日は忘れられない日です。

地震に強いと言われた、10万4906棟の家屋が全壊しました。一部損壊までを入れると、63万9686棟にも登ります。

その後、木造住宅の耐震性能が大きな課題となったことはもちろんです。

当時の仲間たちと「私家版仕様書」を書いたのは、地震被害からいかに命を守る家づくりができるかを知りたかったからです。

今日が、わたくしの家づくりの方向性を決めました。美術学部出身にもかかわらず、心から日本家屋の構造の本質を学びたいと思いました。

伝統構法と呼ばれる日本古来の家づくりには、先人たちの多くの知恵があると思ったのです。

2007年から国土交通省による、振動台実大実験にも実務者として参加させていただきました。5年間の実験で、分かったことはたくさんあります。木造住宅の特性は、めり込みと粘りと復元力です。

そこで学んだ命を守る貫や足固めは、毎回の実務に生かしています。建物が人の命を奪わない家づくりが、わたくしの使命だと考えています。

今日は忘れられない日です。阪神大震災の教訓はしっかり引き継いでいきたいと考えます。

合掌。

2016年01月12日 Tue

二つの建築展

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あけましておめでとうございます。正月気分の抜けない3連休に、二つの建築展を見に行ってきました。

ワタリウムで開催されている、ブラジルの女性建築家「リナ・ボ・バルディ展」ーブラジルが最も愛した建築家―と六本木ヒルズ 森美術館で開催されているイギリスの建築家ノーマン・フォスターの「フォスター+パートナーズ展」ー都市と建築のイノベーションーです。

ノーマン・フォスターは、サー(卿)の称号を持つ英国が世界に誇る建築家です。

わたくしが、事務所を始めたころ、フォスターの画集が3巻出版されて初期の作品が掲載されたときは、枕元に置いて毎晩眺めながら寝ました。分かりやすいイラストによるプレゼンテーションに魅せられました。スケールの大きなプロジェクトから小さな住宅まで、飽くことなく見たために画集はボロボロになりました。

今回の展覧会は、最近の作品を見る良い機会でした。本来、架構や構造のシステムの長けている建築家ですが、組織的な展開を駆使し、各国の空港など見ごたえのあるスケールでした。日本では住宅の設計も、実現されていることを初めて知りました。

日本の住宅を設計していました

日本での住宅設計

ノーマンフォスター展会場

ノーマンフォステー展

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2002年に、イギリスに行って実際の建物を見る機会がありましたが、全体と細部のバランスの良さに驚きました。ネジ一本にまで気を抜かない精度です。

会場が、六本木ヒルズの最上階 東京シティビューということもあって、フォスターの展示にぴったりの都市空間でした。
http://www.mori.art.museum/contents/foster_partners/

ワタリウムのリナ・ボ・バルディ展は、今回初めて知った女性建築家ですが、あのザッハに似た風貌で驚きました。

こじんまりとした展示で、第二次大戦前後の作品展でしたが、モダニズムの初期の作品とも思えない土着との融合があり、時間の流れに耐える先進性を持った建物の展示でした。スイスの建築家マリオ・ボッタ設計のワタリウムの建物に似合ったスケールで、心地よい印象でした。
http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html

年明けから気の引き締まる二つの建築展でした。今年も例年同様、あけても暮れても建築のことをずーっと考える一年になりそうですが、よろしくお願いいたします。

2015年12月27日 Sun

大切なことは対話

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暮れも押し迫った日曜日、休みに入ったはずなのですが、新しいお客様のお宅を訪ねました。東京都の郊外の旧宅で、昼過ぎから夕方までゆっくりと打ち合わせをさせていただきました。

打ち合わせの時に、大切にしていることが、いくつかあります。

まず、「建主さんとの対話」

ご要望をお聞きするのは、もちろんですが、遠慮なく話しが出来る関係をつくることが、大切です。飾らない会話で、言い難いことも言える関係をつくることです。つまり、良い友人関係になれたらいいと思います。

次に、「敷地との対話」

建物は、世界中の敷地の中で、そこにしかありませんので、建物のイメージを膨らますには、敷地に立つことです。陽の光の入り方、風の流れ、窓から何が見えるか、どの方向から敷地に入るのかなどなど、体験して感じることです。

「図面との対話」

要望と敷地がわかれば、早速図面を書いてみます。簡単なスケッチでいいのですが、描きながら手を動かすことで、頭で考えるより具体的な絵にして考えます。絵にすることで見えてくることがたくさんあるからです。

「山との対話」

木造の建物は、木の長さや太さを決める必要がありますが、山で伐採した木材には規格の長さがあります。昔から使われてきた寸法には合理性があるので、規格の長さから構造を考えることも大切です。料理人が素材を見て献立を決めるように。

現場が始まると、「職人さんとの対話」です。

木造建築は長い歴史の中で、体系化された職人技術があります。この技術を現代につなぐことが伝統の継承になります。伝統とは、大切なことをつなぐことだと思います。伝統は、職人さんの技術の中に息づいています。

目まぐるしく変化する技術も価値観も受け入れて、前に進むことが新しい伝統を創ることだと考えています。

今日の打ち合わせは、大切な一歩です。打ち合わせで、感じたことを大事に大事に進めたいと思います。

2015年11月30日 Mon

日本が取り残される?

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地球温暖化が待ったなしの状況であることは、世界的な天候異変を見れば明らかです。そんな中で、温暖化対策パリ会議(COP21)が開かれます。

この会議から、脱化石燃料時代に向けて新たなルール作りが始まります。1997年の京都議定書(COP3)は、先進国に対して法律的な義務を課する割り当て目標として、当時は画期的なルールでしたが、2020年には、途上国や新興国も含めた新しいルールを目指します。各国が目標案を設定し、その成果を監視し、評価しあうことになるのです。

日本は、現在2020年の省エネルギー改正の義務化の検討にあたって、地域の気候風土に応じた住まいに対してガイドラインが公表されました。その中では、伝統的な工法の建物は、温熱の性能である外皮性能の適用が基準に満たなくても、ガイドラインに沿った建物であれば建築主事の判断で適用除外を受けることができそうです。

日本の伝統的な内外真壁の家づくりも可能になることは歓迎しますが、一次エネルギー削減の世界的な大きな流れの中で、賛否両論が生まれそうな制度です。パリ会議とガイドライン検討の行方が気になります。
外皮適用除外概要_ページ_02

2015年11月21日 Sat

「古民家リノベーション・プランニング講座」に行ってきました

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岐阜森林アカデミーで開かれた社会人講座に参加してきました。

兵庫県篠山市で古民家を活用したまちづくり「ニッポニア」を運営する、金野幸雄氏(一般社団法人NOTE代表)の指導で、美濃市の古民家を取り上げて利活用と事業手法を学びました。

半年にわたる連続講座は、篠山の古民家再生事例や、雲上の城で有名な竹田城下のつくり酒屋を改装した、ホテル「エン」などの見学から始まりました。その後美濃市の伝統的建物群保存地区「うだつの上がる町」に場所を移して、市が所有する古民家「須田家」を事例に実践講座が続きました。

周辺の地域を把握するために町を歩き、住んでいる方のお話を聞き、3つのグループが提案をつくります。受講生は、総務省が全国の自治体に派遣する「地域おこし協力隊」の若者ばかりです。同じグループの人たちに助けられて、座敷から見える庭を生かした、いい提案ができました。講座の最終日には、市民の方を招いて発表しました。

事業手法や運営費用までを盛り込んだ発表は、市民の方に好評でした。金野氏は、「この提案は、実際に実現可能なものばかりです。」と言っていただきました。今後の美濃市の動きが気になりますが、ここで培った手法を、多くの若者たちが実践してゆく日が来るのが楽しみです。

うだつの上がる町 美濃

伝統的な町家は紙問屋です。

須田家のお庭

綺麗なお庭と座敷が印象的な建物です。

グループの中間発表です。

みんな才能のある人で助けられました。

須田家の座敷で発表

市民の前で発表会。須田家の座敷にで行われました。

2015年11月08日 Sun

住宅建築 好評連載中「古民家その用と美に学ぶ」 

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雑誌 住宅建築に連載記事を書いています。「古民家の用と美に学ぶ」という題名です。隔月の発行の雑誌ですが、住宅雑誌としては老舗です。これまでも時折、古民家再生の仕事を取り上げていただきましたが、講演会を機会に連載記事となりました。このブログでは、校正中の表紙をちらりとお見せするだけですが、どうぞ、バックナンバーをお取り寄せになり、詳しくお読みください。今回は第3回のスケッッチを掲載します。

足固めの効果

住宅建築連載第3回

2015年10月13日 Tue

歴史ある街「佐倉の秋祭り」

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佐倉は、江戸時代から続く城下町です。毎年、秋には大祭が催されます。

先日、その祭りに遭遇しました。

佐倉は30年前に武家屋敷の改修をお手伝いし、昨年も平屋の住宅の新築をさせていただいた馴染みある街ですが、秋祭りを見たのは初めてです。

普段静かな通りが、夜店でいっぱいになり、通りに繰り出す人が多いのに驚きました。

メインは、お囃子を載せた山車です。笛や太鼓のリズムの載せて、緞帳をかけて提灯を飾った、山車が街を練り歩きます。

夕方になると提灯に灯が入りなんとも幽玄な光景です。佐倉の歴史的な町並が似合います。

この町で二軒も建築にかかわることができたことをうれしく思う一日でした。

もちろん、その日はお神酒をいただいて帰りました。

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大和武尊の山車

佐倉秋祭り山車

佐倉秋祭り山車

佐倉秋祭り

佐倉秋祭り

 

2015年10月05日 Mon

ついに来た!古民家の新しい時代!

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丹波篠山を中心に、古民家をホテルとして再生事業をしてきた、一般社団法人NOTEが、集客サイトの株式会社一休と提携した。http://plus-note.jp/event/press/post-129.html

その名もNIPPONIA。命名は外国人向けのようだが、日本人が知らない古民家の良さを再発見したのは、エトランゼである外人だから、この名はふさわしい。かつての豊かな日本の風景を彷彿とさせる命名だ。http://nipponiastay.jp/

この提携は大きなエポックだ。これまで眠っていた、空き家同然の古民家が日本中で甦ることになる。あまりにも身近で、見慣れてきたために忘れ去られていた、日本の古民家が日の目を見るのだ。

これまで、日本人で古民家を財産としてみるのは、ごく限られた人たちであったが、この事業によって、多くの人たちが注目するであろう。

おめでとう!眠っている古民家たち。目覚める時が来た。

日本の伝統と技術を最も表している建物は、古民家であることは間違いない。長い間、自国の評価よりも他国の評価が高かったが、あらためて自覚する機会になるだろう。

この機会を創ってくれた、NOTEの金野幸雄さんに乾杯!

 

2015年03月31日 Tue

美術も技術、感性が身につきます。「木組ゼミ」のお誘い

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現在募集中の「木組のデザインゼミナール」には、入門コースに美術の時間があります。木組みの設計を学ぶ前になぜ美術なのか?少し書いてみました。

美術は、デザインを実践する上で欠かすことのできない要素です。よくセンスの問題と言われますから、本来持っている感性であって訓練できないものと思われがちです。

しかし、美術も技術です。技術を身に付けることで、美しい感性を磨くことができます。

美術は色彩感覚や立体感覚を身に付ける技術であったり、プロポーションやバランスを計る技術です。それは、訓練によって身につけることができます。デッサンや、色面構成や立体構成は、そのためのエクササイズです。

さらに、重要なことは自分の作業に対して「全体感」や「観察眼」を持てることです。

例えば、デッサンでは対象物を見つめながら、光と陰をつかまえます。描き進める上で、常に陰の暗さや光の明るさを画用紙に落としながら、鉛筆を走らせますが、いつ止めてもいいように、画面全体の進め方を気に留めながら完成に至ります。

そのことは取りも直さず、作業の全体を俯瞰する訓練になります。全体の完成をイメージしながら、部分を書き進めることは設計の仕事を進める上でも大切です。

なぜならば、部分を集めても全体にはならないからです。よく勘違いしがちなのですが、詳細な部分の描き込みが絵をつくると思われがちですが、部分を集めても美しい全体にはならないのです。デッサンでは、描きながら画面全体を俯瞰する能力が必要なことを学びます。

また、対象物を長い時間観察することで、見慣れた静物にも新しい発見があります。発見は新鮮です。絵が生き生きとしてくるのは、発見の連続があるからです。

実はこの「全体感」と「観察眼」が感性を磨く秘訣なのです。感性は、美しさを見つける観察眼であり、全体感を身に付けることなのです。

どうぞ、美しいを技術身につけたいと思われる方は、木組ゼミの入門コースから始めてください。美術は、絵を描くことで、思いがけない方向から、感性を身に付ける訓練にもなります。

2015年03月06日 Fri

木組ゼミのおかげです!

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「木組のデザイン」ゼミナール模型

「木組のデザインゼミナール」と銘打って、
伝統的な木造住宅の設計・施工の基本から実践まで、
連続講座を開いて12年になります。

おかげさまで、今では、これまでの受講生と一緒に、
木組みの家づくりの仕事が出来ています。

木組ゼミでは、「木造住宅【私家版】仕様書」を教科書にしています。
阪神大震災を契機に出版した、伝統的な木組みの仕様書で、
当初、丈夫な架構づくりを中心に書きましたが、
改訂版では、仕上げも追加しました。
専門家向けの仕様書は、いまでも多くの方に愛読していただいています。

講座では、上級コースとして、木の特性から、木材の拾い方、架構の理念と技術。
地盤の読み方から、継手・仕口の使い方や木組みの模型製作まで、
丁寧な講義を心がけています。
【私家版】を書いた小林一元さんや宮越喜彦さんと一緒です。

入門コースでは、美術も教えています。自分が美術出身なので、
木組みを美しく見せるためのテクニックは、
美的感覚の研鑽が必要だと考えているからです。

驚いたことに、有名な棟梁が、美術を習いに通ってくださったことがあります。
(講義中は冷や汗をかきました・・。)
もちろん次の年には、講座をお願いしましたが・・。

昨年は、三澤文子さんに来ていただき「住宅医」の大切さをお聞きしました。
今年は、泉幸輔さんや、若原一貴さん、関本竜太さんに
デザインの話をしていただきます。
わたしたちも楽しみにしています。

そんな木組ゼミも今年で12年を迎えました。
毎年全国から15名ほどの受講生が、
月に一回日曜日に当事務所に来られて一日中熱心に学んで帰られます。
受講生の方は北は青森、秋田から、南は大分、高知まで、
遠い方もいらして本当にありがたいことです。

今では、受講生と一緒に仕事を出来るようになりました。
所員として事務所で働いていただいた方もいます。
現在、いくつかのプロジェクトを手伝っていただいています。
木組みのスキルを身につけているので、
打ち合わせがスムーズで、大いに助かります。

講座を修了すると実力がつくので、
すぐに木組みの家づくりを実践することができると好評です。
そのまま、ワークショップ「き」組に入会されて、
木組の家づくりの実践活動される方は、全国で18社になりました。
毎年、木組みの家づくりの後継者が増えていると感じています。

最近になって、また伝統構法の家づくりが注目を浴びるようになったようです。
貫や足固めを駆使した自然素材の家は、丈夫で長持ちです。
何年たっても変わらない良さが見直されているのでしょうか。
資産価値も高いことは、先日のブログにも書きましたが、
設計者冥利に尽きるうれしい事実です。

みなさんもご一緒に「木組の家づくり」を学びませんか。
ここには、日本の家の伝統があり、木造住宅の基本があります。

密度のある講義ですが、毎年和気あいあいとした楽しい講座です。
今年も全国からのお越しをお待ちしています。

<「木組のデザイン」ゼミナール2015募集の記事はこちら>

「木組のデザイン」ゼミナールデッサン

デザインの基本を、手から学べる美術講座は大好評です

2015年03月02日 Mon

家の資産価値

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「空き家」問題が話題になっている最近ですが、少しいい話が飛び込んできました。

建物の価値が下がっていく風潮の中、松井事務所開設の時に設計させていただいた「江古田の家」が、土地付きで売り出されていたのですが、先日新しいオーナーが付きました。30年前の「木組の家」です。

元のオーナーが都心のマンションに引っ越されて、土地を売ろうとしたのですが、不動産屋さんから「この家は売れますよ」と言われて、驚いたそうですが、何人かの引き合いがあって高く売れたそうです。

元オーナーの方は、「木組みの家は外国の人に人気だ」とおっしゃています。イギリス人の方や台湾の方、近所のご夫婦も建物を見に来られて、みなさん気に入られたそうです。「海外の人が興味を持つのは、君の設計は、日本的なんだろう。木組は人気だね!」との言葉に、感謝!

日本の税法では建物の資産価値は、木造で22年といいます。それなのに、30年前の建物に資産価値がついたことに喜びを感じます。木組みの家は長寿命の家と謳ってきた甲斐があります。これから、さらに長く愛される建物になってほしいと思います。

江古田の家 江古田の家玄関 江古田の家リビング

2015年01月21日 Wed

おかげさまで30周年

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もうすぐ、わたくしの60歳の誕生日です。気持ちはいつまでも18歳なのですが(笑)いつの間にか、年を重ねて還暦を迎えることができました。4人の子供も伴侶を迎え、孫も3人に増えました。いつまでも友人のような妻も元気で、一足先に還暦を迎えました。

なによりも、事務所が30周年を迎えることができたことに感謝しています。本当に、みなさんのおかげです。

この業界は、仕事の波の激しい世界ですから、わたくしの事務所のように、木組みにこだわる設計事務所に良くぞお客さんが続いたものだと、ありがとうございますの気持ちでいっぱいです。

最近は、むかし造りの民家のような家づくりを依頼される方が若い世代にも増え、おかげさまで、忙しくさせていただいています。伝統のよさが見直されているのでしょうか。

いまでは、30年の経験を積んだおかげで、住まいの性能向上はもちろん、資金の計画もあわせて、ご相談に答えることができるようになりました。

子育て世代のご夫婦には、子供の成長に合わせた家づくりを提供し、リタイヤ世代の方には終の棲家の活用も含めた提案もできるようになりました。年を重ねると、住まいの造り方にも、見えてくることが多いものですね。

子育て世代にも、同世代の方にも、幸せな家庭や老後を送ってほしいと想います。世間では、ベテランというのでしょうが、住まいづくりはいつでも新鮮な気持ちで取り組んでいきたいと想います。

2015年01月17日 Sat

阪神・淡路大震災を忘れない

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20年前の今日、1995年5時46分に近畿圏を中心に阪神淡路大震災が発生し、6434人の命が奪われました。

うち圧死が8割、建物や家具の下敷きになって亡くなった方は約5000人です。

わたしたち建築に携わる者にとって、これほどの衝撃はありませんでした。

倒壊建物、24万9180棟。むかしから日本の家は地震に強いと聞いていたのにも関わらず、目に飛び込んでくる映像は、あまりにも無残な建物の倒壊の姿でした。

この地震の日から、日本の木造住宅の耐震性への研鑽が始まったと言ってもいいと思います。

その後、2008年から始まった国の実大実験にも参加し、多くの知見を得ました。

災害の多いこの国の建物の安全性を、しっかり確保する方法を身につけ、提供しなけらばならないという使命感に燃えています。

亡くなった多くの方々のご冥福をお祈りいたします。合掌。

2014年12月10日 Wed

PHJ「省エネ診断士セミナーin山形」に参加しました

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山形エコハウスサーモグラフィ

「山形エコハウス」のサーモグラフィ画像。壁も天井も、24度前後の均一な温度になっていますね。

 

松井匠です。
先日、一般社団法人パッシブハウスジャパン主催の「省エネ診断士セミナー」に参加してきました。
森みわさんと松尾和也さんによる、省エネ住宅をつくるための講義です。

いろんな温風勉強会に出てきましたが、パッシブハウスジャパンの基準にしている性能はとても高いレベルだと思いました。
ぼくは工学系でも理系でもないのですが、温熱の話はなんとなく肌に合うというか、おもしろく感じるので、今回の勉強会はエキサイティングでした。
とくに外皮に断熱材を300㎜以上使った「山形エコハウス」は、室温が天井から床まで均一になっているという快適さと、厚い断熱材で遮音された空間が、とても印象に残りました。
関東と東北の気候の違いはあれど、ずっと住むには気持ちのいい家がいちばんですから、この快適さを忘れないように設計しようと思います。

森さん、松尾さん、パッシブハウスジャパンの方々、ありがとうございました。

<匠>

2014年11月24日 Mon

再び講演会ラッシュ

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年末にかけて、講演会が増えてきました。

12月3日には千葉で、「和の住まい」シンポジュウムに参加予定ですし、13日には、公開フォラム「伝統的木造住宅はどこにむかうか」ー省エネルギー基準義務化を見据えてーにパネラーとして参加。14日は滋賀の木考塾にて、「伝統構法の行方」について講演、18日は、岐阜県のスキルアップ講座にて木造住宅の設計法について講演、年明けは、やはり岐阜にてWOODAC主催のフォラムに「耐震エコ改修から考える伝統民家」の講演予定、等などです。

わたしに話せることは、伝統構法の実大実験の所見だとか、木組みと省エネの家づくりとか、古民家の再生ですが、これまでの講演会では、皆さん大変熱心に聞いて下さるので恐縮するばかりです。

講演会が増えているということは、今の時勢に必要とされている内容があるというふうに考えれば、ありがたいことです。(我田引水ですが・・)

講演に何を期待されているのかと考えて、勝手な解釈をすれば、伝統構法も、木組みの家づくりも、省エネも、古民家の再生も、すべて、現代住宅事情に関連していることなのです。(これも我田引水かなぁ?)

伝統構法を標榜する人たちは、実践している人も、していない人も含めて、このままでは日本の家づくりから伝統構法が消えてしまうのではないか、という危機感があると思います。

木組を実践したいと言う人は、日本に伝わる継手・仕口を駆使した、本来の家づくりのノウハウが知りたいのだと思います。やはり伝統構法を継承したいとかんがえているのでしょうか。

省エネルギーの話題を取り上げる人は、2020年の改正省エネルギー法の義務化を控えて、伝統的な木造住宅と温熱性能をどう融合してゆくのかを心配しているのだと思います。

古民家は、まさに伝統構法や、木組みの基本ですが、講演ではなくて、実際の古民家再生の調査依頼が増えています。もちろん講演の内容にそのエッセンスは出てきます。

実は、いま日本の住宅産業は、これまでに経験したことのない「空き家問題」に遭遇しています。すでに全国で、820万戸を超える空き家が発生し、住宅全体の13.5%が人が住んでいない状態です。2040年には、さらに40%に増えるという予測です。隣の家が空き家という時代が来るということでしょうか。

一見無関係のような伝統の木組や古民家は、この大きな社会問題となる「空き家対策」にもリンクしてゆきます。

つまり、空き家活用には、古い建物を直して住む場合、リフォームもしくはリノベーションの技術が必要になります。そこで、むかしの家の工法を知ることが必要になります。

さらに、耐震改修はもちろん、温熱の改修も必要となります。そのノウハウを身につけるために、これから私たちはさらに修練を積む必要に迫られているのです。これからの住まいづくりの課題にどれだけ寄与し、「地方創世」を実現できるか。まさに、正念場の時期に来ていると思います。

講演会を通して、みなさんと一緒に実践の道を探りたいと思います。どうぞご来場ください。

第二回伝木フォーラムチラシ表第二回伝木フォーラムチラシ裏

湖国すまい h26家づくり講演会 表_(1) 湖国すまい h26家づくり講演会 裏

2014年11月18日 Tue

「古民家再生ゼミ」が始まりました

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今月8日から「古民家再生ゼミ」が始まりました。

すでに、木組みの家づくり講座「木組のデザインゼミナール」を11年間開催してきましたが、伝統の木組みの長所をお話しするときに常に原点となる民家に戻ることが必要なことに気付きました。

さらに最近、家づくりの現場から、本来の日本の家のルーツを見つけることが難しくなったような気がしていたので、むかしの民家を知ることで、いまの住まいづくりを見直そうと今回のゼミを思い立ちました。

木組みの講座の中で、なぜ、貫が大切なのか。なぜ、継手・仕口が大切なのか。言葉と図版を尽くして解説していますが、実際に古民家を観て、実測すれば、たちどころにその理由が分かります。

一回目は、座学で基本的な部位や名称を解説しました。二回目は、日本民家園で町家の実測を行います。3回目は、実例をもとにみなさんに再生設計をしてもらいます。

受講すれば、今まで気がつかなかった住まいの原理・原則が見えてきます。

毎回、これまで知らなかった、民家の再発見があり、必ず実務ににつながる実力の付く「目から鱗」の講座だと自負しています。

古民家は、日本の住まいの原点です。

古民家の架構は、木組みの基本です。

古民家は、究極のエコハウスです。

今年度は3回の講座を用意しましたが、来年4月からは5回に増やして、直に古民家に触れていただくつもりです。

新築の設計の基本をぶことはもちろん、リフォームやリノベーションの技術も身に着きます。どうぞ、ご期待ください!

 

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